night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

キスリング展 @東京都庭園美術館 6/29

 目黒駅から歩いて、久しぶりに東京都庭園美術館に行った。

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 この、微妙にカーヴした邸宅のアプローチ、好きだなあ

東京都庭園美術館>キスリング展 エコール・ド・パリの夢

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 キスリングというポーランド出身の画家、時代的には第一次大戦から第二次大戦にかけて、パリで活躍した人で、藤田嗣治とも親交があったりした人だ。独特の…、ぬるりつるりとした妖しい女性像を描く人で、好みがはっきり分かれる画家だとは思うのだけど…。なんというか、色がうるさいのだ。補色とかお構いなしに背景もわりに濃い色で塗る。だが、それがとても奥行きを出していて、不思議に見入ってしまうこともある。

 ぬるりとした女性像は、見開いたようなアーモンド形の目に、色をべた塗りした陰影の乏しい平板な画風だが、表情の造形がうまい絵とそうでもない絵の、差が激しい気がする…。展覧会ポスターになっている金髪ショートヘアーの女性像(『ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)』)は、たしかにうまく描けてる方の作品だ。だがこの絵は、黄色いタータンチェックのワンピースドレスを着た金髪の女性の、背景にはどっぷりした緑、という、ものすごいうるささがあって、なんでまたこういう描き方を…と思ってしまう。

 実はぼくはキスリングという名前は、以前に何かの展示で目にしてからずっと覚えていて、今年はキスリングの企画展があるということで期待していたのだけど、…ちょっと微妙だったかなあ…と思いながら一巡していた。──だが、これはすごい、と思った絵が。ヴェールをかぶった女性が少し斜めの角度で、淡いピンク色の背景に浮かび上がる、『ブルターニュの女』。これ、もしかしたら最高傑作なのではないか、とすら…。さらにもう一つ驚いたのは、これを持っているのが“陽山美術館”という、日本の鹿児島県にある私設美術館だということだった。そんな美術館があるとは知らなかった。

 とは言え女性像しかないわけではなく…。精緻に描き込まれた港の情景や、また、花の絵もいくつもあった。花瓶に山盛りの花の、花弁の一枚ずつくらいに絵の具が盛り上げられている、ものすごい力の入った絵があって、見入ってしまったが、個人蔵の作品だそうだ。──まだまだ現代に近い時代の画家であり、今回の展示に集められたのは個人蔵のものも多いようで、ネット上ではあまり情報が出てこない作品が多い。このキスリング展は、この庭園美術館のあと、1年以上も各地を巡回するようだ。
 
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 雨が降りそうで降らないけどときどき降る、そんな一日。日本庭園も緑が濃かった。