night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

2/5(月)金沢、石川県立美術館

 一乗谷から越美北線の1両の気動車で福井に出て、福井から17時08分の特急『サンダーバード29号』で金沢へ移動した。少し遅れたが金沢まで1時間たらず。

 金沢では駅前から路線バスに乗って香林坊に出て、ビジネスホテルに投宿した。正月に能登半島で発生した大地震のため、金沢にも避難者が滞在しているというニュースは目にしていたが、部屋が取れたので泊まることにしたのだが、…このホテルは、連泊者でご希望の方はルームメイクを省略します、タオルだけドアノブにかけておきます、という仕組みになっているが、チェックインしてフロアに上がって驚いた。ほぼすべての部屋にタオルの入った袋がぶら下がっているのだ。避難者だけでなく、全国から復旧に関連する人たちが金沢に入っているのだろうと想像した。──夕食は、片町あたりでチェーンの寿司屋に。片町は北陸最大の繁華街と言われるが、客引きとかがちょっと剣呑な雰囲気だった。

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 金沢は12年ぶりである。だが12年前に来たときは、21世紀美術館も石川県立美術館も休館中で、残念だった。今回も、21世紀美術館は休館している。これは正月の大地震の影響である。ぼくにとって金沢は、旅行しようと思うと台風が来てしまったりして、なぜか思うに任せない土地である。しかもこの日は雨であった。──しかし今回は、石川県立美術館が開館しているだけでもありがたいと言わざるを得ない。

石川県立美術館

 石川県立美術館と言えばこれ!というのが、この、野々村仁清の『色絵雉香炉』と『色絵雌雉香炉』だ。国宝と重要文化財という組み合わせ。


 想像していたよりもどっしりとした感じなのが意外だった。それにしても、鮮やかな色だ。

 ここは土地柄から、古九谷などの美術品が多い。深い緑に青が散る、『青手桜花散文平鉢』がとても美しい。喜多川相説の『秋草図』はすっきりしてて気に入った。──興味をひかれたのは、古九谷のうち、紋様に暗示的なキリスト教のモチーフを読み取る、という特集展示で、鳳凰の脚が交差して十字になっているとか、布袋の持っている杖に十字があるとか、鷺が何の象徴であるとか、面白かったけど、本当かしらね、という気はする。

 また、石川県ゆかりの作家の作品も多く展示している。鴨居玲が金沢の人だとは知らなかったので、不意を突かれた感じに。また、田中太郎という彫刻家の特別展示もあって、不思議な感じで面白かった。

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 この日は朝から雨だったが、ついに昼前から水っぽい雪が降り始めた。金沢駅の近くのビルの中の定食屋(オフィス街にあるような、飲み屋が昼はランチ営業をしている、といったお店で、実際に近くの勤め人らしい人たちが次々と訪れる。こういう光景を見ると金沢は都会だ、と思う)で昼食を取ってから、12時58分という中途半端な時間の新幹線『はくたか564号』に乗って、東京に帰った。せっかく金沢まで来たので、もっとゆっくりしたかったのだが、この日は関東が雪の予報で、ぐずぐずしていると雪に弱い首都圏の鉄道がどうにかなってしまうのを恐れて、早く帰ることにしたのだった。本当に、金沢はぼくにとって思うに任せない旅行先である。──東京までは約3時間であった。