night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

9/28(金)立山黒部アルペンルート(1)

 金曜日の朝9時44分、東京駅から、北陸新幹線『あさま607号』長野行き、新型のE7系に乗った。長野までの各駅停車便だからか、自由席車は気持ちよく空いていた。売店のおにぎりで簡単に朝食を済ませる。

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 北陸新幹線は3年前の春に金沢まで開業したが、その前に長野まで開通して“長野新幹線”と呼ばれていたのがオリンピックの前の1997年10月からのこと、そこからすでに20年以上経っているのだけれど、ぼくは一度も乗ったことがなかった。──妙義山の突兀とした山容や、安中榛名という深閑とした駅に停まる様子などを見ながら、11時33分に長野駅に着いた。後ろからはすぐに『かがやき』号が追い付いてきた。

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 長野駅善光寺口。木を貼った列柱が独特だ。

 2時間かからずに長野に着いた、と驚き、小奇麗な駅ビルに感嘆し、しかしこれではどこの町だかさっぱりわからないな…などと思いつつ。──しかし今回、長野は中継地点であって、ゆっくりしていられない。善光寺にお詣りするくらいの時間はほしかった、と思いながら、駅ビルで立ち食いの蕎麦でこれまた簡単に昼食を済ませて、駅前をちょっと眺めただけで、12時30分発のアルピコ交通の特急バスに乗り込んだ。

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 扇沢行きの特急バスは、長野駅東口の25番乗り場から出る。扇沢まで片道2,600円。バスを待っているとじりじりと陽に焼かれる日だった。日陰に避難して待つ。

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 今回は、立山黒部アルペンルートで、北アルプスの向こう側、富山を目指す。立山黒部アルペンルートは、信州側の大町・扇沢から、富山側の立山町まで、トロリーバスやケーブルカーなどのいくつもの乗り物を乗り継いで、北アルプスを横断していく、昔からある観光ルートだ。ぼくは、子供の頃に黒部ダムに連れて行ってもらったことがあったな、というくらいで、通して乗ったことは一度もない。ぜひ行ってみたい、とかねてから思っていたが、そもそも春から秋にかけてしか開通していないルートであること、また、2012年の11月には冬季閉鎖前ぎりぎりの時期に行こうと計画したものの、すでに平地でも雪になっていて、恐れをなしてやめた、ということもあった。

 加えて、海外からの観光客が押し寄せるようになっている、という話もあるため、少しでも人の少ない平日に行きたい、という思いもあって、平日に行動できる今回の日程に、狙いを定めたのだった。──朝9時台などという時刻に東京駅に現れたのは、仕事明けからのエクストリーム旅行だからである。

 だが、この特急バスで扇沢に着くのが14時15分。扇沢では14時30分のトロリーバスに接続するが、今の時期に富山県側の立山駅まで下山できる最終の乗継ぎは、扇沢15時00分発であり、つまり、この時間ですでに“終電1本前”なのである。途中、もし室堂あたりで足止めを食ったら大変なことになるし、この特急バスが遅延したらそれだけで今日富山まで行けない危険が出てくるということだ。

 …などと、長野市内を抜けるのに意外に時間がかかったこともあって、気を揉んでいたが、白馬長野有料道路(いわゆる“オリンピック道路”)をすいすいと通ってバスは進んだ。大町から扇沢に上がる道路は緑のトンネルのようで爽やか。途中、野生の猿が路傍で悠々と食事をしていたりする。それを見物するベンツが道の真ん中で停車しており、こちらのバスが追い抜こうとしたらなんとベンツが急発進して、危なく衝突するところであった。金持ちはこれだから…。バスの運転士もさすがにイラッとした様子だった。

 扇沢には定刻通り着いた。だが、長野から白馬まで、平日で道も空いていて、制限速度50km/hで比較的すいすいと走って、それでも信濃大町駅に数分遅れて着いていたので、ダイヤにはおそらくあまり余裕がないのでは、行楽シーズンは大幅に遅れるのだろうな…、などと思う。

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 トロリーバス扇沢駅の窓口で、富山(富山地方鉄道電鉄富山駅)まで通しの切符を買う。9,490円。*1

 ここ扇沢から黒部ダムまでは、6.1kmの「関電トンネルトロリーバス」である。トロリーバス自体は中国にいくらでもあるが、日本では今では珍しい乗り物であることと、トロリーバスは法的には「無軌条電車」という鉄道であることから関西電力株式会社が第一種鉄道事業者として運行・営業しているという点でも珍しい。だが、このトロリーバスは今年のシーズンで廃止になり、来年からは電気バスが走ることになっている(関西電力は鉄道事業を廃止することになる)そうだ。たしかに、蓄電池の性能が昔では考えられないくらい上がっている今、架線設備を維持しなければならないトロリーバスは非効率なのかもしれない。

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関電トンネルトロリーバス扇沢駅

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トロリーバスの車両は、VVVFインバータ制御だそうだ。

 14時30分発のトロリーバスは、2台運行だった。乗客は多くはないので1台に詰め込まれるのかと思ったが、ゆったり座れる程度で、ありがたい。ウイーン、というモーターの音が響いて発車し、トンネルに入って行く。

 トンネルの中は、関電トンネルの建設エピソードとして有名な“破砕帯”が、青い照明で示されている。このトンネルそのもの、そして黒部ダム自体が、記念碑と言っても過言ではないものだろう。

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 途中、ガタンガタンと衝撃があって(ビューゲルが架線を切り替わる音?)、待避所に入る。しばらく待つと、対向から4台やってきてすれ違った。一番後ろの車の運転士とこちらの運転士が、窓越しに、タブレット交換していた。

*1:事前に調べていたとき、前売りで“平日割WEBきっぷ”というものがあって、少し安くなるので、買おうかと思ったら、これがなんと扇沢駅で14時までに引き換えなければならないというものである。長野からの特急バスが14時15分に着くというのに不親切なことだ、と思ったのだった。立山黒部貫光関西電力アルピコグループの連携が取れてないんじゃないの、とか…(?)