night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

「ラファエル前派の軌跡」@三菱一号館美術館 5/4

 LFJの合間に、すぐ近くの、三菱一号館美術館へ。──連休だし、混んでいるのでは…と心配していたものの、すらっと館内に入れた。

三菱一号館美術館>ラファエル前派の軌跡

 ラファエル前派、流行っているのだろうか。今回は、主にバーミンガム美術館やリヴァプール国立美術館から作品が来ているようだ。冒頭は、ターナーラスキンなど、19世紀の英国の水彩画たちが並ぶが、バーン=ジョーンズやダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなどの作品が並ぶ部屋はちょっと素晴らしかった。この部屋は撮影可。

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 ジョン・エヴァレット・ミレイ(John Everett Millais)『結婚通知、破棄されて(Wedding Cards: Jilted)』

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 ウィリアム・ホルマン・ハント(William Holman Hunt)『甘美なる無為(Il Dolce Far Niente)』

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 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti)『ムネーモシューネー(Mnemosyne)』、『魔性のヴィーナス(Venus Verticordia)』、『祝福された乙女(The Blessed Damozel)』。ムネモシュネは好きな雰囲気です。もはやこれは耽美の暴力…。

 おお、すごい…と感心しながら見ていると、近くのおっさんが、ロセッティの描く女性を見て「キッツい顔しとんなあ」と毒づいていたので、どっちらけてしまった。困った人ですねえ

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 これもロセッティのインク画。ロセッティって、こんなやわらかい絵も描くのね。

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 アーサー・ヒューズ(Arthur Hughes)『マドレーヌ(Madeleine)』の、すっと通った鼻と、赤い髪の繊細なウェーヴにも見とれた。下の階に行っても、ジョン・ブレット(John Brett)の『リンドウの習作(Study of a Gentian)』の鮮やかさは宝物のよう。エドワード・バーン=ジョーンズは、彩色のおさえられた『三美神(The Three Graces)』、『女性の頭部』の鉛筆のスケッチなども、とても流麗。──終盤には、ウィリアム・モリスとその時代の装飾芸術のコーナーがあったが、青い透明の釉薬の中にバラの花が浮いているかのように見える凝った装飾タイルが、とても美しかった。

Edward Burne-Jones - The Three Graces, 1885

http://www.liverpoolmuseums.org.uk/ladylever/exhibitions/drawings/women/graphics/large/Girls-Head.jpg

 この展覧会で撮影可でなくても、こういった英国の美術館の有名作品は、ほとんど、インターネット上でシェアされてるのだよね。

LFJ2019 “Carnet de voyage”

 今年のLFJは、「旅のしおり」ですって。5月4日、午前中から東京国際フォーラムに行ってきました。

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ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019「ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)

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 一本目はこれ。

公演No.242 5/4(土) ホールC“マルコ・ポーロ” 11:30-12:15
『南国を旅するカプリッチョ
チャイコフスキー:イタリア奇想曲 op.45
グリンカ:スペイン序曲第1番「ホタ・アラゴネーサによる奇想曲」
リムスキー=コルサコフスペイン奇想曲 op.34
 ウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団/中田延亮(cond.)

 ウラル・フィルはLFJの常連ですが、今年は本体(?)ではなく、“ユース”が来日。あれ、格落ちした…? また、このオケは、エンヘ氏というモンゴル人指揮者が率いているそうで、プログラムにもクレジットされていましたが、来日できなくなったそうで、急遽、代わりの指揮者さんが立てられたそうです。パーンと出る金管には、さすがロシアのオケ!と感心しましたが、合わせ不足感は否めず、特にパーカッションが、学生オケかと思うくらいのレヴェル。ちょっと残念だったかも。

 終演後、B棟2階の喫煙所にいたら、自由時間になったらしいウラル・フィル・ユースの団員さんたちがたくさんやってきて、若い彼らの多くがiQOSを吸っているので少し感心しました。iQOSって、ロシアでも販売しているのですね。

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公演No.223 5/4(土) ホールB7“アレクサンドラ・ダヴィッド・ネール” 13:00-13:45
シルクロード
 カンティクム・ノーヴム(地中海沿岸の伝統楽器アンサンブル)/エマニュエル・バルドン(歌、音楽監督)/小濵明人(尺八)/山本亜美(箏)/小山豊(津軽三味線)/姜建華(二胡)

 これは、わからないぞ…(笑)。どれも、中東あたりの伝統楽器なのでしょうか? ですが、擦弦楽器が奏でて始まった冒頭の曲調は、どことなく中世ヨーロッパのようでもあり。テンポが早くなると、11拍子? のような謎のリズムになったりします。男性と女性のヴォーカルが時折入るのですが、終盤に、満を持して「まどのさんさは、デデレコデン!」(こきりこ節)になだれ込んだときは、ちょっと可笑しくなってしまいました。

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 いったん国際フォーラムを離れ、夜になって再び戻ってきました。

公演No.246 5/4(土) ホールC“マルコ・ポーロ” 19:00-19:45
ボリス・ベレゾフスキーのカルト・ブランシュ』
スクリャービン
 ・2つの詩曲 op.32
 ・ピアノ・ソナタ第4番 嬰ヘ長調 op.30
 ・4つの小品 op.51から たよりなさ
 ・2つの小品 op.57から 舞い踊る愛撫
 ・3つの小品 op.49から 前奏曲 ヘ長調
 ・ピアノ・ソナタ第5番 op.53
 ・2つの小品 op.57から あこがれ
 ・練習曲 op.42-3, 4, 5
 ・3つの練習曲 op.65
-encore-
ラフマニノフ:楽興の時 op.16から 第4番 ホ短調、第5番 変ニ長調
スクリャービン:3つの小品 op.45から アルバムの綴り
 ボリス・ベレゾフスキー(pf.)

 当日まで曲目はわかりません、という、闇鍋プログラム。──いちおう、入場時にプログラムは配られましたが、始まってみると、あ、これ、なんか違うね? という…。スクリャービンの曲なんてほぼ知らないので、とにかく息を詰めて、その神秘っぽさや、時折襲い掛かってくる爆音に、身をゆだねる時間でした。

*

 中庭でハイネケンとポテトでおなかをふくらませてから、この日最後の公演へ。ヴァルソヴィア、正直、演奏のレヴェルはあまり高くなかった…とは思いますが、気持ちのよいショパンではありました。

公演No.216 5/4(土) ホールA“コロンブス” 21:30-22:30
ショパンの青春~パリでの門出』
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ op.22
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11
 ネルソン・ゲルナー(pf.)/シンフォニア・ヴァルソヴィア/ミハイル・ゲルツ(cond.)

*

 思ったのは…、もはやLFJではオケを聴く必要はない、ということかな…。正直、それほどレヴェルが高い演奏が聴けないのですよね。合わせる回数も少ないだろうし、そりゃ、ね…。なんだかんだ言ってオケ好きだしチケットを取ってしまうのですけど。──東京駅から中央線で新宿に出て、最終の特急ロマンスカーで帰宅。

「へそまがり日本美術」 @府中市美術館 5/3

 自転車で府中へ。

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春の江戸絵画祭り へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで府中市美術館

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 評判らしく、思いのほか混んでいて、入場制限されていたので驚いた。徳川家光が描いたボサボサのウサギなどが話題になっており、たしかに「なんだこりゃ」という感じで面白い。将軍や大名が、貴種のたしなみとして絵など描かされていたというのも知らなかった。

 よいなと思ったのは、中村芳中『十二ヶ月花卉図押絵貼屏風』。丁寧な、絶妙なたらしこみで、葉が描かれているのだけど、全体的な雰囲気が、どうもぬぼーっとしているのだった。

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 この日は、帰りに京王線府中駅のほうに回ってみると、大國魂神社の“くらやみ祭”の日。たしかにこの時期は裾をからげた足袋姿の人たちなどを見るのでお祭りがあることは知っていたが、出くわすのは初めてだった。

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 郷土芸能の“府中囃子”だそうだ。知らなかったなあ

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 もうたいへんな人出であった。

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 縁日に、お化け屋敷なんてあるのね。

ウィーン・モダン展 @国立新美術館 5/2

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 ■日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道

 クリムト展…ではないのですね。あくまでも、“ウィーン、モダニズムへの道 (Vienna on the Path to Modernism) ”というサブタイトルのとおり、文化史の系統展示でした。なにせ、最初がマリア・テレジア肖像画から始まるのです…どこが世紀末ウィーンやねん、と一瞬思ってしまったのですが(メッテルニヒのかばんとか、興味深くはあるけど、なんでここでこれが、と)、そこから下って、ビーダーマイヤーという文化様式が現れ、家具などはもはやすっかりモダンなデザインに。驚いたのは、ナポレオン戦争時代、にも関わらずまるっきりモダンデザインとしか思われない銀製の食器などが、すでにあったということ。これ材質がステンレスになったら一気に大量生産の工業時代じゃないか、と…。19世紀初頭のウィーンに、すでにモダンが始まっていたのですね。分離派もドイツ表現主義も、いきなり生まれたものではない、というわけでした。

 シューベルトの眼鏡、ヨハン・シュトラウス2世、…そして時代的には普墺戦争に負けた後、ウィーンの都市大改造が始まり、本当のモダンデザインがやってくる。──シェーンベルクの肖像とか、シェーンベルクが描いたアルバン・ベルクの肖像なんてものがあって興味深いです(シェーンベルクって画家でもあったんですか)。

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 クリムトはやはり外せません。夢を見ているような世界。

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 国立新美術館のロビーには、こんなかっこいいグランドピアノが。

トルコ至宝展 @国立新美術館 5/2

 元号改定後、初めてのお出かけは、乃木坂の国立新美術館へ。

 ■トルコ至宝展 トルコ文化年2019 チューリップの宮殿 トプカプ宮殿の美

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 イスタンブールは憧れの都…。

 鞘が宝石で埋め尽くされているのみならず、柄そのものが大きなエメラルドになっているちょっと空恐ろしい飾り刀や、微細な截金(?)の紋様と文字にぎっしり覆われた飾り兜、鮮やかな皇帝(スルタン)のカフタン(長衣)、などなど。──赤い大きな布地は、絨毯かと思ったら壁にかけるカーテンで、真っ赤の地の一面に黒っぽく花が刺繍されているが、“金銀撚糸”と書いてあるので、黒くなってしまっているのは銀だったということか…。それが掛けられていた部屋のミステリアスな雰囲気を想像して、ちょっとわくわくしてしまった。

 展示の中で面白かったのは、東西交流で手に入れた明代の染付の皿や椀に、金や宝石を埋め込んだものがあったこと。昨年、台湾の故宮博物院で見たが、清朝の宮廷ではムガル帝国オスマン帝国から渡来した玉器に、わざわざ文字を彫り込んだりしていた。どちらも、世界の反対側から渡来したものすごく貴重なものに、自分たちの美意識で惜しげもなく手を入れてしまう、という、…ある意味で本当に極まってしまった人たちにしかできないわざ(?)だよなあ、などと思った。

4/30(火)宇治

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 近鉄吉野駅

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 「京都まで乗り継ぎで」と言って特急券を買い、15時04分発の大阪阿部野橋行きの特急に乗る。早々と缶ビールを開けてしまったが、15時43分の橿原神宮前で降りて、乗り換えなければならない。橿原神宮前は、吉野線のホームと橿原線(京都方面)のホームが少し離れており、通路と踏切を通って橿原線のホームに上がる。

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 新型車両が待機していた。15時53分発。

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 このまま京都まで戻って、新幹線で帰京するつもりだった。だが、京都行きの近鉄特急の車内で気が変わり、京都の手前の丹波橋で降りた。京阪電車を乗り継いで…

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 また来ました。

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 帰る前にちょっと散歩したくなったので、とびけらが飛び交う初夏の宇治にやって来た。

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 登ります

 『響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』劇場版の公開直後というタイミングもあってか、聖地巡礼者が多めのようだ。住宅街を歩いているとき、どこかから『リズと青い鳥』のオーボエが聞こえてきて、うわっと驚いたりもした。

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 展望台は人が途切れることがなかった。

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 興聖寺と、参道の琴坂。

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 八重の山吹。

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 例のベンチ

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 平等院は拝観時間が終わっていたが、その前の藤棚が、壮絶な美しさだった。

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 宇治橋のたもとのファミレスで軽く食事を取った後、JR宇治駅から京都駅へ。

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 JR奈良線は水色帯の205系になったのね。

 そして、京都発20時26分の『のぞみ422号』で帰浜。帰りの新幹線もスマートEXで自由に変更できた。平成最後の旅行が終わった。

4/30(火)吉野

 雨が降りそうな降らなさそうな、微妙な曇り空の朝になった。ホテルを出て天王寺の駅前まで歩き、あべのハルカスに入って建物の中をたどると、近鉄大阪阿部野橋駅がある。ここは近鉄南大阪線という路線の始発駅だが、休日のターミナル駅は閑散としている。吉野までの特急券を買って櫛形に並ぶホームに向かうと、古めかしい近鉄特急が停まっていた。

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 これ、少なくともぼくが生まれるよりも前から走っている車両のはず。しかもたった2両編成。

 ドアは開いているが、誰も乗っていないので、これだよな、と訝りながら乗り込む。発車直前になるとさすがに、いくらか客が乗ってきたが、それでもだいぶ空いていた。──近鉄は乗客の絶対数に比べて特急の本数が異様に多い印象があり、この阿部野橋からも、吉野行きの特急が、30分に1本の調子で出ている。乗客のこの少なさで、たった2両の“特急列車”を走らせるのは、コスト的にどうなのか…と、ここだけ見ると思ってしまうが、おそらく、橿原神宮前での京都からの特急の乗換え需要を考慮しているのではないかと思われる。

 ぼくが乗ったのは9時10分発の吉野行きの特急で、時刻表を見ると、その1本前と1本後の特急は“さくらライナー”という新型車両(と言っても、平成初期の“新型車両”だが)だったはず。まあそこまで列車にこだわりがないので、それに合わせて行動したりはしていなかったのだけれど。

 平地をわりと快調に飛ばして、立派な屋根の橿原神宮前駅に着いたのが、阿部野橋から35分。阿部野橋から橿原神宮前までは以前に一度乗ったことがあり、そのときは急行電車で延々と、かなり田舎まで来たような気がしたが、今度はさらにその先へ、列車はいよいよ飛鳥の山の中に入る。吉野口という駅があって、ここはJRの和歌山線の乗換駅だが、駅に接して豪快な採石場が見えて驚く。──さらに山を越える途中に福神という駅があり、近鉄が開発したニュータウンがあるらしく、広告が出ていた。この日、吉野までの特急券を買ったときに、特急料金が510円で、京都ー奈良と同じ金額だったので、だいぶ安いな、と思ったが、なるほどな、と思った。

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 大和上市を過ぎると、いよいよ吉野川(紀ノ川)を渡った。鉄橋に接して、製材所らしい大きな工場から、さかんに煙が出ている。10時26分、終点の吉野に着いた。山に突き当たるような位置の終着駅である。

 まばらな観光客と一緒に、駅を出てぶらぶら前に歩いていくと、ケーブル乗りますか、10時30分のが出ます、とおばさんが声をかける。ロープウェイの職員の人だった。これまた古めかしい、小さなロープウェイに乗り込んで、山上に上がる。このあたりが下千本と言われるところらしいが、そもそも桜の季節を外して吉野に来てしまっている。

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 参道の坂道を上がっていくと、金峯山寺(きんぷせんじ)に着いた。修復中の仁王門をくぐる。

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 立派な寺院だ。本堂に上がってみると、本尊は蔵王権現であるというが、敢えて言えば青鬼のような、異様な巨像が、3体並んでいた。“本尊”が3体あるというのも不思議だし、そもそも蔵王権現というのが、仏教とも神道ともつかない、なんだかよくわからない存在である。後から知ったが、この本尊は本来は秘仏で、特別開帳の期間だったのだそうだ。

 堂内には役行者の木像もあったが、…おや、頭巾をかぶって杖を持って顎ひげのある好々爺、そして二人のお供を連れて、全国あちこちに現れて…という、時代劇で有名な老人の姿は、役小角に源流があったのか。

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 吉野は、小規模ながらも山上の宗教都市であり、参道に沿って寺院が並んでいる。──少し入ったところに吉水神社というところがあり、ここは“南朝皇居”を標榜している。書院造が重要文化財になっているが、なんとこれも世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道”の構成物件だそうだ。

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 ただ、たしかに部分的には本当に南北朝期の建物だそうだが、後醍醐帝の玉座、という部屋が本当にその当時のものというわけでもないようだ。それはそうだろう。

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 見渡しても見渡しても青い山。

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 竹林院の庭園。人もおらずよいところだった。

 竹林院の近くから路線バスに乗る。ここから奥千本口までマイクロバスが往復している。普段はふもとの吉野神宮から来る路線があるようだが、多客期は山の上のこの区間だけを往復しているようだ。片道400円。

 山を巻いてぐいぐいと登る自動車道路で、15分程度で奥千本口に着いた。少し坂を登ると金峯神社がある。ここはすでに、熊野に通じる大峯奥駈道と呼ばれる参詣の道筋にあたる。藤原道長の金銅の経筒などが出土してしまったのもこのあたりのはずだ。…56億7千万年後に弥勒菩薩が降臨すると信じられた金峯山が、まさにここなのだ。だが、いまはただ、静かな山奥である。

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 義経の隠れ塔だそうだ。

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 さらに山の奥へ足を踏み入れてみた。軽いハイキングになるが、道筋は整備されている。

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 斜面に平地が開け、西行庵があった。ここまで来る人は他にはほとんどいないようだった。

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 西行は吉野の桜を愛し、2年だか3年だか、このあたりの各地に庵を結んでいたそうで、ここもその中の一つなのだろう。…だが、実際に西行がいつからいつまでここにいたのか、は、ガイドブックも地元の役場のウェブサイトも、西行の研究書でさえ、はっきりとは語らない。この小屋が本当に当時のものであるわけもないだろう。

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 だが、そういうことはともかくとして、不思議と落ち着く、よい場所であった。

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 伐採のあとの、荒っぽい風景だ。金峯神社に戻る途中には、少し開けた場所には昔の修験道場の跡、といった案内板が立っていたりする。

 奥千本口のバス停まで戻ってきた。ここから金峯山寺まで歩いて下りるか、さっきと同じバスに乗るか、と少し迷った。歩いても1時間ちょっとだろうとは思われたし、大峯奥駈道の一部であるから歩いてみたいとも思ったが、自動車も入ってくる舗装道路であり、歩いてそれほど面白い道とは思われなかった。おとなしく路線バスで戻ることにした。

 金峯山寺の近くのお店でうどんを食べて、今度は歩いて山を下り、近鉄吉野駅まで戻ってきた。吉野という独特な宗教都市の雰囲気を感じられて、面白かった。それに、この日はある程度歩くことになると思っていて、雨が降るようなら吉野はあきらめようかと考えていたのだけれど、雨には降られずに済んだのもよかった。

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 八重桜の散華が舞っていた、櫻本坊

4/29(月)奈良

 10連休ということで、お盆や正月のような民族大移動期になっている。新幹線の指定席が軒並み「×」になっている様子などを見て、たしかに経済効果はあったんだろうなあ、などと、半ば呆れ、半ば感心してしまうけれど、ぼくもせっかくの休みなので、何の用事もないけれど、新幹線に乗って関西に行ってこようと思う。大阪天王寺のビジネスホテルを一週間前に予約していた。さすがに京都や奈良には泊まれなかった。それにしても、ゴールデンウィークに遠出するのは、就職してから初めてのことだ。

 新幹線はどうせ取れないだろうから、自由席特急券を買って『こだま』で行こう…と思っていたが、新横浜駅に向かいながらスマートEXのアプリを見ていると、適当な時間に『のぞみ』の指定席が空いていたので、だったら取ろう、と思ってすかさず押さえた。──スマートEX、というかJR東海の“エクスプレス予約”系のサーヴィス全般を使うのが、今回が初めてだったが、価格的な優位性が一切なく在来線乗継ぎをする場合は不利になる、という制度である一方、リアルタイムで座席が動いているのを捕まえられるのはこういう場合には便利だし、そもそもマルスと接続してキャンセルや変更などの座席の控除もリアルタイムでやりながら、エンドユーザのICカード情報ともリンクさせているわけで、ガラパゴス的に発展しているのはたしかだけど、けっこうすごいシステムだな、と思う。

 というわけで4月29日、新横浜駅10時39分発の『のぞみ223号』新大阪行きで出発。山側のE席でビールを飲みながら、2時間で京都駅に着いた。

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 混雑をかき分けるように近鉄の乗り場に行き、12時50分発の奈良行きの特急に乗り込んだ。

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 ところで今回は、スマートEXのオプションの“奈良満喫フリーきっぷ”を使う。3,200円で三日間、京都ー大阪ー奈良のJRと近鉄線と、一部の奈良交通バスが乗り放題になるという、使いようによってはなかなかの周遊券である。EXの利用票を京都や大阪のJRの窓口に提示しないと買えないのが、少し不便だけれど、京都駅に着いてすぐに八条口JR東海ツアーズの窓口に行ったら、空いていてすぐに買えた。──帰りも京都駅に戻ってくるつもりだが、旅程をはっきりと決めているわけではない。天王寺に泊まるのも、奈良からのアクセスがいいのは難波か天王寺だな、という程度の決め方だった。

 平城宮址はまた新しい建物を建ててるのか…などと眺めながら、近鉄奈良駅に着いた。地上に出ると、やはり観光客でごった返している。

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 近鉄奈良駅前、行基の像

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 鹿が群がっていて、観光客も群がっているのだけれど、…フンがそこらじゅうにあるから、ね。。。

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 鹿に引かれて博物館詣り(?)。──奈良に来たのは、奈良国立博物館曜変天目を見たかったため。

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奈良国立博物館特別展 国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき

 入館して、すぐに曜変天目の行列に並び、25分程度で見られた。げにも宇宙であり、満足。わりと派手な斑紋なのだよね。

 だが考えてみると、藤田美術館曜変天目は、以前に東京のサントリー美術館に来たのを見ている。曜変天目茶碗は南宋期の陶器で、青い地に光る斑紋が浮かぶもの。日本には3つあると言われており、大阪の藤田美術館のこれと、世田谷の静嘉堂文庫が持っているものが、比較的見る機会のあるものだ。最後のもう一つは、大徳寺龍光院が持っているもので、これはあまり一般の観覧の場に出てくることがないものだが、ちょうどいま、MIHO MUSEUMで展示されている。見たいとは思うが、しかしあそこは行くのが大変な場所にある。

 曜変天目以外にも、金代の油滴天目や、室町時代の菊花天目といった陶器も出ていて、これらもなかなかすばらしい。──仏像のコーナーでは、色鮮やかな地蔵菩薩立像が出迎える。これは快慶の作で、截金で描かれた衣装の紋様がはっきり残っていたりして、すばらしいものだが、これも以前のサントリー美術館に来ていた。だが前に見たときの記憶では、ものすごく色鮮やかな仏像で、感心したのだったが、今回はどうもくすんで見える。自分の記憶の美化もあるだろうけれど、おそらく、最新の照明設備を備えたサントリー美術館と、昔ながらの博物館であるここでは、見え方も違うのだろう。

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 博物館を出て、久しぶりに東大寺に行ってみることにした。東大寺の大仏なんて、いつ以来だろう…たぶん、中学の修学旅行以来ではないだろうか。大学時代以降、京都や奈良に来ることは何度もあったものの、そういう「いかにも」な場所を本能的に避けてしまっていたが、そろそろ肩肘張らずに行ってみるのもよいのではないかと思った。

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 しかしここに来ると、もはや観光施設の趣であり、まあ仕方ないか…と。東大寺ミュージアムにも立ち寄ってみた。腕が何本もある弁財天立像なんて珍しいものが目を引き、なんだこりゃ、と思ったが、それも奈良時代のものだというからすごい。

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 そして大仏殿。やはり大きい建物だ

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 近づくと本当に、覆いかぶさってくるかのようだ。創建当時はもっと大きな建物だったというのだから、そりゃ当時の人はびっくりしただろう

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 繰り返すが本当に久しぶりに見た。

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 蝶が大きい…

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 大仏くらいになると光背もこんなに分厚いのか

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 格天井っていいよね

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 この人は、賓頭盧尊者さん。いろんな人に撫でられて、恐ろしげな風貌になってしまっている。

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 二月堂。こちらの方まで歩いてくるのは、初めてだったかも。

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 実は大仏殿は“金堂”であって、大仏殿の後ろには、元は講堂があったそうだ。だが今は原っぱである。

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 そしてその奥に正倉院があるが、ここは宮内庁の管轄であって、皇宮警察の派出所が置かれている。正倉院の正倉は、外観は見学できるようだが、すでに時間が終わっていた。奈良国立博物館で毎年やっている正倉院展にも、行きたいとは思っているのだけれど。

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 瓦土塀って好きだ。

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 これは石垣の上に乗ったタイプ。

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 だんだん雨が降ってきた。興福寺は中金堂が落成して、姿が一新していた。

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 椿井市場というアーケード街(?)。ラーメンを食べて、三条通りの喫茶店で休憩してから、近鉄奈良駅に戻った。

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 ここから、阪神電鉄まで直通する、快速急行神戸三宮行きというのが出る。二人掛け座席が回転できる、凝った設備の通勤電車だった。休日の夜の上り電車なので空いている。生駒山地をトンネルで抜けると大阪の平野に飛び出して、40分程度で大阪難波駅に着いた。

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 地上に出るとだいぶ雨が降っていた。結局、JRの新今宮駅で降りて、この日のホテルにチェックインした。部屋からは天王寺駅に出入りする電車がよく見える。食事でもしようと少し出歩いたが、雨の夜の阿倍野あたりを歩き回るのもなかなか気が抜けないものがあり、また、特におなかが空いているわけでもなかった。ホテルに戻って就寝。明日も天気予報は雨である。さて、どうしたものか。

4/27(土)代々木と、東京国立博物館

 今年のゴールデンウィークはまさかの公休10連休。そして、ぼくは仕事柄、どうせ出てくる日があるだろうと思っていたら、全部休めることになったのも意外だった。──初日は、寒い寒いと言いながら、朝から同僚と代々木のメーデーに参加してから、ごはんを食べて渋谷で解散した。

 このへん、普段あんまり来ないので、変わりっぷりが…

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渋谷公会堂がマンションになっちゃった…

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代々木の第一体育館も工事中

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 どうしようかな、と思いながら、とりあえず地下鉄で上野に移動して、国立博物館へ。

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特別展「国宝 東寺 空海と仏像曼荼羅」

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 この、象に乗った帝釈天は撮影可。たしかに端正なよいお顔をしている。

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 本館と東洋館もひとまわりした。…安土桃山時代の黄瀬戸。

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 仁阿弥道八。江戸時代後期のものだそうだ。なんというか、品がいいよね。

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 清代の象牙の卣。ぼくは東京国立博物館の東洋館はわりと好きなので何度も来ているけれど、まだ見たことのないこういった優品があるというところが…、本当にここは油断ならない。

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 “赤壁竹彫筆筒”。竹って、あまり彫刻に適した材質ではないような気がするが、中国の工芸はこういうところがすごいな…

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 北宋汝窯青磁川端康成旧蔵だそうだ

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 南宋青磁

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 龍泉窯の数々。もうこうなると宝石のようで、中国の青磁って本当にすばらしい。

「町田市立博物館最終展」 4/20 (2)

 陶磁器のコレクションもすばらしい。

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明代の“法花蓮花文壺”。“法花”とは、土を絞り出して紋様を描き、色釉を混じらせない技法とのこと。

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唐代の白磁龍耳壺

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北宋白磁

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黒い絵柄の、金代の磁州窯

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宋代の耀州窯の青磁

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元代の龍泉窯の青磁

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中国だけでなく、東南アジアの陶磁があるのが珍しい。これは15世紀のタイの青磁。色合いが何とも言えず良い

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15世紀ヴェトナムの“五彩鳥文盤”

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15世紀ヴェトナムの青花文盤。なんとなくおっとりしてるよね

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 ぼくが子供のころからそのままの、町田市のジオラマ。これもいつの間にか、“約40年前の町田市です”という説明がついてしまった。閉館したら廃棄されてしまうのかなあ。

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 会期中、展示替えがあるようなので、また来ようと思う。