ボルタンスキーを見に行ったあと、金曜日の夜、余勢を駆って、六本木ヒルズに上った。今夏の六本木は、ボルタンスキーと塩田千春が、国立新美術館と森美術館で激突しているのだ。──こんなことってあるか?!
塩田千春というアーティスト、ぼくは2013年に旅行先の高知県立美術館で偶然に展示を見て、強烈な印象を持った。糸でがんじがらめになった部屋、赤い液体が流れるチューブで覆い尽くされたステージ、など…。強い負の圧力を感じる表現なのだけれど、今回の森美術館のこの展示は、なぜかものすごく混んでいた。インスタ映え…なのかな…??
これは…、ヤバいほうの離人感だ。
変な話だが、庵野秀明監督の映画を連想した。…廃工場に赤い傘がたくさん散らばる映画があったじゃない!
…と、文章にしてしまうと、言っていることは比較的オーソドックスなのだけれど…、塩田氏は、癌の闘病を経て、今回の展示を作り上げたという。
たくさんの旅行トランクが、天へ昇って行く。
人の不在、モノだけが召されていくイメージ。ぶら下がったトランクがゆらゆらと揺れて、ぶつかって音を立てる。
強い負の力、でも鮮烈に美しい。不思議な展示なのは確かだ。──金曜の夜に2つの展示をはしごしたのは、なかなか疲れたけれど、充実感があった。