自転車で府中に行った。──展示の冒頭は、昭和33年に撮影された、日本の農村の人々の写真。古い時代に、ゆるやかに導かれていく…。
明治の日本にやってきた英国の画家が、東京、日光、富士山などの名所や、街道筋の何気ない風景なども描いていて、そういった作品が近年になって評価の対象になっているのだそうだ。
この展覧会のメインヴィジュアルになっている、紅花を摘む女の子の柔らかい微笑みの絵は、笠木治郎吉という人の水彩画だ。農村や漁村で働く人たちの姿を、鮮やかに描いた水彩画がいくつも展示されていた。──画面の中に水蒸気がたちこめる吉田博の絵も、空気が伝わってくるようで、すばらしい。水彩画ってすごいな! と見せつけられたようだった。
面白かったのは、徳川慶喜が描いたという風景画。まるでバルビゾン派のようなのだ。昔のお殿様というのは、貴種のたしなみとして絵などものしていたらしいが、この人もその時代のものをちゃんと取り入れて、自分のものにしていたのだろう。