坂本真綾さんの、横浜アリーナ2daysコンサートでした。ぼくは1日目だけ参戦。この禍の時代、大規模コンサートにはすっかりご無沙汰になっていましたが、どうやら少しずつ開催され始めています。エンターテインメント業界も、規制と社会の動向を様子見しながら試行錯誤しているようです。──ぼくは久しぶりの横浜アリーナですが、キャパを規制上限の五千人におさえているだけでなく、ブロックごとに入場時間が指定されるというものでした。時間指定入場というのは正直言って面倒で、早く入れられたところで場内でヒマになるのは避けられず、若干気が進みませんでしたが、遅れてしまった場合にどうなるのかは特にアナウンスがありませんでした。早くもちらほら桜が咲き始めた鳥山川沿いで少し時間をつぶしてから、指定された時間帯に合わせて、横アリの正面へ。入場時にはもちろんCOCOAのアプリ画面をチェックされ、サーモグラフィを通り、スマートフォンの電子チケットのもぎり操作を自分でやるように指示され、その直後にスマートフォンを持ったまま手のアルコール消毒と荷物チェックを同時に指示されるため、あっあっ、みたいに慌てふためきながら、なんとか入場。
よく見たら知らないおっさんの画像がアップになっていた、横浜アリーナ正面
横浜アリーナが久しぶりすぎて忘れていましたが、ここはいわゆるアリーナ席が「センター席」という呼び方で、その周りの1階スタンドのことを「アリーナ席」というのですね(前からそうだったっけ?)。ステージプランはセンターステージで、ぼくは上手側の花道の少し後ろぐらいの位置でした。座席には、手首に巻けるバンドのついた、無線制御されるライト(フリフラってやつですね。坂本さんのコンサートで前にもどこかで見たことがある)がおいてあり、1席ごとの空席にも、ペンライトと、坂本さんの筆跡でこんなチラシが貼ってありました。
来てくれてありがとう 私は今日 あなたを幸せにするためにここに来ました! 一緒に楽しもう。これだけでちょっとぐっと来てしまうのでした。坂本さんサイドに開催のための苦労があったこともそうでしょうが、来ているぼくにも、それはいろいろな思いがあったわけですから…。*1
・約束はいらない
・CLEAR
・スクラップ~別れの詩
・ユーランゴブレット
・オールドファッション
・(MC)
・いつか旅に出る日
・独白
・躍動─with 内村友美─
・色彩
・(MC)
・Sync─with 堂島孝平─
・あなたじゃなければ
・(MC)
・レコード─with 原昌和 from “the band apart”─
・Be mine!
・(MC)
・でも・gravity
・序曲
・birds
・(MC)
・25周年メドレー
ループ
→ヘミソフィア
→逆光
→奇跡の海
→Private Sky
→トライアングラー
→マジックナンバー
→指輪
→光あれ
・(MC)
・誓い
・プラチナ
・ポケットを空にして (instrumental)
円形のセンターステージをすっぽりと8面のモニタが取り囲んでいて、最近のLEDモニタってそれなりに透明っぽさがあるのね、と思いつつも、でもたしか最初はそのモニタが上がらなかったんじゃなかったかな。現れた坂本さんは、明るいラベンダー色で裾がまるく大きく膨れたドレスに、鮮やかなショートカットでした。あれっ、坂本さん、髪切ったの!!
立つ or not問題で毎度悩まされる坂本真綾氏のライヴですが、今回は、『CLEAR』から前の方の女の子が立ったので(我慢できなかったのでしょう)、私も立ちました。あの女の子ありがとう。見た感じ、ステージの正面寄りはだいぶ立っていたけど、後ろ寄りはそうでもなかったですね。センターステージって、全方向に平等と見せかけながら、バンドやカメラの配置でどうしてもそういうことになっちゃうから、あまり、ね…。──ですが、8面モニタと、おそらくは収録の円盤(?)にも配慮して、バチバチにカメラ目線を送る坂本さんには感心しました。なんか坂本さんらしくないな!(?)
デュエットアルバムを発売した坂本さんですが、このライヴではそのアルバムに参加した方々をゲストに呼んでおり、la la larksの内村友美さん、なんだかわからんが多少ウザがらみっぽくもやたら会場を盛り上げてくれた堂島孝平さん、そしてバンアパの原昌和氏に至っては一人でベースを弾きながらアリーナのセンターでリフトアップされる(坂本さんは下で特に関係なく歌っている)、という特別扱い(?)でした。ヒゲヅラの庵野カントクみたいな人が頭上で回されているのはとてもシュールな図でしたがとにかくベースはかっこいいというのが悔しい。(?!)
このゲストコーナーまでが前半、そして転換して後半、という構成だったのかな。もう一度下りてきた8面モニタの鳥かごに入ってしまった坂本さんでしたが、『birds』でその鳥かごが上がって、ミラーボールのまぶしい光が輝きました。この演出にはやられました…。あの、空間に満ちあふれる光。ライヴ、現場に来なければ、体験できないもの。また、『誓い』では、ステージを覆ったシャボン玉の中で歌った坂本さん。──正直なところ、この日の音響はあまりよくなくて、横浜アリーナみたいな会場でPAがよろしくないのはしかたないにせよ、空間的なステージ演出だけは、その場に参加しなければ…。リモートでは体験できないものだなあ、と舌を巻きました。
最後、『ポケットを空にして』は、これまでならアンコールのお約束で、オーディエンスが合唱するのですが、発声禁止です。バンドメンバーが捌ける前のあいさつ回りをしながら流れたSEでしたが、それに合わせて手拍子をし続けていたオーディエンスは、みんな、心の中で歌っていたのだと思うんですよね。──坂本さんのライヴはもともと特に声を出すような現場ではないのですが、立っていた人も座っていた人も、静かな熱気が会場に満ちていた、不思議なライヴでした。“約束はいらない”って、25年前の彼女のデビュー曲のタイトルであるのはもちろんですが、それと同時に、このすべてが流動的なご時世に挑戦的なライヴタイトルをつけたんだな…、と思っていたのですが、約束がなくても彼女についていくし、そういうオーディエンスがこれだけいるんだなあ、と改めて思った日でした。