天龍寺はせっかくだからお堂にも上がろうと思っていたが、なんとなく北門まで歩いてきてしまった。ここから出ると、竹林の道である。
観光シーズンには通勤ラッシュのようになりかねないこの道だが、この日もそれなりに人はいたけれどまだなんとか歩ける程度だった。
そういえば、と思い立って、竹林の道を少し奥に歩き、大河内山荘庭園に行った。
ここは、竹林の道の突き当りに入口があるのは昔から知っていたが、一体いかなる場所なのか知らなかった。なんでも、昭和の俳優である大河内傳次郎なる人物の別荘だったところだそうだ。
狭い散策路を上っていくと、高台の別荘が現れる。
京都の街を望む、すばらしい場所だ。こんな場所に別荘を持ってみたいものだなあ…
この奥が、保津川の渓谷。そんなところまで登ってきてしまった。おそらくこの生け垣の向こう側に嵐山公園の園路が通っていると思われる。ぼくも歩いたことがあるが、違う庭園が隣接しているとは知らなかった。敷地が絶妙に区切られて、視界から隠されているようだ。
美しい。手入れが行き届いているし、人が少ないのもよい。こんな良い庭があるとは、蒙を啓かれた感じであった。悠揚としたすばらしい庭だった。
園路に敷かれた瓦、こういうところも手が込んでいる
なお大河内傳次郎とはこういう俳優だったそうだ
入場料の1,000円には、茶店でのお抹茶とお菓子がついている。歩き回って疲れたところで休憩して、山荘を辞した。
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ちょっと欲張って、竹林の道から小倉池沿いの道をさらに歩いて、祇王寺に足を運んだ。──祇王寺は、平家物語に出てくる白拍子の祇王が平清盛に捨てられて出家して余生を過ごしたという伝承のあるところ。このあたり、今は住宅地が迫っているけれど、京都の西の山沿いで、夕方になると薄暗く寂しい土地である。祇王や平清盛の像などがあるが、ここも、苔が見事な庭である。
自分のところの庭のかけひに水を流して以来、こういうのが気になっている。
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夕暮れの二尊院の前で休憩してから、歩いて嵐山駅まで戻り、嵐電で四条大宮まで出た。──今回の投宿先は、四条烏丸の近くにある、某鉄道会社系のビジネスホテルだ。ここ、ぼくは2012年に一度宿泊したことがあり、その後は関西のホテル相場が上がっていくのに乗って高い値段をつけていたので敬遠していたが、今回はコロナ不況のために安値で泊まることになった。宿泊者データは残っていたらしく、「以前にもご利用されたことが?」と訊ねられた。
錦市場の商店街のシャッターには伊藤若冲の絵が描いてある。そういえばこのあたりにゆかりのある人だったね
烏丸通沿いの、レンガの洋館。大正時代の辰野金吾建築で、旧北國銀行京都支店なのだが、DEAN & DELUCAが入っていて、おしゃれな感じになっていた。