night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

坂本真綾 LIVE TOUR 2023「記憶の図書館」振替公演 @東京ガーデンシアター 1/3

 坂本真綾さんのコンサート。昨年、新譜を出してすぐのライヴツアー中、昨年6月24日・25日の公演が、坂本さんの喉の不調で延期になり、振り替えられたものです。──正月の3日という危険な(?)日付への振替の知らせを受けたときは、チケットを払い戻すかどうか大いに迷ったのだけれど、ええいままよ(?)、なるようになれ、と思って手放さずにホールドし続け、結果的に来場することができてよかったです。

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 会場の東京ガーデンシアターというのは、臨海部の有明ガーデンというショッピングモールのような施設の中にある。新橋から国際展示場駅行きのBRTに乗って「有明テニスの森」で下りた。タワーマンションがずどんずどんと林立している。建物の間に緑地のような空間はあってもそれはそこにいてはいけないファッション緑地であり、決して人にやさしい土地ではないな、と感じながら歩いて行った。

 ぼくの座席は「3F 第1バルコニー」というところ、これ普通の会場なら“2階席”と表現しそうなところの、奥の方だった。すり鉢状の構造で、ステージに向かって自然な角度がついているし、前の列との互い違いに座席が配置されている(これ、意外と大事なことで、古いホールなどを中心に、そうなってない会場ってわりとあるのだ)ので、見やすい会場だった。──おそらくだけど、振替公演の日程がなんと正月の2日・3日になってしまったということで、集客の面ではこれまでにない苦労があったものと察する。プレイガイド(ローチケ)の、「7次プレオーダー先行」なんて文字、初めて見たもんなあ。当日も、空席は若干見られた。

 白い縄のれんのような紗幕の向こう側で、バンドマスターの北川勝利さんのお手振り(それ、要るのかな、とちょっと思った)によるインストからスタート。──ああ、ドラムスが髭白さんじゃないか。茅原実里現場でお世話になりました(?)。

・ないものねだり
・言葉にできない
・こんな日がくるなんて
・discord
・タイムトラベラー
・bitter sweet
・ニコラ
・空中庭園
・体温
・一度きりでいい
・鏡の中で
・宇宙の記憶 (instrumental)
・Anything you wanna be
・Latest Train(堂島孝平への歌詞提供曲)
・トロイメライ
・Private Sky
・マジックナンバー
・菫
・Get No Satisfaction!
・ポケットを空にして


-encore-
・シンガーソングライター

・「6月25日に来るはずだったのにこんな正月から私に呼び出しをくらってしまったみなさん…」というような言及があって、ちょっと笑い。「アルバムの話…は、もういいね? 何の話する? 有馬記念の話?」→笑
・坂本さん、前半は黒のボトムスにシースルーの何かがかかった凝った衣装、後半は白黒ストライプのドレスに、たしか両肩の袖口がピンクかラベンダー色っぽい何かでした(さっぱり表現できない)。どちらも形が凝っていて、なんと言っていいのかさっぱりわからないぞ。
・衣装替え後、会場か「かわいいー!」の声が飛んだのに対して、真顔で「ア? そういうの要らないから私。」と真顔で言ってておかしかったです。うん、さかもっさんらしい(笑)
・Fateの大晦日特番でフランスに行った話をしてて、えー、さかもっさん、あれ出てたの。見ればよかった(Fateのこと一ミリも知らないけど)
・堂島孝平氏への歌詞提供曲のセルフカヴァーを歌うとき、「堂島孝平さんは意外に中二っぽいのが好きなはず」みたいなことを言ってておかしかったですね。
・「中二」で思い出したんだけど、新譜に『タイムトラベラー』という曲がある。コード進行と、シューゲイザーっぽさのあるサウンドが、いかにもというか、このアルバムで一番北川勝利氏っぽさ、中二みを感じる曲だ。でも、その中二みが北川勝利氏のそれだけというわけではなくて、これ、作詞は坂本さんなので(「ぼくとぼくだったものをつなぎとめるひとすじの糸」っていうところに、うわあこの理屈っぽさ、さかもっさんの歌詞だ、って思ったんだよね)、その中二は、さかもっさんの中二でもあるわけで。──この日、この曲の入りで腰に手を当てて立ってるさかもっさんがこれまたソレっぽくて、客席でほくそえんでいた。(?)
・終盤にアップテンポ曲を並べるという構成はありがちではあるけれど、でもやっぱりそういうのはほしいわけで。立ち上がって手拍子。『トロイメライ』『Private Sky』『マジックナンバー』の並びは気持ちいいですね。──『Private Sky』で跳んでる人とか久しぶりに見たな!
・そして、以前はコンサートの最後の恒例だった『ポケットを空にして』の客席との合唱も、コロナの時代を乗り越えて久しぶりに復活しました。
・「ここまでが6月25日に予定していた曲でした」と、アンコールで出てきてくれたさかもっさんは、『シンガーソングライター』で締めくくってくれました。──ぼく、この曲好きです。「雨にも風にもときどき負けて、力をつける音楽」。コード進行が狂っていくようなところもね。

令和5年のまとめ。

■一年間の旅行先。
・奈良・京都(3月中旬/2泊2日)
・小田原(6月下旬/1泊1日)
・河口湖(8月上旬/1泊2日)
・河口湖(12月下旬/1泊2日)

■一年間に見た舞台、コンサート、映画、など。
・01/21(土):水樹奈々さん「NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023 -LIGHTNING MODE-」@さいたまスーパーアリーナ
・03/05(日):「アンナ・カレーニナ」@Bunkamuraシアターコクーン
・05/05(金):LFJ2023 公演No.223 @東京国際フォーラム ホールC“エレオノーレ”(萩原麻未(pf.)/神尾真由子(vn.)/横坂源(vc.)/ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 op.97「大公」)
・05/06(土):木嶋真優 「四季」with String Ensemble(ヴィヴァルディ:協奏曲集『四季』、ピアソラ:ブエノスアイレスの四季) @町田市民ホール
・08/04(金):富士河口湖町制20周年記念花火大会 茅原実里 LIVE 2023 “We are stars!” @河口湖大池公園駐車場
・08/06(日):「特別編 響け!ユーフォニアム ~アンサンブルコンテスト~」@MOVIX橋本
・09/03(日):水樹奈々さん「NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023」@有明アリーナ
・09/18(月):「君たちはどう生きるか」@イオンシネマ新百合ヶ丘
・11/26(日):NHK交響楽団定期公演(第1997回/Aプログラム)@NHKホール(平石章人、湯川紘惠(cond.))
・12/22(金):茅原実里 一人芝居「ヘルプミー」@河口湖円形ホール

■一年間に行った展覧会、美術館、博物館。
・01/02(月):「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」@国立西洋美術館
・01/02(月):東京国立博物館
・02/24(金):「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」@東京都美術館
・02/26(日):「諏訪敦 眼窩裏の火事」@府中市美術館
・05/14(日):「憧憬の地 ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」@国立西洋美術館
・05/14(日):「マティス展」@東京都美術館
・06/26(月):江之浦測候所 @神奈川県小田原市
・07/06(木):「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」@東京国立博物館
・09/01(金):「ガウディとサクラダファミリア展」@東京国立近代美術館
・09/01(金):「テート美術館展 光 ─ターナー、印象派から現代へ」@国立新美術館
・10/19(木):「やまと絵 受け継がれる王朝の美」@東京国立博物館
・11/05(日):「インド細密画」@府中市美術館
・11/12(日):「永遠の都ローマ展」@東京都美術館
・11/12(日):「浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 京都・南山城の仏像」@東京国立博物館
・11/24(金):「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 ―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」@国立西洋美術館
・11/24(金):「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」@国立新美術館
・11/24(金):「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」@国立新美術館
・12/17(日):「二つの頂 宋磁と清朝官窯」@静嘉堂文庫美術館
・12/17(日):「モネ 連作の情景」@上野の森美術館

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 振り返ると、腰の重い一年だったな。。。目先にも足元にも不安要素がありますが、2024年も穏やかに暮らしていけますように願っています。

読書&査収音源リスト(2023年10月~12月)

▽栞と噓の季節/米澤穂信
栞と噓の季節
「嘘」ではなくて「噓」の字が使われている

▼純情ヨーロッパ 呑んで、祈って、脱いでみて〈西欧&北欧編〉(幻冬舎文庫)▽ガンジス河でバタフライ(幻冬舎文庫)/たかのてるこ
純情ヨーロッパ 呑んで、祈って、脱いでみて〈西欧&北欧編〉 (幻冬舎文庫 た 16-9) ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)
 破天荒な旅をしているようで、意外とこの人、いろんなしがらみから自由じゃないんだな、と文章の端々で感じる。まあそういうものなのかもしれない。

▽ナイフ投げ師(白水Uブックス)/スティーヴン・ミルハウザー、柴田元幸(訳)
ナイフ投げ師 (白水Uブックス179)
 『夜の姉妹団』を読んでみたかったので手に取ったのだけど、引きずり込まれるようで、目眩がする思いだった。

▽「山田五郎 オトナの教養講座」 世界一やばい西洋絵画の見方入門/山田五郎
「山田五郎 オトナの教養講座」 世界一やばい西洋絵画の見方入門
 ぶらぶらするテレビ番組は終わっちゃったけど相変わらずYouTubeチャンネルで無双している、博覧強記なおじさんの本。あのYouTubeおもしろいよね。

▽文明交錯/ローラン・ビネ、橘明美(訳)
文明交錯 (海外文学セレクション)

インカ帝国がスペインにあっけなく征服されてしまったのは、彼らが鉄、銃、馬、そして病原菌に対する免疫をもっていなかったから……と言われている。しかし、もしも、インカの人々がそれらをもっていたとしたら? そしてスペインがインカ帝国を、ではなく、インカ帝国がスペインを征服したのだとしたら、世界はどう変わっていただろうか?
 とにかく面白く、読みだしたら止められない、という読書体験を久しぶりに味わって、図書館で借り出してから二日で読み切った。“銃・病原菌・鉄”という文明論が話題になったのは記憶に新しいけれど、その条件をアメリカ大陸に成立させれば、インカ帝国が逆襲する歴史が可能になる…? そのために、嘘の歴史を、どこから語り始めるか? 第1章から“赤毛のエイリークの娘フレイディーズ”の物語で始まるのでニヤニヤしてしまう(コロンブスより前に北欧のヴァイキングは北米大陸に入植していた、というのは近年では通説になりつつある)。──インカの若き君主アタワルパが、“新大陸”=ヨーロッパへ上陸する。当時のキリスト教世界は異端審問や魔女狩りなど、迷信深く野蛮な社会だったが、アタワルパはそこに信教の自由(!)をもたらして、あらゆる被差別者を解放し、欧州諸侯のパワーバランスに介入して、ついに皇帝(西欧での本当の意味での皇帝、神聖ローマ皇帝)になってしまう。その過程では、もうなんでもありだな、という歴史改変ぶりで、実際の歴史上の事件が立場を変えたり設定を変えられたりしていて、おそらく西洋史に詳しければ詳しいほど楽しめるのだろう。ルターの「95箇条の論題」のパロディも面白かったけど、スペイン王になったアタワルパの肖像をティツィアーノが描くとか(史実でティツィアーノが描いたのはカール5世の肖像)、ヘンリー8世がアン・ブーリンと結婚するためにこともあろうにインカの太陽神信仰に改宗しちゃうとか、…ぼくが一番くすっときたのは、…「のちにクラナッハがその場面を描いた」ってところだった。他にも、「彼らはルーヴル宮の中庭にピラミッドを建てた」だの、ちょくちょく、くすぐってくるんだよなあ。──登場人物で魅力的なのはやはりヒゲナモタ王女ですが(この小説、絶対、表紙はあの場面のヒゲナモタの肖像にするべきだったと思う!(?))、はて、彼らは何歳くらいの設定なのだろうか。アタワルパは史実よりも若そうだし、ヒゲナモタも歳を取らないとしか思えないのだけど。

▽ハイファに戻って/太陽の男たち/ガッサーン・カナファーニー、黒田寿郎・奴田原睦明(訳)
ハイファに戻って/太陽の男たち
 短編集。著者は、1936年パレスチナ生まれで、12歳のとき(1948年)に難民となり、パレスチナ解放人民戦線でジャーナリスト・作家として活動するも、1972年に暗殺された、という人だそうだ。ニュースなどで“パレスチナ難民”という言葉を見聞きしても、祖国を追われて異国の下層で生き延びる人々の姿を、これまでにどれだけ想像できていただろうか、と考える。──冒頭の『太陽の男たち』は、その恐ろしい幕切れが痛かった。

「なぜおまえたちは… なぜ叫び声をあげなかったんだ。なぜだ」
砂漠が突然いっせいに谺(こだま)した。
「なぜだ。なぜだ。なぜだ」
 ──『太陽の男たち』
「しかし、いつになったらあなた方は、他人の弱さ、他人の過ちを自分の立場を有利にするための口実に使うことをやめるのでしょうか」
「おまえには祖国とは何だかわかるかい。祖国というのはね、このようなすべてのことが起ってはいけないところのことなのだよ」
 ──『ハイファに戻って』

▼「ロシア」は、いかにして生まれたか  タタールのくびき(NHK出版 世界史のリテラシー)/宮野裕
世界史のリテラシー 「ロシア」は、いかにして生まれたか: タタールのくびき (教養・文化シリーズ)
 NHK出版の新しいムックシリーズ。しかしこれはテーマがどうにもとっつきにくかった

▽JK、インドで常識ぶっ壊される/熊谷はるか
JK、インドで常識ぶっ壊される
 話題の本ですね。筆者は駐在員の家族としてインドで中学3年から高校3年(?)までを暮らしたらしい。いかにもキャッチ―なタイトルや表紙イラストとは裏腹に、読んでみるととても硬派な本だった。“お手伝いさん”を雇い、運転手つきで送迎される自分の姿と、窓の外の子供たちの姿の格差を目の当たりにして、表現する心の動きがとても真摯で、感心してしまった。なるほどねえ、と思ったのは、インターナショナルスクールでできたインド人の友達が、「肌の色が濃い」と悩んでいること(背景として、肌の色が社会階層と明確に相関している社会なのだそうだ)、「肌色」って何なのか、…というくだり。ああ、そこから始まるのって女の子ならではなのかも、なんて。──そして世界中を襲った疫病の時代が訪れる。そのときの閉塞感、自分の無力さ、そして在外邦人に対する日本国内の心無い論調、…終盤に数ページ触れられるだけにもかかわらず、重いものがあった。

▼君と漕ぐ5 ながとろ高校カヌー部の未来(新潮文庫nex)/武田綾乃
君と漕ぐ5 (新潮文庫nex)
 今年の春に買ってからずっと積ん読していた。ついに完結編。最後のインターハイ、そしてオリンピックへ…! しかしそれがどこで開催されたオリンピックかという描写は実は一つもなく、でも読んでいる誰もが知っている、という、…訪れることのなかったもうひとつの世界線の話になってしまったのだ。これ、書くのがものすごく難しかったのではないか、そして時代が過ぎたときに理解が難しい作品になってしまったのかも、などと思ってしまった。

コモアしおつを見に行く

 河口湖からの帰り、中央本線の四方津(しおつ)で下りてみた。ここは山梨県上野原市。谷あいの駅から、山の斜面をずどーんと登っていく斜行エレヴェータと、その上にニュータウンがあるということで有名だ。──山の上のニュータウン、その名を『コモアしおつ』という。


 エスカレータもあるのね。止まってたけど。エレヴェータとどういう使い分けなのだろうか。


 ぐんぐん登って行く。この斜行エレヴェータは『コモア・ブリッジ』という。乗っている時間は4分くらいか。


 開発時の模型だそうだ


 『コモア・ブリッジ』の山頂側の駅。



 スーパーマーケットが1軒あり、そして住宅街が広がっている。


 ここは1987年から、積水ハウスが開発を始め、1991年から販売開始されたのだという。門柱に、シンボルマークと"GROWING TOWN COMMORE SHIOTSU"という文字の彫られたブロンズのエンブレムがはめ込まれている家が、いくつもある。開発が始まった頃の、新しい街をつくっていくぞ、という勢いのようなものが感じられる。──こういう雰囲気、例えばぼくの地元の町田市内でも、ほぼ同じ時代に分譲が始まった住宅街などで、今でも感じられる、時代の空気のように思われる。


 これがシンボルマークのようだ


 建ぺい率は60%らしく、意外に家と家の間が詰まってるのが気になるけれど。

 東京に通勤するには限界だの、ニュータウンは限界集落化するだの、口さがないインターネットではいろいろ言う人がいるようだが、郊外で生まれ育ち衰退する地元を見つめながら毎日都心に通勤する苦労を身をもって知っているぼくには、笑うこともできない。それに、ここを歩いてみると、たしかに管理が行き届かなくなったような家もゼロではないにせよ、住宅地としてのクオリティが維持されているし、それには多大なコストがかけられていることは容易に理解できる──そもそも『コモア・ブリッジ』の維持費も住民が負担しているのであって、ぼくのような部外者が物見遊山しているのは、それにただ乗りしているのである──。(公団ではなく)民間の開発で、郊外にちゃんとした住宅街が大規模に作られた、稀有な例だと感じた。

 ここの中古の戸建てが、例えば二千万円…いや、わからないけど、もっとするのかな…だとしたら、選択肢としてまったくありだろうし、新しく住む人はいるだろう。都心からの時間距離は否めないけれど、何もみんなが都心に通勤しているわけでもないし、八王子や立川ならもっと近いし、甲府に通う人だっているだろうし。


 ただ、若干のロストフューチャー感は、なくはなかった。

茅原実里一人芝居『ヘルプミー』@河口湖円形ホール 12/22

 茅原実里さんが新しく始めた“一人芝居シリーズ”、去年はなんとなく行かなかったし、今年も最初はスルーしていたのだけど、このところの息の詰まる生活で、たまにはいつもの土地を離れたくなったし、都合よく平日のチケットが余っているようだし…ということで、12月22日(金曜日)18時の回のチケットを買って、のんびりと河口湖に向かった。


 昼間に日が出ているうちは暖かいが、夜になると急激に気温が下がった。河口湖大橋の南側にあるホテルから、湖の北岸にある「河口湖円形ホール」まで、大橋を渡って歩いて行くと、30分あまりかかる。夕方17時台ですでに気温0℃と表示されている。


 湖畔の遊歩道を歩いて行く。すでに真っ暗である


 闇に溶けていく富士山を背後に、ひたひたという不気味な水音を聞きながら夜の湖に沿って歩いて行くと、「河口湖円形ホール」に着いた。ステンドグラスがついた、木造の教会のような不思議な建物だ。観客は100人に満たない程度。


茅原実里公式サイト>ヘルプミー

 あらすじとかは他のサイトに譲るとして…、コメディなんだけど、ものすごく重いストーリーだった(と、ぼくには感じられた)。なんだろう…、みのりんってこういう役柄、好きなのかな?、楽天的でどちらかというとおバカな女の子、しかしそこにほの暗く潜む哀愁というか、満たされなさというか、幸せを待ち望んでいる不幸せ、のような…。みのりんのそういう「恋する女の子」演技って、刺さるんだよなあ(この場合の「刺さる」とは、自分の好みに直球だという意味ではなく、痛いところを揺さぶってきてきつい、という意味)。そして、結果的には、──全部自分の思い込みでした! 全部自分のせいでした! そして、自分の思い通りになりました! っていう、ハッピーエンド…なの、それって…??

 人は誰しも否みようもなく歳をとっていくのだけど、久しぶりに茅原さんをそれなりに近い距離でお見かけして、いい歳の重ね方をしてると思ったなあ。

モネ展 @上野の森美術館 12/17


上野の森美術館モネ 連作の情景

 日時指定予約なんだけど、そもそもこの施設の適正キャパの5倍くらい入れちゃってるから、場内はイモ洗い状態で、まともに鑑賞できる状態ではなかった。でも、すばらしい作品ばかりだった。よくこれだけ…、世界中から集めてる、地味にすごい展示だ。──『アルジャントゥイユの雪』の薄青い雪の色や、黒がぱっきりと出た『3隻の漁船』が素敵。 

 一部撮影可。

 モネって、晩年には白内障を患ったのは知られてるけど、その前から、明らかに目は悪かったのではないかと思われるのだけど、どうだろうか。特に薄暗い環境はよく見えていなかったように思う。いかにも視力のよくない人の視界、という感じがはっきり出ているように感じられる作品がいくつかあって(『ラ・ロシュ=ブロンの村(夕暮れの印象)』など、色合いもあいまって切ない感じ)、自分も目が良くないので、ちょっと身につまされる感じがしたのだった。

12/17(日)静嘉堂文庫美術館

 三菱財閥のコレクションを保有している静嘉堂文庫は、世田谷の砧にあった美術館が、1年前に丸の内の明治生命館に移転した。すごいところを美術館に使うんだな、と思ったものだが、移転してから初めて訪れた。

静嘉堂文庫美術館

 『二つの頂 宋磁と清朝官窯』という展示をやっていて、陶磁器のよいのがたくさん出ていた。


 よい青磁!


 古代の青銅器を陶磁で表現している感じかしら


 絶妙な錆色だ…



 こういう、まるでガラスみたいな清朝陶磁、本当にきれいなんだよなあ




 ひとまわりして出てきたのだけど、…あれ? 静嘉堂文庫が誇る国宝の、曜変天目を、見なかったぞ? 出ていたらしいのだけど。──そういえば、一部屋、見ないまま出てきてしまった気がする。。。なんということを。。。

NHK交響楽団定期公演(第1997回/Aプログラム)@ NHKホール 11/26

 N響定期に来るのも、NHKホールに来るのも、2018年の11月以来、5年ぶり。NHKホールが改修工事していたのは2021年度のことだったっけ。。。


 あまりよく知らないけど、放送センター自体も建て替え工事をしているんだよね。どこかに移転させられるとか取り沙汰されていた時期もあったけど、結局この土地で建て替えることになったようだ。ここはわりと潤沢な敷地があってよかったよね

 さて、今日のN響定期は、ロシアの御大、ウラディーミル・フェドセーエフが来日してプログラムが組まれていたので、チケットを買っていたのだった。しかし、10日ほど前にN響から来たメールを見ると、“体調不良のため来日見合わせ”とのこと。

NHK交響楽団>【指揮者変更】ウラディーミル・フェドセーエフ指揮 11月公演について

 フェドセーエフ、もう91歳だし、もはや貴重な機会と思って、期待していたのだけど…。代演はN響指揮研究員の二人、「出演者変更による払い戻しは行いません」ということで、これは非難を浴びるやつだろうな…、とは思ったけれど、ついったーをやらなくなっているので、そういうのをわざわざ検索して見に行ったりしなくなっているのは、良いことなのかもしれない。自分が聴きに行こうと思うなら行けばいいし、やめようと思うなら行かなければいい、それだけのことだ。──おそらく、来なかった人はそれなりにいたと思われ、ぼくの席の隣も数席空いていた。

・スヴィリドフ:小三部作〇
・プロコフィエフ:歌劇「戦争と平和」-「ワルツ」(第2場)〇
・A. ルビンシテイン:歌劇「悪魔」のバレエ音楽-「少女たちの踊り」〇
・グリンカ:歌劇「イワン・スサーニン」-「クラコーヴィアク」〇
・リムスキー・コルサコフ:歌劇「雪娘」組曲〇
・チャイコフスキー(フェドセーエフ編):バレエ組曲「眠りの森の美女」●
指揮:平石章人〇/湯川紘惠●

 前半は、神秘的な森の中にいるようなスヴィリドフの曲など、面白い曲が並んだんだけど、なぜかしら演奏はわりと落ち着きのない感じだったかな、と。後半はもう少しかちっとはまる感じが出てた。たぶん湯川さんのほうが経験豊富なのではないかな。2階席からは表情はうかがえなかったけど力が抜けているように思った。

 N響定期、カーテンコールに限り撮影可なんですって。そういうことを始めたのね。撮ってみたけど、


 こういう、N響アワーみたいな写真が撮れるんだけど、ベストなタイミングっていうのは難しいよね

 あと、N響定期のNHKホールで、ホワイエでのドリンク販売がなくなっていて、ビールとかワインとか出なくなっているというのは、ちょっと驚いた。自動販売機のソフトドリンクしかない。この国はだんだん余裕が失われていくね…。

「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」@国立新美術館 11/24

 イヴ・サンローラン展を見てから帰ろうとしたところ、大規模な現代アートの個展をやっているのを知って、入ってみた。しかも無料だという大盤振る舞い。

国立新美術館>大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ


 風によって薄いヴェールが揺れ動く、大掛かりなインスタレーション。


 夜の海に立っているような恐ろしさを感じる

イヴ・サンローラン展 @国立新美術館 11/24

 キュビスム展はよかったんだけど、人が多すぎてちょっと辟易した。なんとなく物足りなかったので帰りの地下鉄を乃木坂で下りて、国立新美術館に立ち寄った。

国立新美術館イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル


 広い展示室にたくさんのマネキンが並ぶ光景はなかなか圧巻だったのだけど、どれも、モデルの体型が独特すぎるのではないか、と思えてならなかった。ものすごく、細くて薄い。いまのような多様性の時代には合わないスタイルなのではないかな、と思った。