night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

1/30(月)京都(大徳寺、相国寺)

 この時期にできた休みをとらえて京都にやって来た理由のひとつは、大徳寺聚光院の、狩野永徳の『花鳥図』の特別公開を見るためであった。京都国立博物館に寄託されている国宝の障壁画が、もともとのあるべき場所で、約1年間と期間を区切って特別公開されるという企画で、JR東海のCMにまんまとやられてしまったのだった。インターネットで拝観予約を受け付けており、予約なしでも空きがあれば飛び入りできるようだが、なかなかそうもいかないらしい。昨年春から始まっていたこの企画が、いよいよ今年度いっぱいとなり、いまのうちに行かなければもう機会はないぞ、と思っていたのだった。

大徳寺 聚光院|京都春秋

 月曜日の午前、10時40分という回を申し込んでいた。この日も降ったり止んだりという天気。朝9時過ぎにホテルを出た。大徳寺というのは洛中でも北西の方にあり、とりあえず北に行くバスに乗ればよいよな、206番とか…と思ったが、大宮通りや千本通りよりも、堀川通りのほうが車線数が多いので交通が流れそう…などと思い、少し歩いて、堀川五条から、9番の市バスで北に向かった。二条城の石垣の横を通って、25分弱、北大路堀川で下車。西に少し歩くと、大徳寺の土塁が見えてきた。

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 考えてみると、ぼくはこれまで大徳寺に来たことはないような気がする。南の北大路通り側から入ってみた。いきなりウォーキング老人の大集団にもみくちゃにされたが、それをやり過ごすと、静かになった。──ここは広い敷地に、塔頭と呼ばれる、本山に付属する小寺院が立ち並び、さながら一つの町のようになっている。いくつかの塔頭は拝観を受け入れているようだ。


大徳寺、龍源院。石庭に静かに雨が降る。方丈の襖絵は立派な竜であるが、筆者年代不明とのこと。


同じく大徳寺、瑞峯院。こちらの石庭(“独坐庭”)は、見る角度のせいかだいぶダイナミックに見える。


好もしい雰囲気の小路と、梅に瓦土塀


 さて、予約の時刻に聚光院にやってきた。名前を告げて入場し、荷物は預かられる。──噂の、聚光院の特別公開は、1グループにつき10人程度の小集団で、係の方に説明を受けながら、40分ほどかけて見てまわる、という形であった。方丈(本堂)で見られる、狩野松栄・狩野永徳父子の国宝障壁画は、瀟湘八景図、花鳥図、蓮池藻魚図、琴棋書画図、そして竹虎遊猿図である。…何がすごいって、保存状態がめちゃめちゃ良いのである。まあ、当初は金泥が塗られていたかどうか、という話はあるにせよ、それにしたって、安土桃山時代の襖絵がこれだけはっきり残っているというのはまずそれだけですごいし、そして、とくにやはり白眉なのは、動く自然を描きたい、という思いがありありと感じられる、『花鳥図』であった。

 本堂の南側には苔に覆われた庭があり、千利休が作った庭だと言うのだが、これはどうやら当初は枯山水庭園だったのが、年月を経て苔に覆われてしまったのだということだった。そうか、いま我々がいろいろな場所で見る苔の庭というのは、もともとは違う姿だったのが苔むしてしまった姿だということもあるのか…。末法の世だからなあ…(?)。千利休の墓もこの寺院にあるそうだ。──また、茶室も二種類が案内される。一つは千利休の茶室、もう一つは少し下った時代の茶室であったが、千利休の茶室は、暗く、狭く、ストイックで、緊張を強いられていかにも落ち着かない部屋であった。お茶を勧めたり飲んだりすることをわざわざ修行にしなくてもいいのにね、などと、俗物的なことを考えてしまった。

 最後に、落成したばかりの真新しい書院で、千住博氏の滝の障壁画を見せられて、聚光院特別拝観は終了であった。この、滝も、まあ壮観である。

 それにしても寒い。寺院を拝観するには靴を脱いで上がるので、足元から凍える寒さである。


 大仙院の白梅が雨に濡れていた。

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 門前の商店で大徳寺納豆を土産に買い、市バスで北大路バスターミナルへ、そして地下鉄に乗り換えて烏丸今出川まで出た。京都御所の北側、今出川通りから見ると同志社のキャンパスの裏側に、相国寺が広がっている。


相国寺鐘楼


 ここに来たのは、境内にある承天閣美術館で、伊藤若冲展をやっているため。──相国寺は、金閣寺銀閣寺の親玉であり格式の高い寺院である。鹿苑寺の障壁画、葡萄小禽図・月夜芭蕉図など、昨年の“若冲展”で東京に来たものもあるが、やはり良いなあ

臨済宗相国寺派 承天閣美術館


読めない


 京都は古都税という経験があるからかな、とも思ったが、これも一つの見識であろう。

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 雨が上がって、少しずつ天気が良くなってきた。京都御所の森を横目に、同志社女子大の前の今出川通りを歩いて、鴨川を渡り、出町柳駅へ。ロッテリアで軽食とした。ここのロッテリアも、昔からあるよなあ。