night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

12/5(土)足利

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 地下鉄で浅草駅に現れ、10時50分発の東武鉄道の特急『りょうもう11号』赤城行きに乗った。

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 特急車両としてはだんだん古めかしくなっているのかもしれないけれど、わりにゆったりとしていて、よい感じ。

 12時02分に足利市駅に着いた。栃木県足利市、両毛の拠点都市のひとつであるし、鎌倉時代の足利氏の本拠地であった土地でもある。地図を見ると渡良瀬川が滔々と流れていて、その南側に東武足利市駅が、北側にJR両毛線足利駅がある。──東武足利市駅から歩き始めると、すぐに渡良瀬川の土手に上がれた。駅から近いところに、古めかしい鉄橋が北の市街地に向けてかかっているが、それとは別に、少し上流のところに、渡良瀬橋という橋がある。

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 ここから見る夕陽がきれいなんだって、森高千里が言ってましたね。今日は暗い冬の天気だけど

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 鮭の死骸が川底に転がっている。鮭って利根川水系にも遡上してくるんだ!

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 市街地をふらふら歩いていると、蔦に覆われた、独特の雰囲気を放つ建物がある。正面に回ってみると…

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 これは…!!

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 打ち捨てられた映画館の建物。どのくらい前まで営業していたのだろうか。

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 鑁阿寺(ばんなじ)へ向かう。

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 鴨が一列にソーシャルディスタンス。鴨川等間隔の法則みたい。

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 お濠の向こうにあるお寺なんて珍しい。濠の向こうには土塁もあって、いやに防御力の高そうなお寺だ。それもそのはず、ここはただの寺院ではなく、中世足利氏の居館があったところだと言われている。地図を見ると、はっきりと四角く堀に囲まれていることがわかる。──この楼門、足利義輝が再建したものだという。

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 本堂はもっと古く、鎌倉時代に遡る建物だそうだ。

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 屋根には、足利の二っ引き両と並んで、皇室の菊紋と桐紋が。さすが将軍家。

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 形のよい鐘楼を望む庭園。

 境内には児童公園や、売店などもあって、売店で「足利シューマイ」という屋台メニューのようなものを食べた。シューマイとは言うものの、もちもちとしていて、ソースをかけて食べる、不思議な食べ物だった。

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 鑁阿寺から、近くにある「足利学校」跡へ。ここもきれいに整備された土塁と濠に囲まれている。近くはどうもお屋敷町のようだ。観光地なのでお店もいくらかある。

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 うわーこれは面白い。民家の塀なのだが、栃木県と言えば大谷石が思いつくけどそうでもないし、これは何という石なのだろうか。*1

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 足利学校とは、起源は必ずしも明らかではないようだが室町時代には確実に存在していたと言われる、中世の学校である。

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 孔子がまつられている。朱子学だといって孔子を崇めるようになるのは江戸時代の話だろう、東京の昌平坂なんかもそうだよね、…と思ったら、ここは年季が入っていて、室町時代から孔子廟があったらしい。

*

 ここまで、観光客らしい姿はほとんど見かけなかったが、道の駅、兼、観光駐車場のような「太平記館」で休憩すると、駐車場はなかなかほどよく埋まっていて、いったいこの人たちはどこにいるのか、と不思議に思った。「太平記館」には色鮮やかな甲冑が展示されていて、ドラマの収録で使用されたものらしい。コーヒーを飲んで一休みしてから、また歩き出した。

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 通りがかりに立ち寄った、法玄寺という寺院。

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 「伝北条時子姫五輪塔」というのがあった。足利義兼という、頼朝の時代の足利家の当主の、奥さんが北条家のお姫様だったそうで、足利家というのはその時代から北条家と縁戚関係があったのか、と感心するが、この五輪塔の説明板に書いてあることが、ちょっと驚くような内容だった。

 本塔は、源姓足利氏の棟梁・義兼の長子義純が、母北条時子菩提のため建立したとの寺伝があり、蛭子塚とよばれている。その由緒は下記のようである。
 時子は北条時政の娘で、義兼の正室であった。義兼が鎌倉出府のおり、時子が郊外の花見にて野水を飲んだところ、日ごとにお腹が膨れ、妊娠したようになった。帰館した義兼より密通を疑われた時子は、潔白を示すため「死後わが体を改めよ」と遺言し、自害した。遺言に従って開腹すると、腹部から大量の蛭が出てきた。花見の際に飲んだ水が原因と判った義兼は大いに驚き、時子の遺体を当地に手厚く葬ったという。
 まさかそんなことが…と思うけれどそれがゆえに逆にリアリティがあるかに思われる、おそろしい伝説である。

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 足利織姫神社。丘の中腹にあって、先ほど東武の駅から歩いてくるときにも渡良瀬川の向こうに派手な社が見えていた。縁結びの神様だそうだ。なんとなくお祈りしておく。

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 これまた不思議な神社で、参道の坂道に立ち並ぶ鳥居が、七色に塗り分けられている。

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 黄色や緑や紫の鳥居なんて見たことがないので、ちょっと奇異な感じがするけれど。

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 八雲神社。お参りすると云々、と森高千里が歌うので(?)、来てみた。実際には、「八雲神社」という社は足利の市内にいくつかあるのだが、歌に出てくるのはここだということになっているらしい。

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 背後の公園は、不自然に円く盛り上がった丘が連続していて、…これは古墳なのだそうだ

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 古墳から坂を下りたあたりの、草雲美術館。棟方志功の「二菩薩釈迦十大弟子」があった。

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 さて、ここでもう15時半頃。冬の寒風にさらされながら黙々と歩き回ってきて、くたびれてしまった。どこかで食事をするか、どうするか…、と考えながら、両毛線の線路に付かず離れずで歩いて、JRの足利駅にたどり着いた…と思ったが、そこは足利駅の南口で、白鴎大学足利高校の巨大な校舎群がある以外、街の体をなしていない。ぐるりと遠回りして北側に回った。

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 JR足利駅の北口駅舎

 しかし結局、北口でも落ち着いて食事をできそうなお店が見当たらず、16時16分の小山行きの列車に乗って帰ることにした。

 東に向かう列車に乗ると、ピンク色のような、黄色のような、不思議な光が差し込んできた。西の方を振り返ると、夕陽が落ちるところで、なんとも表現のできない美しい色の光が満ちていた。なるほど、渡良瀬橋で夕陽を見るべきだった、と思った。 ──小山から宇都宮線グリーン車に乗って、品川まで。

*1:と思って後から調べたら、これは房州石なのだそうだ。房州石と言えば千葉の鋸山などが産地で、まさに金谷の町ではたしかに石塀を見た覚えがあるが、こんなにはっきりと模様が出ている石をそろえて、意匠を作っているのは、かなり手が込んでいるのではないか。

古代エジプト展@江戸東京博物館12/4

 千葉からの帰り、両国の江戸東京博物館に立ち寄った。これは素直に面白かったな。

江戸東京博物館国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話

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 セクメトというのはライオンの姿をした女神で、力と破壊の女神だが、母性の神でもあるという。不思議と、そこはセットなんだなあ。シヴァ神なんかもそうだよね

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 スカラベと一体化させられてしまった人…、ではなく、「創造の卵を持つスカラベとして表現された太陽神」だそうだ。難しい概念だなあ。ちょっとグロテスクですが

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 勢いがある(?)

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 端整なネフェルティティとネフェルトイリ。

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 これはちょっとイメージと違って、感心した。古代エジプトらしくない。ギリシャ彫刻みたいだ。新王国時代のものだというが、さっきのネフェルトイリの像よりも古い時代のものだ。一口に古代エジプトと言っても時代が長すぎて、時代によって芸術様式だって変化しているのだろう。

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 猿がちょっとすっとぼけた感じで面白い

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 花咲く旅路、ですね

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 江戸東京博物館は、常設展示が面白いんだよなあ。大エスカレータを上って行きます。

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 大名屋敷

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 徳川慶喜の陣羽織と陣笠だって!

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 オランダ風説書ですって。いったい何が書いてあるのか、面白そうだが、逐一読めたらいいのにな…

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 知りませんでした

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 「画狂老人卍」さんのお宅の様子ですって。

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 「有りもせぬ事を言触らすと、処罰されます。時節柄皆様注意して下さい。」

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 江戸東京博物館で残念なのは、東京都立の郷土史博物館なのに、三多摩に関する展示内容がほとんどないことですね。このパネルと五日市憲法くらいですか

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 江戸の開府から元禄、化政文化、明治の銀座通り、十二階のそびえる浅草、そして戦争で焼け落ちる東京、戦後の復興、公団の団地や、自分が子供の頃にはあったような日用品…と、展示を一巡すると、──東京の破壊と再生の歴史、なんだか夢を見ているような気分になった。ここは本当にすごい博物館だ。

「宮島達男 クロニクル」@千葉市美術館12/4

 宮島達男といえば、ディジタルカウンターを使う作品が有名な現代アートの人として有名な名前である。その宮島達男の展示が、千葉市美術館で開催されていた。千葉、遠くはないのだが、いざ行こうと思うと遠い、という微妙な距離感だ。非番の金曜日、品川から総武快速に乗って約50分、千葉駅に着いた。

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 駅ビルを歩いてモノレールの乗り場に行って、県庁前行きの路線がちょうど出るところだったので走って乗り込んだ。この路線、どうやら15分おきくらいらしく、1本乗り過ごすと歩いた方が早いのか微妙なところになる。葭川公園(よしかわこうえん)という駅で下りた。公園がどこにあるのかはわからない。

 昔の繁華街がひなびたような街並みを歩く。千葉、駅前にモノレールの高架が上空を絡み合うように飛び回っているのは未来都市風だけれど、こういうところを見ると、千葉も紛れもなく地方都市だな、と思う。国道126号線に出ると、千葉市美術館があった。ここはなんだかたいそう立派なビルであった。

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千葉市美術館>宮島達男 クロニクル 1995-2020

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 この、壁に取り付けられたイコンが電線でつなげられている祭壇のような、…見たことのある違う人の作品によく似てる

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 ちょっとかわいい

 はるばる来ては見たものの、いまいち展示の規模も大きくないし、肩透かし感のある展示だったのは否めない。ただ、暗い大きな部屋に円形にしつらえられた枠のなかで、一面に散りばめられた青いディジタルカウンターが明滅する作品──『地の天』は、有無を言わさぬ厳粛さがあった。暗い海のなかで、なにかを刻み、なにかを刻み終わり、そしてまたなにかを刻み始めるディジタルカウンター。これはある種の曼荼羅図かもしれない、と思った。

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 千葉市美術館のビルは、旧川崎銀行という洋館を覆うように保存したという、ちょっと驚いてしまうような建物で、1階は「さや堂ホール」という空間になっている。そこにプロジェクションマッピング

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 千葉市美術館のコレクション展示で目を引いたのは、川瀬巴水、井上安治、小林清親などの新版画。

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 シルエットの構図がかっこいい。

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 円山応挙の「秋月雪峡図屏風」。

 千葉まではるばる来たものの、他に見たいものがなく、帰りはなんとなく千葉駅まで歩いて、また総武快速で東京にとんぼ返りした。

桃山展 @東京国立博物館11/28

東京国立博物館特別展「桃山─天下人の100年」

 後期展示の終了近くの寒風の強い日、やっと足を運んだ。上野公園の林の中の道、落ち葉のガサガサしたところに強風なので、埃っぽく、これは風邪をひきそうだと思いながら歩く。

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 オンラインの日時指定制であるだけでなく、一般2,400円という、これまでの国立博物館の特別展よりもかなり値上がりした入場料になっており、そのせいか場内は人出もそれなりだった。──冒頭から大きな洛中洛外図。洛中洛外図屏風はいくつもあって、“何々本”と呼ばれているけれど、これは所蔵先が明記されていない(個人蔵?)もので、かなり大きい上に、保存状態も良くて、隣にはもうひとつ「勝興寺本」が並べられているもののこちらの方が迫力がある。さらにこの後期展示では、東京国立博物館が持っている「舟木本」まで出ている。

 工芸品がものすごい質の高さだ。伊達政宗に伝わったという「桐紋花菱繋蒔絵二重短刀箱」は、赤っぽい漆と金の蒔絵で描かれた菱形の柄がモダンだ。酒田の本間美術館の所蔵の国指定文化財だそうだ。また、林原美術館の「縞蒔絵螺鈿重箱」もすごい。積層したミルフィーユのように横縞模様がほどこされていて、リズミカルな感じ。

 狩野永徳の唐獅子図屏風の隣には、東京国立博物館が持っている等伯の松林図屏風が満を持して(?)出品されている。また、京都の聚光院に見に行った狩野永徳の花鳥図襖、智積院で見た等伯の楓図襖にも再会した。そのほか、天球院というところの、狩野山雪の「籬に草花図襖」というのがよかった。何かをひそかに隠しているような絵だ、と感じた。天球院とは妙心寺塔頭だそうだが、普段は非公開寺院とのこと。

 「南蛮人渡来図屏風」や「世界図」なんかも興味深い。西洋人は特にことさら化け物のようには描かれていないのが逆に面白い(幕末のペリーが天狗みたいに描いてある絵があるけど、ああいうのとは違う)。西洋人を見る機会がある時代で、見たものを描いているのだろうな。「世界図」は、外国の地名を一つ一つ丹念に読んでみたい…と思った。満州に「おらんかい」って書いてあったりする。──後半は刀や具足や兜がいくつも。上杉景勝やら酒井忠次徳川家康の具足というのもあるが、意外に小柄なんだよね。伊達政宗の紺糸威五枚胴具足というもあって、これは兜に、有名な三日月のような前立てがついている。

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 …と、ひとつひとつ見ていくだけで、とにかくものすごい物量だし、どれも質が高くて、絢爛! 「90分以内」ではとても見終われない展示だった。

坂本真綾「IDS! presents Acoustic Live & Talk 2020」@ Zepp Tokyo 11/28

 この時代に開催されるライヴ、というものに対して、どのような態度を自分がとるべきなのか、いまいち測りかねるものがありましたが、Zepp Tokyoに行ってきました。──公演時間は約70分を予定、と事前にアナウンスされていましたが、椅子席の1席空けで観客数も絞ってスケールダウンして、でも1日に3回まわしということで、それはそれで演じる側が大変なのではないかなあ。

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お久しぶりの、DivercityじゃないほうのZepp Tokyo

 厚生労働省の『COCOA』のアプリを入れてくるように、という周知はありましたが(そもそもチケットがスマートフォンの電子チケットだけという運用になっていました)、それって、当日の来場者に陽性者が出た場合に観客が気づけるようにという意図だと思っていたら、入場時に「陽性者との接触を確認」の画面を見せろと言われたので驚いてしまいました。14日以内に接触があった場合の表示が出ていたら入場できなかったようです。だけど、その場でCOCOAをインストールする人だっているわけで。COCOAを排除のためのツールに使うとは思っていなかったので、うーん、と、若干もやもやしたのは否定できません。が、こういうのもしばらくするとデファクトスタンダードになっていく可能性もありますね。

*

 そんなわけで、ライヴを無心で楽しむには社会的な状況がうるさすぎるんだけど、坂本さんのまぶしさにあっけにとられた70分でした。『幸せ5』のハイテンションが、とってもよかったのです…ああ、もうずっと、こういう感じがなかった、と思ったのです。もうなんかずっと下向いて歩いてたもんなあ。──坂本さんは、マリメッコ的な赤や黄色の派手なプリント柄がパッチワークになったドレス。

 最後の『いつか旅に出る日』の前のMCは、坂本さんが2年前にクロアチアにひとり旅をしたときの話から…、そこはひどい内戦でぼろぼろになった歴史がある街で、でもそこにはそんな歴史をまったく知らない若い人がいたりする。坂本さん自身も、城壁から見た朝陽をただ「美しい」と思って見ていた。今の状況も、これまでのような自由に旅行できた時代を知らない世代が出てくるかもしれないけれど、またいつかどこにでも行ける日が来ると思う…というような話でした。──ちょっとわかりづらいメッセージで、坂本さんの中でも整理できていないような印象を受けましたが、今の時代に対する表現者としての衝動のようなものがあったのだろうと思いますし、それが今のタイミングで必ずしもすっぱりとした言葉にならなかったとしても、それはそうだ、と言うか…。──背景には、坂本さんが旅先でiPhoneで撮ったというそのクロアチアの城壁の朝陽や、何年か前の台湾で撮った写真などが、次々と投影されていきました。

・宇宙の記憶
Million Clouds
幸せについて私が知っている5つの方法
・私へ
・逆光
・躍動
・“免疫アップメドレー”(スピカ→ユッカ→CLEAR→Gift→tune the rainbow→光あれ→Get No Satisfaction!→プラチナ)
・クローバー
・いつか旅に出る日

東宝ミュージカル『ビューティフル』@帝国劇場 11/21

 水樹奈々さんと平原綾香さんがダブルキャストで主役のキャロル・キングを演じる、ミュージカル『ビューティフル』、2017年の初演から3年経って、再演されました。

帝国劇場 ミュージカル『ビューティフル』

 日本でこれが再演されるにしても、主役を張る女性歌手は、変わるのではないかと思っていましたが、ダブルキャストのお二人とも続投。ぼくは水樹奈々さんのファンではあるにしても、このミュージカルはもう一度見なくてもいいかな(この時代に、無理してまで見たい演目ではないかな…)と思い、ファンクラブ先行のチケット受付はスルーしていましたが、しばらくするとプレイガイドの「イープラス」の貸切回が、多少割安に売られ始め、そちらで思わず買ってしまったのでした(時期によって、今の時代に対する自分の考え方がブレていたとも言えます)。──とは言え、そういう売り方をされるのが良席ではないことはなんとなく承知で、実際、1階席の半分よりは前方でしたが、下手側の一番端でした。

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 11月21日(土曜)のソワレの帝国劇場です。──禍の時代、またここに来られる日が来たというだけで、一歩前進だよなあ、と思う。

 満席のような状況だとやはり密だし、厳しいよな…、と思っていたら、どうやらイープラスさんは、座席の間を1席ずつ空けてチケットを売ってくれていたようです。他の回では全席販売されていたような話を目にしていたので、ファンクラブ先行をスルーしてむしろよかった、と。

 しかし、チケットもぎりではスタッフが券面を目視したうえで「自分で切ってこの箱に置いてください」と言われたり、ロビーの売店も縮小営業(水とジュースしか売っていない。あの変なプラスティックのコップのワインを飲むのが好きだったんですが)、などなど、今までとは違う劇場の様子もありました。また、幕間の休憩が30分取られていました。帝劇の休憩時間は20分か25分のケースが多かったと思いますが、時間を長くとっていたのは、おそらくトイレ列の緩和のためなのでしょうね。

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 水樹奈々さん、久しぶりに動く姿を見ましたし、ご懐妊の公表からは初めての姿でしたが、無理はなさらないよう…。しかし3年前の初演のときよりも明らかに歌唱がしっかりしていましたね。──カンパニー全体的には、そつなくこなしてるな、という印象を受けてしまうようなところがあり、熱気のようなものがいまひとつ感じられなかったのは、半分の客席のせいなのか…。イープラス貸切回ということもあって、客層は奈々さんファンというよりはミュージカル好きの人の方が多そうな気はしましたし、そのせいか客席の反応はわりとよかったとは思うのですが。

 再観劇して、印象に残ったのは、ジェリーというキャラとそれを演じる伊礼彼方さんの演技でした。このミュージカル、台詞はわりといかにもな米国ドラマの翻訳調で、それがぼくがこの作品がそれほど好きではない理由の一つでもあるのですが、そういう台詞を訥々と語る伊礼さんの演技は、本当に病んで苦しんでいるような切迫感があり、身につまされると言うと語弊があるかもしれませんが、胸に迫るものがありました。──また、ドニー役の武田真治さんは、今回は髭を生やした役作り。バリーとシンシアと一緒に、ニューヨークを離れるキャロルのところに集まるシーンで、僕は泣かないよ、なんて言いながら最初っから泣いてるように見えたんですよね。あのシーンはいいですね。あと、やっぱりシンシア役のソニンがかっこいい。ああいう女の人は、本当にかっこいい。(笑)

 カーテンコールではスタンディングでみんなでノリノリで手拍子してから、奈々さんの短いご挨拶がありました。こういう雰囲気も(半分の客席ではあっても)久しぶりのことで、やっぱり舞台芸術はなんでもいいからその場に行かないと話にならない、と改めて思ったし、だからこそ今は厳しいのだろうな…とも。──主役のキャロルは平原綾香さんとのダブルキャストですが、考えてみると平原綾香さんは奈々さんとはかなり違う声質の方なので、たぶんだいぶ印象は変わるのでしょうね。東宝さん、映像パッケージを出したりしてくれないかな…。

「ポーラミュージアムアネックス展2020 透過と抵抗」11/14

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ポーラ ミュージアム アネックス>ポーラ ミュージアム アネックス展2020 -透過と抵抗-

 この展示もオンライン事前予約制。

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 中村愛子氏のステンドグラス。悪い夢のようで、圧倒的に美しい。

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 鉛筆画も。

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 青木美歌氏のガラス作品、久しぶりに見る。

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 林恵理氏の作品は、床の一面にガラスの塊が並べてあったり、壁に影を落とす紋様のような作品。

11/3(火)長寿寺、円覚寺

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 長寿寺は北鎌倉にある臨済宗の寺院で、足利尊氏の開基になるというところ。春と秋の限られた期間のみ拝観できる。思い立って出かけてみたが、拝観受付が15時までのところ、着いたのはかなりぎりぎりの時間だった。
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 整った苔庭が印象的。山腹には尊氏の墓があるが、崖崩れに遭ったとのこと。尊氏の墓は京都の等持院にあるはずだが、こちらの墓には遺髪がおさめられているということだ。

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 帰りは円覚寺に立ち寄った。

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 国宝舎利殿も公開中だった。

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 佛日庵で喫茶して休憩。

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 境内地は切れ込んだ谷戸に広がっている。

11/1(日)川崎散歩

 京急川崎駅から大師線に乗って、川崎大師駅で下車。

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 川崎大師こと、平間寺。門前では飴が名物らしく、あちこちのお店で、まな板を包丁で叩く音を鳴らしている。

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 経蔵の天井には鮮やかな飛天

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 八角形の五重塔

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 菊の品評会。

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 この、お盆が空中浮遊しているようなのは、「懸崖作り」というのだそうだ

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 国籍不明の光景で、面白い

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 平間寺の後ろから出て、大師公園を横切っていくと、公園の一角に、中国庭園がある。

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 立派な太湖石だ

 ここは瀋秀園といって、瀋陽市と川崎市姉妹都市になったのを記念して作られたものだそうだ。日本の公共公園に中国庭園があるのはかなり珍しいのではないかと思う。中は子供が走り回っていた。

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 長廊。

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 水が豊かに流れている。

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 広くはないが、けっこう雰囲気が出ている場所だった。帰りは、公園の南側に出て路線バスに乗ると、競輪場の横などを通ってまっすぐに川崎駅の東口に突き当たる幹線道路だった。さすがにこの道はかなりバスの本数が多いようだ。

9/29(火)無鄰菴

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 岡崎の疏水の船溜まりの近くに、山縣有朋の邸宅、『無鄰菴』がある。ここ、昔から存在は知っていたものの、これまではそれほど興味を持たなかったのけれど、東山の別荘地の面影を残すというこの邸宅の庭園、一度見てみたいな、と思っていた。ここも事前予約が必要なのだが、窓口で「空いてますか?」と訊ねてみたところ、15時からの回に空きがあるとのこと。オフシーズンの平日というのがよかったようだ。

無鄰菴

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 『無鄰菴』とは、山縣有朋が山口に持っていた別荘の名前をここに移したものだそうだ。お庭の説明を受けてから、ビールをいただいて、おもむろに庭園を散歩した。

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 庭に芝生を作るというのが明治時代には新しかったのだそうで、なるほど、と思う。

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 豊かな水の流れが印象的だ。この水は琵琶湖疏水から引いているということで、それってものすごい権力では…。

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 日露開戦を決めた“無鄰菴会議”がこの部屋で開かれたという。

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 洋風の格天井(?)、珍しい。

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 この、書見台つきの椅子、いいな

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 この日は、東山駅から地下鉄を乗り継いで京都駅に戻り、17時13分の『のぞみ240号』で帰浜した。禍の時代の旅行、気に病むことも多いけれど、適度に空いていて、よいお庭をめぐって満足だった。