night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

2/22(水)廃宮の黒鳥 ─圓明園

 頤和園の東門を出ると路線バスの終点と操車場のようなところがあり、そこから508路という路線バスに乗った。少し行くと地下鉄の西苑駅があり、巨大な交通ターミナルが車窓に見える。地下鉄4号線で言うともう一駅行ったところに、圓明園がある。

 圓明園も、清代の皇帝の大規模な離宮で、乾隆帝の時代に西洋風の石造りの宮殿や噴水などが造られたが、アロー戦争で破壊されて廃墟になっているところだ。15年前にも来たことがあり、その時は人っ子一人いない遺跡が無造作に放置されているようなところで、夕方近かったこともあって、その寂しさ、破壊された宮殿のむなしさが、印象に残っていた。──だが、来てみると、なんだかやたら飾り付けられている。


“撸起袖子加油干”って、直訳すると「腕まくりして、がんばってやれ」という意味で、何のことかと思っていたが、調べてみたところ、今年の新春賀詞での習近平総書記の言葉なのだそうだ。やはり、文脈を知らないと理解できない国だ。

 入場券を買う。“西洋楼遺址区”という区域が、洋風宮殿の廃墟のことなのはわかったので、25元の“Through Ticket”(通し券)をくれと(英語で)言ったが、窓口のおばさんは黙って10元の“門票”(入場料だけの券)を出してきた。門票じゃないよ、スルーチケットって言ったじゃないか、と言うと(中国語で)、3時半からは門票しか売らないんだよ! と抗弁された。よく見ると、たしかに窓口の隅に、ダンボールの切れ端みたいなものに手書きでそういう意味のことが書いてある(もちろん中国語である)。だったらそう言えよ何だよこのダンボールは、と思ったが、ああそうかい、と。中国人のコミュニケーション方法に目くじらを立てても仕方がない。

 とは言え、廃墟以外に圓明園で見たいところがあるかというと、特にないので、まっすぐに西洋楼遺址区を目指す。西洋楼遺址区は、その入口で、15元の別の券を買うことになる。



 スピーカから絶えず中華風音楽が流れていることを除くと、よい風情ではあるのだけれど、でも、桃の花、これ造花ですからね。春を先取り企画、みたいなことなのかなあ





 西洋楼遺址区。遺跡にはちゃんと囲いが作られている。こんな柵、たしか昔はなかったぞ(あったかもしれないけど)


 魔法陣(?)。巨大迷路の中心にあずまやがある。迷路が面倒なので真ん中までは行かなかった






 中世のヨーロッパをまねたような意匠だけど、なんだか不気味。


 なぜヴィクトル・ユーゴーの胸像が? と思ったら、アロー戦争での英仏連合軍の圓明園の破壊を批判した人だということだ。

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 庭園には広い池があり、黒鳥が住みついているという。


 黒鳥の家族がいた! ──日本と同じで、ものすごい高価なカメラで鳥の写真を撮ることを趣味にする人たち、というのが、北京にもいるようだ。そんな中産階級がこの国にも生まれているのか、と感心するが、日本と違うな、と思ったのは、やたらうるさいこと。黒鳥に向かって「飛べ!飛べ!」とか叫んでいるのだ。野性の動物は大事にしないとね…

 寒風に打ち震えていた一日だったが、風はだんだん穏やかになってきた。もう夕方だが、晴れ間すらのぞいてきたほどで、北京で空の青さが見えるとは思っていなかったので、ちょっと感動。

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 この日の夕食は、南鑼鼓巷のこじゃれたレストランで、ジャージャン麺とビール、60元。


 座席にそなえつけられたこの呼び出し機、賢いよね。なんで日本人はこういうのが考えられなかったんだろう


 さらにマンゴーヨーグルト(20元)を買い食いして、交道口路のバーでヒューガルテン(20元)を飲んで、21時頃にホテルに戻った。空には星が見えた。明日は晴れそうだ。