night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

2/20(月)中国行きの夜間飛行

 2月20日(月曜日)、夕方の飛行機なので午後からゆっくり出発し、町田バスセンターから羽田空港行きのバスに乗った。だが、この日は春の嵐で、南寄りの強風が吹き荒れている。飛行機が飛ぶのかな、夜になればおさまるだろうけれど、出発があまり遅くなると到着が真夜中になってしまい、電車がなくなりかねない…と不安を抱えながら、羽田の国際線ターミナルにやって来た。早めに着いたので、ビールを飲みながらぼんやり待つ。


 だが、出発便は特に遅れることもなく、定刻通りに搭乗が始まり、出発。17時25分の全日空963便、機材は、まだ真新しいB787だった。B787、窓の日除けの代わりに、ボタンを押すと窓の透明度が変わるの? すごいな。夜間だったので使わなかったけれど。座席は3-3-3で、ぼくは右舷側の窓際。隣はひとつ空いていたものの、通路の向こうに座っていた若い中国人の家族が子供を座らせてしまったので、おや残念と思ったが、おそらく高所得層の中国人で、礼儀正しい人たちだった。

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 機内では、広瀬すず主演の『四月は君の嘘』を見ていた。『愛の悲しみ』のシーンでやっぱりぼろぼろ泣いていた。


全日空機内食もうまい


 眼下にものすごい大都会が広がってきた、と思ったら、韓国のソウル。


 あれは…大連と旅順か!

 中国本土が見えてきた。


 天津郊外あたり。道路は整備されているようだが…。ちょうど天津の空港の上空あたりを通過した。──地上が見えるってことは大気汚染もたいしたことないのでは? などと、希望的観測を持ってみたり。

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 20時45分頃、南側から進入して、北京首都国際空港(北京首都国际机场/Beijing Capital International Airport)に着陸した。空港の敷地の近くまで住宅が迫っている。前はそうではなかったと思う。──北京首都国際空港のターミナル3に着いたが、空港内シャトル電車に乗って、動く歩道を何本も過ぎ(中には動かない動く歩道も)、大屋根が印象的なメインビルディングまで移動して、入国と通関を経て地鉄機場線のホームにたどり着き、電車に乗り込んで発車したのは、21時42分だった。荷物を預けず、ターンテーブルで荷物をピックアップするという工程を省いているのに、着陸してから電車に乗るまで1時間かかっている。北京空港は巨大すぎる。──その前に、到着ロビーの中国工商銀行のATMで、少し迷ったが一気に2,000元をキャッシングしてしまった。15年前の自分ならびっくりするような金額だが、15年前と比べると、中国の物価も段違いである。

 北京首都国際空港は市内の北東30kmほどのところにあって、以前は高速道路しかなかったが、2008年のオリンピックに合わせて、機場線(机场线/Airport Express)という鉄道が開通している。約15分間隔で走っているようで、運賃は25元。4両編成で、これはゴムタイヤ地下鉄なのかな? 少し乗り心地が違うし、加速も強い。車内は集団見合い式の座席配置。片道切符はICカードで、乗るときはタッチ、降りるときは改札機に投入する。その後の滞在を考えると、北京市政交通カード(“一卡通”)をさっさと買ってしまうのがおそらく正解だったのだが、とりあえず早く市内に行きたかった。


 東直門駅→第3ターミナル駅→第2ターミナル駅→東直門駅、という三角形の運行ルートになっている。第3と第2の間だけでも7〜8分かかるんだけど…。

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 東直門(东直门/Dongzhimen)駅に着いたのは22時13分だった。ここは地下鉄2号線という環状線に乗り換えられる駅だが、とりあえず地上に上がる。目的のホテルに行くには、地下鉄だと乗り換えが多くなって微妙に行きにくく、バスに乗ればいいんだ、と思っていた。だがあまり具体的なことは調べていなかった。場所は知っているのでなんとかなるんじゃないか、という、あまり緊迫感のない態度である。どうにもならなければ、東直門から歩いたって30分くらいのはずだ。

 こういう場合に役に立つのが、スマートフォン*1にインストールしてきた“百度地图”である。現在地から目的地への公共交通機関を調べることができる。612路という路線バスに乗れば近くまで行けるはずである。

 しかし、二環路の巨大な立体交差である東直門橋(歩行者用信号はない)を渡って西へ歩き、バス停(东直门内)を見つけたものの、バス来ないじゃないの…。そもそも時間も遅いし…歩いたほうが早いんじゃないの…などと惑い、歩き始めて、しばらくしたら後ろから目当てのバスが通過して行く! といったお約束的な出来事を経て、結局、その先のバス停(北新桥路口西)から612路バスに乗った。

 がらがらの連接バスで、中扉から乗ると、車掌のおばさんと、“乘务管理员”と書かれた黒いジャンパーを着たおじさんが、何か言ってくる。ああ、運賃ね、と、とりあえず5元紙幣を運賃箱に突っ込み(2元でよいのだが、小額紙幣がなかった)、さらに何か訊かれるから「中国語はわからぬ。これは北兵马司に行くか。」と中国語で言うと、ああベイピンマースー、と納得してくれた。15年ぶりの記憶の、バス停の名前だ。──というか、車掌は昔もいたけれど、“乗務管理員”とは? 警備員なのだろうか。北京のバスは3名乗務になってるのか?*2

 「次だよ。」と教えてくれたバス車掌のおばさんに礼を言って北兵马司(Beibingmasi)で下り、交道口南大街を少し南に歩き、見覚えのある“板厂胡同”を入って真っ暗な路地を進むと、15年前と変わらぬ姿で、目的のホテルがあった。冷気よけの分厚いビニールの緞帳を押し開けて入る。

侶松園賓館(侣松园宾馆/Lusongyuan Hotel)

 伝統的な四合院建築を使っているホテルだ。いまは胡同と呼ばれる路地に小さな住宅が密集しているが、昔はこのあたり一帯が“僧王府”という貴族の邸宅だったようで、南側の地安門大街沿いにも立派な門が残っている。僧王とは、僧格林沁(センゲリンチン)という清末のモンゴル貴族で、太平天国やアロー戦争などの歴史に出てくる軍人である。

 予約は問題なく入っていて、チェックインできた。宿泊代はクレジットで支払うが、ディポジットの200元を紙幣で支払う(チェックアウトのときに返却された)。Wi-Fiのパスワードがフロントに掲示されていて、これだから写真撮っておきな、なんて言われる。そして、これはプレゼント、と言ってりんごとバナナが乗ったお皿をくれた。──部屋は禁煙だが、中庭のテーブルで喫煙可能、中庭に出るのはどこから? …などとボーイさんに訊きながら、部屋に落ち着いた。


 すごくちゃんとした部屋だ。15年前に泊まったのはもっと安い適当な部屋だった(笑)


 石敷きの中庭。


 説明が無くても、孫逸仙先生と周樹人先生ですね。

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 しかし、この時点でもう23時過ぎ。時差を考えると体感的にはもう24時過ぎで、さすがに空腹である。フロントに戻り、さきほどのボーイさんに、この近くに食事できるところはあるか、と訊いたところ、「现在…」(今からか…)と困り顔である。中国で、中国人から、とても常識的な反応が返ってきたので、ちょっと楽しくなってしまい、おなかすいちゃって!(笑)とおどけてしまった。フロントのお姉さんが、右に行くと“らーみぇんぐゎん”があるよ。と教えてくれたので、とりあえず交道口南大街に出てみる。


 なにが“拉面馆”だかわからなかったが、たぶんこれのことだろう。清真と書いてあるのでハラルのお店のようだが。店員は回族っぽい丸い帽子を頭に乗せている。


 牛肉面15元と、燕京啤酒(500ml瓶)8元。…燕京ビール、あまりうまくないな。思うに、中国のビールは中国で飲むから中国の味なのであって、日本の、独特のコクのあるビールを飲みなれていると、正直、飲めたものではない。北京で見かける国産ビールの三大ブランドは燕京、青島、哈爾濱だと思うが、この中では青島ビールが値段が高いようだけど、ぼくは哈爾濱ビールが好みかなあ。

 訊くと、煙草は吸える。灰皿はない。先客たちを見ていると、床に捨て、彼らが帰ると店員はほうきで床のごみを集めている。おお、中国だ。郷に入っては郷に従う。

 さすがに24時を過ぎると店を閉めにかかるようで、外に置いてあった電動バイクが店内に入れられた。


 充電している


 北京、さすがに東京よりも寒い。気温は0℃、明日は小雪という予報である。──そして、大気汚染、これについては、さきほど東直門内大街を歩いていたときは、料理の臭いと排気ガスと建設作業の埃が入り混じったものすごい臭気で、さすがにショックだったけれど、しかし、北京って昔もこのくらい空気悪かったよな、と思う程度だ。だが、まだわからない。

*1:スマートフォンは、データローミングはしないものの、羽田空港Wi-Fiルータをレンタルしてきたので、インターネットに接続することはできる。Google関連が使えないことの不便さを、前回の上海旅行で痛感したので、検索はYahoo!JAPAN(日本語で検索したい場合)と百度(中国語で検索したい場合)を使い、地図は百度地图を使うことにした。Gmailは使えないが、個人的な用事は携帯キャリアのアドレスがあるので、Wi-Fi環境があれば受信できる。…そういえば、北京の空港に着陸してスマートフォンの電源を入れたとたんに中国電信にローミングしたが、すかさず日本国外務省から「たびレジ」を案内するSMSが着信したのには、そういうことを始めたのか、と感心した。…だが、しばらくしたらアダルトサーヴィスへ誘導する現地の業者のスパムSMSも着信し、ちょっと呆れてしまった。読めるだけにムカッときてしまう。なにが“日韩白领模特学妹”だよ。

*2:バスをワンマン化する動きもあるはずだが、おそらく一時期のテロ事件もあって、結果的に雇用が維持されている…というかたちなのかなあ、などと邪推した。