night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

舞台『わたしを離さないで』@彩の国さいたま芸術劇場4/29

 蜷川幸雄演出による舞台『わたしを離さないで』を見てきました。カズオ・イシグロの有名な小説、映画化もされている物語ですね。新宿から埼京線の快速で30分、ぼくはたぶん14年ぶりに下りる与野本町駅から、サイゼリヤで先に食事を済ませて、彩の国さいたま芸術劇場へ向かいました。下手側のバルコニー席で見たので、少し見づらい部分もありましたが、ここは舞台の奥行きがとても深い、珍しい劇場なんですね。

 主演の多部未華子さんが、表情が硬いし演技も抑え気味だなあ、とずっと思っていましたが、原作の語り手であるキャシーの役どころですから、どちらかと言えばいい子キャラなので、その意味ではとてもよくはまっているんですよね。そして、その彼女が、マダム訪問の場面で心が折れそうな繊細な演技をするのがちょっと圧巻でした。木村文乃さん(原作で言うルースの役)が、よく通る声で、舞台で光る女優さんだったなあ。最後近く、三浦涼介さんが感情を爆発させる場面は、やはり鳥肌を立てざるを得ませんでした。──それにしても、非常に大掛かりなセットを多用した、見るからにお金のかかった舞台で、蜷川幸雄ってさすがはビッグネームだな…と感心したのはたしかです。途中休憩が2回も入り、上演時間は4時間近くでした。これもちょっと想定外で、見てるほうも少し大変でした。

 舞台作品としては、脚本も演出も、あまりにも語りすぎで、少々退屈だったのですが(舞台を日本にする必要はあったのかな?“どこでもない世界”を作ってほしかったなあ。)、そんな、ほぼすべてが語られるお芝居の中で、唯一の暗喩だったのは、イントロとアウトロでゆっくりと舞台上を旋回した、ラジコンヘリコプターでした。あれは…。あれをどう解釈するかは人それぞれでしょうけれど、あの精巧なおもちゃに彼らをなぞらえているのだとしたら…。

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