night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

8/18(日)水城

 翌朝の博多は、曇っていて多少は過ごしやすかった。街路樹からはクマゼミの大合唱が聞こえて、関東から来ると風土の違いを感じる。──ホテルから歩いて博多駅に向かい、9時04分発の普通列車鳥栖行きに乗り込んだ。休日の下り列車で、適度に空いている。

 実はこの日はどこに行くか、必ずしも決めていなかった。行きたい場所は何か所かあるけれど、どういう順番で行くのがよいのか考えあぐねている。翌日の月曜日までの旅行にすることは決めていたので、どこかには泊まるはずだが、それがどこかもわからない。

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 行き先不明の中、下りたのはこの駅。

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 …なな、と続けたくなる

 水城(みずき)とは、飛鳥時代に、白村江で唐と新羅の連合軍に壊滅的な敗戦を喫した天智天皇が、さらに大陸から侵攻されるという恐怖におびえ、大宰府の防衛のために建設した、土塁と堀である。──列車から降りて、まず驚いた。線路の行く手に、緑の森の壁があって、それを切通しで貫いて線路と県道が通っているのだ。

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 眼前に見たのは初めてだ。

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 水城の切通しを進む鹿児島本線の列車。

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 急斜面。なるほどこれは人工的な斜面なのか

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 古代官道と西門が通っていたとされる口で水城を越えたが、ただの地元の山道のようであった。土塁の反対側に出た。いまでも水が溜まっている

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 おや、かわせみが…

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 土塁に沿って歩いてみるが、線路に突き当たるため、そのままたどることはできない。住宅街を抜けて踏切を渡り、線路の反対側に向かってみた。

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 土塁の上はこんな状態。ちなみにこの下には自動車教習所があるのだが、教習所の敷地の中に民家があって、水城の土塁に沿った道とつながっている、という、不思議な状態になっていた。

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 土塁が途切れてしまった。川沿いに水田が広がり、西鉄の線路と九州自動車道の高架が平野を貫いている。地図を見ると国道3号も通っていて、その向こうにまた水城の遺跡が残っているようだが、往時はつながっていたのだろうか? でも川があるからなあ…

 JR水城駅近くの切通しは、鉄道建設のために近代に切り取られた場所だそうだが、2014年に土塁の断面の発掘調査が行われたそうだ。版築工法に加えて、敷粗朶(しきそだ)と呼ばれる、要するに木の枝葉をそのままぶちこむ工法のようすが出土したそうで、説明パネルによると以下のごとくである。

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 緑の葉が出土して、1350年ぶりに空気に触れた瞬間に黒くなってしまったというのだ。…歴史のロマンじゃないか!

 水城は、土塁だけではなく、内側と外側の堀と、土塁の下に樋を設置して水を通すような機構も備えたものだったようだが、よくわからない部分も多いようだ。また水城だけではなく、近隣の山の上に造られた大野城や基肄城もあわせて、大宰府防衛ラインを形成していたそうで、それらを、ものの1~2年で建設してしまったのだから、大変な事業であったものと思われる。ぼくもこの土塁を間近に見て、規模の大きさに驚いたし、当時の国家的な危機感のようなものが、少しは理解できたような気がする。

8/17(土)中洲

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 劇場を出て、中洲の繁華街を歩いた。歓楽街を、いかにもな雰囲気のおねいさんが肩で風を切って歩き、道端の黒服が頭を下げて挨拶する。あまり旅行者が近寄る場所ではないだろうが、目に見えてわかるそういう土地というのは、逆に、わかりやすくてよいとも言える。避けたければ避ければよいのだ。──大通り沿いには一蘭の本店があって行列ができていたが、繁華街で適当なラーメン屋に入って…

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 なんとなくワンタンメンを頼んだら「麺のかたさ」と尋ねられた。さすが福岡で、ワンタンメンも豚骨で細麺なのだ。なんだか感心してしまった。非常にうまかった。

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 川沿いに屋台が並ぶ。観光地の一つなのだろうが、大変な混雑である。韓国人や中国人の観光客も多い。

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 キャナルシティがそびえ立つ。蒸し暑いが、川風は少しなりとも心地よく、思い思いに過ごしている人たちの間で、どことなく居心地の良い街だ、と感じた。──そんなわけで、西の都会の空気を吸って、博多駅の南側にあるホテルまでぶらぶらと歩いた。

東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』@博多座 8/17

 一年おきの奇数年に制作上演されている、東宝版『レ・ミゼラブル』ですが、今年は帝劇のチケットを取ることができませんでした。今年のレミゼは全国ツアーで、名古屋・大阪・福岡・札幌を廻っているのですが、名古屋御園座・梅田芸劇の発売日にもチケットを取れず…。最近のレミゼの人気ってちょっと異常なものがあるよなあ、と思いつつ、勢いあまって博多座のチケットを取りに行ったら、これが取れてしまったのでした。

東宝『レ・ミゼラブル』

 8月17日、土曜日の午前中から、ぼやぼやと出かけました。とくに予約もしておらず、出がけに町田駅でなんとなく買った特急券は、10時49分発の『のぞみ25号』のものでしたが、B席しか取れなかったので、思い直して新横浜駅で変更してみたら、その10分後の『のぞみ167号』の通路側C席が空いていました。繁忙期特発の列車の方が狙い目のようです。──10時59分発の16号車で出発。A・B席には南アジア系の母娘が座っていましたが、新大阪で彼女たちが下りていくとき、近くの座席を含めて7人の大家族だったことがわかり、ちょっと驚きました。

 新大阪を出ると、『のぞみ』の車内は、空いていく一方に。──新横浜から4時間50分、本を一冊読み、コンビニのおにぎりを食べて、昼からビールを飲んでいるうちに、博多駅に着きました。

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 当日に雑に切符を買って、まんまと千キロ移動してしまった

 博多の駅前、西日本シティ銀行の鉄錆色のビルがある側に出ると、何かのお祭りをしていて、出店が並んでいました。またビールでも飲んじゃおうかと思いかけましたが、とにかく暑いので、早々にKITTEに避難…。地下のドトールコーヒーで休憩してから、地下鉄で中洲川端へ移動しました。福岡アジア美術館を瞥見してから、さて、博多座へ。

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 博多座には2007年に一度来たことがあって、そのときもレミゼを見に、当日の新幹線に乗って福岡に来たのでした

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 本日のキャスト。17時30分開演です

 今回、とにかくレミゼを見ることだけを目的にチケットを取ったので、キャストスケジュールを把握していませんでした。──日本のレミゼもだいぶ世代交替していて、上原理生氏がジャベールなんだ、ふーん…と思いながら客席に入りましたが、これが、ものすごいジャベールだったんですね…! 狂気を湛えた、恐ろしいジャベール。「あいつのことならよく知ってます…」の場面での、市長への詰め寄り方、あの表情には、ちょっとあっけにとられました。また、2幕でバリケードが落ちてから、アンジョとガブローシュの死体を検めながら、何か言葉にならない叫び声を発していたり、最後のセーヌ川の場面では顔をバッと手で覆ったら額のピンマイクに当たってガツッと音が入ってしまうなど…。。

 全体的な方向性としてはやはり演技多めの演歌的なレミゼで、テナ妻安定の森公美子氏がかすんでしまうくらい(というか、逆に、今回のモリクミさんはアドリブをおさえていたような気がしますが)でしたが、、、“極限状態の狂気”の演技を見せつけられるレミゼでした。2幕のバリケードで、「市民たちは寝てるぞ」と言われて、学生たちがうおおーと雄叫びをあげ始めるのです。敗北を悟って狂っていく悲壮感の表現なのでしょうが、そんな演出は初めて見たし、これにはびっくりしました。それはつらすぎる、と…。今年のレミゼはこんなレミゼだったのか、帝劇で見られなかったのが本当に残念だ、と思いました。

 ファンテーヌは二宮愛さん。どちらかと言うと感情をおもてに出す激しい演技をするファンテだと思いました。工場のシーンで、客観的にみるとまったくわけのわからない理由でいじめられていますが、あの場面が見ていて本当につらかったですし。コゼットを想ってベッドで歌うシーンが、迫真の演技とはまさにこのことで、客席でだらだら泣いてしまいました。──バルジャンは吉原光夫氏、2015年にも拝見していますが、迫力のある歌唱から老いた演技まですばらしく演じられる俳優さんです。エポニーヌは屋比久知奈さん、どちらかというとあまりエポっぽくないかな、と思いましたが…。コゼットは乃木坂46生田絵梨花さん。コゼット役は昨シーズンからでしたっけ。初めて拝見しましたが、舞台映えする方で、コゼットは当たり役なのではないでしょうか。

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 2013年以降のレミゼの新演出にも、だいぶ慣れてきましたが、この新演出が最も美しいのは、2幕の下水道なのではないかと思います。映像と舞台上の空間をうまく使って、本当に一体化して見える、名演出です。ただ、そのあとの、ジャベールが静かに待ち構えているバルジャンとの対決シーンのX字型の照明や、そもそもあの床からひょこっと開く蓋など、旧演出ならではの名場面もあったんだよなあ…。『On my own』を歌い終わったエポがコートをバッとひるがえしてバリケードに消えていく場面なんかも、いまだに思い起こされます。レミゼは、旧演出と新演出のよいところを合体した演出が、できませんかね(^^;

 そういえば、テナルディエの宿屋の場面では、「便所など、二度入りゃ…」、おお、ついに「10パーセント上乗せ」になってしまいました(笑/原語の歌詞では"Two percent for looking in the mirror twice"、日本では、消費税が上がるとともに「3パーセント」→「5パーセント」と上がってきていたのですよね。前回は「8パーセント」って言ってましたっけ? 忘れちゃいましたが)。まったく、世知辛い世の中です。

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 博多座、椅子も座り心地が良くて、綺麗でよい劇場です。客席の雰囲気は、やはり、リピータだらけの帝劇と比べると“初めて見に来た”という人が多そうだと感じました。また、ロビーの物販のものすごい勢いに圧倒されますし、休憩時間が30分とたっぷりしているのにも驚きますね。──今回、A席(博多座はS席がなくて1階がほぼA席のようです)を奮発したら、ものすごくよい位置だったのです。1階H列、というチケットの字面的にはそんなに前だと思っていなかったのですが、博多座の1階席は、オーケストラピットが作られるとどうやらE列が最前列になるらしく、H列とは前から4列目だったのですね…! 下手側でしたから、バルジャンがジャベールを逃がす場面などほぼ目の前で演じられるのでした。

 また、そうでなくても、帝劇に比べるとだいぶ鋭いPAが入る博多座ですから、1幕の工場のアンサンブルなど、ものすごい迫力で、…なんだか変な思いがしてしまったのです。あわせて数万円の交通費と宿泊費を使って、眼前で演じられる“レ・ミゼラブル=悲惨な人たち”の芝居を見ている自分、という存在が、何かの矛盾を体現しているような気がして、いたたまれなくなってしまったのです。何度となく観劇しているこの演目ですが、そんなふうに感じたのは初めてでした。

8/12(月)町田の縄文土器

 町田市民文学館「ことばらんど」での展示。市立博物館でやればいいのに、と思うけど、市立博物館は老朽化で閉館してしまったのだった。

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 造形のテンションが高いよね…

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 奇妙な、UFOのよう

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 便宜的に「異形土器(香炉型)」と呼ばれているようだが用途は不明らしい。縄文時代晩期の、複雑な土器。

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 みずち紋

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 中空土偶の頭。

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 奇妙な人面模様。

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 耳飾りとされているもの。町田でもこういうのが出てるんだ。繊細に見えるけど、これ、どのくらいの重さがあるのだろう

8/11(日)三溪園と横浜美術館

 猛暑の日。根岸線根岸駅から市バスに乗って10分ほど、さらに本牧の高級住宅街を歩いて10分ほど。三溪園は、横浜港を見下ろす丘の上にあり、原三溪という戦前の実業家が作った庭園である。横浜の名所としては昔からある場所だけれど、これまで来たことがなかった。

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 想像していたより広い。山に囲まれたような敷地に、古建築が点在している。

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 鶴翔閣。山の別荘に来たような風情だ。中では現代日本画家の展示をしていた。

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 これらの古建築は、原三溪が京都や日本各地から移築してきたものなのだそうだ。

 「三溪記念館」では、横山大観速水御舟など、原三溪がパトロンとなった画家たちの作品が展示されていた。“日本むかしばなし”のような山里にお坊さんがコソコソしている、速水御舟の絵(『寺の径』)に、ちょっと楽しくなってしまったが、速水御舟ってこんな絵も描いた人だったのね。──気になったのは、下村観山の『秋色』という作品、薄墨のように描かれた樹木と、その手前に鮮やかな青い葉が描かれる、そのコントラストと、木の幹の虚ろな不気味さが…。また、下村観山の、関東大震災で失われた障壁画『四季草花図』というのがあったそうで、それを横浜美術大学の越智波留香さんという現代の画家が復元したという。日本画っぽさのない、からっとした明るさが印象に残った。

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 二条城から移築されたという「聴秋閣」。

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 ちょっといいね、と思うが、渓流に面して建っており、湿気はすごそうだ

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 あの垣は珍しいね、なんというのだろう

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 なにせ、合掌造りがあるのだ。これには驚いてしまった

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 青磁に花が活けてあるし!

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 展望台からは海沿いの重工業地帯が見える。

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 三溪園関東大震災で被害を受けて、再建されなかった建物もあるそうだ。煉瓦造りの遺構が残っている

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 太湖石が散らばっている、庭園の跡である

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 そして、旧燈明寺三重塔。室町時代のものだということだ。

 自分ちの敷地の中に、深山幽谷・神社仏閣を取り揃えてしまったのだから、原三溪という人は、まったく、極まった人だ。──真夏の午後、歩きながらかなり汗をかき、くたびれた。帰りは三溪園の前からタクシーに乗ってしまい、ワシン坂をぐいぐいと登ってインターナショナルスクールの前を通り、元町・中華街駅まで出た。

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 そして横浜美術館へ。

横浜美術館原三溪の美術 伝説の大コレクション

 原三溪は、コレクターであり、茶人であり、自ら絵などもものするアーティストであり、そしてアーティストたちのパトロンであった、ということで…、ものすごい数寄者であったようだ。──たしかにものすごいコレクションで、『寝覚物語絵巻』なんて初めて聞いたし、あの有名な狩衣姿の『伝源頼朝坐像』も原三溪が入手したあげく今では東京国立博物館所蔵の重要文化財であるということだ。円山応挙の『虹図』の妖しさにはぞくりとした(これは今ではMIHO MUSEUMの持ち物だという。さすがの目の付け所、と思ってしまう)。また、原三溪という人は、こうしたコレクションの買入れの記録を事細かに書き残していたそうで、そんな帳面が展示されていた。

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 横浜美術館、コレクション展も一巡してから出た。みなとみらい界隈は、ピカチュウのヘッドギアをつけた人たちで大騒ぎである。あれ、今年もやってるんだ。

 最後に、桜木町駅前から市バスに乗って、長者町へ…

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 牛肉刀削麺。やっぱりこれでしょ。暑い夏の日、辛いものを食べてさらに汗をかいて、関内駅から帰宅。

SUMMER CHAMPION 2019 ~Minori Chihara 11th Summer Live~ @河口湖ステラシアター 8/4

 そんな大変な深夜帰宅をした次の日ですが、また、昼から出かけました。茅原実里さんの夏の河口湖ライヴ、11年目の今回も、土曜と日曜の2daysです。そう、ぼくは土曜日は幕張に浮気していたのでした…。

SUMMER CHAMPION 2019 ~Minori Chihara 11th Summer Live~

 八王子から特急『かいじ7号』に乗り込みました。全席指定になった中央線特急、スマートフォンの“えきねっと”で直前に横浜線の車内から指定席を押えていましたが、乗ってみると案の定、座っちゃってる座席未指定券の人がいて、どいてもらうのに一苦労でした。同じような場面は車内のあちこちで繰り広げられていて、以前よりも値上げされた特急料金を払っているのにもかかわらず、この混乱状態は…、JR東日本、本当になんとかしてほしいです。

 大月で接続する富士急行線は、快速『富士登山電車』というもので、これはたしか全席指定だから乗れないんじゃないかな、と思いながら改札窓口で聞いてみると、一般車両が連結されている、とのこと。なるほど、元京王電鉄のクリーム色の車両が、後ろに付随しています。これは連結されている日とされていない日があるらしく、それはわかりにくくないか…? かなりの混雑で、外国人観光客が吊革につかまって運ばれていました。

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 今年は猛暑の河口湖駅に下り立ちました。例年通りぶらぶら歩いて、今年はちょっと時間があるので食事に寄ってから、会場のステラシアターへ。ひなたは焼けるように暑いですが、木陰に入って一息つくと涼しい風が感じられるところ、やはり東京の暑さとは空気が違います。

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 昨年の10周年記念で植樹された、みのりんの記念樹。

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 ぼくの座席は2階のDブロック、ほぼ中央付近でした。──スタートに先立って、一人でステージに出てきたみのりん。先般の京都アニメーションの事件に触れて、会場全体で黙祷を…。あれは本当にひどい事件でした。しかしすぐに切り替えて、最高のパフォーマンスを見せるみのりんでした。一曲目から『Sunshine flower』の多幸感に、ぼくはしびれていました。ここはこんなに幸せな場所なのに、なぜ世界ではあんなにひどいことが起きるのか、という考えが、頭を離れませんでした。

・Sunshine flower
・HYPER NEW WORLD
・NEO FANTASIA
・恋
会いたかった空
・言の葉
・夏を忘れたら
《スタッフリクエストコーナー》
 ・Celestial Diva
 ・一等星
 ・Happy Kaleidoscope
 ・Say you?
・アイアイ愛してるよ♡
・君がくれたあの日
・蒼い孤島
・Final Moratorium
Paradise Lost
Freedom Dreamer

-encore-
・エイミー(新曲)
・アイノウタ
・美歌爛漫ノ宴ニテ

*

 この日は序盤から徐々に可動屋根が開き、涼しい風が通って、気持ちの良い半野外ライヴでした。中盤、みのりんがハットをかぶって、スタッフが選んだセットリスト、という流れに。『Celestial Diva』がベースの岩切さん(しんちゃん)のチョイスで(Innocent Ageツアーのときのみのりんが女王様のようだった、というコメント)、『一等星』が室屋大先生のチョイス(当時、須藤さんのアレンジがヴァイオリンが鬼のように難しく、自分の成長も込めて…、とのこと)、『Happy Kaleidoscope』がキーボードの須藤さんのチョイス(譜面が呼びかけてきた、というほっこり(?)エピソードでした)。そして『Say you?』はハートカンパニー斎藤さんのチョイスでした。黎明期からみのりんを支えてきてくれた斎藤Pは、今年は急遽、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のプロモーションでドイツにいるとのことで、すっとぼけたレターコメントをみのりんが読み上げていました。──『Happy Kaleidoscope』を選んでくれた須藤さんに、特に拍手でしたね。2011年のKey for Defectionツアー以来の選曲でした。

 旗曲で客席を廻ってから、『君がくれたあの日』以降の怒涛のセットリストでは、だいぶ跳びました。初期のブチ上げ曲『蒼い孤島』も、意外にひさしぶり。終盤は可動屋根が閉まり、薄暗くなってペンライトが映えるようになりましたが、そのせいか風が通らなくなってものすごい熱気になりました。

 8分の6拍子の語りかけが印象的な、新曲の『エイミー』を披露してから、直前にディジタルリリースしていた『美歌爛漫ノ宴ニテ』というコミックソングっぽい曲でおしまいでした。打ち上げ花火は、2階からはそれほどよく見えませんでしたが、高めの花火と低めの花火をうまく取り混ぜて、見せてくれるんですよね。

*

 京都アニメーションの事件は、一消費者であるぼくにとっても、ショックでした。取り返しのつかないことが起きた、そしてそれはいつでもどこでも起こりうる、という事実に、おののくばかりですが、仕事上のつながりが深かったであろうみのりんが、この日、元気にライヴをしてくれたことに、まず感謝します。最後の挨拶で涙声になり、おじぎしたまま長い間、顔を上げられなくなっていたみのりんを見て、どうか泣かないで、と思ったのでした。──また会いましょう、また来年この会場で、約束だよ、とみのりんはいつも言ってくれます。でも、それってなんだったのか、“約束”とはいったいなんだったのか、“また”なんてないのかもしれないのに、…ということが、突き付けられたような気がしたのです。

*

 19時半頃に終演しました。今年はやたらさくさくと進行するなあ、と思いましたが、…そうか、バンドのインストコーナーがなかったんだ。富士急ハイランドの方向からは、怒号が聞こえてきます…そう、この日はコニファーフォレストでRoseliaのライヴが重なっていた日だったんですよね。河口湖駅まで歩いて、20時09分の各駅停車大月行きに乗りましたが、河口湖発車時点ですでにみのり勢で満員のところ、ハイランド駅からそれに数倍するRoselia勢が突入してきて、わずか3両編成の富士急行線の車内は、本気の首都圏朝ラッシュ並み、小柄な女の子が押しつぶされそうになるような大混雑になりました。こうなることはわかっていたのですが、ただまあ、河口湖という土地から公共交通機関で首都圏に帰るには、他に打つ手はありません(中央高速バスも、小仏トンネルの激しい渋滞で、散々だったようです)。──たっぷり1時間後の大月で、待ち構えていた中央本線普通列車に乗り換えましたが、もはやここでは確実に座りたくて、大垣ダッシュ並みに走ってしまいました。

TrySail Live Tour 2019 “The TrySail Odyssey”追加公演 @幕張イベントホール 8/3

 今年の2月にツアー序盤の公演を見に行ったTrySail、まだツアーやってました。…いや、日程的に、この8月第一週の土日は必ず追加公演を構えてるよね、とは推測していて、大きいところで構えてくるんじゃないかな、、、と期待していましたが、発表されたのはまたもや幕張イベントホールでした。ちょっと肩すかし感もありましたが、友人に誘われてホイホイと参加することに。──この日、幕張は花火大会と日程がかち合っていて、海浜幕張駅はたいそうな人ごみになっていました。しかもメッセのもっと大きい方では、ジ・アルフィーのライヴも行われていたということで…、文字通り、老・若・男・女(!)が入り乱れる、幕張界隈だったのでした。

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LAWSON presents TrySail Live Tour 2019 "The TrySail Odyssey"

 この日は18時開演と、ゆったりした時間で、日中の暑熱も多少なりともおさまったあたりで集合して、冷房の効いたホールに入れたのは幸いでした。──この日は友人のおかげでアリーナ席に…。驚いたのは、アリーナの椅子が、ちょっといいやつだったんですね。今年、某イヴェントでは、同じ幕張イベントホールのアリーナで、安物のパイプ椅子がギッチリ並べられて、そこにギュウギュウに詰め込まれて、ひどい目に遭ったのですが、この、布張りのいい椅子(笑)には、ちょっと感動しました。──面白かったのは、開演前の場内に、スクリーンで『Sunsetカンフー』のMVが流れたときの、異様な盛り上がり。この曲、人気投票でMVが新たに作られたということで、前日だったかな?にYouTubeで披露されてましたが、…このコミックソングがなぜそこまで人気があるのか、謎です(笑/冒頭で夏川さんが澄ましてドワ~ンと銅鑼を叩くところでぼくもすでに笑ってしまいましたが)。

・WANTED GIRL
・CODING
・未来キュレーション
・《夏川椎菜ソロ》パレイド
・《雨宮天ソロ》メリーゴーランド
・《麻倉ももソロ》ユメシンデレラ
・またね、
・Make Me Happy?
whiz
・Chip log
・バン!バン!!バンザイ!!!
・コバルト(Chorus)
・Take a step forward
・Truth.
・Believe
・Sunsetカンフー
・メドレー(ひかるカケラ→僕らのシンフォニー→Baby My Step→High Free Spirits
・azure

-encore-
・primary
・TryAgain

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 よかったのは、なんすソロの『パレイド』。夏川さんのソロアルバムは、制作に力が入っていることをひしひしと感じる名盤ですし、ちょっと“言葉にならない叫び”感のあるこの曲は、ぐっときますね。

 なんかこのツアー中に、サイコロトークをする流れがおきまりになっていたらしく、やっていましたが、もちょがサイコロをやたらと雑に扱い、「もう用済みだし」的なセリフを冷たく言い放っていたのが、個人的にはこの日のハイライトでした(笑)──3台のトロッコがやたら高速で走り回る例のコーナーでは、アリーナにいるとわりと三人それぞれ均等に目の前に来てくれるという、親切設計。白い衣装がかわいいです。

 前回に引き続いてぼくが注目していたのが、ハモリ曲…『コバルト』でしたが、これ、ぜひとも三人の譜割りを公開してくれないかなあ。ぼくはてっきり、上を歌っているのがもちょだとばかり思っていたのですが、同行の友人たちにあとで聞いてみると、「天ちゃんでしょ?」「なんすじゃないの」と、全然わからず(笑)。この日もよく決まっていましたが、そのあとは若干、三人とも苦しそうだったような。やっぱり大変なんじゃないかなあ。

 びっくりしたのは、アンコールで出てきたときに、もちが頭を押さえてうずくまっていたこと。頭をぶつけたらしいのですが、あれちょっと本気で心配しましたが…なんかふらふらしてるようにも見えたし…。大丈夫そうだったので、安心しましたけど…。この日は収録が入っていたようですが、さすがにあの場面は使えないのではないかと思います。──また、花火大会と日程が被っていたので、ドゴンドゴンという花火の音が場内まで聞こえてくるくらいで、これ収録しても使えるのかな、いや今はこのくらいならミックスでうまいことできちゃうのかしら、とか思ったりしました。

 20時半過ぎに終演。この日は、海浜幕張駅近くの飲み屋で友人と打ち上げてから、22時50分頃の京葉線で、相変わらず恐ろしい混雑の海浜幕張駅を離れました。花火大会ってこんなに人が来るものかね…。京葉線の東京駅から地下鉄の日比谷駅に徒歩で乗り換えて、うまいこと小田急に乗り継ぐ…つもりが、しかし、この日の夜の小田急は、人身事故と異音と線路内人立入の三連コンボで、すっかり壊滅しており、24時を回った代々木上原駅で40分近く待たされたあげく、乗れない程度に混雑した快速急行に無理やり乗って、地元に帰ってもタクシーの大行列、という、控えめに言っても散々な目に遭ったのでした。

メスキータ展@東京ステーションギャラリー 7/31

 平日の午後に大手町界隈で自由になったので、東京ステーションギャラリーへ。メスキータとは、スペイン人のような名前だが、ユダヤ系オランダ人とのこと。木版画の強いコントラストにまず目を奪われるが、細部を見るとまた感心する。輪郭線がなく、彫るパターンによって、面や陰影、立体感があらわされている。木版にこんな表現があるとは知らなかった。

 メスキータはナチスホロコーストによって、収容所で妻子もろとも殺され、もぬけの殻になった部屋を訪れた弟子のエッシャーが、作品を持ち帰って守り抜いた、というエピソードがあるそうだ。展示の終盤にあった無気味なドローイングの数々は、どこまで諧謔でどこからシリアスなのかはかりかねるところもあった。

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東京ステーションギャラリー>メスキータ

「The Nature Rules 自然国家」@原美術館 7/28

 原美術館に行ってきた。朝鮮半島の非武装地帯は、人が足を踏み入れられないことから、生物の豊かな楽園になっているそうだ。地雷や、政治的な課題を克服できたあかつきに、現代アーティストや建築家たちが、そこでなにかを作ろうという、“自然国家”というプロジェクトの紹介であった。──だが、そこまで感心できなかったのは、やはり、国家や民族の暴力的な分断という高度に政治的な問題と、それに伴う問題意識を、ぼくが皮膚感覚として共有できないからなのだろう。自然が残っているならそこになにも作らなくていいのでは…と思ってしまうのだった。最も共感できたのは、「恒久的な建築を作るのには反対、作るにしても朽ちるに任せる」という、『鳥の修道院』だった。

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原美術館>The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project

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 原美術館、もうすぐなくなってしまうのだよね。

オペラ『トゥーランドット』@東京文化会館 7/13

 オペラ『トゥーランドット』を見に行った。オペラを見に行くのは実は初めてだが、『トゥーランドット』はぼくが唯一、あらすじと音楽を知っているオペラである。前から一度見てみたかったので、東京で上演があると知り、大枚をはたいて、S席のチケットを購入していた。

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 上野の東京文化会館、ここの大ホールに来るのはだいぶひさしぶりだ。学生時代以来かもしれない。開演前からビールを飲んで一服。

オペラ夏の祭典2019-20 Japan⇔Tokyo⇔Worldトゥーランドット

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 この『トゥーランドット』、問題演出だと話題になったようだ。たしかに、このオペラと聞いて一般的にイメージする、西洋人が空想した華麗かつ間違った東洋、の演出では、まったくなかった。──白衣の二人…大人の女性と、子供のような女性…が、同じく白衣の男に、禍々しく誘われて捕まえられる、謎の無言のシーンから始まり、オーケストラのイントロダクションが響き渡る。このシーンについてはあとから理解できる。

 そびえ立つ階段状のセット(インドの階段井戸を思わせる)に両側と奥を囲まれて、どの時代のどの国の人々ともつかない、ボロをまとった群衆が、黒人の兵士に打ちすえられている。どうして兵士が民衆を虐待し続けているのか、脈絡はない(黒人と見えた兵士は、日本人が特殊メイクで演じていたようだ)。階段状のセットにしずしずと白衣の少年合唱団が現れたときは身震いした。ピン・ポン・パンは酒瓶を持ったごろつきである。──これは『トゥーランドット』が描く東洋の帝都・北京なんかじゃない、幻想SF世界だ。そして、そこを支配しているのは、天井から下りてくる巨大セットから現れる、白い衣装に身を包んだサディスティックな皇姫、トゥーランドットである。姫が、言い寄ってくる世界中の王子に、難題を出してはそれが解けないからといって殺し続けているのは、言うまでもない。ペルシャの王子の首が切られる場面に居合わせたカラフは、姫を一目見て、なぜか執着してしまい、リューと父親の制止を振り切って、結婚の挑戦申し込みの銅鑼を三回、鳴らしてしまう。

 第二幕では、ピン・ポン・パンは労務者風であるが、その後ろでは全身防護服にガスマスクをつけた人物が農薬を撒くような、除染作業のようなことをしながら歩き回っている。俺は河南に家がある。帰りたい。湖のほとりで、経典を読むのだ…。この歌に、なぜか胸を打たれた。自分の仕事をしていたらいつの間にか取り返しのつかないところまで来てしまった者の歌だったのだね。ただ、歌詞と彼らのいでたちがあまりつながらないのは、演出としてはどうなのだろう、とも思う。

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 ──どうもピン・ポン・パンという狂言回し的なキャラクタにばかり目がいってしまうのだが、第三幕では彼らはやっと原作通りの官僚やら大臣やらという役柄に戻ったようで、白い長衣を着込んで髪も撫で付け、「誰だあんたら」と思ってしまったくらい、これまでとは別人のようであった(別人なのだろう)。彼らがカラフを誘惑するときに登場する「美女」たちの格好が、ちょっとすごかったね(笑)。リュー役の砂川涼子さんは本当にすばらしい歌と演技だった。とにかく見せ場の多い第三幕で、ティムールの歌もすばらしかった。白と黒のグラデーションの衣装のトゥーランドットが、リューの死を悼んで、遺体の手を胸に当てさせる。

 そして、カラフとトゥーランドットが結ばれる結末になるはずの最後の場面、モノクロームの舞台に赤い花が降り注いだ。美しい場面ではあったが…、しかし、降らしものは中途半端なヴォリュームで終わってしまい、なんだこれ、けちったのかな、などと思っていた。そういえば皇帝も出てこないし、リューは舞台上で死んだままだし、トゥーランドットの表情も妙に硬いし…と、違和感を持っていたら、音楽が大団円になる瞬間、突然、トゥーランドットがナイフで自分の首を掻き切って、暗転した。

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 なんだこれは、と呆気にとられたのだけれど…。終演後も、「なんだったのあれは!」と、騒然とする客席であった。──前情報を何も仕入れずに見に行ったのだが、ハッピーエンドにはしない、という演出家の意図は、示唆されていたようだ。たしかに、最後のあれで、ある意味で、ディストピアが完成した、とも思う。今回、オーケストラはかなりクリアであったので、リューの死より後のプッチーニ没後の補作部分が、それまでとはまったく違う音楽であることがとてもよく感じられたから、取って付けたようなハッピーエンドはなにかおかしい、という意図はわからなくもなかった。

 いろんな解釈ができるだろうが…、トゥーランドットは幼いときに祖母のロ・ウ・リン姫が外国人に犯されるのを目の当たりにし、それがトラウマとなって、貴種の男を殺し続けている、という設定だ(冒頭のシーンはそれだったか、と理解する)。彼女は、復讐のために世界を滅ぼそうとしていたのだ(第二幕でピン・ポン・パンに、この世(英語字幕ではcivilizationと訳されていた)の終わりだ、というような歌詞がある)。

 だがしかし、それならば、死ぬべきはトゥーランドットではなくカラフだったのではないか、とも思う。演出家の意図としては、カラフに愛などなく、トゥーランドットへの執着は権力への渇望だったのだ、ということだそうだ(その解釈はわからないでもない。だって、おかしいもんね、あの人(笑))。であれば、利己的な欲望のためにリューの愛情を踏みにじったカラフこそ死ぬべきであり、トゥーランドットは何者にも汚されずに、これまでもこれからも、この世界に君臨し、そしてそれを滅ぼしてこそ、ディストピアの完成だったのではないか。

 それはともかく、来年の五輪に向けた祝祭的な意味合いのあるこの東京での公演で、こんな前衛的な解釈をやられてしまったのは、非常に面白かった。この公演は東京文化会館新国立劇場のあと、全国数か所で上演し、NHKでの放映も予定されているということだ。