night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

3/1(火)西表島の森へ

 具体的な日程を決めずに来ていたのは、天気次第ってところがあるな…と思っていたせいもある。実は、ぼくが来る前の週まで、八重山の天気はずっと雨マークだった。昨日は肌寒かったものの、雨が降っていないだけで上出来だったのだ。この季節の沖縄旅行は難しいな。

 この日は西表島に行くことにした。ハイキングをしたくて、トレッキングシューズと登山用のレインウェア上下を、わざわざ持ってきていたのだった。浦内川を観光船で遡ると、滝までトレッキングができるらしい。

 石垣は八重山群島の首都で、西表島竹富島などなど、周辺の離島への航路が、“離島ターミナル”に集結している。西表島へは、上原港と大原港という2か所への航路がある。朝8時過ぎ、八重山観光フェリーの窓口で「西表島の上原まで…」と言うと、上原港の便は今日は全便欠航とのことだった。ありゃ、と思ったが、こういう場合は大原港行きの船で渡してくれて、大原港から上原港までは船会社が送迎バスで送ってくれる、というしくみになっているようだ。上原港が地形や風向きのせいで欠航が多い、というような事情があるのだろうと推測する。上原港行きの乗船券と、送迎バスの券をセットにして渡してくれる。JALの機内で配られた割引クーポンで5%引きになって、往復で3,710円だった。


 乗船券を買ったのは八重山観光フェリーのカウンターだったが、埠頭で案内されて乗ったのは安栄観光の船だった。共同運航らしい。90人乗り程度の高速艇で、外洋に出る。天気はなかなかよくならない。


 45分程度で、西表島の大原港に上陸。団体客は大型観光バスに吸い込まれていく。八重山観光フェリーの社名が書かれた地味なグレーのマイクロバスが、少し離れたところに停まっていた。乗り込むと、地元のおばちゃんが「バスのきっぷもらってきた?」と問う。「ええ、もらってきました」「安栄? 観光フェリー?」「観光フェリー。」…と尋問調だったが、これは観光客が間違えないように親切心だったらしい。少ししてからやってきた運転士の女性に、どこまで行くの、と問われたので、浦内川観光のパンフレットを見せる。

 しかし大原から上原まではかなり離れていて、バスで1時間程度かかる。浦内川はさらにその向こうである。ジャングルの山が海岸近くまで迫る、西表島の風景を興味深く眺めていたが、そのうちうとうとと居眠りしていた。

 バスは上原港を過ぎてさらに島の西部へ向かい、10時25分頃、星野リゾートでおばちゃんたちを下ろした。運転士の女性、ぼくに向かって、「10時半のクルーズでしょ。」「ええ、そのつもりでした」「もう少しで着くから、電話して、ちょっと待っててって言っておきな。ちょっとなら待ってくれるから。」「あ、そうですか」ということで、パンフレットの番号に電話してみる。あ、そうですか、という反応だった。一応、1時間ごとにマングローブクルーズの船は出ているような書き方だが、なかなかそうでもないのかもしれない。運転士の女性、「次のクルーズ何時って書いてある?」「1時間後ですね」「あんなとこで1時間、何にもないもの!(笑)」「(笑)」

 バスを下ろしてもらい、遊覧船の乗り場に小走りで向かう。そんなに遅れなかったと思うな。遊覧船の往復で1,800円。

 遊覧船が走り出すと、寒いので、登山用のウェアを着込む。いきなりこういう風景! 両岸がマングローブ林だ。それにしても、小さな島なのにこんなに広い川があるんだなあ。マングローブというのは、そういう名前の植物があるのではなく総称であり、種としては、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギなどがここで見られる植物だとのこと。

 30分ほどで上流の舟着き場に到着。ここから登山道に入る。


 登山道とは言ってもそれほどの道ではなく、スニーカーでも歩けるだろうと思う。ただ、ところどころ、沢が流れていて洗い越しになっているところや、ぬかるんでいるところもあったので、トレッキングシューズをわざわざ持って来たのには、意味があったな。


 途中、マリユドゥの滝を遠望できる。この滝の滝つぼまで下りる道があるが、事故が起きて以来閉鎖されているとのこと。

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 45分ほどで、カンピレーの滝に到着。岩盤の上を激しく水が流れている。


 岩盤にはところどころに円い甌穴が開いており、底が見えない程度には深い。これに落ちたら少なくとも大けがはするだろう。


 だんだん晴れ間が出てきた。

 石垣の港で買ってきたおにぎり弁当を食べて、舟着き場へ戻る道をたどる。


 13時の遊覧船で、下流へ。

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 下流の遊覧船乗り場から、1kmほど歩いたところに、ウタラ炭坑の跡があるそうだ。行ってみる。ジャングルの中に集落が作られ、厳しい強制労働まがいのことが行われていたが、戦争末期に海上輸送ができなくなって廃坑になったとのこと。


 遺跡の近くは木道が整備されていた。


 驚いた。ジャングルに埋もれる遺跡。


 リュウキュウアサギマダラだろうか。

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 浦内川河口の県道の橋のところに戻ってきた時点で、14時20分頃。ウタラ炭坑に寄って、中途半端な時間に出てきたので、移動の足がない。上原港まで1時間くらい、てくてくと歩いた。


 ここくらい自然が横溢している場所に、道路に街路樹を植えるって、考えてみるとちょっと滑稽だよね…


 歩いてきたところ、イリオモテヤマネコが出るようなところだったらしい。川を泳いで渡っているイリオモテヤマネコの目撃情報もあるとか。

 上原の港の前の食堂で八重山そばを食べてから、16時頃に上原港のターミナルの横で待っていると、朝と同じ運転士の女性が、同じマイクロバスを運転してやってきた。安栄観光の大型バスも来た。八重山観光フェリーの乗船券を持っているぼくは、八重観のマイクロバスに乗る。なるほど、船は共同運航だが、送迎バスは別々に運行しているようだ。そして、安栄観光のほうが大きな会社らしい。

 居眠りしているうちに、大原港へ。西表島、よかったなあ。ジャングルを歩けて満足。こういうことをやりたかったのだ。──お土産物屋さんで山猫クッキーとかを買って(笑)、17時の船で石垣に戻る。

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 この日は、石垣の『政亭割烹』さんで、民放テレビをぼんやり眺めながら、波照間島泡盛、「泡波」を、ちびちびと。このお店、知人に教えられて来てみたのだけど、この泡盛が、さっぱりしててうまかったし、悪酔いしないよいお酒だった。──「泡波」は、生産量が少ないため、波照間島以外ではほとんど出回らず、値段も跳ね上がると聞く。このお店では1合750円だったけど、翌日、石垣市街の酒店で2合瓶(360ml)が3,000円で売られていたのを、実家へのささやかなお土産とした。