night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

NANA MIZUKI LIVE HOME 2022 @さいたまスーパーアリーナ 8/6

 水樹奈々さん、新譜を出して、3年ぶりのライヴツアーです。発声禁止レギュレーションこそ変わりませんが、もはや全席販売であり、特に今回アリーナ席だったぼくは、パイプ椅子すし詰め状態の、厳しい環境でした。昔のエンターテインメントが戻ってくることは嬉しいけれど、戻ってきてほしくないものも戻ってきている、あわいの時代ですね。

animelo mix presents NANA MIZUKI LIVE HOME 2022 supported by JOYSOUND

 極力空いている経路で行くため、埼京線の北与野駅から歩いて、さいたまスーパーアリーナへ。しかし、さいたま新都心駅に広告が出ているという話を聞いて、結局、撮りに行くことに。


新都心駅前のストリートピアノでは『NEXT ARCADIA』を弾いている人がいて、改札から出てくる人たちを盛り上げていました。


 やっぱりこの看板を見上げるとテンション上がるんだよなあ。さいたまスーパーアリーナ、なんだかんだ言って、ぼくは訪問回数が最も多いライヴ会場です。


・New Sensation
・SUPER GENERATION
・Go Live!
・Justice to Believe
・スパイラル
・(チェリーボーイズコーナー)
・HOLY TALE
・ダーリンプラスティック
・(企画コーナー)(初めてのカバー曲)おんなになあれ(森川美穂カバー)
・ダブルシャッフル
・MARIA&JOKER
・(チームヨーダコーナー)
・Reboot!
・Dancing in the velvet moon
・DNA -Dance'n'Amuse-
・Stand by you
・(映像コーナー(ゲストCV:杉田智和))
・FIRE SCREAM
・UNLIMITED BEAT
・MY ENTERTAINMENT
・禁断のレジスタンス
・ETERNAL BLAZE
・全力DREAMER


-encore-
・レイジーシンドローム
・STAND UP!
・HOME
・No Limit

*

・ぼくの座席はアリーナA5ブロック。入ってみると、えっ、そんなに近いところ?と驚いてしまいました。アリーナに伸びる花道がナナメになっていて、その花道の横から3席目でした。アリーナ席、とても狭い、狭すぎる…。とくに一番花道側の人は空間が斜めになっているわけで…。

・しかし、開演のとき、ステージ側のモニタ方向を見ていたところ周りが騒ぎだしたので、はっとして左を向いたら、自分の目の前から奈々さんが生えてきた(笑/花道の途中からポップアップで上がってきた)ので、びっくり! 白い衣装とテンガロンハットで、光り輝く奈々さんが!!

・ステージセットも、ナッシュビル的な街並みとか「ルート77」のマークとかのアメリカ風でした。あげくはパールホワイトのキャデラック(「奈々ラック」/笑)に、奈々さんとチームヨーダが箱乗りしてきたりして。奈々さん、こういうヤンキーぽいセンス好きだよね…

・ぼくの席がどれだけ近かったかというと、二番目の衣裳でソックスが奈々さんの足首を締め付けてて肌にくいこんでいるのがわかるくらい近かったのです。(なんかいやな表現だなあ)

・最近、武田真治さんのブルーノート東京の公演にゲスト出演した話から、300レベルの招待席に武田真治さんが来てます! →振り返って見上げると、なんか全力でペンライト振る人がいる!(笑) さらにスポットが当たってモニタにも抜かれて、とっさにシャツまくって腹筋見せる武田真治さんに爆笑しました。

・映像コーナーは、アメリカンホームコメディドラマ風の茶番劇(笑)に、奈々さんと杉田智和氏がウソ吹き替えをするものでした。これ、会場ごとに相手の声優さんが違ったそうです。しかしあれ、オチがしょうもなかったような…燃えちゃったから『FIRE SCREAM』ってこと?

・…からの『UNLILMITED BEAT』あたりが最高潮でした。この曲の最後だっけ?、火薬がドカンと爆発して、みんな驚いて奇妙な静寂がありました。発声禁止なのでみんな騒いでないところに爆発したので…。「びっくりしたよね」と思わず奈々さんがフォローしたほど。

・そのあとに『MY ENTERTAINMENT』が来たのは意外でした。この曲は新譜の頭に置かれた、シンボリックな歌詞の曲で、新しい奈々ソンだなあと思います。

・『STAND UP!』とかそれほど得意ではない曲調なんだけど、花道できらきらの笑顔で歌いながら踊るチームヨーダが目の前にいたらやっぱり楽しくなっちゃうのでした。

・アンコールでは花道に沿ってバズーカが何門も現れたので、銀テくるな、と思ったら、やはり。これもドカンとやられて、驚くんだよなあ。

*

 終演後の規制退場は25分近く待たされて、その間ずっとパイプ椅子に縮こまりながら後ろの方のイキリオタク女子グループの早口でネット用語多用の会話を聞かされてるのがかなり苦痛でした。つうか、会話禁止レギュレーションは何だったんですかね…。けやき広場のトイレの手洗いでうがいしてから、また北与野駅から帰宅。──「まだまだ不安な日々が…」とか、「暗いニュースも多いですが…」とか、とくに深い意味はないのでしょうけれどそんな表現が枕詞のように奈々さんの口から出てくるということ、そういう時代に奈々さんのライヴに参加してるということを、考えてしまいました。

 ですが、これは前回のライヴでも感じたことで今回もまた本当にすごいと思ったことでしたが、奈々さんの歌唱の進化がすさまじいのです。たとえば10年前の奈々さんと比べても、声の伸びが段違いです。ミュージカルに主演したことも影響しているのかもしれませんが、演劇的な歌い方も見せるようになってきていると思います。歌声の表現の幅が、どんどん広がっているんですね。この時代を背景に有観客ライヴのブランクがあっても、また(彼女自身はこういう場では一言も言及しないことにしたようですが)プライヴェートで変化があっても、歌手という分野で成長し続ける奈々さんには、本当に脱帽です。──水樹奈々さんは、やっぱり、ヒーローなんだよなあ。

今日は、ギチギチに詰め込まれたパイプ椅子の1個分しか空間がなくてその空間も開演後どんどん狭くなって横向きに立って半身でステージの方を向くしかない人権レスなアリーナ席を、ひさしぶりに体験した!つらかった!でも奈々さんもチームヨーダもめっちゃ近かった!!
2022-08-06 21:52:35
ただ、水樹奈々さんのさいたまスーパーアリーナで400レベルが閉めきられていた、というのは、由々しき事態だと思う。そんなんじゃなかったはずだ…
2022-08-06 21:55:26

8/4(木)香港ミニチュア展

 2017年にもやってましたね。丸の内のKITTEの1階のホールに、見物自由で展示されています。

香港特別行政区政府駐東京経済貿易代表部>香港ミニチュア展


 ヴィクトリアハーバー、尖沙咀から見る対岸の中環(セントラル)ですね!(もっと視線落として撮ればよかったな)
 

 店内に座ってるおっさんまで再現されているのだ


 前回もいたような気がしますね、この雑誌売りのおっさん。手前の歩道にあるゴミ箱(上に吸い殻入れがついてるやつ)が、ぐっときちゃいます。(?)


 バンブーシアターってやつ。澳門で見たことがあります。土着の仮設劇場で粤劇とかをやってるもの


 『半斤八两』というのは、70年代のコメディ映画らしいんですね。両八…と読んでしまい、なんだろうと思って調べてしまいました


 どうやら、「すこし昔の香港」の情景が中心みたいなのだよね。


 でもこれなんかはわりと現代なのかな? 郊外のニュータウンと軽軌。


 満漢全席!

 いつか再び、自由に海外旅行ができる時代が来ることを、願っています。

「自然と人のダイアローグ」@国立西洋美術館 7/31


国立西洋美術館国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで

 西洋美術館が持っているコレクションと、ドイツのフォルクヴァング美術館から来た作品で構成された展示だ。西洋美術館のコレクションは常設展で見たことがあるものも多い。


いいルノワールが来てる!


西洋美術館にあるモネの舟遊びと、ゲルハルト・リヒターの雲の絵が、並べて展示されている。モネの水面に映った空と、見上げた写真のような空の、組み合わせなのね。


これもいいシニャックだよね…


白眉だったのがこれ。湖面に差す光の質感がすばらしい。アクセリ・ガッレン=カッレラというフィンランドの画家の作品で、『ケイテレ湖』。シベリウスと同時代の人だそうだ。国立西洋美術館が新しく収蔵した作品だそうで、いいものを買ったね。。。


カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの『夕日の前に立つ女性』。サイズは小さな絵なのだけど、世界の終わりのような壮絶な夕焼けに、吸い込まれるようになる


ゴッホの『刈り入れ』。初来日だそうだ。どことなく不穏な力のようなものが充満している絵だな…特徴的な黄色い太陽も、力が感じられない。なぜなのだろう。

「フィン・ユールとデンマークの椅子」@東京都美術館 7/31

 ボストン美術館展から出てきて、そのままもう一つの展示のチケットに並んだ(半券で300円引き)。これはまったく知らずに来たのだけど、絶対面白いやつだ、と。

東京都美術館>フィン・ユールとデンマークの椅子

 フィン・ユール(1912-1989)はデンマークのデザイナーで、戦争を挟んだ数十年間に活躍した人のようだ。


 ひじ掛けにこだわりがあるみたいで、優美な曲線が出てるんだよなあ


 座れる椅子のコーナーもあったのだけど、椅子のデザインもさることながら、惹かれたのは、照明のデザイン。これなんか紙でできた切子細工みたいだ。


 いかにもモダンデザイン、こういうのすごくいい。

「ボストン美術館展 芸術×力」@東京都美術館 7/31

 ボストン美術館展と言えば、…そういえば、2020年の春に東京でボストン美術館展をやる計画があったのが、吹っ飛んだのだった。その企画が復活したのが、今回の展示だそうだ。当時、世界はもはや美術展どころではないという情勢になっていたけれど、あれから2年も経ったのか。──真夏の炎天を衝いて上野に出かけた。この展示も時間指定予約制で、直前に電車の中から13時の枠の予約を取ったが、予約なしでもわりと入れるようだった。


東京都美術館芸術×力 ボストン美術館展(日本テレビ)

 タイトルは、「ゲイジュツ『と』チカラ」と読むらしい。この展示、コンセプトが、あまりよくわからないというか…。タイトルからしてわかりにくいが、どうやら、「芸術の持つ力」という意味ではなくて、“力”とは「権力」の意味であるらしく、[権力者と芸術の関係]とか[権力者が力を誇示する芸術]というようなニュアンスのようだ(それを言い出すと、列強が博物館に世界中の名品を持っていること自体が権力の象徴と言えなくもないが)。最初から戴冠式の皇帝ナポレオンの大きな肖像画が現れる。かと思えば古代エジプトレリーフ、中国の皇帝が描いたという墨絵、かと思えば清朝の皇帝の龍袍、近世欧州の銀器やセーヴル磁器などなど…、一つ一つが歴史の証人で、興味深いものばかりではあるけれど、ちょっとこれは、ごった煮みたいな展示ではある。

 「平治物語絵巻」と「吉備大臣入唐絵巻」が来ているのが目玉のようだ。「平治物語絵巻」(三条殿夜討巻)は、壮絶な乱暴狼藉の場面が描かれている。──「吉備大臣入唐絵巻」は、これ前にもボストンから来たことあったよね(2012年の『ボストン美術館展』で東京国立博物館で見ていました)。これ、ほんと面白いんですよね。なんか試験問題を盗み聞きしてる場面とか、座ったままびゅーんと飛んでるところとか、衣冠束帯の吉備大納言がしれっとした顔をしていて、可笑しいのだ。展示室にぐるっと展開されて展示されている。観覧者がところどころ詰まっていても、絵巻物は順番に見ていかざるを得ない。

 日本美術では、ほかに、狩野永徳の「韃靼人朝貢図屏風」なんてのが来ていて(どうやらこれも前回のボストン美術館展でも来ていたらしいのだが)、なにこれ、と。混雑していて説明文をよく読めなかったのだが、韃靼人が桃山時代の日本に朝貢に来るわけないじゃん、と思っていたら、これは中国の宮廷に入貢する姿を描いたものなのだそうで、この時代ならではの異国趣味なのだろうな。──最後に現れるのが、増山雪斎の「孔雀図」の左右両幅。羽がものすごく繊細に描き込まれていて、これは見事だ。この展示に合わせて修復が成ったものだというのだけど、こんなすごいものがまだ海外にあるのか! 増山雪斎という人はこんな花鳥画で知られているけれど本業(?)は伊勢長島のお殿様だった人だそうで、それを知って二度びっくり。

7月の園芸部


咲かないままどんどん株が巨大化して困っていたシャスターデージー、6月中旬頃からやっと、盛大に咲き始めた。──株が暴れすぎて、扱いやすい花ではなく、最終的には棒を立てて縛り付けて支えなければならないような状態になってしまった。(7月2日)

シャスターデージー、でろでろになってしまったので片付けた。大きくなりすぎて扱いやすい花ではなかったけど、春先の成長ぶりは目を見張るものだった
2022-07-17 13:34:36


ジニアが咲いた。濃いピンクと薄いピンクの、いい色合いで、もっときれいなときに写真が撮れればよかった。


こちらはアゲラタム。(7月23日)


今年は6月のうちに梅雨が明けて酷暑が訪れた。人間社会では電力も逼迫するし熱中症の危険におびえているが、ナスにとっては好適な気候のようで、俄然勢いよくなってきた。(7月2日)



ある日の収穫。家庭菜園の夏野菜、今が最盛期かな。(7月23日)

読書&査収音源リスト(2022年4月~6月)

▼現代ロシアの軍事戦略(ちくま新書)/小泉 悠

▽大君の使節 幕末日本人の西欧体験(中公新書)/芳賀 徹

 幕府が送り出した文久の遣欧使節についての本。驚くのは、翻訳方の随員として参加していた若き日の福沢諭吉に対する、評価の高さである。曰く、

他の者がレールの寸法や汽車の速度に興じている間に、福沢は鉄道商社の構成や経営法について問うていた。他の者が外科術や病理標本に驚嘆している一方で、かれは病院の経営法や社会保障制を調査していた。また他の者がヴェルサイユ庭園の楽隊によろこび、ナポレオン伝説に畏敬を捧げている間に、かれはアメリカの大統領選挙や南北戦争についてこまかにノートし、欧洲外交の現状をロニーに問い、あるいは塩や煙草の専売制について研究していた。(中略)他の者が目前の細部事項(ディテール)にかかずらわっている間に、福沢はそれら細部を関係づけ作動させる全体のオーガニゼーションに着目していたのである。

▽「おくのほそ道」をたどる旅 路線バスと徒歩で行く1612キロ(平凡社新書)/下川裕治

▼古代中国の24時間(中公新書)/柿沼陽平

▼仲谷鳰短編集 さよならオルタ(電撃コミックスNEXT)(Kindle版)/仲谷鳰

▽手紙(新潮クレストブックス)/ミハイル・シーシキン、奈倉有里(訳)

ミハイル・シーシキン『手紙』(奈倉有里訳/新潮社)を、読んだ…いや、読めてない。目が素通りしただけだ。知らない文化の知らない言葉で書かれた手紙。翻訳小説は難しい…でも泣いてしまった。地獄からの声。ねえ、サーシャ、大好きなサーシャ、ここには何もない。花はどこにある、鳥はどこにいる…
2022-05-15 21:06:55

▼オードリー・タンが語るデジタル民主主義(NHK出版新書)/大野和基

そして進化し続けていくプロセスで、何が正しくて何が間違いであるという絶対的な基準はありません。もし最初から絶対的な基準があれば、それは独裁政治と同じようなものになります。社会が何を望むかに従って進化していくだけです。それが民主主義です。

▼青い春を数えて(講談社文庫)/武田綾乃

他人に敷かれたレールを無視して、自分の足だけで道を作る。私は、そんな強い人間になりたかった。そして、自分がそうなれないことも知っていた。

*

▼Minori Chihara the Last Live 2021 ~Re:Contact~ [Blu-ray]/茅原実里

 茅原実里さんの最後のライヴ。もちろん自分も現場にいましたけど、なんだか、映像として見る気分には、なかなかならないですね。

▼菫 / 言葉にできない(初回限定版)/坂本真綾

「彫刻刀が刻む戦後日本」@町田市立国際版画美術館 6/26

町田市立国際版画美術館>彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動 工場で、田んぼで、教室で みんな、かつては版画家だった

 小学校の図工の時間に、木版画をやらされた記憶がある。そのために彫刻刀セットを買わされたのだった。今になって考えてみると、絵画芸術の中でもわりと特異な表現技法の分野である「版画」が、なぜ小学校の教育課程に含まれていたのか? ──その源流が、戦後の日本に紹介された中国の「木刻」、そこから生まれた芸術の潮流があった、というのはとても興味深い提示だった。


 黒一色の木版だから必然的に生まれる、強い陰影


 こういう、見慣れた切り絵表現なんかも、近いものがあるのね


 小林喜巳子『私たちの先生を返して ―実践女子学園の斗い―』(1964年)。構図がものすごく、強い。闘争の時代とともにあった、市民の芸術でもあったわけだ。


 学校で巨大な作品を集団制作する、という教育技法にもつながっていったのね。こういうの、残してあるだけでも貴重な記録だと思う。

「兵馬俑と古代中国」@静岡県立美術館 6/18


 新静岡駅から静鉄電車に乗った。こぢんまりとしたターミナルから出る2両編成の電車だが、それでも8分間隔で走っている。郊外鉄道と路面電車の中間くらいの存在のように思われる。

 県立美術館前駅で下りたが、ここから静岡県立美術館までは、だらだらとした坂を上って、わりと歩くのだ。本降りの雨である。バスに乗ればよかったけれど、バスに乗るくらいなら静岡の駅前から乗ってくるという方法もあった。


 緑の濃い公園に入る。佐藤忠良の彫刻が雨に濡れている


静岡県立美術館兵馬俑と古代中国 秦漢文明の遺産

 ちょうど今日から始まった展覧会だ。これも秋には東京に巡回してくるのだけど、東京で見ると絶対に混雑するから、早めに見ておきたかった。


 精巧な香炉。


 おどろおどろしい形の青銅器がたくさん。これらは春秋時代から戦国時代の秦のものだという。



 線刻画が彫り込まれている。宴かしら


 戦国時代の、玉の龍


 春秋時代の、青銅のナイフ。木簡を削って字を直すために文官が携帯していたものだそうで、いわゆる文房具なわけだが、精巧な金細工が、ただものではない


 木簡に記された漢字。


 これは打ち鳴らす楽器だそうだ


 金が象嵌された青銅器。

*


 始皇帝が乗った馬車の、2分の1サイズの複製品だそうだ。始皇帝は真夏に巡幸先で死に、そのことを隠したまま、隣に魚の干物を山積みにした馬車を並べて走らせて臭いをごまかして都まで戻ったという。そんな逸話を思い出す。

 そして兵馬俑


 将軍も兵卒も、表情から軍装から、履いている靴の違いまで、克明にあらわされている。


 馬の俑は、前髪が変な髪形をしている。

*


 副葬品としての「俑」は、漢代になると小型化していくのだそうだ。


 穀倉とか畜舎とか、かまどとか家畜とかのミニチュアを副葬品にするのが面白い。死後に生活に困らないように、財産を象徴するものを墓に入れるのだろうけれど、ということはこの時代には実際にこういう穀倉があったということでそういうことも見えてくるのだね。サイロのような穀倉の模型もあった。


 精巧な弩の部品と、鏃。

*


 静岡県立美術館といえば「ロダン館」が有名。以前にも一度来たことがあるけど。『地獄の門』が設置されているのを見下ろす、そのくらい大きなホールだ。


 このポーズ好き


 『バラの髪飾りの少女』というテラコッタ。これ、もう一度見たかったんだよな。8年ぶりに見られた。

*

 静岡県立美術館、昭和60年代の公共施設の、よい意味での大仰さのような空気が残っていて、ぼくはわりと好きだ。──おなかがすいたので美術館のカフェで何か食べたかったのだけど、営業時間が短縮されすぎていて、15時の時点ですでに終わっていた。いくら禍の時代からと言っても、ちょっと早すぎるようだ。


 さて、静岡の散歩はこれでおしまい。──県立美術館の公園を出て、雨の中を歩き、東海道本線草薙駅にたどり着いたら、ちょうど上りの普通列車(15時31分発)が出るところだったので飛び乗った。ガラガラの列車に揺られて熱海まで1時間10分。


 熱海で乗り換え

 さらに小田原で小田急の特急ロマンスカーに乗り換えて、町田まで3時間たらずで帰ってきた。

「花ひらくフランス絵画」@静岡市美術館 6/18

 静岡駅の南口に戻り、駅を横切って──静岡駅は不思議と雰囲気が名古屋駅に似ている──、地下道をたどって、葵タワーというビルに入り込んだ。このビルの3階にあるのが静岡市美術館である。「花ひらくフランス絵画 スイス プチ・パレ美術館展」を開催中。


静岡市美術館>花ひらくフランス絵画 スイス プチ・パレ美術館展

 印象派からエコール・ド・パリまでのフランスの絵画がまとまって来ている。揺れるようなピンク色と緑色の背景のルノワール肖像画を見ながら歩いて行く。──アルベール・デュボワ=ピエの『冬の風景』という絵が目を引いた。雪の中、消えていく村の小道が描かれているが、井戸と、後ろの山の位置関係的に実際にこうは見えないと思われるのだけど、切り取り方がいいのかな。こういう景色を見た、と思わされてしまうような良さがある。
Dubois-Pillet winter landscape
(via Wikimedia Commons)

 アシール・ロージェ(Achille Laugé)という画家の絵(『窓辺(Devant la fenêtre)』)も印象に残った。点描も使っているがきっぱりとした線が出ていたり、塗りつぶし気味のところもあれば「+」マークのようなものまで、様々な筆触が使われていて、全体がフェルトのような質感になっている。──ルイ・ヴァルタの絵(『マキシムにて』)もなぜか気になった。見えるようで見えない表情。何を見ているのか?

 だんだんキュビスムっぽくなってきて、不穏な絵が増えてくる。平面と立体がまじりあったようなアンドレ・ロートの絵、『ワトーへのオマージュ(Hommage à Watteau)』も面白い。スタンランのパリの街角を歩く女性のあやしい目つき、暗くきゅっと狭められた風景のキスリングの絵(『ルシヨンの風景(Paysage du Roussillon)』)など…。

 会期末なので混んでいるのかなと思いながら訪れたけれど、まったくそんなことはなくて、静かに落ち着いて見ることができて、とてもよかった。この展覧会は、夏には東京に巡回するのだけど、東京ではこうはいかないよなあ。