night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

2/22(水)宝重の風 ─頤和園

 翌日は雪こそやんだものの、やはり寒く、白いもやがかかっている。だが、雪が降ったためだろう、大気汚染の状態は小康状態のようだ。──頤和園に行くことにした。

 頤和園北京市内の北西のほうにあり、昔は路線バスに乗って延々と行ったところだが、今では、エメラルドグリーンのラインの、地下鉄4号線というのが通っている。全面ホームドアがついた新しい地下鉄だ。上海で見たような、地下鉄の走行に追随してトンネルの壁に映像が流れるやつもあった。香港のMTRが出資している路線なのだそうで、“京港地鉄”というジャケットを着た駅員がいる。──ただ、やはり頤和園はけっこう遠いのだ。宣武门(Xuanwumen)駅で2号線から乗換えて、40分くらいかかり、北宫门(Beigongmen)駅で地上に上がったのは12時少し過ぎだった。


 2017年2月、現在の北京の地下鉄路線図。15年前は、東西の赤の1号線と、青の環状の2号線しかなかった。本当に、隔世の感がある。

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 頤和園には北側の北宮門と東側の門があるが、北宮門から入ると、いきなり山の上の寺院に向かって登ることになる。


 さて、登るぞ


 けっこう急勾配なのだ。頂上の“香岩宗印之閣”は乾隆帝の寺院で、阿弥陀如来釈迦牟尼仏薬師如来が鎮座している。


 いったん山を下り、昆明湖の岸辺へ。


 西太后が壮大な宴会をしたという、石の船。外輪船を模しているのね。


 湖岸に続く、長廊。頤和園と言えばこれが有名かも。


 排雲殿、そしてその上に見えるのが、仏香閣。


 排雲殿は西太后が再建したもの。当時の離宮の様子がかいま見える。


 これを登るのか! というか、さっき、いったん山を下りたのは、ルート的には失敗だったみたい。


 千手観音像。明代のものだという。


 まだらに凍った昆明湖。やはり寒い季節に来てしまったなあ、と改めて思った。それにしても、北京の市内にこんな大きな湖があって、それが全部、皇帝の離宮なのだから、驚くというか、本当に、規模がおかしい。

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 蝋梅。この旅行中に北京で見た唯一の花だったかも。


 石畳に水の筆で字を書くパフォーマンスをしている老人。──このあと、団体客を案内してきたガイドがつかつかと近寄って、強い調子で話しかけているので、なにかと思ったら、韓国人の団体客を連れているから韓国語で何か書いてくれ、と頼んでいるのだった。老人もまったく動じず、さらさらと“한국친구”(韓国、ともだち)と書いた。芸達者な爺さんだ。


 昆明湖の東側の宮殿群は、ほとんど西太后時代の再建によるものらしい。説明看板によると、この仁寿殿は、慈禧(西太后)や光緒帝が、政務をとったり外国の使節を接見した場所だそうだ。


 文昌院は宝物の展示館になっている。


 象牙の杯。


 赤珊瑚の花器、白菜にきりぎりすがとまっている。光緒年間のものだという。




 商(殷)代の青銅器の大物に、清代の青磁と玉杯。中国五千年、その始まりから、その至るところまで…。


 ここでぼくが最も感動したのが、これ。写真ではよくわからないなあ。牡丹の花が象牙で細工された衝立なのだけれど、…展示室のガラス越しにその前に立ったとき、花弁に、葉末に、本当に風が吹いているように見えたのだ。

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 結氷した昆明湖の向こうに、さきほど登った仏香閣が見える。明るい季節にまた来たいものだなあ…。こんどぼくが北京に来るのは、また15年後くらいだろうか…。


 十七孔橋があんなに遠くに見える。さすがに遠いので、あそこまで行くのはあきらめた。だいぶ着込んでいるのだが、それでも、もう身体が冷え切ってしまっていた。


 点心を食べて、頤和園を出た。