night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

5/27(土)長谷寺、室生寺

 翌朝、部屋の窓から見えたのは、こんな風景でした。

 わざわざ榛原まで来て泊まったのは、翌日、長谷寺に行くか室生寺に行くか決めかねており、その中間あたりに泊まって決めよう、と思っていたため。結果的には、その両方に行くことができたのだけど。──明けて土曜日、この日は夕方16時くらいまでに名古屋に移動する必要がある。泊まった温泉施設で、他に誰ひとりいない朝食バイキングを食べ、チェックアウトして、タクシーを呼んだ。今日もいい天気である。長谷寺へ。


 タクシーは狭い門前町に乗り入れ、長谷寺の山門の前に着いた。


 長廊を登って行く。しゃくなげはもう終わっていたが、初夏の若葉が美しい。


 本尊の大きな十一面観音の、足元まで行ける特別拝観をやっていた。観音さまの足に触れて祈ると、ご利益があるそうです。



 木造の舞台。そして、山の緑の中に、よい姿の五重塔が見える。


 清子内親王殿下お手植えの松だそうだ。


 明るい緑に包まれて、ちょっと無理してここまで来てよかった、と思ったのだった。

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 門前町で草餅を買い食いしながら、歩いて20分ほど、国道を渡って急斜面の住宅街を汗をかきながら登り、近鉄長谷寺駅へ。




 近鉄長谷寺駅、走り去る特急列車

 ここは近鉄大阪線の、榛原の一つ大阪寄りの駅で、大阪側から見ると運行系統的には末端部にあたるようだ。榛原止まりの準急に乗って、榛原で急行に乗り換え、室生口大野駅へ。なんとなく、例えて言うと、小田急線で厚木から本厚木で乗り換えて愛甲石田に行く、というような感じで、たった二駅だが微妙な面倒くささがある。近鉄大阪線、このあたりは山越え区間で、一駅の間隔がだいぶ長い。それにしても、大阪上本町五十鈴川行きの急行電車、ってすごい長距離電車だな。

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 室生口大野駅で下りると、駅前に奈良交通の路線バスがいた。室生寺へ向かう。このバスも1時間に1本あるかなしかの路線で、それに合わせて行動するのも面倒なので、時間が合わなかったらタクシーに乗ろう、と思っていたが、運がよかった。

 室生寺門前町の入口あたりで、終点でバスを下りた。バスは少し先まで行って転回するようだ。朱塗りの太鼓橋を渡って、室生寺の山門を入る。女人高野と呼ばれる古刹だ。




 平安時代初期のものという金堂と、鎌倉時代の本堂(灌頂堂)。金堂には釈迦如来を本尊に、いくつかの仏像が脇に控えているが、中でも十一面観音像が抜群によい顔をしている。


 あじさいの季節はさぞきれいであろう。


 小さなかわいらしい五重塔。平安期のもの。近年、台風で被害を受けたが、修復が成ったそうだ。


 奥の院まで登ってみる。さすがに息が上がったが、大掛かりな木組みとその上に載った堂が見えてきたときは驚いた。鎌倉時代に造られたものだそうだ。

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 下山して一息ついた。帰りのバスは13時半までない。一時間以上あるので、なにか食事をするか、それともタクシーを呼んでしまうか…と思いあぐねていたところ、タクシーが入ってきた。門前町の料理旅館のような店の前で停まったので、下りてきた運転士に声をかけてみたが、やはり予約車で、乗れなかったものの、その予約タクシーに乗るお客が、どこまで行くの。とぼくに訊ねる。駅まで戻りたくて。と言うと、そんなら乗ればええやん、と、相乗りさせてくれた。──室生口大野駅に着いて、半分払います、と紙幣を出そうとしたが、かまわないと言われ、近鉄の上り電車の時刻を気にしていたようで急いで駅に入ってしまったので、結果的にただ乗りさせてもらってしまった。大変ありがたいことであった。


 走り去る特急列車がとにかく多い。近鉄大阪線、特急街道である

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 さて、ぼくはこれから名古屋へ向かう。近鉄名古屋まで1,800円の切符を買い、13時11分の下り電車で、のんびりと室生口大野駅を離れた。名張で13時24分発の特急列車に乗り換える。これは大阪の難波から名古屋に向かう列車で、新しい快適な特急車両であった。座席は禁煙だが喫煙ブースがついている。車内はやはり空いている。首都圏に比べると、関西は、都市間輸送がだいぶゆったりしていて、うらやましい。ただ、近鉄特急は車内販売がなくなってしまったのだね…。

 名張を出ると、長いトンネルで山を越えて、伊賀国から伊勢国に入り、津、白子、四日市、桑名、と三重県内の要所に停まって行く。名張あたりは、盆地に田園地帯が広がり、車窓に沈下橋が見えるほどののどかな風景なのだが、名張から特急で30分以上もノンストップで飛ばして、まだ津であったので、三重県もなかなか広い。県都の津も、列車から見えるのはのんびりした地方都市という様子だが、木曽三川を渡って愛知県に入ると急激に住宅が広がって都市化する。


 
 高層ビルが見えてきて、地下の近鉄名古屋駅に着いたのは14時49分だった。近鉄特急もなかなか乗り甲斐があって面白い。