night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

9/27(日)大河内山荘庭園、祇王寺

 天龍寺はせっかくだからお堂にも上がろうと思っていたが、なんとなく北門まで歩いてきてしまった。ここから出ると、竹林の道である。

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 観光シーズンには通勤ラッシュのようになりかねないこの道だが、この日もそれなりに人はいたけれどまだなんとか歩ける程度だった。

 そういえば、と思い立って、竹林の道を少し奥に歩き、大河内山荘庭園に行った。

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 ここは、竹林の道の突き当りに入口があるのは昔から知っていたが、一体いかなる場所なのか知らなかった。なんでも、昭和の俳優である大河内傳次郎なる人物の別荘だったところだそうだ。

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 狭い散策路を上っていくと、高台の別荘が現れる。

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 京都の街を望む、すばらしい場所だ。こんな場所に別荘を持ってみたいものだなあ…

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 この奥が、保津川の渓谷。そんなところまで登ってきてしまった。おそらくこの生け垣の向こう側に嵐山公園の園路が通っていると思われる。ぼくも歩いたことがあるが、違う庭園が隣接しているとは知らなかった。敷地が絶妙に区切られて、視界から隠されているようだ。

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 美しい。手入れが行き届いているし、人が少ないのもよい。こんな良い庭があるとは、蒙を啓かれた感じであった。悠揚としたすばらしい庭だった。

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 園路に敷かれた瓦、こういうところも手が込んでいる

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 なお大河内傳次郎とはこういう俳優だったそうだ

 入場料の1,000円には、茶店でのお抹茶とお菓子がついている。歩き回って疲れたところで休憩して、山荘を辞した。

*

 ちょっと欲張って、竹林の道から小倉池沿いの道をさらに歩いて、祇王寺に足を運んだ。──祇王寺は、平家物語に出てくる白拍子祇王平清盛に捨てられて出家して余生を過ごしたという伝承のあるところ。このあたり、今は住宅地が迫っているけれど、京都の西の山沿いで、夕方になると薄暗く寂しい土地である。祇王平清盛の像などがあるが、ここも、苔が見事な庭である。

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 自分のところの庭のかけひに水を流して以来、こういうのが気になっている。

*

 夕暮れの二尊院の前で休憩してから、歩いて嵐山駅まで戻り、嵐電四条大宮まで出た。──今回の投宿先は、四条烏丸の近くにある、某鉄道会社系のビジネスホテルだ。ここ、ぼくは2012年に一度宿泊したことがあり、その後は関西のホテル相場が上がっていくのに乗って高い値段をつけていたので敬遠していたが、今回はコロナ不況のために安値で泊まることになった。宿泊者データは残っていたらしく、「以前にもご利用されたことが?」と訊ねられた。

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 錦市場の商店街のシャッターには伊藤若冲の絵が描いてある。そういえばこのあたりにゆかりのある人だったね

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 烏丸通沿いの、レンガの洋館。大正時代の辰野金吾建築で、旧北國銀行京都支店なのだが、DEAN & DELUCAが入っていて、おしゃれな感じになっていた。

9/27(日)宝厳院、天龍寺

 仁和寺の二王門を出た。食事をしようと思ったが、嵐電の駅前のお店には「テイクアウトだけです」と断られた。なるほど旅行はしにくい、と思いながら、嵐電に乗って、帷子ノ辻で乗り換え、嵐山へ。
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 嵐山はいつ来てもちょっと異常なほどの混雑だ。ここだけどうしてこうなっちゃったのかな、と思いながら、天龍寺の参道に歩み入るが、先に左に曲がって、少し奥へ。

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 宝厳院という、天龍寺塔頭寺院である。ここのお庭がよいと聞いて来た。お寺らしくない茅葺きの門である。

 ここのお庭は、「獅子吼の庭」というそうだ。寺のパンフレットには「室町時代に禅僧策彦周良禅師によって作庭された借景回遊式庭園」と書いてあるが、宝厳院自体は1461年に室町時代に創建された寺だというものの、当初は上京区のほうにあって、今の土地に移転してきたのは近年のことだそうだ。なので、ちょっと説明不足と言わざるを得ず、本当にこの庭がいつからあるものなのかは、謎である。

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 丸石の灰色が強烈、というか、光線のせいもあるだろうけれど、ちょっと異様さを感じた。これを見て、やはりこれは現代の庭園だろうなあ、と思った。

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 でも、よいお庭だ。深山のような流れ。見えないところに鹿威しが隠されていて、音だけが聞こえる。

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 こういう柴垣はなんと言うのだろう

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 こういうのはちょっと怖いかもなあ

*

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 天龍寺のお庭もそぞろ歩く。もしかしたら学生時代以来ではないかと思う。

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 夏と秋のはざまの季節だなあ

9/27(日)青紅葉の京都へ。仁和寺

 旅行ができなくなって半年経った。どこにも出かけない夏が過ぎて、いいかげんに、むずむずしてきた。そろそろどこかに出かけたい。東京都以外ではGoToキャンペーンだなどと言い始めていたが、9月に入った頃はまだ需要が戻っているわけでもなかったようで、新幹線往復にホテルをつけたようなパックが、以前と比べると驚くような安い値段で出ていた。東海道新幹線が、信じられないほどのがら空きの状態で走っているのも、日々、目にしていた。──炎暑の夏が終わったこういう季節こそまた京都に行こうと思い、シルバーウィークの連休を狙って手配をかけようとしたものの、まさかと思ったが、新幹線が取れず、手配が成立しなかった。ビジネスホテル級のホテルはいくらでも格安で取れるようなのに、おかしいな、と思ってその連休は旅行を取り止めたのだが、いざ連休に入ってみると、タガが外れたような行楽ラッシュになっていたようだ。なんだか変だな、人の動きがまだらになってるな、と思った。

 気を取り直して、9月の最終週に出かけることにした。10月に入るとGoToキャンペーンの対象に東京都発の旅行も追加されるそうなので、また人の流れが変わるだろうから、今のうちかも知れない。また、そういう中途半端な時期に休みが取れるのも、ありがたいことだった。──JR東海ツアーズのパックで、新幹線の新横浜ー京都の往復の『のぞみ』に、洛中のビジネスホテルを2泊つけて、なんと、新幹線の定価の往復よりも安い価格になった。感覚的には新幹線が半額のようなもので、東海道新幹線と言えばほとんど割引がきかないものだというこれまでの常識が覆されている。乗る列車が事前に決められてしまうこの種のパックは、行動が制約されることに抵抗があってこれまでほとんど使ったことがなかった(しかもたいして安くならないことが多かった)のだけど、この値段はすごい。

 JR東海ツアーズのウェブサイトで、新幹線の座席まで決まって手配できるようになっており、そこまでシステムが接続されているのか、と感心する(ただし深夜帯は即時予約ができなくなっていて、これはマルス側の制約なのかな)。新幹線に乗る前に切符を引き取る必要はあるが、JR東海の新幹線駅に置いてある機械にQRコードを読み込ませると、新幹線の切符(契約乗車票)が出てくるというものだった。当日に新幹線に乗る直前に引き取ればよいのだが、事前に東京駅の八重洲北口で引き取ってきた。こういうのが珍しいのでいちいち感心してしまう。

* 

 ということで、9月27日(日曜日)、新横浜駅から朝9時18分の『のぞみ213号』新大阪行きに乗った。車内はだいたい窓際が埋まっている程度で、やはり乗車率は高くないようだ。どんより曇った天気で、ぱっとしない旅立ちだけれど、実に半年振りに他の地方へ出ることになる。さっそく缶ビールを開けた。富士山は厚い雲に覆われて見えなかったが、浜名湖あたりまで来ると晴れてきた。

 京都駅に着いたのは11時15分。間髪入れず嵯峨野線(山陰線)のホームに行って、花園駅で下りて、歩き始めた。

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 妙心寺の境内を突っ切って…

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 仁和寺にやって来た。

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 仁和寺では、霊宝館で名宝展を開催中。

 国宝の、空海の三十帖冊子などが出ているが、見たかったのは、国宝の薬師如来坐像だ。この日までの1週間限定で公開されている。白檀でつくられているという、20cmほどのとても小さな像なのだが、とてつもなく精巧で、衣にほどこされた微細な截金紋様が美しい。──どっしりと構える阿弥陀如来と両脇侍も、荘厳であった。

世界遺産 真言宗御室派総本山 仁和寺>霊宝館 秋季名宝展

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 京都はいま、現代アートのプロジェクトをやっているようで、ここ仁和寺にも、なにかいろいろ置いてある。
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 御殿と呼ばれる宸殿をそぞろ歩く。天気雨が通りかかり、しっとりと庭が濡れていた。

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 こんな建物の中庭にも美しく苔が生えそろっている。どういう手入れをすればこうなるのだろう、と感心する。

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 この風景に、学生の頃の記憶がよみがえって、ちょっと心を動かされた。変わらないものがあるな、と思った

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 金堂では、ちょうど13時から、新型コロナウイルス退散の祈祷が行われていた。

読書&査収音源リスト(2020年7月~9月)

▼彼女の知らない空(小学館文庫)/早瀬耕

▼ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

▼プロジェクトぴあの 上・下(ハヤカワ文庫JA)/山本弘

 登場するキャラクタの性格描写などはラノベっぽいんだけど、作中で操られる疑似理論はまさにSF。とてもついていけない(笑)。しかし、ラストシーンで戦慄することになった。飛び越えた知性を持つ者の恐ろしさ、というか…。

▼猫を棄てる 父親について語るとき/村上春樹

▼寒い夜(岩波文庫)/巴金、立間祥介(訳)

「みんなに申し訳ない。おれは罰せられなければならない」

▼熱源/川越宗一

 直木賞受賞作。北海道に移住した樺太アイヌと、和人の息子と、ギリヤークの人々と、サハリンに流刑されたポーランド人の活動家と…題材はものすごく興味深いのに、語り口が全然深まらないのだ。大河ドラマの総集編だけを見ているような、するする話が進んでいってしまう感じ。

▼乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ (1~3)(Kindle版)/大西巷一

 フス戦争のボヘミアが舞台、というだけでかなり興味をひかれるんだけど、残虐シーンが多いので、読み進めるかどうかは…。そういえば、フス戦争って英仏百年戦争と同時代なんだなあ。

▽アイの物語/山本弘

 『プロジェクトぴあの』を読んだことで山本弘という作家のすごさを知り、もう1冊読んでみた。せつないSF短編集。『詩音が来た日』が、出色の名作だった。人間が不完全な知性であることを喝破し、でも同時にそのことを決して見捨てない。

▽キミのお金はどこに消えるのか/井上純一

 『中国嫁日記』で有名な漫画家さんの経済ネタシリーズ。面白いよね。特に、隣国では若者にさかんにカードをつくらせている→内需を広げて「国の形を変えようとしている最中」、という表現をしているのには感心した。

▼「中国」の形成 現代への展望 シリーズ 中国の歴史⑤(岩波新書)/岡本隆司

▼一人称単数/村上春樹

 短編集。読んでいて「あっ、これはやばい話だ」とカチッと気付く瞬間の、気持ち悪さが、無類であった。

▽アジア新聞屋台村/高野秀行

▽イスラム飲酒紀行/高野秀行

▼ふしぎの国のバード (7)/佐々大河

▼喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)/森博嗣

 何年ぶりかの再読。この小説を読み返すことは、もしかしたら、ぼくにとってひとつの“祈り”なのかもしれない。

▼感染症の世界史(角川ソフィア文庫)/石弘之

▽まずはこれ食べて/原田ひ香

 イイ話なのかな?と思ったら、まったくそうではなかった。

▼カエサル 内戦の時代を駆けぬけた政治家(岩波新書)/小池和子

 ちょっとやはり難しいな。古代ローマ、人の名前も難しいし、そもそも社会の成り立ちが想像の範囲を超えているので…

▼三体II 黒暗森林(上/下)(Kindle版)/劉慈欣、大森望・立原透耶・上原かおり・泊功(訳)

 ものすごいドライヴで一気に読んだ。もはや前巻とは全然違うスケールの話になってんじゃん!!

生命(じんせい)に時間を与えるより、時間に生命(いのち)を与えよ。
给时光以生命,而不是给生命以时光。
 ──苦心のルビだが、わかるようなわからないような…。この一節、パスカルの引用だという話もあるが定かではない。

「いや、艦長はきみだ。」
 この瞬間、もう東方延緒大佐のヴィジュアルはミスマル・ユリカでしたね、ぼくの中では(笑) ──ちなみに「大佐」と訳されているがどうやら原文では「大校」らしいので、大佐(上校)よりも上の上級大佐、西側の軍隊にはあまり見られない階級のようだ。宇宙艦隊だけど人民解放軍だもんね。

「司令官、自分が無神論者であることをいまはじめて残念に思っています。そうでなければ、いつかどこかでまた会えるという希望を抱けたのに」
章北海说:“首长,我第一次为无神论者感到一些遗憾,否则我们就可以怀着希望在某个时间某个地方最后相聚。”
 ちょっとぐっときちゃう常偉思少将。いいシーンでした。

「じゃあ、これからどうしたらいいでしょう。どうしたら彼女を忘れられますか?」
「不可能です。あなたは彼女を忘れられません。」
現実を逃れるもっともいい方法は、現実に深く関わることだと知っていたからである。
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そう。『三体II黒暗森林』上下、読んだんだ。まさに怒涛の展開だったけど…、なんか、ぼくが本当に胸を締め付けられたのは、あの、なんて言うの…、百パーセントの女の子が、現れるところ…。あそこは本当に、読んでて息ができなくなるかと思ったんだ
2020-09-01 19:56:50
あれは、たぶん、文芸評論的だったり、世間的だったりするところからは、叩かれる部分だとは思うんだよね。それはまあなんとなくわかるんだ。でも、さあ…。こういう発言すること自体がよくないのかな。
2020-09-01 20:06:18
脳内アニメ化的な意味でいい感じのキャラは、東方延緒かなあ。シリアスタッチのミスマル・ユリカみたいな感じのを想像してた。渋いキャラは常偉思将軍と章北海主任ですね
2020-09-01 20:18:47
『三体』はテンセントがドラマ化するのとビリビリがアニメ化するっていう二つのプロジェクトがあるらしいけど…、アニメはともかく、ドラマ化って…?どうやって…??(それにしてもあの国の資本が世界にコンテンツを発信する時代になるんだなあ、時代は変わった)
2020-09-01 20:41:53

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▼シングルコレクション+ アチコチ (初回限定版)/坂本真綾

▼アンチテーゼ(初回生産限定盤)/夏川椎菜

9/4(金)アーティゾン美術館

 平日の昼過ぎに、東京駅に現れた。八重洲口のアーティゾン美術館へ向かう。日時指定制チケットは、14時からのを購入。

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アーティゾン美術館

 昔のブリヂストン美術館が新装開店した、真新しい美術館である。平日の午後に、まるっきりサラリーマンの恰好で美術館の入口に歩み入ったら、警備員に、美術館に来たのか?と問われた。「そうですけど」と答えたが、オフィス棟と間違えてないか確認されたということらしい。

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 上層階では、『鴻池朋子 ちゅうがえり』、『第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示帰国展 Cosmo- Eggs| 宇宙の卵』をやっていて、とくに鴻池朋子の方はかなりわけがわからない空間になっていて面白かったけど、割愛。

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 旧ブリヂストン美術館石橋財団のコレクションは、一つ一つが重量級で、見ごたえがある。

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お久しぶりの、あの、亡霊のような男。カイユボットの絵

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印象派の女性画家の作品が特集されていた。

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ベルト・モリゾのこの絵、なんだか好き。なんなら、この日ここで見た絵の中で、一番好きかも。この二人、必ずしも母娘には見えず、適度に冷たい感情が見えるような気がするところがよい。

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モネの睡蓮の池と、そして、黄昏のヴェネツィア。色の移り変わりがエキセントリックなほど激しいのに、優しくて美しい。

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ピサロの絵なのだけど。望遠レンズのようだ、と思った

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コローの描く森、好き

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ルノワールの描く風景って、これまであまり記憶に残っていなかったかも。切り取り方は観光地のスナップ写真のようではあるけれど、この光を見てみたい、と思った。

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セザンヌのサント・ヴィクトワール山。正直、うまいのかどうかよくわからないのだけど、やたらこの山を描く人だという印象はあるよね

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円山応挙ブリヂストンって日本美術も持ってたんだ。

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有田の磁器。状態のいいのを持ってるなあ。

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 パウル・クレーの特集展示をやっていた。──うーん、正直、よくわからない。だけどいくつか、妙に気になる絵がある。

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『庭園の家』

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『水の中の家』。

 自分を取り巻く小さな世界が穏やかならんことを願う気持ち、のようなものを感じた。──騒がしい印象の絵もあるんだけどね。

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 2時間弱の間、堪能して、おなかいっぱいになった。もっと手軽に来たい美術館だ。

ロンドン・ナショナルギャラリー展 @国立西洋美術館 8/28

 今年の前半に中止になったり延期になったりしたイヴェントを、取り返しているような流れになっている、今日この頃である。実に約半年ぶりに、上野の美術館に足を運んだ。これも日時指定制チケットが必要ということになっている。

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国立西洋美術館ロンドン・ナショナルギャラリー展

 この展覧会のスマートフォンチケットは、イープラスのアプリのインストールが必須になっており、余計な手間がかかった。新型コロナ以後、日時指定制が盛んに導入されていることもあって、美術展示の分野でも電子チケット化が進んでいるが、特定のプレイガイドのアプリが必須というのは、悪手ではないかなあ。

*

 ものすごく正統派な展示で、イタリア・ルネサンス、17世紀のオランダ絵画、…といった区分で進んでいく。

 フランス・ハルスの、『扇を持つ女性』。レースの微細な描き方に見入る。
Frans Hals - Portrait of a Woman Holding a Fan - WGA11135
(via Wikimedia Commons)

 ワウウェルマンの『鹿狩り』(1665年)。遠近がごちゃまぜなので違和感が…
Philips Wouwerman - A Stag Hunt (c.1665)
(via Wikimedia Commons)

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 スペイン絵画のコーナー。

 フランシスコ・デ・スルバラン『アンティオキアの聖マルガリータ』。べた塗りの感じはどことなくアニメっぽさがある。
Francisco de Zurbarán 047
(via Wikimedia Commons)

El Greco 016
(via Wikimedia Commons)
 躍動感! エル・グレコって1600年頃の画家なのだけど、同時代の画家とはタッチが明らかに異なるのがすごいよね。

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 やっぱりよかったのは最後のフランス近代絵画のコーナーかな。

Claude Monet, The Water-Liliy Pond (National Gallery, London)
(via Wikimedia Commons)
 モネの睡蓮。もう、なんと言うのだろう…絶品。うっとりしてしまうね。この人の描くこの池にしかない空気が、立ち上がっている。

 ゴッホの『ひまわり』が最大の目玉作品だ。

Vincent van Gogh - Sunflowers (1888, National Gallery London)
(via Wikimedia Commons)

 ゴッホのひまわりは、全部で7枚が知られていて、1枚は神戸の空襲で焼けてしまって現存しないそうだが、ぼくは2014年にロンドンのナショナル・ギャラリーに行ったときに、そこ所蔵の1枚と、アムステルダムの1枚がちょうどロンドンに来ていて、2枚並んで見られたという、運のよい機会があった。そして新宿の損保ジャパンが持っているもう1枚をあわせて、3枚見たことがあることになる。──しかし、アムステルダムと損保ジャパンの2枚は、ロンドンのこのひまわりのセルフコピーなのだそうだ。たしかに同じ花瓶の同じ様子の花を描いた絵に見えるが、わりと印象が同じではないのはなぜだろうか。損保ジャパンの方は、絵の具がもっと盛られていて、立体的な迫力が強かったような記憶があるが、どうだったっけ? あちらも新しい美術館がオープンしたから、近いうちに行ってみなくちゃいけないなあ。

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 国立西洋美術館、常設展も一巡した。

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中世の人は、そんなにしょっちゅう、石で人を殴り殺してたんですかね…

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アレキサンドリアの聖カタリナ』

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ダンテ・ガブリエル・ロセッティの、たくましい腕の女性

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モーリス・ドニ『ロスマパモン』。強い光と影の感じが好き。

東京国立近代美術館の新版画 8/22

 東京国立近代美術館、ピーター・ドイグ展のあと、コレクション展も一巡した。明治以後のいわゆる“新版画”がまとまって展示されていた。

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 鮮やかな色合いで、目を見張る。これはすごい。小原古邨(祥邨)という名前を初めて知った。花鳥画を中心に活躍した絵師だそうだ。

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 笠松紫浪、そして川瀬巴水。グラデーションがきれい。明治から戦前の、こういう美しいものが、ちゃんと残っているのだなあ。

「ピーター・ドイグ展」@東京国立近代美術館 8/22

 東西線竹橋駅から歩いて、東京国立近代美術館へ。

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 夏の盛り、お濠の一面に水草が覆っていた。

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東京国立近代美術館ピーター・ドイグ展

 ピーター・ドイグとはスコットランドの現代画家で、カリブ海トリニダード島で暮らしたこともあるそうだ。強い光に焼かれたような乖離感が印象に残った。

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 乾いた空気と、まぶしい光

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 人ならざるものが現れる…?

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 乖離感が極まって、人間がついに透明(?)に…。

「幻想の銀河 山本 基×土屋仁応」@ザ・ギンザ スペース 8/22

 銀座のアートスペースでの展示。銀座五丁目の地下室に下りる。

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 土屋仁応という人の名前は、以前に東京都美術館で見た、なめらかな架空の動物の木彫像が印象に残っていた。一方、山本基は、塩でドローイングやインスタレーションを作っているアーティストだそうだ。

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厳しい寒さの土地を連想させる。そこに、かよわい生き物たちが…

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これが塩で描かれているのだそうだ…

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地下室にこんな虚空が広がっていることに、どきどきしてしまう。

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それにしても、この人の木彫は本当にすごい。架空の生き物が、妖しく、美しい。

ヨコハマトリエンナーレ2020 @横浜美術館、プロット48 8/16

 3年に一度のこのアートイヴェント、今年も開催された。だが、横浜美術館への入場は日時指定制チケットということになって、だけどそういうのって苦手なんだよね…。なんとなく見ていると、土日の日中の時間指定チケットは、前日までには、ほぼ捌けているようだ。休日の予定なんて特に立てずに、思い立った時に出かける、というやり方でぼくはずっと暮らしていたのだけれど、そういうのが通用しない時代になってきた。──だが、日曜日の朝8時半頃に、ふと思い立って見てみたところ、当日の昼12時半の時間指定チケットに空きがあったので、行くことにした。

ヨコハマトリエンナーレ2020

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横浜美術館が何かに包まれている。SFアニメに出てくる光学迷彩を連想した。──工事中かとも思った(笑)

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 正面の巨大空間いっぱいに、ニック・ケイヴ『回転する森』。モビールがくるくると回っていてとてもきれい、だけど、中にはピストルの形をしたものも混じっている。──きらきらした、かわいげな世界に、暴力が隠されている。

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 ちょっとぐっと来てしまったのが、この、エリアス・シメという人の作品。

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これ、ぱっと見で何かわかる人は少ないかも。PCのキーボードですね

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うわ…

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この一面の壁は…

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撚りあわされた電線。

 この人はエチオピアの人で、世界を覆っていくテクノロジーの残滓で、こういう作品を作っているらしい。

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 横浜美術館の展示で一番「ヤバいな」と思ったのはこれだったかも…

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 触っていいようですが、触るなら消毒液で手を…ということになっていた。

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 地獄だ、と思ったのはこの部屋。母親や大人が子供を叱る台詞が、延々と流れているのだ。

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 キム・ユンチョルの『クロマ』は、毎時30分から15分間、点灯するそうだ。光っていないとただの金属のうねうねした塊なのだけれど、光り出すととても美しい。無数のポリマーが虹のような色に光る。一つ一つの部品は機械的に微細な動きをして、表面の色も変化していく。

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 横浜美術館の裏口から出て、炎天下を高島町の方向に歩き、“プロット48”という会場(アンパンマンミュージアムの跡地だそうだ)にも行ったけれど、…こっちはちょっと、やりたい放題感が強かったかな。ボコ・ハラムの襲撃から立ち直って学校生活を送るナイジェリアの女の子たちの映像が、印象に残った。──見て回りながら午後いっぱいを過ごし、新装開店のようになった根岸線桜木町駅の中華レストランで軽く食事をしてから、帰宅。新しい出口ができたり、ホテルメッツが建ったりして、桜木町駅、いつの間にかちょっと変わったのだね。

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 今回のヨコハマトリエンナーレ、思ったのは、映像作品が多すぎるということ。かなり長時間のものが多く、全部見ることはそもそも想定されていないみたいだし、別に全部見てやろうなどとはこちらも思っていないのだけれど、これはもはや映像インスタレーションというよりもしっかりしたストーリーのある映像作品ではないのか、ここで“展示”することが最適なのかどうか…と思うものが多かった。この日ぼくが、おそらくかなり大部分を見てものすごく強い印象を持ったのは、パク・チャンキョン『遅れてきた菩薩』、あと…名前を忘れてしまったがもう1作品だった。映像作品は、何らかの方法でインターネット上で展示するような方法をとらないのかな。チケットを購入して来場した人は一定の期間見られる、というような方式は可能だと思うんだけど。