土曜日、小田急の代々木八幡駅に着いたのが15時09分。すでに開演時刻は過ぎており、15時15分頃にNHKホールに焦って駆け込みました。エレヴェータで5階（3階客席の最上部のうしろの廊下）に行くように案内され、入れるタイミングを待ちます。曲順すら把握していませんでしたが、我に返るとショパンのピアノコンチェルトの1楽章がスピーカから聞こえてきました。
・ショパン：ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品112楽章から入れました。3階自由席の最後列に案内されます。こういうところの誘導もすべてが手慣れていますね。ソリストは今年のショパンコンクール優勝者（…とだけ決まった状態で、例年、この時期のN響定期はプログラムが組まれます）、韓国人の若い男性ピアニスト、チョ・ソンジン。演奏は、オーケストラが、“精彩を欠く”という表現がぴったりで、ちょっと残念…とくにホルン。ソリストは上手だし、よく指揮者とコミュニケーションしてるようで、感じのよい演奏だと思ったのだけど、少し淡々としてるようではあったかな。──ソリストのアンコールは英雄ポロネーズ。これはすごかったなあ。色とりどりのタペストリーみたい。ミレドシミレドシ…のところで、聴いててふわっとした浮遊感がありました。コンチェルトよりもこっちの方がよかったのでは。
・《チョ・ソンジンのアンコール》ポロネーズ 第6番 変イ長調『英雄』
・グラズノフ：バレエ音楽『四季』作品67 ─『秋』
・ハチャトゥリアン：バレエ組曲『ガイーヌ』（抜粋）
1 剣の舞
2 バラの少女たちの踊り
3 子守歌
4 レズギンカ舞曲
・チャイコフスキー：序曲『1812年』作品49
指揮：ウラディーミル・フェドセーエフ
ピアノ：チョ・ソンジン
後半は自分の席に座ります。今日はA席を奮発したのです。2階中央少し上手付近で、よい位置。まず、グラズノフは、てでんこてでんこ！というリズムが印象的な曲で、なんだかソヴィエトロシアっぽい曲だなあ…と思ったけど、この曲は時代的には革命前なんですねえ。
アルトサキソフォーンとバスクラリネット？が入ってきて、『ガイーヌ』。きたぜきたぜ、と期待が高まります。突っ走る『剣の舞』に続いて、『バラの乙女の踊り』は、だいぶゆっくりとした歩みで、はっきりとした対比になっていました。でも重々しくなるわけではなく、ふわっと軽いんですよね。すばらしかったのが夜の音楽、『子守唄』。とくにこの曲で思いましたが、フェドセーエフの歌いかたは、よく聴く歌いかたとは少し違う、というか、一般的にためるところでそれほどためないで流していく、という印象があります。でもゆっくりと一音ずつかみしめるような歌いかたをするところもあり、そのバランスがなんだか絶妙なんだよなあ。
『レズギンカ』は有名なモスクワ放送響の例のアレみたいな爆走ではなかったにせよ、リズムがはっきり出て、客席で体が動きそうになります。こういうのをオーケストラの躍動感と言うのだ！（＾＾ 隣の席のOLさん風の女性も指でリズム取っちゃってました。スネアの兄ちゃん、リムショットも入れて、ナイスプレイでした。
＃有名な例のアレ（＾＾ 先日、教育テレビのクラシック音楽館でも紹介されましたね。↓
『1812年』。序盤のチェロとヴィオラのアンサンブル、密度が濃くなる音が瑞々しい。この曲でも、…ちんちろりん、という懐かしげなメロディのところでテンポを落としきらないのが、やはりひと味違います。──最後はもう、キラキラです。鐘と金属板をセットでぶら下げたやつ（あれは何という楽器なのですかね）を叩きまくるパーカッションが、絵的にも面白い。トランペット4人とトロンボーン3人が、オケ雛壇最上部で立ち上がって演奏。みなぎる音。。。幸せになってしまいました。83歳のフェドセーエフの頭の中ではこんな音が鳴っているのですね。今日の公演中、指揮台に上がるときに少しよろけた場面があって、あっ、と思ったのですけど、…なんの、彼は若かった。音楽は若かった。病気から立ち直った彼は、とても楽しそうにタクトを振ります。すばらしいことだと思います。──自分は体力的にも生活的にも精神的にも疲れきった状態で、食事もとらず、文字どおりバタバタと走って遅れて駆け込んだNHKホールでしたが、この日の演奏を聴いて冷静でいることは、ちょっとできませんでした。
フェドセーエフが楽員の女性から受け取った花束を、ヴァイオリンの女性にパスする、というおきまりのパフォーマンスを経て、…アンコールを期待していた聴衆は多かったと思いますが、何度かのカーテンコールを経て、完全終演となりました。代々木八幡駅に戻って、小田急で帰宅。
