イヴ・サンローラン展を見てから帰ろうとしたところ、大規模な現代アートの個展をやっているのを知って、入ってみた。しかも無料だという大盤振る舞い。
■国立新美術館>大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
風によって薄いヴェールが揺れ動く、大掛かりなインスタレーション。
夜の海に立っているような恐ろしさを感じる
イヴ・サンローラン展を見てから帰ろうとしたところ、大規模な現代アートの個展をやっているのを知って、入ってみた。しかも無料だという大盤振る舞い。
■国立新美術館>大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
風によって薄いヴェールが揺れ動く、大掛かりなインスタレーション。
夜の海に立っているような恐ろしさを感じる
キュビスム展はよかったんだけど、人が多すぎてちょっと辟易した。なんとなく物足りなかったので帰りの地下鉄を乃木坂で下りて、国立新美術館に立ち寄った。
広い展示室にたくさんのマネキンが並ぶ光景はなかなか圧巻だったのだけど、どれも、モデルの体型が独特すぎるのではないか、と思えてならなかった。ものすごく、細くて薄い。いまのような多様性の時代には合わないスタイルなのではないかな、と思った。
■国立西洋美術館>パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ
とても混んでいたし、若い人が多かったのが意外だった。
ピカソでもこういう抑制的なのがぼくは好きかも。『女性の肖像』
ドローネーという名前を聞いたのはもしかしたら初めてだったかも。ロベール・ドローネーの『パリ市』。三美神っていう伝統的な画題を骨抜きにしてみました、みたいな感じ?
これはその奥さんのソニア・ドローネーという人の作品。こういう、やたらポップな色づかいの作品がいくつか並んでいる
フランティシェク・クプカ『色彩の構成』
シャガールの作品が5点出ていた。わりとハードコアなシャガールだね
ピカソ『輪を持つ少女』
人物像であることはなんとなくわかるのだけど、(階段のような刻み目のせいだろうけど)建築の模型かと思ってしまった
南山城(みなみやましろ)、京都と奈良の間あたりだけど、ぼくは以前にあのあたりの山の中を歩いて、平安時代の浄土庭園が今に残る“浄瑠璃寺”というお寺を訪れて、たいそう感動したことがある。そのお寺の阿弥陀堂には、そこには大きな阿弥陀像が9体並んでいるのだけど、あくまで仏様のための建屋であって人が日常的にお参りするようなところではないそうで、建物の造りも独特なのだった。「九体阿弥陀」といい、平安時代にはそういう信仰の形があったのだそうだが、今に残っているのはそこが唯一だということだ。
■東京国立博物館>浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」
会期の最終日に足を運べてよかった。その「九体阿弥陀」の修理完成記念の展示で、1体が展示されている。
また、海住山寺(かいじゅうせんじ)の十一面観音も、とてもよいお顔の仏さまであった。
展示の最初にばーんと出てくるのが、ロムルスとレムスが乳を飲んでいる狼の像(『カピトリーノの牝狼』)で、おお、すごいものが来たのね!と思ったけど、さすがに20世紀の複製だそうだ。それに、あれってロムルスとレムスの兄弟は後世の補作なんですって。へえ。──いきなり大足が現れる部屋はちょっと面白かった。『コンスタンティヌス大帝の巨像』というのが、頭部だけでも1.8mもあるのだそうで、頭部のレプリカ、左手のレプリカ、左足のレプリカが来ている。まるで大仏のようだが、しかしこういうものは大きくなればなるほどありがたみ(?)は薄れるのではないかと思うのだけど、どうだろうか。
ローマのトラヤヌスの記念柱の周囲のレリーフの複製。複製と言えど1861~1862年に取られた石膏複製だそうで、もしかしたら博物館に収蔵されているこれのほうが劣化しないし昔の姿を残していくことになるのかもしれない。ダキア戦争の場面を写したものだそうだ
ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリの、『聖女カエキリア』の、衣の青色に目を奪われた
『カピトリーノのヴィーナス』。2世紀の大理石像がほぼ完全な姿で残っているのね…
この展示、気になっていたのだけどずっと忙しくて紛れていたら、あっという間に会期の終わり近くになってしまった。混んでるのではないかな、と思いながら府中まで足を延ばしたら、特に混んでいるわけでもなく、小さな画面もじっくり見ることができた。
展示の中心は、18世紀から19世紀の「ラージプト絵画」や「ムガル絵画」ということで、それぞれどういう特徴があるのかとかはあまりよくわからなかったのだけど。肖像に描かれるのはやはり貴族など高位の人たちで、インドの貴族っていうと、要するに日本でいう大名とか、欧州の諸侯みたいな立場の人たちだと思うのだが、男性の肖像は、片手に花を持つのが定番の構図で、美を愛することの象徴なのだそうだ。武張った感じじゃないんだね。──インドの神話の知識もないので、『ラーマーヤナ』の解説パネルを読んで面白いなと思ったけど、えっ、ハッピーエンドじゃないの? シヴィアだな、なんて。驚いたのは、インド神話ではブッダも“ヴィシュヌの9番目の化身”とされているのだそうで、“ヒンドゥー教では、ブッダは仏教という誤った教えを魔神に広め、正しい教えから悪を遠ざけるために生まれたとされる”という説明に、そっ、それは…と。
jawa-jawa.hatenadiary.jp
「俺のついったー」の話の続きで、夏にやっていた開発の話。
今年の5月に作った、Googleフォームとスプレッドシート、そしてGoogle Apps Script(GAS)で構成された、俺の短文ブログ自動投稿システム(「myTimeline」)は、さらに進化して、入力と参照の機能をスマホアプリ化した。7月にGoogle AppSheetでpovoのプロモコード管理アプリを作った流れで、こちらもアプリ化したいという野望が出てきて、8月中旬からぷちぷちと作っていて、8月28日に完成した。
*
Google AppSheetで作ったアプリ。PCのブラウザからも使用できる。投稿は一応、過去2か月分をここに表示するようにしている。ただし、Google AppSheetではHTMLタグが使用できないので、iframeなどでの他サイトの埋め込みは機能しない。
投稿フォーム。本文と添付画像(任意)を投稿できる。
投稿1件の詳細ビュー。
*
AppSheetでこのアプリを作るにあたって一番悩んだのは、意外にも「投稿にタイムスタンプをつけること」だった。──やりたいことは、
そんなに難しいこととは思わなかったのだが、これがなかなかできなかった。「投稿した時刻」ではなく「投稿フォームを開いた時刻」が登録されてしまうなど、苦労した挙句、一度は、アプリ側から時刻を渡すのではなく、サーバ側(GAS)で、シートの変更トリガで最終行に現在時刻を追加するというムリヤリな方法で実現してみたが、どうしてもラグが出てしまうし、シートの変更時というトリガは不用意にテーブルを触れなくなる危険があってよろしくない。
最終的には以下の方法で実現できた。
また、投稿時に添付した画像は従来と同じくGoogleドライブに格納される。画像ははてなフォトライフに連携したいので、それにはGoogleドライブ上のファイルIDが必要になる。Googleフォームからの投稿の場合はテーブルにはURLが登録されたのでファイルIDが簡単に取得できたが、AppSheetからの場合は「[フォルダ名]/[ファイル名]」という形で登録されるという違いがあった。このため、GASで、Googleドライブの特定のフォルダからファイル一覧を取得してファイル名からファイルIDを取得し、さらにはてなフォトライフに連携するまでの処理が、投稿時に自動で動くようにした。
こういった細かい開発を経て、使い勝手のよい「俺のついったー」ができあがった。──ただ、使ってみて感じた制約として、「アプリ上で投稿の削除ができない」という点がある。したくなる頻度は少ないし、テーブル自体を編集してしまえばなんとでもなるのだが、AppSheetでできると思うんだけどなぜかうまくいかないんだよな。もう一度テーブル構成も考え直して、作り直しをしたい気もするけど、いったんこの開発はこれで一段落にしたい。
日本の伝統的絵画って、知識のほとんどない分野なのだけど、…行ってみたら驚いた。国宝だらけの展示なのだ。そのわりにそれほど話題になっていないような? ──伴大納言絵詞と鳥獣戯画甲巻が並んで展示されてたのにはもう、すごいなこれは、と思ってしまった。ぼくは鳥獣戯画の本物を見たのは実は初めてだったと思う。高山寺で見たのもレプリカだし、これまでの鳥獣戯画展はどれも、まともに見られなかったりチケットを買えなかったりしたし。
伴大納言絵詞、これは、ぼくはなにかの展示で一度見たことあると思うけど、迫力あるよね。で、応天門が燃えたあとに出てくる後ろ姿の謎の男、あの人の存在は有名らしく、周りでも「これが誰なんだろうって人ね~」のような会話が聞こえた。そのほかにも、信貴山縁起や源氏物語絵巻などの大物が出ていた。これ、知識があればもっと楽しめるんだろうなあ。
▼Google Workspaceではじめるノーコード開発[活用]入門 AppSheetによる現場で使えるアプリ開発と自動化/守屋利之、辻浩一、宮井拓也
▼大塩平八郎の乱 幕府を震撼させた武装蜂起の真相(中公新書)/藪田貫
▼街とその不確かな壁/村上春樹
この春から、『街と、~』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を順番に再読して、そして今作を読むつもりだった。でも今作は、ぼくにとって、読み進めるのにかなりのパワーを要する物語だった。第二部の終結部に入ったときは、ついに永遠の時に戻ってきた…!と、どきどきしながら読んでいたのだけど、第三部は…。すごくいろんなことを想起した。『豊饒の海』とか、『2046』とか、ボルタンスキーのインスタレーションとか。いろんなことを思い出した。灯りは消えた。物語が閉じた。
水樹奈々さんの夏のライヴツアー。最後の有明アリーナ3daysのさらに最後、千穐楽にだけ参加しました。有明アリーナとはオリンピックのために臨海方面に作られた新しい会場で、しかし微妙に面倒な場所にあります。ゆりかもめの新豊洲駅が一番近いはずですが、ぼくは地下鉄の豊洲駅から歩いて行きました(まあ豊洲でもぼくにとってはだいぶ遠いところなのですが)。豊洲からでも20分強ってとこだったかな。湾岸のタワマンの足もとを歩いて、運河に架かる橋をぞろぞろと渡って行きました。
4年ぶりに観客の声出しが解禁されました。ですがマスク着用の指示は出ていて、過渡期だなあ、とは思いますが、でもマスクはしたほうがいいんだよね…。以前、真冬に参加したライヴで、一発で喉をやられて風邪をひいたことがあるので。。。また、今回は、水樹奈々さんのイヴェントで電子チケットが本格的に導入された初めての回だったと思います。今回のスマートフォンチケットは、特別なアプリを必要とせずブラウザ上に表示し、入場時に電子スタンプを押されると印影が現れる、しかも印影が席番に被って見にくくなるが画面に触れると印影が消えるという、かゆいところに手が届くしくみでした(他の現場で、印影で席番が隠れてしまって入場後に若干混乱が起きてた経験があります)。──ぼくの座席はアリーナCブロック、要するに一番後ろのブロックの、その中でもかなり最後列に近いところでした。遠いけど、見晴らしはそこまで悪くなかったかな。
オープニング映像で黒い海賊っぽい衣装で現れた奈々さんは、そのままステージの奥のスモークの中にシルエットとして現れて、スタート。──今回のぼくは何の情報も得ずに千穐楽だけ参加しているので、どの曲が来るのか全然知らないので、『Bring it on!』のイントロが入ったときには、もう、腹の中で悲鳴を上げていました。MCを挟んで坂本竜太氏@ベースがぶりぶり言わせる半端ないイントロから、チームヨーダも入って『still in the groove』、速やかにダンス曲パートです。今回すごいと思ったのは、ダンス曲パートでこの『still in the groove』だけじゃなくて『Gimmick Game』もやっちゃったこと。大盤振る舞いかよ! 中盤では緑色っぽいすその広がった衣装に、サイドテールのようなヘアスタイル。『ETERNAL BLAZE』で4年ぶりに叫んで跳べました。やっぱりこれがないとね…!! ──バンドメンバー選抜のアコースティックコーナーでは『哀愁トワイライト』がこの曲にぴったりのジャズアレンジで披露されていました。『恋想花火』でバンドのアウトロを残して奈々さんは奥に引き上げ、前半がおしまいでしたが、この曲がとにかくエモーショナルでしたね。。。
映像コーナーを挟んで後半も、なんだかよくわからないステージ一体型タワー衣装(?)の上で歌う奈々さん(ただ、『サーチライト』で「携帯のライトをかざして…」をいきなりやられたので、ぼくは荷物からスマホを取り出すのをあきらめて普通にペンライトを振っていました)、『Higher Dimension』で4点吊りの空飛ぶゴンドラに乗ってフライングしてくる奈々さん、そのゴンドラが地上に下りるとトロッコになって『Astrogation』で回る奈々さん、などなど、奈々さんのライヴで恒例の、大型乗り物(?)が縦横無尽に現れます。私たちもはや慣れてますが、これ冷静に考えるとすごいよね、予算のかけ方を含めて。──終盤のセットリストは、これ、明らかに、観客に声を出させるためのラインナップだったんだろうなあ。アンコールでは、ライヴTシャツを切って着てきておなかは出すけどおへそは見せない、絶妙な(?)スタイルの奈々さん。何かのアニメに使われる『Sugar Doughnuts』という新曲をやってましたが、これ相当トリッキーっていうか作り込まれた曲ですね。バンドメンバからクレーム(?)が上がったというのも納得。最後が『DISCOTHEQUE』だったのには楽しすぎてちょっと半笑いになってしまいました。そしてダブルアンコールは『POWER GATE』。とにかく観客に声を出させることに徹底した選曲でしたよね。
・(SE: "Welcome To The Black Parade" / My Chemical Romance) ・(オープニング映像) ・Red Breeze ・哀愁トワイライト (アコースティック) ・Sweet Dealer ・(映像コーナー) ・Higher Dimension ・Astrogation -encore- -doule encore- |
ライヴの開演前のSEは洋楽でしたが、アナウンスも終わっていよいよ始まる!というタイミングでSEのヴォリュームも上がると、観客から手拍子が起こって、場内が異様に盛り上がっていたのですね。なんだろう?と思っていると、その曲が綺麗に終わってライヴ本編が始まったのでした。──これ、後から知りましたが、My Chemical Romanceの"Welcome To The Black Parade"でした。ぼくは洋楽を全然知らないんですが、有名な曲なんですね?(LIVE PARADEの1曲目はこの曲だった、と表現している人が、インターネット上にはおられますね)。 これまであんまり考えたことがありませんでしたが、開演前SEも奈々さんの選曲のはず。この曲に観客から手拍子が起こったのはおそらく自然発生的なものだったのかとは思いますが、この曲が明けて始まるオープニング映像とインターミッションの映像が、──スチームパンクな世界で黒い海賊のような衣装で飛空艇に乗る奈々さんが現れて世界に希望を届けに来るんだけど、突然の落雷で灰の降る死の世界に落とされる。でも子供たちの紙飛行機が力をくれて…、というものでした。なんだか多義的なメッセージが感じられます。誤解を恐れずに言えば、奈々さんの中にある、何かに対する“鎮魂”のようなものが込められていたように、ぼくには感じられたのです。奈々さんはエンターテイナーとして、こういう場面でストレートにネガティヴな表現を好む人ではないと思っていますし、今回のツアーも、前回のライヴも、コロナの時代を乗り越えて生き返ったエンターテインメント、音楽の力で観客と一体になれる祝祭としての「パレード」を、私たちに提示してくれようとしている、それはずっと一貫していると思っています。でも、今回の奈々さんには、何か、言いたいことがあったのではないでしょうか。それが何かはわかりませんが。