故宮博物院で思う存分美しいものを見たいと思ってきたので、翌日は勇んで向かった。だが、故宮博物院は台北の市街の北東の山の向こうにあり、それなりに遠いのだよね。
南京復興からメトロの“文湖線”(棕線)に乗った。これ、昔は木柵線と呼んでいた記憶があるが、高架を走るゴムタイヤ電車で、小ぶりな車両が4両編成になっており、ちょっと輸送力が小さいためか、かなり混んでいる。3分くらいで次の電車が来るので、無理に乗らずに一本待ってもよい。──ぐぐっとカーヴして松山空港が見えてきて、地下に空港駅があり、また地上に上がると、山がちで立体的な市街地に出た。劍南路站で下車して、路線バスに乗り換える。
劍南路(Jiannan Road)站のバス停。目あての系統のバスが来たらみんなでバッ!と手を上げる。手を上げないとバスが停まってくれないらしい。
ここから681路バス(陽明山行き)に乗って北へ向かう。道路トンネルで一気に山を貫き(神戸みたいだ)、それを抜けたところの故宮路口という停留所で下りて東に歩くと、ほどなく博物院の正面が現れた。──路線バスを使いこなせるのはGoogleマップのナビのおかげである。便利な時代になった。ただ、Googleマップが表示する英語の停留所名が、必ずしも現地の表示と合っていないことがあるので、注意を要する。
天下為公!
10時20分頃に着いた。団体客はここからは入らず、おそらく地下の車寄せから直接入るのだと思われる。
入口では法輪功がビラを配っているし、台湾国内の老人会のような団体客が群れを成していて、若干大変な騒ぎになっていたが、個人客というのは逆に少ないようで、チケットはすぐに買えて、すぐに入れた。350元。オーディオガイドは借りずにおいた。
まずは陶磁器の部屋をめぐる。清朝の宮廷の御物であるから、見るものがどれも、いちいち繊細で美しく、これは大変ですよ…。
深い蒼が美しい。
なにこの錆色! こんな色合いの陶磁は、なかなか見たことがない。
宋代の青磁の数々。鳳凰耳花生は基本ですね…。当地では“青瓷鳳耳瓶”と呼ぶようだ。
斑が美しい。
こういう紋様の入った白磁は、写真に撮るのが難しい…。
永楽年間の、金彩が入った青花。
乾隆年間の大物。これもそうなのだけど、とにかく状態がよいものばかりなので、感心してしまう。
青花かと思いきや、緑色の彩色が珍しい。
光が透ける…! 雅の極北である
乾隆朝になると、こういうヨーロッパ風の意匠が出てくるのが面白い。
ぼくが決めたこの日のMVPは、この、金代の黒釉。宇宙的である。
日本風に言うと“木葉天目”だねえ