night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

川瀬巴水展 @平塚市美術館 5/30

 日曜の昼から電車に乗った。職場と、隣接の市以外に出かけるのは、実に3月上旬以来である。小田急で藤沢に出て、東海道線に乗り換えて平塚へ。平塚で下りるのは初めてで、正面ではなく西口という端っこから駅の外に出てしまったためか、さびれた(でも生きている)風俗街のようなところを突っ切ることになった。首都圏というよりは、どことなく旅先で歩く地方都市という感じがする。

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 国道1号線を渡って歩いて行くと、公園の中にこんなところが。

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 あらきれい

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 ここは“八幡山の洋館”というところで、明治末年の建物だそうだ。正式名称を“旧横浜ゴム平塚製造所記念館”という。平塚は海軍火薬廠のあった古くからの工業都市で、海軍の水交社の建物だったものが戦後に横浜ゴム株式会社に払い下げられ、その後、平塚市のものになってここに移築保存されたものだという。中の見学は無料。

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 ホールからはピアノの音が。

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 コロニアルな感じでいいね

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 さて、また少し歩いて、平塚市美術館へ。立派な施設だなあ。

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平塚市美術館開館30周年記念 荒井寿一コレクション 川瀬巴水展

 これは行かなければならないと思っていたのだ。この禍の時代に、開館している(緊急事態宣言下の東京都内ではないからかな)だけではなく、予約制などの入場規制を特にしていないのもありがたい。

 川瀬巴水は、新版画というジャンル(?)で有名な人だが、並んでいるのがとにかく発色の鮮やかなものばかりで驚く。いくつかの作品は写真撮影も可。

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 芝増上寺。この鮮やかな赤と降りしきる雪。わりと有名な作品で町田の版画美術館でも見たことがあるけど。

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 展覧会のポスターにもなっている、『旅みやげ第二集 金沢下本多町』。これなんかも、はっとしてしまう。夏の光と空気の記憶が、瞬間的によみがえってくるような画面だ

 黒々と夜の雨に濡れる敷石に、光る街灯の明かりや人力車のランプの光が反射する『東京二十景 新大橋』なんて、そのぬめる地面の表現が際立ってすばらしい。この人は夜の街角に人工の光を描き込むのがうまい。『旅みやげ第三集 大坂高津』の木の影も、これはたぶん月光ではなく人工の光だろう。──この人の版画の魅力は、観光案内風に各地の風景を描きながら、そこに人の営みが描き込まれるところなのではないかと思う。光がある、すなわちそこには人の暮らしがある。戦後の『岡山のかねつき堂』なども、地方の象徴的・伝統的な建物を主題にしつつ、その手前の家の窓辺にかけられた衣服などを細かく描き込む。海外向けにただ風景を描いただけの絵がわりと面白くないのに対し、人の暮らしのにおいがすると、ぐっと引き込まれる絵になる。

 図録は売り切れていた。ポストカードは何種類かあったが、実物とは発色が全然違うものばかりで、ちょっとうーんと思ってしまい、買わなかった。

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 平塚市美術館、初めて来たけどとても立派な施設だ。

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 工場の間を歩いて行ったら、いきなり佐藤忠良の彫刻があったので驚いたのだ。

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 これは舟越保武。どちらも透明感のあるいい彫刻だと思う。

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 こういうトガってるのもある。淀井敏夫の『海』という作品。

4月の園芸部

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 3月6日に植えた花壇、先手を取って咲き始めたのはバーベナでした。バーベナ・テネラという種類だそうです。(4月3日)

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 なるほど、これがかえでの花か。(4月14日)

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 花壇、次に咲いたのはリムナンテス。やさしい黄色で、きれい。

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 種をまいて、目印に、わりばしを…。なんか墓場みたいになっちゃったけど、どうなるかな。

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 あと、この人たちを種から育てていたんですが…

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 素人が種から育てるのは難しいのではないか、と思って、ホームセンターで、苗を衝動買いしてきたのでした。(4月18日)

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 3月初めに、「何か急に土の中から芽が出てきた!」と思っていたしゃくやく。1か月半でこんなに立派な花が咲くとは。たいしたものです。(4月22日)

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 引き続き、バーベナとリムナンテス。リムナンテス、卵の黄身のような黄色い部分が、きれいな真円のようになっている。自然って不思議。

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 リムナンテス、きれいなんだけど、株はこんな状態。もしゃもしゃです。ちょっと育ちすぎているようです。

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 ニコチアナ、これが花が咲いた状態っていうことでいいのかな。十日ほど前から急に草丈が立ち上がってきて、どんな花が咲くのだろうと思って見ていました。うつむき加減の、小さならっぱのような花です。葉っぱも大きいのですが、好物にしている虫がいるらしく、だいぶ食われています。

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 この、やたらと派手な花は、ガザニアだそうです。陽が当たっていないと開かない花のようです。(4月24日)

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 足元にはかたばみが。

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 チェリーセージというサルビアの一種らしいです。旺盛に咲いています。

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 冬の間、肉厚の葉っぱだけ茂っていて、アガパンサスかと勘違いしていましたが、ちょっと違う花が咲きました。シラー・ペルビアナ(オオツルボ)という花だそうです。

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 もっこうばらが控えめに咲いています。もっと派手に咲いてくれたらいいのに。

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 これがなんだかよくわかりません。検索すると、シラー・カンパニュラータ、スパニッシュ・ブルーベル、つりがねずいせん、などいろいろな名前が見つかりますが。(4月25日)

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 セリンセ・マヨールがひっそりと咲いていました。(4月29日)

読書&査収音源リスト(2021年1月~3月)

▽わたしたちが光の速さで進めないなら/キム・チョヨプ、カン・バンファ、ユン・ジヨン(訳)

 懐かしい未来の、孤独の物語。ちょっと泣いた。

▽サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する/梯久美子

▽オランダ風説書 「鎖国」日本に語られた「世界」(中公新書)/松方冬子

▽キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編/井上純一

▼太平天国 皇帝なき中国の挫折(岩波新書)/菊池秀明

 非常に面白かった。近代前夜の中国に生まれた「太平天国」という異形の軍事政権について、通史的な本を初めて読んだ。

▽未来国家ブータン/高野秀行

▽武漢封城日記/郭晶、稲畑耕一郎(訳)

▽江戸のナポレオン伝説 西洋英雄伝はどう読まれたか(中公新書)/岩下哲典

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▼僕だけに見える星(mp3)/麻倉もも

 超王道のコード進行なんだけどすごくいい曲。

▼RefRain ▼sleepland ▼Empathy ▼リテラチュア /上田麗奈

 上田麗奈さん、『リテラチュア』はアニメ『魔女の旅々』のOP曲だったので聴いたことがあったのですが、どんな歌手活動をしているのかは知りませんでした。3月14日の1stライヴを、なんとはなしに、配信で見たのですが…

上田麗奈さん1stライヴ、配信終わりました。すごくよかった。歌手というより演劇畑の人なのかもと思った。5年も前からアーティスト活動してたんですか…知らなかったのが悔しい。
2021-03-14 18:51:25
 このコンセプトは最高だ…! と思って、CDを買いあさりました。必ずしも歌唱が上手な人だとは思われませんが、そこで勝負してない、というか…。『aquarium』という曲中の、彼女の、かすれたような演劇的な叫びに、ショックを受けたのです。『fairy taleの夜明けに』や『花の雨』がとくに好き。

3月の花

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 ゆきやなぎが咲き始めた。

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 ヒヤシンスが咲いたと思ったら…

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 地中から赤っぽい芽が急に出てきたので、驚いた。しゃくやくらしい。

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 いろいろ植えてみたけど、どうなるかな。(3月6日)

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 みつまたの花だね。(3月7日)

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 つばき。

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 ゆきやなぎってこんなに咲くのか!

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 あせびと、早咲きの桜。(3月17日)

坂本真綾 25周年記念LIVE『約束はいらない』@横浜アリーナ 3/20

 坂本真綾さんの、横浜アリーナ2daysコンサートでした。ぼくは1日目だけ参戦。この禍の時代、大規模コンサートにはすっかりご無沙汰になっていましたが、どうやら少しずつ開催され始めています。エンターテインメント業界も、規制と社会の動向を様子見しながら試行錯誤しているようです。──ぼくは久しぶりの横浜アリーナですが、キャパを規制上限の五千人におさえているだけでなく、ブロックごとに入場時間が指定されるというものでした。時間指定入場というのは正直言って面倒で、早く入れられたところで場内でヒマになるのは避けられず、若干気が進みませんでしたが、遅れてしまった場合にどうなるのかは特にアナウンスがありませんでした。早くもちらほら桜が咲き始めた鳥山川沿いで少し時間をつぶしてから、指定された時間帯に合わせて、横アリの正面へ。入場時にはもちろんCOCOAのアプリ画面をチェックされ、サーモグラフィを通り、スマートフォンの電子チケットのもぎり操作を自分でやるように指示され、その直後にスマートフォンを持ったまま手のアルコール消毒と荷物チェックを同時に指示されるため、あっあっ、みたいに慌てふためきながら、なんとか入場。

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よく見たら知らないおっさんの画像がアップになっていた、横浜アリーナ正面

 横浜アリーナが久しぶりすぎて忘れていましたが、ここはいわゆるアリーナ席が「センター席」という呼び方で、その周りの1階スタンドのことを「アリーナ席」というのですね(前からそうだったっけ?)。ステージプランはセンターステージで、ぼくは上手側の花道の少し後ろぐらいの位置でした。座席には、手首に巻けるバンドのついた、無線制御されるライト(フリフラってやつですね。坂本さんのコンサートで前にもどこかで見たことがある)がおいてあり、1席ごとの空席にも、ペンライトと、坂本さんの筆跡でこんなチラシが貼ってありました。

来てくれてありがとう 私は今日 あなたを幸せにするためにここに来ました! 一緒に楽しもう。
 これだけでちょっとぐっと来てしまうのでした。坂本さんサイドに開催のための苦労があったこともそうでしょうが、来ているぼくにも、それはいろいろな思いがあったわけですから…。*1

・約束はいらない
・CLEAR
・スクラップ~別れの詩
・ユーランゴブレット
・オールドファッション
・(MC)
・いつか旅に出る日
・独白
・躍動

─with 内村友美─
 ・色彩
 ・(MC)
 ・Sync

─with 堂島孝平
 ・あなたじゃなければ
 ・(MC)
 ・レコード

─with 原昌和 from “the band apart”─
 ・Be mine!
 ・(MC)
 ・でも

・gravity
・序曲
・birds
・(MC)
・25周年メドレー
 ループ
 →ヘミソフィア
 →逆光
 →奇跡の海
 →Private Sky
 →トライアングラー
 →マジックナンバー
 →指輪
 →光あれ
・(MC)
・誓い
・プラチナ
・ポケットを空にして (instrumental)

 円形のセンターステージをすっぽりと8面のモニタが取り囲んでいて、最近のLEDモニタってそれなりに透明っぽさがあるのね、と思いつつも、でもたしか最初はそのモニタが上がらなかったんじゃなかったかな。現れた坂本さんは、明るいラベンダー色で裾がまるく大きく膨れたドレスに、鮮やかなショートカットでした。あれっ、坂本さん、髪切ったの!!

 立つ or not問題で毎度悩まされる坂本真綾氏のライヴですが、今回は、『CLEAR』から前の方の女の子が立ったので(我慢できなかったのでしょう)、私も立ちました。あの女の子ありがとう。見た感じ、ステージの正面寄りはだいぶ立っていたけど、後ろ寄りはそうでもなかったですね。センターステージって、全方向に平等と見せかけながら、バンドやカメラの配置でどうしてもそういうことになっちゃうから、あまり、ね…。──ですが、8面モニタと、おそらくは収録の円盤(?)にも配慮して、バチバチにカメラ目線を送る坂本さんには感心しました。なんか坂本さんらしくないな!(?)

 デュエットアルバムを発売した坂本さんですが、このライヴではそのアルバムに参加した方々をゲストに呼んでおり、la la larksの内村友美さん、なんだかわからんが多少ウザがらみっぽくもやたら会場を盛り上げてくれた堂島孝平さん、そしてバンアパの原昌和氏に至っては一人でベースを弾きながらアリーナのセンターでリフトアップされる(坂本さんは下で特に関係なく歌っている)、という特別扱い(?)でした。ヒゲヅラの庵野カントクみたいな人が頭上で回されているのはとてもシュールな図でしたがとにかくベースはかっこいいというのが悔しい。(?!)

 このゲストコーナーまでが前半、そして転換して後半、という構成だったのかな。もう一度下りてきた8面モニタの鳥かごに入ってしまった坂本さんでしたが、『birds』でその鳥かごが上がって、ミラーボールのまぶしい光が輝きました。この演出にはやられました…。あの、空間に満ちあふれる光。ライヴ、現場に来なければ、体験できないもの。また、『誓い』では、ステージを覆ったシャボン玉の中で歌った坂本さん。──正直なところ、この日の音響はあまりよくなくて、横浜アリーナみたいな会場でPAがよろしくないのはしかたないにせよ、空間的なステージ演出だけは、その場に参加しなければ…。リモートでは体験できないものだなあ、と舌を巻きました。

 最後、『ポケットを空にして』は、これまでならアンコールのお約束で、オーディエンスが合唱するのですが、発声禁止です。バンドメンバーが捌ける前のあいさつ回りをしながら流れたSEでしたが、それに合わせて手拍子をし続けていたオーディエンスは、みんな、心の中で歌っていたのだと思うんですよね。──坂本さんのライヴはもともと特に声を出すような現場ではないのですが、立っていた人も座っていた人も、静かな熱気が会場に満ちていた、不思議なライヴでした。“約束はいらない”って、25年前の彼女のデビュー曲のタイトルであるのはもちろんですが、それと同時に、このすべてが流動的なご時世に挑戦的なライヴタイトルをつけたんだな…、と思っていたのですが、約束がなくても彼女についていくし、そういうオーディエンスがこれだけいるんだなあ、と改めて思った日でした。

*1:このチラシは、翌日も使うんだろうな、と私は思ったし、実際、私が行った1日目はほとんど誰も持ち帰っていなかったのですが、翌日の2日目には、持ち帰られる前提で二日分用意してあった、持ち帰っていいよ、というMCがあった模様。坂本真綾ファンのお行儀のよさ(?)が炸裂したエピソードでした。

大河ドラマ『太平記』アンコール放送 感想(2020年5月~2021年3月)

えーっ、今って『太平記』の再放送してるの?!知らなかったー撮りたかったー見なきゃー https://t.co/IOdOWmx5ce 日曜日朝6:00~ NHKBSPだって
2020-04-19 21:42:19
再放送が始まったことに最近気づいた、大河ドラマ『太平記』、今日の5話から見た。この回の最大の見どころは、佐々木判官のかまとと芝居だよなー。…「いや、違う!」(ニヤニヤ
2020-05-03 20:38:56
アンコール放送の『太平記』15話、見た。名場面ばかり。楠木正成との対話も見せ場だったけど、しゃれこうべに蛇が這う演出、「慈悲の心は犬に喰わせてしもうた」、菩薩の絵に散る禍々しい赤絵具と高氏の足元に散る紅葉…。はっとする演出が多かった。改めてみると本当に力の入った大河ドラマ。
2020-07-12 23:37:45
アンコール放送の『太平記』17話、佐々木判官の芝居が凄まじかった…!
2020-07-27 23:55:13
鎌倉炎上予定日は8/30(日)!>RT
2020-08-11 08:30:58
すごいわかる。金八なんだよね。なにのそれがすごくはまってるの。ほんと誰が考えたんだあのキャスティング、ってかんじ>RT
2020-08-11 12:25:32
あ…『太平記』19話の、登子ねえさんの“綴じ糸”、そしてそれが切れる描写、そういう意味があったとは、気づいてなかった…そうか…
2020-08-11 12:32:32
(でもたぶんあれ高氏も気づいてないぜ())
2020-08-11 12:33:12
『太平記』20話『足利決起』見た。花吹雪の京都に高氏が入城する場面、そうか当時の桜はヤマザクラなんだ、ソメイヨシノはこの時代にはないんだ!といまさらながら感心しちゃった
2020-08-16 08:49:25
『太平記』21話『京都攻略』見た。京都攻略と言いつつ見せ場があるのはやはり鎌倉攻めの方のエピソード、とくに太守と赤橋守時のシーンだよなあ。どんぐりまなこで、よだれまで垂らしていたバカ殿の太守が、急に王者の風格を見せる。ものすごい緊張感だった。…次回、鎌倉炎上!!
2020-08-23 13:46:34
太守「共に鎌倉は祖先の地、御辺もわしも他に逃げてゆく国はない。この鎌倉を、兵や馬で踏みにじる者あらば、戦致すほかあるまい。」
太守が初めて母親や円喜に逆らって、赤橋守時と目線を合わせて言うこの台詞、決然としていて、同時にものすごく深い虚無があって、とても印象的。
2020-08-23 13:56:08
鎌倉に「建長寺、極楽寺、洲崎」の三方から攻め入られたというナレーションがあった。正直、ものすごく狭い範囲の三方だ。鎌倉って本当に「要害の地」だったのか、狭すぎるのではないか?という疑問は、たしかにあるなあ。
2020-08-23 13:59:17
あと、鎌倉にその三方から攻め入られたら、東勝寺なんかに立てこもってないで金沢街道を通ってさっさと逃げようよ、と地図を見ると改めて思う。新田義貞は、実は退路を残していたのではないか? だけど太守は逃げなかったんだねえ。次回、鎌倉炎上…。
2020-08-23 14:09:59
吉川英治の『私本太平記』は読んだことがないんだけど、今日の、太守と赤橋守時の名場面、該当箇所に目を通してみた(青空文庫で)。いやー、驚いた! あのドラマは、吉川英治が書いた台詞や場面をうまく使いながら、吉川英治とはまったく逆の解釈をしてるんだね。脚本の池端俊策氏のすごさを感じた。
2020-08-23 17:48:50
そういえば、太平記のオープニングのこのものすごい滝って、いったいどこの滝なんでしょうか? https://t.co/grI7z2yHGS
2020-08-29 00:35:27
『太平記』22話『鎌倉炎上』。新田義貞の軍略、陰惨な市街戦ののち、炎に包まれる東勝寺で次々に倒れていく北条一族。壮絶な滅びを描きつくした、屈指の名作回でした。そして、親の仇の一族を滅ぼしたにもかかわらず、焼け跡を歩く右馬介に、去来する虚無感。戦争の本質とは…。
2020-08-30 10:25:23
「孫たちは極楽寺口で戦うておるのじゃ…励ましてやらねばのう…」
「修羅を行く輪は業の焔」
「足利の陣営、戦に勝ったと笑う者一人もなく、不思議の勝ち戦にて候」
2020-08-30 10:25:55
太平記24話『新政』。あっちこっちで不穏の芽が立ち上がる一方で高氏サンは相変わらずのさわやか青年将軍ぶりなのでみているこちらの不安も高まってくるわ…
2020-09-13 14:02:52
あと、前から思っていたけど、『太平記』、いまは劇中でも季節としては夏なんだが、京都のシーンではクマゼミがないていて、鎌倉のシーンではアブラゼミがないている、というところが、関東と関西の風土の違いをちゃんと出していて、よい
2020-09-13 14:13:10
大塔宮の部下がゴロツキばかりで、だめだこいつなんとかしないと…という感じだが、ちょっと面白かったのは、新田義貞の奥さんという人。急にやってきて世話女房みたいに口うるさくたきつけるもんだから新田義貞もうんざりしてる、っていう感じの芝居で、…あ、勾当内侍が登場する伏線なのか!
2020-09-13 16:09:15
太平記25話『足利尊氏』。天皇から諱の一文字を与えられついに「尊氏」に改名した足利さんでした。優雅な舞を見せる北畠顕家こと後藤久美子さんが美しかったですね…年代的には顕家はまだ十五か十六歳のはずで、「美少年キャラ」をNHK大河でああいう役柄で表現したのって改めてなんかすごいなと思った
2020-09-20 20:36:45
なんというか、基本的に静かに進行するドラマじゃないですか。声を荒げる台詞はそれほど多くない(大塔宮一味は放っておいて)。その中であの天皇の大声一喝は、ものすごい迫力なわけだ。(どうでもいいけど、今やってる何かが来るほうの大河ドラマは、みんなで怒鳴り合ってて、うるさいんだよね…)
2020-09-20 20:39:33
あと印象深いのは右馬介。北条の滅亡を見届けて虚しさを覚えた右馬介は仏門に入ろうとするが、暇乞いは許さぬ、新しい世を共に見よう、と尊氏に言われる。主君にそこまで言われたら感動するだろうしそういう意図の脚本ではないかと思うけれど、右馬介の表情には変わらず虚無と苦衷が浮かんでいた
2020-09-20 20:45:00
太平記26話。三位局一味(本木雅弘含む)のねちっこい演技に新田義貞が負けている感じがするが勾当内侍とぶつかって扇を取ってあげる出会いの演出にちょっとコノヤロウと思う(笑)。
2020-09-29 23:51:31
天皇の三人の息子のうちあの一番下の子が器量があるというのは演出的にはよくわからないが、天皇の息子を奥州に奉じようという北畠親房、これって古代ローマの副帝みたいな分割統治を目論んでたということなのかねえ。でも考えてみれば足利の鎌倉公方も同じことなんだよな
2020-09-29 23:55:23
そして、別のドラマのせいでもはや悪役にしか見えないが(こっちでもそのうち正体を現すのだが)主君に合わせて万葉集の山上憶良をすらすらとそらんじる柄本明。「瓜食めば子供おもほゆ 栗食めばましてしのばゆ いづくよりきたりしものぞ まなかひにもとなかかりて やすいしなさぬ」
2020-09-29 23:57:02
当時、子供には特別な(人ならざる)力があると信じられていた、という解説のナレーションは、ふーむ、と思った。それを踏まえるとこの憶良の歌も違ったニュアンスが出てくる、かもしれない
2020-09-30 00:05:44
太平記27話。砂金を見せびらかす金八先生にも学級崩壊が止められず呆然とする尊氏いいんちょ。床にぶちまけられたお菓子を残ってボリボリ食う柄本明が不気味であった。
2020-10-04 15:49:33
太平記28話『開戦前夜』。出ました、日本史のオリコン1位!!「このごろ都に流行るもの♪ 夜討ち強盗ニセ綸旨♪」(あなたがわたしにくれたもの♪のメロディで)
2020-10-12 23:56:41
太平記28話、名シーン多し。宮中の根回し政治を教えようとニヤつく判官に、取引は嫌いだ、取引ができるなら戦しなかった、主上に思うところを申し上げるのに何故周りと取引せねばならぬ!と本気の心中をぶつける尊氏サン。尊氏を止められない判官の、「足利殿!あsh!」という台詞もわざとらしい?
2020-10-12 23:57:35
天皇と対面する尊氏。「直答を許す!」天皇のこの威厳にちょっと震える。関東に派兵して幕府を開くつもりだろう、と言う天皇に、尊氏は、天下を率いようとは思わない。肩が凝るし性に合わない。ただ戦で死なせた者たちに報いる世を作りたい、と真剣に吐露する。
2020-10-12 23:58:32
このとき、並み居る廷臣どもを飛び越えて、天皇と尊氏の間に、確かに通じたものがあった。その後の歴史を知っているから余計に印象深いシーン。
2020-10-12 23:59:34
そして大塔宮が尊氏に戦いを仕掛ける。戦じゃ!と飛び込んできた判官に、味方は少ないけど「判官殿が来られた。」と恬淡としてる尊氏サン。この二人の関係は、なんなんだろうね(笑)。勇猛な武家の棟梁だが同時になぜか楽天的で、厭世的なところもある、という尊氏の不思議なキャラクタ、本当に面白い
2020-10-13 00:00:44
太平記29話『大塔宮逮捕』。「内裏で雪を見るのは何年ぶりだろう。雪がいつ降り、いつやんだやら…」結局、この人は何と戦っていたのか…。それぞれの生まれながらの立場が否応なく戦争に駆り立てる。大塔宮は、その虚しさを、実は誰よりも早く理解していたのかもしれない。
2020-10-18 22:43:44
太平記30話。中先代の乱が始まる。直義が鎌倉から「井出澤」に向かうという台詞がありましたが、井出の沢というのが、うちの地元・町田市の、本町田にある地名なんですよね。685年前のこのへんで絶賛戦争中だったわけだ。また大塔宮を殂しに来る直義の家臣の武者が淵野辺という人だったりするし。
2020-10-25 22:25:50
太平記30話に出てきたフチノベさん(淵辺義博)という人の記事を見てるとなかなか興味深い。まさに相模原の淵野辺あたりの地頭で、実は大塔宮を逃がしたという話があるとか、境川の龍を退治したという伝承があるとか(この手の話はおそらく治水工事を意味してるよね)… https://t.co/7di4CSXZd6
2020-10-26 00:29:57
「大塔宮の首」という頭のミイラが今でも都留の方の神社に保管されているという話も聞いたことがある。義経なんかもそうだけど、こういう、「流離の貴人がいろんな地方で謎の尊崇を受けている」という現象、不思議だなあ。
2020-10-26 00:35:57
太平記32話『藤夜叉死す』、宮沢りえの千穐楽回である。瀕死の重傷を負った藤夜叉のために、仇である「足利の大将」に助けを求め、尊氏と二人きりにしてそっと出ていく石。
2020-11-08 22:33:07
鎌倉を捨てる時に大塔宮を害してきた。都に戻らねばよいのです!と言い放つ直義。「都がどんどん遠くなる。己が選んだ道だがのう。…軍議じゃ軍議じゃ!」と嘯いて佐々木判官は去っていき、独り残された尊氏さんの、「軍議じゃ…敵が迫っておる…」とつぶやくその表情が、ものすごかった。
2020-11-08 22:35:51
藤夜叉と、藤夜叉が望んだ「よき世」、「美しい都」、そして天皇、…若いときに憧れた美しいものたちから、尊氏はどんどん取り残されていく。自らが望んだはずの世界で。
2020-11-08 22:37:39
ところで、大河太平記を見ていると「橋本」という地名がよく出てくる。現代では橋本と言われると、相模原か、京阪か南海の駅名か?と思うがそうではなく、遠江国の浜名湖の近く、今の新居の付近にあった中世の東海道の宿駅で、明応の地震の津波でそのあたりの地形は大きく変わっているのだそうだ。
2020-11-08 22:49:51
太平記34話。激動の回だった…天皇の怒り爆発。勾当内侍にふられる新田義貞。「官軍」が攻めてくるとて本気で狼狽する尊氏さん。佐々木判官に言いたい放題言われてるときに台詞が一つもないのに表情だけで芝居していたり、右馬介に諭されるときの表情の変化など、尊氏さんの表情の芝居が目立つ回だった
2020-11-26 00:41:15
浄光明寺って行ったことないな。
2020-11-26 00:46:49
太平記35話。佐々木判官、かすかにニヤッとして「思うところあり、寝返り御免!」…じゃねーよこのやろ、と思うけどw あと印象的だったのは戦勝の宴で北畠親房卿が凄んだところ。なにが戦功だ俺たちが奥州にされてる間に都で乱をおこしやがって、ってしかもそれをあの食えない不気味さで言い放つのだ
2020-11-29 15:57:49
それにしてもあっという間に尊氏軍は畿内に攻め入って新田義貞は淀まで引いてるし、かと思えば北畠軍は奥州から攻め上ってくるし、めまぐるしい。東海道を軍勢が行き来しすぎだろう。描かれないけど、そのたびに民衆は助郷的なこととか兵糧を徴発されたりしてひどい目にあっていたのだろうと…
2020-11-29 15:58:53
尊氏さんと金八先生(?)の面談のシーンも印象的。楠木殿と戦いたくない、共に新しい世を作りたい、と熱弁する尊氏さんに、正成は、ふっと寂しそうな顔をする。帝の恩にはそむけない、と。そしてひたすらするめをあぶって食う正成であった(笑)
2020-11-29 16:05:11
もう次回が「湊川の決戦」なのか…早くない?! 金八先生、亡くすのは惜しい
2020-11-29 16:26:03
『太平記』37話。湊川の決戦で敗れた楠木正成が自刃する。息子と奥方がその首を迎える場面、「殿はようやくお帰りになられた。もう戦に行かれることはない。この河内に皆とともにずっとおられようぞ」…土に生きたかった正成の気持ちを、久子さんは一番よくわかっていた。このシーンは泣いてしまった
2020-12-13 22:58:16
人が変わったように勇ましく都に攻め上った尊氏サンも、底知れない厭世を抱える。判官との会話に、清水寺に参詣した、この世は夢のようなものだ…という話が出てきて、おお、と思った。尊氏が清水寺に奉納した願文に「この世ハ夢のごとくに候…とく、とんせいいたしたく候」というのがあるんだよね
2020-12-13 22:59:33
この回の最後の見ものは、義貞が尊氏の陣に向かって一騎打ちを申し出て、尊氏が受けちゃう場面。義貞、脳筋かよ、史実ではあるまい、と思うけど、ドラマ的には真田広之と根津甚八が本当に馬を操りながら切り結んでいるというものすごい場面になった(あれはスタントじゃなくてどちらも本人だよねえ)。
2020-12-13 23:14:57
太平記38話。尊氏さんと後醍醐天皇の最後の対決、そして決別。「無念でござりまする」とまっすぐに主上を見据える尊氏の目にも、帝の目にも、光が浮かんでいた
2020-12-20 20:26:22
後醍醐院が脱走する。足利殿の曖昧な態度のせいで二つの朝廷の戦だ、となじる佐々木判官に、尊氏は自ら描く地蔵菩薩を眺めながらつぶやく。「一度つけた墨は白くはならぬ。もはや引き返すことはならぬ。さようなことは…」尊氏さんの、これまでにない暗い目つきにぎょっとした。判官も気づいたね。
2020-12-20 20:31:27
太平記39話、この回は北畠親子に尽きる…。「戦いに疲れました」と涙を流す顕家を見て虚をつかれたような表情をみせる北畠親房。そして息子の死を知らされたときの慟哭。白塗りの公家の怪物と美少女が演じる青年武将というわけのわからない組み合わせなのに、近藤正臣の演技がものすごく刺さる、泣ける
2020-12-29 00:36:33
太平記41話、不穏な回だ。どこかで大きな間違いをしたかも知れぬ、足利党は何かが狂ってしまった、とつぶやく尊氏に、ご案じなさいますな、と慰める登子さんの目つき。戦のゆくえ、足利家の不調和、家族の軋み、そのなにもかも、生み出したのは尊氏自身なのだ。悪役の正体を現す柄本明も最悪である
2021-01-10 22:33:44
太平記42話。どんどん邪悪な方にたたみかけていく足利一門だけど、この回で一番胸を打たれるのは、登子さんの、深い深い虚無ですね…。
2021-01-17 23:17:08
太平記43話。柄本明をはじめとする邪悪チーム(?)は置いといて、この回で最も印象的なのは北畠親房卿の表情。楠木正成の息子を見たときの表情…、喪った自分の息子と、自分がかけた言葉を思い出していたのだろうね。そして、尊氏と隠密の頂上会談をしたときの表情も。
2021-01-25 22:28:40
足利の幕府を認めることができるなら斯様な長戦はしていない、どうあっても幕府を認めるわけにはいかない…。このときの北畠卿、自分の言葉を本当に信じているのか、それとも…。いろいろにとれる、複雑な表情をしていた
2021-01-25 22:29:19
勝ち目のない戦を果てしなく続け、たくさんの息子たちを死なせなければならない。大義のために。…あの北畠卿は、本当にそう信じていたのか?
2021-01-25 22:29:48
なんとなく、諸葛亮孔明を思い出したんだよね。あの人も、先帝と約束してしまったがために、疲弊していく国力を振り絞って勝ち目のない北伐戦争を指導し続けなければならない運命にあった人で…。
2021-01-25 22:31:10
太平記、なんだかんだで48話まで。薪割りのシーンも印象深かったけど…。終盤の、尊氏と花夜叉の会話。花夜叉とは、これが最後の対面になるのかな。
2021-03-03 00:21:41
これは名シーンだった。不思議な縁の花夜叉と再会して、舞の道に生きるそなたたちが羨ましい、「…戦うても戦うても、美しい世が見えぬ。」と本音を吐く尊氏の、声が、揺れるのだ。
2021-03-03 00:22:35
だが花夜叉に、我らはじっと待っている、穏やかで美しい世を作るのは御殿だ、と励まされた尊氏は、虚を突かれたような目をしてから、「…うむ、かたじけない」、そして花夜叉をしっかりと見据えて、かたじけない、と改めて言う。そこに至急の使いの声がかかる。ふっと寂しそうな笑みを作る尊氏。
2021-03-03 00:23:05
いや、ほんと、名芝居。太平記、残るはあと1回、最終話のみか…。だがこのドラマの最終話は尺が普段の回の倍くらいあって、実質二回分だったりするのだけれどね。
2021-03-03 00:24:20
太平記最終話、見終わりました。弟殺しの壮絶な場面についても、「わしはまた生き残ってしまった」と天を仰ぐ尊氏にも、もはや言葉がない。
2021-03-08 00:16:32
最後の登場の亜相殿にも、老いた姿に、息子を失ってなお十数年、大義のために謀略と戦争を続けるこの人の、業よ…と思ってしまった。だがそれだけに、最後に「…これでよい。」と納得してしまう尊氏の描き方には、どうにも納得できないのだ。
2021-03-08 00:18:49
等持院、ちょうど去年の3月に訪れた。改修中だったけど、庭園と尊氏の墓石は見ることができた。本当におおらかなお庭で、大将軍なのにひっそりと隠れるように、墓石があった。印象深い墓だった。等持院の改修は終わったと聞くので、また京都に行きたいな https://t.co/gAw4CNta2u
2021-03-08 00:24:22
ふと思ったのは、尊氏の死につながった、背中の「癰」について…。これまでの劇中、登子さんがまさにその場所に灸をすえる場面があったよね。「近頃、登子の灸は熱うてかなわぬ」。脚本が、ほのめかしていたのか…??
2021-03-08 00:39:13
まあ私も火傷があるんですけど、抗生物質とかのない時代、へたに細菌感染したら治療法はなかったんだろうなあ、と思う
2021-03-08 00:40:46
なんかさあ、結局、直義も直冬も、最終的には「ただ、愛してほしかった人」で終わらせてしまったの、納得できないんだよ。でも、ドラマとしては、これ以上ないんだよ。ずるいよ。直義を殺した後の夜明け、げっそり年をとったような尊氏。父が斬れるか、と言い捨てて本当に史書から消えてしまう直冬。
2021-03-08 00:51:13
「小さな、醜い木切れでも、あれは、岩神様やも知れぬ。美しうはないが、あれも神やも知れぬとな。…そう思わねば。そう思わねば!」
2021-03-08 00:53:57

吉田博展 @東京都美術館 3/7

 吉田博という人は、いわゆる“新版画”の人として少し知っていて、展示があるならぜひ行こうと思っていたのだけれど…、行ってみて、「とにかくただものじゃない」ということがわかった展示だった。

東京都美術館没後70年 吉田博展

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 まず冒頭が若い頃の水彩画。山に登るのが好きな人だったようで、視界の広い雄大な風景画があったのだけど、透き通った雲がまるで被写界深度の深い写真のようで、この世のものではないような、山に登ったからこそ見られる、描ける風景で…、くらくらするような感じがしたのだ。若いうちからこんなにすごい絵が描けるのに、その後さらに木版画に進む。世界中を旅行した人だったようだ。ヨーロッパの町を見下ろす構図の、オレンジ色の家並みと湖の青さの対比が面白い。このオレンジと青という補色関係をよく使われていて、独特な印象だ。エジプトのスフィンクスの絵も、青い空や青い影に対して、スフィンクスの顔にはオレンジ色の陽が当たっている。

 また水面の描き方が特に印象深くて、油がぬめるような表現をする。瀬戸内の海に帆船が浮かぶシリーズの、帆の後ろから強い朝陽が当たっている絵が、まぶしい凪の海を本当に見ているようだと思った。──この人の版画は、それまでの日本の版画は“摺り”の回数がせいぜい10回程度だったのに対して、もっと多く何十回も摺って色を重ねるのだという。最大96回の摺りを行う作品まであるそうだ。そのせいなのか、浮世絵の持つ平板さはなくて、もちろん水彩や油彩とも違う光や空気がある。寺院や風景のシルエットが、宵闇や朝もやの中に、浮かび上がってくる。惹かれるし、どれも面白い。帰りに図録と、A4プリント画を買った。プリント画は、迷ったけれど、『光る海』にした。海に浮かぶ帆船の、その先に、午後の…夕方か。光が輝いている。本物には及ばないプリント画だけれど、それでも、この光がほしい、と思った。部屋に飾ろう。

『大清帝国展 完全版』@東洋文庫ミュージアム 2/23

 昨年の今頃に開催していた展示が、“完全版”になって帰ってきた?

東洋文庫ミュージアム

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 入口のこのパネルは、特に変わらないのね

 昨年の『大清帝国展』のときと同じ展示物もあるけれど、今回は、太平天国関連の展示物が目を引いた。

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 太平天国の銅銭ですって

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 オーガスタス・リンドレーの『太平天国』。巻頭についているのは、忠王李秀成が彼に与えた通行証なのだそうだ。──オーガスタス・リンドレーは、英国の軍人だったのが太平天国に参加して李秀成の部下になり、「呤唎」(リンリー)という中国語名で2年ほど各地を転戦した…という経歴の人物である。「タイ、ピン、ティエン、クオ」と読んでいくと、当時の中国語をアルファベットに書き取った彼と、現代の発音が、直接つながるような気がして、面白い。この文書の全文の意味はちょっと取れないが、「真忠軍師忠王李」や「洋兄弟呤唎前往上海寧波一帯」…といったあたりは読める。最後に日付が書いてあるところ、「天父天兄天王太平天囯十三年」というのが太平天国元号1863年)だと思うが、「癸開」というのがちょっと変で、干支の「癸亥」だろうけど、発音の近い字に書き間違えられているのだろうか。(開kai1と亥hai4は現代の普通話では違う発音だけど、上海や南京あたりでは同じ発音なのだろうか、とかね)

 オーガスタス・リンドレーのこの著書は、プロジェクト・グーテンベルクで読めるのだけれど、巻頭のこの書き方が、ちょっとすごい。

LIN-LE, FORMERLY HONORARY OFFICER, CHUNG-WANG'S GUARDS; SPECIAL AGENT OF THE TI-PING GENERAL-IN-CHIEF; AND LATE COMMANDER OF THE "LOYAL AND FAITHFUL AUXILIARY LEGION."
TO Le-Siu-Cheng, the Chung-Wang, "Faithful Prince," COMMANDER-IN-CHIEF OF THE TI-PING FORCES, This Work is Dedicated, IF HE BE LIVING; AND IF NOT, TO HIS MEMORY.
 「我こそは、忠王李秀成(チュン・ワン、フェイスフル・プリンス・リー)の"HONORARY OFFICER"であり、"GUARDS"であり、太平軍の"SPECIAL AGENT"なり。」というわけだ。──李秀成とともに戦ったことを、リンドレーは、誇らしい記憶として留めて、英国に帰国したのだ。彼が1866年にこの本 "Ti-Ping Tien-Kwoh; The History Of The Ti-Ping Revolution" を著してこの献辞を書いたときには、すでに天京は陥落し、李秀成も処刑されていたのだけれど…。リンドレーが李秀成とともに戦ったのは、彼が21歳から23歳のときにあたる。その若さで異国に飛び出して、プリンス・リーという四十歳手前の有能な将軍に出会い、一緒に内乱の戦場を生き抜いた…その心情を推し量るのは難しいけれど、彼にとっては、劇的な体験だったのだろう。

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 太平天国の崩壊後に李秀成は捕らわれ、処刑されるのだが、「李の肉筆原稿の一部は取り調べをした曽国藩が自宅に秘匿し、家族にも公開を禁じていましたが、20世紀の半ばに公開されました。本書はその影印版です。」という説明が。

*

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 清朝の銀貨。

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 朝褂という、皇后の朝服。

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 西太后が描いた絵だそうだ。“寿”という字の形になっている。この人は実は文化人だったということで再評価されているけれど…。

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 爪につける飾りと、纏足の靴。

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 「垂簾聴政」という熟語は、後世の歴史学の用語じゃなくて、この当時の同時代的な用語だったのか。

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 李鴻章、字が上手いですね

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 『大清帝国全図』。これ、今の目で見るといろいろとひっかかるところのある地図で、“「中国」とはどの範囲か?” という、今の時代に通底する問題がたくさんあるのだが…。

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 『中華国恥地図』。赤い文字で細かく書き込まれているのは、いつどこで他国に領土を奪われたか、といったことが詳細に記されているもの。

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 「清朝最後の皇帝溥儀が、水墨で蘭を描いた扇面画です」と説明されているが…、よく見ると「大同二年三月」と書いてある。うーむ。