night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

7/7(日)竹田から京都へ

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 竹田駅

 食事でもしようかと思っていたのだが、竹田駅13時44分の播但線普通列車がある。これの次は14時23分の特急『はまかぜ』、その次の列車はさらにその1時間後である。城跡に登っただけで竹田の町で何も過ごさないのはどうしたものか、とも思ったが、特に名物があるようでもなく、やってきた気動車に乗り込んで竹田を離れた。

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 普通列車和田山行きである。1両だけの気動車だったが、これまたよく空いていた。乗車券は、神戸から姫路・和田山・京都経由で横浜市内まで買ってある。和田山から先は特に何も考えていなかったが、福知山行きの普通列車が接続するので乗った。

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 見たことのない色の車両だ。113系には違いないが、どうやら魔改造されたもののようで、無理やり運転台を取り付けられたような感じの車両だった。

 福知山から先は、さすがに普通列車ではなく、特急で京都に行きたい。というか、この先、結局は京都から新幹線で帰ることになるのだから、新幹線乗継ぎで買えば特急料金は半額である。1時間以上乗っても自由席なら500円足らずで済むので、特急に乗らない法がない。福知山は、大阪方面の福知山線と京都方面の山陰線が交わり、城崎や天橋立から来る列車がそれぞれの方向に向かう、ジャンクションである。福知山では8分後に特急『はしだて4号』京都行きが出るので、ここで新幹線乗継ぎ特急券を買ってしまうつもりで、急いで改札を出て、指定席券売機に並んだ。とは言え、京都からの新幹線の時刻を決めているわけでもなかったし、京都まで自由席・新幹線は指定席、という買い方が、券売機の操作方法がよくわからなかったこともあって、とりあえず全区間自由席で特急券を買って、特急『はしだて4号』に飛び乗った。隣のホームの大阪行き特急『こうのとり』のほうが混んでいるようだった。

 特急『はしだて』は綾部で東舞鶴から来る特急『まいづる』を連結して、京都に向かう。このあたりの沿線風景は山紫水明でありのどかであるが、車内では結局ほとんど寝てしまい、気付くとほどなく嵯峨野の踏切を過ぎて、列車は洛中に入って行った。

*

 京都駅の31番線に着いたのは16時07分だった。かなり疲れており、ホームの付け根あたりにあるうどん屋で食事してから、ふらふらと烏丸口の改札を出た。人の多さにぐったりしてしまう。

 涼しい場所で休憩したい、と思って、やって来たのが東本願寺

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 人心地を取り戻してきた

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 JR京都伊勢丹の上層階にある、美術館「えき」KYOTOでは、“長坂コレクション ヨーロッパ絵画展 ~バロックから近代へ~”を開催中。
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美術館「えき」KYOTO

 バロック絵画はあまりよくわからないなあ、などと思いながらなんとなく通り過ぎる。ロココ絵画や、19世紀後半になってからもわりとアカデミックな作風の画家の絵に、よいものがあった。気になったのは、ハンス・マカールト(工房)の『恋人を待つ』や、エルンスト・ベルガ―の『庭で編み物をする女性』など…。

 さて、そろそろ帰らなければならない。この、京都駅で、帰りの新幹線に乗らねば、という瞬間、毎度ながら本当に心が重くなる。──八条口JR東海ツアーズの窓口で、自由席特急券から差額を支払って指定席に乗変をかけて、18時26分の『のぞみ250号』に乗った。東に向かうにつれて天気が悪くなっていった。

7/7(日)神戸から竹田城跡へ

 神戸に泊まった翌日は、晴れて蒸し暑い日だった。

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 すでにクマゼミがシャワシャワとないている。

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 湊川神社

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 楠木正成の戦没地と、墓所がある。本当に場所が特定されているのだろうか、とも思うが、このあたりが南北朝の古戦場だったわけだ。

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 JR神戸駅

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 神戸駅みどりの窓口で、乗車券と特急券を買い、10時01分発の特急『はまかぜ1号』浜坂行きの自由席に乗った。『はまかぜ』とは、大阪から城崎温泉方面に向かう特急だが、福知山線ではなく、姫路から播但線を経由する、珍しい列車である。車両はまだ新しめのディーゼル特急で、すべるように走るが、たった3両編成で、自由席は先頭の1両だけにもかかわらず、がらがらに空いていた。

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 淡路島が見える

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 姫路で多くの乗客が乗ってきた。ここから進行方向が変わり、播但線に入る。のどかな車窓になってきた。

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 寺前までは一応、電化されており、あずき色の電車が見える

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 11時43分の竹田で降りた。観光客が多いのではないかと想像していたが、そうでもなかった。

 ここに来たのは、“天空の城”として名高い、竹田城跡に登ってみようというつもりである。観光案内所でパンフレットなどをもらい、踏切を渡って、駅の裏の小さな公園で休憩したら、正午のサイレンが鳴り響いた。

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 鯉が泳ぐ水路に沿って、寺院が三つほど並んでいる。たしか真宗真宗・浄土宗という組み合わせだったと思うが、西日本ではわりと珍しい組み合わせではないかな。

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 寺院にかけられていた破れ太鼓。なんだろう、これは

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 いよいよ登山道に入る。たいした距離ではないはずなのだが…

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 急勾配に、完全に息が上がった。城跡の料金所に着くまで30分程度だったが、そこまででひどく消耗し、汗びっしょりになった。料金所のおじさんに「おつかれさまです」と声をかけられる。たぶんひどい顔をしていたのだろう。

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 眼下に竹田の町が見える

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 室町時代に築城され、関ヶ原の後に廃城になった城で、標高300メートル余りの山上に、南北400メートルもの範囲に石垣が巡らされている。たしかにこれはものすごい規模の城跡だ。しかし、こんな山の上に城をつくっても、水場もろくにないだろうし、ここで戦や籠城などできるものだろうか?

 登山に満足して、別の道から下山する。

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 直滑降みたいに下りていく道で、これまた大変キツい。

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 土俵のある不思議な神社の境内に下りてきた。表米神社というそうだ。

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 竹田の集落に戻ってきた。

NANA MIZUKI LIVE EXPRESS 2019 @ 神戸ワールド記念ホール 7/6

 水樹奈々さんのライヴツアーの初日に行ってきました。新横浜発12時49分の東海道山陽新幹線『のぞみ33号』博多行きに乗って、15時17分に新神戸で下車。天気の悪い首都圏から、西に来ると晴れ間がのぞき、新神戸の駅からは下り坂の向こうに神戸の街並みと対岸の山並みがくっきり見えます。──新幹線の中で調子に乗ってビールを飲んでいたら少し飲みすぎてしまい、少し休憩してから、地下鉄で三宮へ、そしてポートライナーに乗ってポートアイランド市民広場駅に向かいました。

 今日の会場は市民広場駅の西側にあるワールド記念ホールですが、東側の広場を使って物販が行われていました。わりと平和な物販で、行列ゼロでTシャツを購入できました。

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 ワールド記念ホールは周囲に余裕がないので、ここで物販をやっているらしい

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 ここで初めて、今回の“LIVE EXPRESS”の“EXPRESS”というのが、運送屋さん的なニュアンスだったことを知る。

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 ワールド記念ホールポートアイランドホール)、初めて来ました。鉄の棺桶みたいな建物だ

 ぼくの座席はアリーナの後方。狭いパイプ椅子がぎゅうぎゅうで、隣の人がかなりガタイのよい人だったので、ありゃりゃ、と思いましたが、気の良い人だったので適度におしゃべりしながら、開演。

NANA MIZUKI LIVE EXPRESS 2019

*

・WHAT YOU WANT
・Poison Lily
・Bring it on!
・What cheer?
・Heartbeat
・《チェリーボーイズコーナー》
・REBELLION
ETERNAL BLAZE
・《企画コーナー》cherish
SUPER GENERATION
・Take a chance
・《チームヨーダコーナー》
・SUMMER PIRATES
・HIGH-STEPPER
・Take a shot
・PROTECTION
・《映像コーナー》
・METANOIA
・TESTAMENT
MASSIVE WONDERS
・suddenly~巡り合えて~
・Astrogation
・サーチライト

-encore-
・No Limit
・時空サファイア
・Born Free
・POWER GATE

*

 今回の企画コーナーは、「30歳を過ぎてからライヴで歌っていない曲」ということで、この日は『cherish』でした。LIVE FORMULA以来だそうな。序盤で『Bring it on!』が来たときもかなり興奮しました。…LIVE FORMULAはぼくが奈々さんを知る前のライヴですが、映像で奈々さんファンになるきっかけになったライヴでした。ツアー初日で何が来るかわからない状態でライヴに参加するのって、観客の反応も新鮮だし、やっぱり気持ちいいですね。

 今年は「サンキューイヤー」だということで、「サンキュー!!」と開き直っていた奈々さん、なんかよかったです(笑)。また、なか卯のCMの話から、“親子丼イタリアン”という謎メニューを試食した話で、…「おいしいの! 回し者じゃないよ! あ、回し者なのか(笑)」と混乱に陥っていたのが可笑しかったですね。

 映像は、マイケルという謎外国人のおっさんと運送屋さんに扮する奈々さん。なんか今回の映像にはオチがなかったような…(?)。そこから出た大物セット(笑)には、毎度ながらちょっと半笑いになってしまいました。トロッコのときには、アリーナ後方のぼくのほぼ目の前に奈々さんが!!

 ──この日は、隣の人との間が狭くてライヴにあまり集中できなかったという面はあったものの(正直、この狭さならアリーナなんか下りたくない、スタンド席のほうがいいよ、と思っていた)、それでも、この日のライヴ中ずっと、自分の顔が笑っていた自覚はあって(苦笑)。そう来るのか!という驚き、ツアー初日ならではの楽しさを、満喫していました。

*

 21時ちょうどに終演。ポートライナーで三宮に戻りましたが、この日、特に深く考えず湊川公園あたりにホテルを取ってしまっていたぼくは、阪神電車高速神戸駅に下りて…、

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 長い地下通路を歩き、

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 地上に上がったら、福原の怪しい街を突っ切って歩き、いつものビジネスホテルチェーンにたどり着きました。すでに22時半頃で、近くのラーメン屋で適当に食事して、ホテルにチェックイン。

6/29(土)国立西洋美術館

 目黒から上野へ。国立西洋美術館では、『松方コレクション展』を開催中。

国立西洋美術館国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展

 上野の西洋美術館が、戦前の実業家松方幸次郎が蒐集した絵画が日本に返還される際に返還の条件として開設された美術館であることは知識としては持っていたが、その松方コレクションの中にゴッホの『アルルの寝室』があったとは知らなかった。

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 オルセー美術館で見た『アルルの寝室』

 オルセー美術館からこの展示のために来日している。敵国人資産として没収されていた松方コレクションが、戦後に返還されるとき、この作品を含む、特に重要なものと判断された20点ほどは、返還されなかったのだそうだ。──うーん、そういうことがあったのか。やはり、特にルノワールなんかは、わりと、ここにあるのは多少微妙なルノワールだものねえ

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 常設展側にある、多少微妙なルノワールたち

 2016年にモネの睡蓮の絵が新たに発見され、それが国立西洋美術館に寄贈されたそうで、展示されている。とても大きな作品だが、上半分が無残に剥落しているものの、残っている部分の色合いは鮮やかだ。そしてこれをディジタル復元した映像というのが、会場のエントランスの前で流れている。最近はこういうことをやってしまうんだなあ。なんでも、この作品は白黒写真のガラス乾板が残っていて、現存部分の色彩と比較し、描かれた時期の近いモネの他の作品と比較することでモネの描き方の特徴も取り入れながら、復元したという。

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 この作品がきれいに残っていたらすごかっただろうなあ

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 常設展側では、一部を使って『モダン・ウーマン フィンランド美術を彩った女性芸術家たち』が開催中。

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 マリア・ヴィークの『ボートをこぐ女性』。この明るさ、すごくいい

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 ヘレン・シャルフベック『シルクの靴』、これはパネルですが、ちょっといいよね、これ

キスリング展 @東京都庭園美術館 6/29

 目黒駅から歩いて、久しぶりに東京都庭園美術館に行った。

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 この、微妙にカーヴした邸宅のアプローチ、好きだなあ

東京都庭園美術館>キスリング展 エコール・ド・パリの夢

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 キスリングというポーランド出身の画家、時代的には第一次大戦から第二次大戦にかけて、パリで活躍した人で、藤田嗣治とも親交があったりした人だ。独特の…、ぬるりつるりとした妖しい女性像を描く人で、好みがはっきり分かれる画家だとは思うのだけど…。なんというか、色がうるさいのだ。補色とかお構いなしに背景もわりに濃い色で塗る。だが、それがとても奥行きを出していて、不思議に見入ってしまうこともある。

 ぬるりとした女性像は、見開いたようなアーモンド形の目に、色をべた塗りした陰影の乏しい平板な画風だが、表情の造形がうまい絵とそうでもない絵の、差が激しい気がする…。展覧会ポスターになっている金髪ショートヘアーの女性像(『ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)』)は、たしかにうまく描けてる方の作品だ。だがこの絵は、黄色いタータンチェックのワンピースドレスを着た金髪の女性の、背景にはどっぷりした緑、という、ものすごいうるささがあって、なんでまたこういう描き方を…と思ってしまう。

 実はぼくはキスリングという名前は、以前に何かの展示で目にしてからずっと覚えていて、今年はキスリングの企画展があるということで期待していたのだけど、…ちょっと微妙だったかなあ…と思いながら一巡していた。──だが、これはすごい、と思った絵が。ヴェールをかぶった女性が少し斜めの角度で、淡いピンク色の背景に浮かび上がる、『ブルターニュの女』。これ、もしかしたら最高傑作なのではないか、とすら…。さらにもう一つ驚いたのは、これを持っているのが“陽山美術館”という、日本の鹿児島県にある私設美術館だということだった。そんな美術館があるとは知らなかった。

 とは言え女性像しかないわけではなく…。精緻に描き込まれた港の情景や、また、花の絵もいくつもあった。花瓶に山盛りの花の、花弁の一枚ずつくらいに絵の具が盛り上げられている、ものすごい力の入った絵があって、見入ってしまったが、個人蔵の作品だそうだ。──まだまだ現代に近い時代の画家であり、今回の展示に集められたのは個人蔵のものも多いようで、ネット上ではあまり情報が出てこない作品が多い。このキスリング展は、この庭園美術館のあと、1年以上も各地を巡回するようだ。
 
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 雨が降りそうで降らないけどときどき降る、そんな一日。日本庭園も緑が濃かった。

花菖蒲と紫陽花2019

 今年もこの季節。この時季の花が一番好きかも。

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 ヒメジョオンもこれだけの大群落になると凄味がある。

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 ほたるぶくろはひっそりと咲く。

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 ねむの木の花を見ると、熱帯の外国に来たような気がする。

 今年はまだしばらく梅雨が続きそう。

「塩田千春展 魂がふるえる」@森美術館 6/21

 ボルタンスキーを見に行ったあと、金曜日の夜、余勢を駆って、六本木ヒルズに上った。今夏の六本木は、ボルタンスキーと塩田千春が、国立新美術館森美術館で激突しているのだ。──こんなことってあるか?!

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森美術館>塩田千春展 魂がふるえる

 塩田千春というアーティスト、ぼくは2013年に旅行先の高知県立美術館で偶然に展示を見て、強烈な印象を持った。糸でがんじがらめになった部屋、赤い液体が流れるチューブで覆い尽くされたステージ、など…。強い負の圧力を感じる表現なのだけれど、今回の森美術館のこの展示は、なぜかものすごく混んでいた。インスタ映え…なのかな…??

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 これは…、ヤバいほうの離人感だ。

 変な話だが、庵野秀明監督の映画を連想した。…廃工場に赤い傘がたくさん散らばる映画があったじゃない!

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 …と、文章にしてしまうと、言っていることは比較的オーソドックスなのだけれど…、塩田氏は、癌の闘病を経て、今回の展示を作り上げたという。

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 たくさんの旅行トランクが、天へ昇って行く。

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 人の不在、モノだけが召されていくイメージ。ぶら下がったトランクがゆらゆらと揺れて、ぶつかって音を立てる。

 強い負の力、でも鮮烈に美しい。不思議な展示なのは確かだ。──金曜の夜に2つの展示をはしごしたのは、なかなか疲れたけれど、充実感があった。

「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime」@国立新美術館 6/21

国立新美術館クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime

 フランスの現代アーティスト、ボルタンスキーの大規模な個展が始まった。東京では、2016年に庭園美術館で開催されて以来だ。開幕早々に、金曜日の夜間開館を目がけて行ってきた。来場者はほとんどいない。作品にキャプションはついておらず、入場のときに、会場のマップと、タブロイド判の作品解説が渡される。だが、それを会場内でバサバサと開いて読むには、場内は薄暗すぎる。

 入ってすぐに、吐き続ける人の映像が流れ、げえげえという嘔吐の音が会場に響き渡っている。これは強烈…、地獄だ。そして、たくさんの見知らぬ人や家族の、コントラストの強いモノクロームの写真たち。──イコンのように壁に掲げられ電球で照らされた、誰か知らない人の顔たちは、しばらく立ち尽くしてしまった。“死後”のイメージだと思った。にもかかわらず、乱雑に結び付けられている電気コードは、本来はただ単に電球をつなぐだけのためのものだろうけれど、「つながっている」と思い、なぜかしらそのことに胸を打たれた。

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 クリスチャン・ボルタンスキー、ぼくは瀬戸内の豊島で『心臓音のアーカイブ』を体験したのが最初だったが、その心臓音に合わせて電球が明滅する部屋もあった。ただここでは音量はだいぶ控えめにされていたと思う。そして、投影される見知らぬ人の顔をかき分けて進むと、影の劇場の廊下の向こうに、黒い“ぼた山”が現れる。ここから撮影可。

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 積み上げられているのは、黒い服。そして周りには、同じように黒いコートをまとった、人形…いやこれはどう見ても人ではない。だが、それが、不意に語りかけてくる。

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「聞かせて、光が見えた? (Tell me, did you see the light?)」

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「教えて。お母さんを残していったの? (Tell me, did you leave your mother behind?)」

 小さなスピーカーと、おそらく、近くに人が来たことを検知するセンサが仕込んであるのだと思うが、…これ、泣いちゃう人いるんじゃないかな。ぼくも不意を突かれて、ちょっと泣きそうになったもの…

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 『アニミタス』のヴィデオ展示。2016年の東京都庭園美術館では青空の荒地だったが、今度は真っ白な雪原で、ひたすら暴風に煽られ続ける鈴の群れ。その場にいたらものすごく寒いはずなのだけど、その温度も風も、何の感触もなく、ただ、たくさんの鈴の音だけが響く。

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 海岸の風を受けて、異様な怪物のような唸り声を上げる装置の、ヴィデオ・インスタレーション

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 来世…(ここでこう漢字を使われちゃうと、ちょっと可笑しくなってしまう) これ、青と赤の電球が使い分けられているのだが、カメラの性能のためこんなぼんやりした色の光に写ってしまった。

 たくさんの電球が置かれている『黄昏』は、毎日少しずつ消えていくのだそうだ。──さながら地獄めぐりであった。だが、一巡し終わって、思ったのは、ボルタンスキーという人は、エキセントリックなアーティストでもなんでもなく、実はわりとふつうの人なのではないか、ということだった。人が不可逆的に離れ、消えていくということを、大事にしなければならないと思っている、…ごくふつうの人なのではないか、と。

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 2016年に東京都庭園美術館で開かれたボルタンスキーの展示に行った時の記事。
jawa-jawa.hatenadiary.jp


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 国立新美術館の前には、吉岡徳仁氏の、ガラスの茶室が作られていた。これ、前に京都の将軍塚で見た。でも、ここに置くと…。国立新美術館自体が、どうかしちゃった規模の、巨大なガラスの茶室みたいなものだから…。

読書&査収音源リスト(2019年3月~5月)

▼承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱(中公新書)/坂井孝一
承久の乱-真の「武者の世」を告げる大乱 (中公新書)

▽幻の女(ハヤカワ・ミステリ文庫)/ウィリアム・アイリッシュ、黒原敏行(訳)
幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 米国の古典サスペンス小説。面白かった。アイリッシュの作品を読むのは、小学生のころに子供向けにリライトされたものを読んで以来だと思う。ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)は、ずっと気になる名前だった。

▽レッド・アトラス 恐るべきソ連の世界地図/ジョン・デイビス、アレクサンダー・J・ケント、ナショナル・ジオグラフィック(編集)、藤井留美(訳)
レッド・アトラス 恐るべきソ連の世界地図

▼やがて君になる(7)/仲谷鳰
やがて君になる(7) (電撃コミックスNEXT)
 『やがて君になる』は、昨年のアニメが終わってからは連載の月刊誌を追ってしまっている。

▼やがて君になる 佐伯沙弥香について(2)(電撃文庫)/入間人間
やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) (電撃文庫)

▼バビロンの秘文字 上・下(中公文庫)/堂場俊一
バビロンの秘文字(上) (中公文庫) バビロンの秘文字(下) (中公文庫)
 これは抜群に面白かった。カーチェイスのあげく、攻撃用ヘリがオーレスン・リンクに、どかーん!(^^

▼全世界史 上・下(新潮文庫)/出口治明
全世界史 上巻 (新潮文庫) 全世界史 下巻 (新潮文庫)
 歴史好きな実業家が書いた本だが、それほど驚くような解釈はなかったような。

▼みなみけ(1~3)(Kindle版)/桜場コハル
みなみけ(1) (ヤングマガジンコミックス) みなみけ(2) (ヤングマガジンコミックス) みなみけ(3) (ヤングマガジンコミックス)
 Kindleの無料キャンペーンのときにダウンロードした。

▼世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社文庫)/高野秀行、清水克行
世界の辺境とハードボイルド室町時代 (集英社文庫)

▼乙嫁語り(11)/森薫
乙嫁語り 11巻 (ハルタコミックス)

▼ゲイルズバーグの春を愛す(ハヤカワ文庫FT)/ジャック・フィニィ、福島正実(訳)
ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)
 古典SFの短編集。『愛の手紙』の結末に、しばらく呆然とした。

▼カムパネルラ(創元SF文庫)/山田正紀
カムパネルラ (創元SF文庫)

◆三国志(01:序/02:桃園の巻/03:群星の巻/04:草莽の巻/05:臣道の巻/06:孔明の巻/07:赤壁の巻/08:望蜀の巻/09:図南の巻/10:出師の巻/11:五丈原の巻/12:篇外余録)(青空文庫)/吉川英治
 スマートフォンで青空文庫を読んでいた。やはり漢字の表示が弱点であり、「公孫*」という調子で、誰だっけ、となってしまうが、暇つぶしのためだけなら、まあいいか、と。とにかく血なまぐさく、簡単に人がばったばったと斬り捨てられるので呆れてしまう。そして赤壁の戦いより後は、どうしても話がダレる。そんな中で南蛮征伐なんてのは、ある意味でほっこりエピソードなのかも知れない。だいぶ流したけれどそれでも1か月くらいずっと読んでいた。──劉備玄徳の「なお考え中である」というセリフが、ちょっと面白かった。吉川英治三国志は、要するに戦時中の日本の通俗小説であるわけだが、その時代の日本語にすでに「考え中」という言い方があったのね。

▽イーハトーブと満洲国 宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷/宮下隆二
イーハトーブと満洲国―宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷

▽動物農場(角川文庫)/ジョージ・オーウェル、高畠文夫(訳)
動物農場 (角川文庫)

▼サマー/タイム/トラベラー (1、2)(ハヤカワ文庫JA)/新城カズマ
サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA) サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)
 『ゲイルズバーグの春を愛す』つながりで、再読。

▼響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編(宝島社文庫)/武田綾乃
響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 (宝島社文庫)
 ユーフォニアムシリーズ、久美子たちは3年生になって、ついに最後の大会へ…。このシリーズをここまで追っかけてきて、満を持しての大団円を期待しないわけがないけれど、もはや部活が畸形的な進化を遂げていて、体育会系部活のあり方に懐疑的なぼくは、どうにもこうにも、違和感が…。高坂さんはどう考えても指導者肌じゃないよね。どーなる北宇治。

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▼TryAgain(初回生産限定盤)/TrySail
TryAgain (初回生産限定盤) (CD+Blu‐ray) (特典なし)

▼NANA MIZUKI LIVE GRACE -OPUS III-×ISLAND×ISLAND+ /水樹奈々
NANA MIZUKI LIVE GRACE -OPUS III-×ISLAND×ISLAND+ [Blu-ray]

▼NANA CLIPS 8/水樹奈々
NANA CLIPS 8(Blu-ray)

▼ログライン(初回生産限定盤)/夏川椎菜
ログライン(初回生産限定盤)(Blu-ray Disc付)
 TrySailの夏川さんのソロアルバム。歌のうまい人だとは思っていたけど、歌い方の幅の広さに感心する。好きな曲は『キミトグライド』です。

▼プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」全曲(紫禁城公演)
トゥーランドット*歌劇 [DVD]
 1998年、北京の紫禁城にセットを組んで上演した、空前の公演の模様。

ギュスターヴ・モロー展 @パナソニック汐留美術館 6/16

 新橋駅から歩いて、パナソニック留美術館へ。ギュスターヴ・モロー展、上がってみたら行列ができていて、“30分”と書いてある。30分と言うなら実質20分くらいだろう、と思ったら、たっぷり35分ほどかかった。ここはわりと厳密に館内の滞留人数を数えて入場規制しているようだった。ここが30分だと言ったら本当にそれ以上かかる、覚えておこう(笑) 行列には若い人が多く、ほとんどはまともそうな人だが、並びながら壁に足を突くなど不快な態度の人もいる。モロー展、いったいなにがあったのだろう。

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パナソニック汐留美術館ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち

https://api.art.rmngp.fr/v1/images/17/501806?t=Zi--S3hj74asrPqfG2cDfA

 サロメやセイレーン、デリラなどの、空想上の妖しい女性を描いた絵が多い。白鳥の首を抱き寄せて口づけしちゃうレダや、連れ去られながら何とも言えない表情でゼウスを見ているエウロペ、などなど…。死体が折り重なるトロイの城壁に立つヘレネは、何にも汚されない美しさ…でもあるけれど、それは同時に、これは正直言って厄介だよなあ、なんて思ってしまった。──最後の、一角獣と貴婦人の絵は、半完成作のように、色を突き抜けて描き込まれた背景や小道具などが、逆に不思議な空間になっている。