道北旅行というタイトルを掲げながら速やかに道北をあとにしてしまい、朝の通勤者の波にまぎれて札幌の街を歩いている。ここからさらに道南に向かってしまう。──9時38分発の特急『北斗8号』函館行きに乗った。これは今回の旅行では珍しく混んでいて、千歳空港からの乗換駅である南千歳でさらにたくさんの人が乗ってきて、ほぼ満席になった。旅行特需が発生しているようだが、考えてみると、以前に『北斗』に乗ったときよりも車両数が減っている。
10時44分の白老で降りた。この駅の北側、駅の出口から少し歩いたところに、線路に接して、「ウポポイ」の入口がある。
■ウポポイ(民族共生象徴空間) NATIONAL AINU MUSEUM and PARK
「ウポポイ」とは、2020年にオープンした国営の「民族共生象徴空間」であり、国立アイヌ民族博物館・国立民族共生公園などを含む施設群の総称らしい。
まずは国立アイヌ民族博物館を見学。
伝統的な文様の衣装に…
蝦夷錦だ。
近世の色丹島ではロシアの衣服も着られていたとのこと。文化の交わる地域だったのだね
イナウというのは結構大きなものなんだね。でも、木を削って作ってあるということは、あまり古いものが残ることもないのかもしれないね
トンコリというのは5弦の楽器なのか
知里幸恵の自筆ノートだそうだ
北海道を中心としたこういう地図を描かれると興味深い
国家が関与してこういうものを作り運営することに大きな意味があることはもちろんだが、国立アイヌ民族博物館の展示自体は、うーん、難しいな、と思わざるを得なかった。展示自体は、マンガに出てくるような古来の文化から、交易の民としてのアイヌの姿をも解説する、充実したものだと思ったが、歴史上の存在としてだけではない、同時代的な存在としてのアイヌ民族を、博物館の展示によって紹介しようとするのは、相当に難しいことなのではないか、と思った。
ブロニスワフ・ピウスツキの銅像。帝政ロシア領だった時代のポーランド人で、19世紀末にサハリンに流刑されてアイヌやウィルタを研究した人だが、ここ白老に滞在したり沙流アイヌの研究をしたこともあるとは知らなかった。
雑穀の農業も行われていたそうだ。──畑のことを「トイ」と言うのか。「戸井」とか「土肥」という地名が本州にはあるけど、やはり関係あるのかしら
「チセ」の復元家屋。茅葺きの屋根が段になっているのが独特だなあと思ったけど、茅葺きの工程を考えてみると、こうなるほうがむしろ自然なのかも知れない
湖のほとりの公園は気持ちのよいところだったけれど、コタンを再現した「チセ」は電気が引かれているようだったので、まあいいか、と思って行かなかった。ホール棟では演舞などの公演が行われているようだが、時間が微妙に合わなかった。ただ、野外ステージでのムックリの実演は聞けた。不思議な音だなあ。
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白老駅
郵便ポストも自動販売機も藍色に染められている。イランカラプテ!
白老から特急『北斗14号』函館行きでさらに南下した。定刻は14時29分発のところ、千歳線内で事故があったということで20分あまり遅れて来た。
秘境駅として知られている、小幌駅…と思われるものが、一瞬、かすめて行った
暮れていく噴火湾を眺めながら駒ヶ岳がぐんぐん近づいてくる。函館までは3時間近くかかる。
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今日はこれから新幹線で本州に渡るが、ちょっと時間があったので、新函館北斗で降りずに終点の函館まで行った。
函館駅に着いた
函館駅の隣にこんな一角ができている。観光客向けのお店が集まっているようだけど、閑散としている
北海道土産を買い込んだのと、駅に近いラッキーピエロで食事をしてから、普通列車で改めて新函館北斗に戻る。
18時55分発の、普通列車の森行き。乗客のほとんどは通学の高校生だった