night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

10/10(木)十二湖

 白神山地に行ってみたいと思っていた。深い山、ブナの林を歩いてみたい。そして、“十二湖”という景勝地がある。森の中に、深い青い色の池があるらしい。──しかしこの十二湖という場所は、どの都市からもそれなりに遠く移動時間がかかる上に、公共の交通機関で行くには本数が少なすぎて、なかなか簡単ではなかった。JRの五能線というローカル線が、秋田県能代奥羽本線東能代)から海沿いに北に向かって伸びており、その路線の十二湖という駅で降りればよいのだが、普通列車が1日に5本程度しか走っていないし、行って帰ったらそれだけで、事実上、丸一日が終わることになる。

 しかし、一日くらい、使えるときに使ってもよいだろうと思った。──というわけで、この東北旅行に、朝の秋田からスタートして、夜に弘前に着いて宿泊するという旅程を組み込んだ。

*

f:id:jawa_jawa:20191023204905j:plain
 秋田駅、朝8時20分に発車する、快速『リゾートしらかみ1号』、五能線経由の青森行き。これは全席指定席の観光列車で、当日思い立っても乗れないという意味では、面倒な列車だけれど、五能線の本数の少なさを補っていると言えなくもない。実は前夜に秋田駅指定席券売機で、指定席を取っておいた。

f:id:jawa_jawa:20191023204517j:plain
 座席は広くてゆったりしている。ぼくの乗車券は奥羽本線弘前方面に行く経路なので、車内で車掌さんを呼び止めて東能代ー十二湖間の運賃を精算する。

f:id:jawa_jawa:20191023204522j:plain
 「左手に、なまはげで有名な男鹿半島の、真山(しんざん)と寒風山(かんぷうざん)が見えてまいります」と観光アナウンスが入る。

 一時間ほど走ると東能代に着いて、ここから五能線に入る。列車の進行方向が変わるので、乗客はばらばらと立って座席を回転する。──その次の能代では、10分停車して、バスケットボール体験ができます!というアナウンスがあった。見ると、駅のホームにバスケットのゴールがあって、スローインにチャレンジできるんですって。

f:id:jawa_jawa:20191023210722j:plain
 そして、意外にそれを、お客さんが、やるんだね。面白いね

f:id:jawa_jawa:20191023204529j:plain

f:id:jawa_jawa:20191023204540j:plain
 車窓に荒磯が。でも今日はいい天気で、よかった。

*

f:id:jawa_jawa:20191023204545j:plain
 10時26分に十二湖駅に着いた。意外に10人以上が下りて、路線バスを待つ。10時40分に、奥十二湖駐車場行きの路線バスがやって来た。海岸の平地から、一気に山中に入る感じだ。ものの15分で終点に着いた。すでにここまでの車道に沿ってもいくつかの池があった。

f:id:jawa_jawa:20191023232505j:plain
 終点の“奥十二湖駐車場”は、物産店“キョロロ”と、駐車場があるだけのところで、散策路の入口である。売店で買ったパンを食べてから、森の散策路をたどった。

f:id:jawa_jawa:20191023204600j:plain

f:id:jawa_jawa:20191023204832j:plain

f:id:jawa_jawa:20191023204840j:plain
 森に囲まれた湖には、木の株が水漬いている。ときおり、水鳥がもぐったり出たりする音が響く。


f:id:jawa_jawa:20191023204645j:plain
 10分ほど歩いたところに、“青池”があった。森の中のくぼ地に、不思議な濃い青色をした水が溜まっている。

f:id:jawa_jawa:20191024002124j:plain

f:id:jawa_jawa:20191023204802j:plain
 水は透明のはずなのだが、なぜこんなに青く見えるのだろう。中国語を話す観光客も、声を潜めていた。

*

f:id:jawa_jawa:20191023204653j:plain
 道はさらに続く。森を歩いてみようと思う。

f:id:jawa_jawa:20191023204702j:plain
 青池を上から見下ろす

f:id:jawa_jawa:20191023204712j:plain
 明るい広葉樹林

 …ただ、ものすごく大雑把な地図(駐車場に立っていた看板を撮影したもの)しか持っていなかったこと、そして、道標が整備されているようであまりあてにならなかったこと(一か所、明らかに道標の向きが間違ってて道を間違えたところがあった)から、若干、森の中を彷徨うはめになった。やはり、こういうことをしてはいけません…。

f:id:jawa_jawa:20191023204553j:plain
ものすごく大雑把な地図

f:id:jawa_jawa:20191023204719j:plain
 青池から、“金山の池”と“糸畑の池”を大回りして(するつもりはなかった)、“リフレッシュ村”に至り、そこから“沸壺の池”→青池に戻ってきたのだが、青池・沸壺の池より奥では、ハイキングする人など、他には誰ひとりとしていなかった。

f:id:jawa_jawa:20191023204736j:plain

f:id:jawa_jawa:20191024002114j:plain

f:id:jawa_jawa:20191023204727j:plain
 すばらしい色合いに思わず足を止めた、“沸壺の池”。

f:id:jawa_jawa:20191023204755j:plain
 道に迷ったりはしたけれど、こういうところを歩きたいと思っていたので、満足だった。来てよかった。今回の旅行はハイキング用の靴を履いてきたことも、正解だった。

*

 13時半過ぎに、駐車場に戻ってきた。これでも3時間ばかり歩いたので、物産店で蕎麦を食べて昼食とし、しばらく休憩した。それにしても、観光客の半分以上が中国語圏の人である。どうやら小規模な団体ツアーの人もいるし、公共交通機関などで移動している個人旅行者の人もいるようだ。東北地方のこんな奥地にまで中国の観光客が来るようになったというのは驚きだし、家族連れの子供が大声を出すと「静かにしなさい」などと注意しているのにも、時代が変わりつつあるな、と思った。

 14時15分のバスで山を下り、十二湖駅に戻った。30分ほど待つと、15時05分の五能線東能代行きの普通列車がある。駅の物産店で缶ビールを買って道端で飲んでいると、路線バス1台に乗ってきた観光客しかいなかったはずの十二湖駅に、観光バスツアーが2団ほどやってきて、ごった返している。なんだなんだ、と聞き耳を立てていると、ここからあきた白神まで、30分ほど、五能線普通列車に乗る行程が組まれているらしい。なんだそれ…激混みになるじゃないか、バスツアーはバスで行きなさいよ…と思ったものの、ある意味ではそういう団体ツアー客がローカル線を支えているのかもしれず、何とも言えないものがある。

f:id:jawa_jawa:20191023204850j:plain
 2両編成の列車に、中高年の団体が大挙して乗り込む。団体客が車内におさまってから見ると、うまい具合に空きボックスがあったので、座ることができたが、同じような若い個人旅行者には、嫌気してデッキで立っている人もいた。だがいずれにしても、地元の客はほとんど乗っていないのだった。

*

 静かになった列車は淡々と進んで、16時19分に東能代に着いた。向かいのホームにも2両編成の普通列車が入ってきた。これは奥羽本線、16時24分発の弘前行きである。このあとの16時40分には特急『つがる5号』があり、それに乗ろうと思っていたが、普通列車でも、弘前に着く時刻は特急の17分後でしかない。普通列車で行くことにして、通学の高校生に交じってロングシートに座った。これは701系という電車で、東北のローカル線なのにロングシートという、旅行者にはまことに評判の悪い車両である。北にも南にも山を背負った、米代川沿いの田園地帯を進む。

f:id:jawa_jawa:20191023204857j:plain
 鷹ノ巣で20分も停車して、特急『つがる5号』を先に行かせる。高校生は鷹ノ巣で入れ替わるのかと思ったが、意外に東能代から大館あたりまで乗り通している人もいた。だが、大館で高校生が大勢乗っている花輪線気動車を見送ると、その先の県境越えの区間は通学の流動がないようで、がら空きになった。

 18時17分に弘前に着いた。駅の近くで“ラーメン”という赤い提灯を見かけて、食べるか、喫煙可と書いてあるし…と思ってお店に入ったら、メニューにはパスタやピザなどもある。不思議なお店だなあ、と思いながらパスタとビールを頼んで、ふと見回すと、店中が、ももいろクローバーZのポスターやグッズで埋め尽くされていた。モノノフの人がやっているお店らしい。大きな画面に流れるももクロの映像を眺めながら、ピザも食べて、満腹して出た。──香港のミニバスのような小型の路線バスが走る弘前の大通りを歩いて、この日のホテルにたどり着いた。