night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

「ボストン美術館展 芸術×力」@東京都美術館 7/31

 ボストン美術館展と言えば、…そういえば、2020年の春に東京でボストン美術館展をやる計画があったのが、吹っ飛んだのだった。その企画が復活したのが、今回の展示だそうだ。当時、世界はもはや美術展どころではないという情勢になっていたけれど、あれから2年も経ったのか。──真夏の炎天を衝いて上野に出かけた。この展示も時間指定予約制で、直前に電車の中から13時の枠の予約を取ったが、予約なしでもわりと入れるようだった。


東京都美術館芸術×力 ボストン美術館展(日本テレビ)

 タイトルは、「ゲイジュツ『と』チカラ」と読むらしい。この展示、コンセプトが、あまりよくわからないというか…。タイトルからしてわかりにくいが、どうやら、「芸術の持つ力」という意味ではなくて、“力”とは「権力」の意味であるらしく、[権力者と芸術の関係]とか[権力者が力を誇示する芸術]というようなニュアンスのようだ(それを言い出すと、列強が博物館に世界中の名品を持っていること自体が権力の象徴と言えなくもないが)。最初から戴冠式の皇帝ナポレオンの大きな肖像画が現れる。かと思えば古代エジプトレリーフ、中国の皇帝が描いたという墨絵、かと思えば清朝の皇帝の龍袍、近世欧州の銀器やセーヴル磁器などなど…、一つ一つが歴史の証人で、興味深いものばかりではあるけれど、ちょっとこれは、ごった煮みたいな展示ではある。

 「平治物語絵巻」と「吉備大臣入唐絵巻」が来ているのが目玉のようだ。「平治物語絵巻」(三条殿夜討巻)は、壮絶な乱暴狼藉の場面が描かれている。──「吉備大臣入唐絵巻」は、これ前にもボストンから来たことあったよね(2012年の『ボストン美術館展』で東京国立博物館で見ていました)。これ、ほんと面白いんですよね。なんか試験問題を盗み聞きしてる場面とか、座ったままびゅーんと飛んでるところとか、衣冠束帯の吉備大納言がしれっとした顔をしていて、可笑しいのだ。展示室にぐるっと展開されて展示されている。観覧者がところどころ詰まっていても、絵巻物は順番に見ていかざるを得ない。

 日本美術では、ほかに、狩野永徳の「韃靼人朝貢図屏風」なんてのが来ていて(どうやらこれも前回のボストン美術館展でも来ていたらしいのだが)、なにこれ、と。混雑していて説明文をよく読めなかったのだが、韃靼人が桃山時代の日本に朝貢に来るわけないじゃん、と思っていたら、これは中国の宮廷に入貢する姿を描いたものなのだそうで、この時代ならではの異国趣味なのだろうな。──最後に現れるのが、増山雪斎の「孔雀図」の左右両幅。羽がものすごく繊細に描き込まれていて、これは見事だ。この展示に合わせて修復が成ったものだというのだけど、こんなすごいものがまだ海外にあるのか! 増山雪斎という人はこんな花鳥画で知られているけれど本業(?)は伊勢長島のお殿様だった人だそうで、それを知って二度びっくり。