night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

ゴッホ展 @名古屋市美術館 3/4

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 こうして見上げると名古屋もすごい都会だ

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 3月4日(金)、名古屋に現れた。──名駅前から、碁盤の目状の名古屋の街を、ぶらぶらと歩いて行った。

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 白川公園。噴水のある広い公園で、科学館もあるのね。

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 そして同じくこの公園の一角にあるのが、名古屋市美術館

名古屋市美術館ゴッホ展 響きあう魂 ──ヘレーネとフィンセント

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 このゴッホ展、昨2021年の9月~12月に東京でも開催されていたが、日時指定制のチケットが、週末などはほぼ取れず、タイミングを合わせられずに、見逃してしまったのだった。2月末に東京の別の展覧会(『メトロポリタン美術館展』)でゴッホの絵を見て、そういえばあのゴッホ展は今はどこに巡回しているのだっけ?…名古屋じゃないか。と急に思い立ち、気分転換をかねて手頃に旅行することにして、やって来た。日時指定のチケットは前夜のギリギリのうちに購入・発券しておいた。──午前10時半からの入場枠だったので、朝も余裕があったし、さらにゆっくり名古屋の街を歩いて時間を調整しながら来たのだった。

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 しかし、日時指定のわりにはかなりの長さの入場列が形成されており、場内に入ってもものすごい混雑だったのには閉口した。序盤が特にひどくて、もはや絵を鑑賞する環境ではなかったので、入場時間枠の最初の方は混雑するだろうから、まず順路の一番最後まで行って、逆行しながら見ることにした。こうしても、結局は途中で次の時間枠の波にぶつかるので、それほど効果的ではなかったけれど…。

 そういうたどりかたをしたせいで、この展覧会の目玉であり最後の最後に展示されている、糸杉──『夜のプロヴァンスの田舎道』、そして、『花咲くマロニエの木』を、ほとんど最初に目にすることになった。『花咲くマロニエの木』がとてもよかった。高級住宅街っぽい一角に、強い陽射しと青く落ちる木の影。ものすごく惹かれるし、すーっと落ち着く絵だ。…と思ったのだけど、改めて見ると、なんだかちょっとオサレ気味な絵かも。
Blossoming chestnut trees
(via Wikimedia Commons)

 ぼくがとても好きで、プリント画を部屋に飾っていたこともある『サン=レミの療養院の庭』も来ていた。──ゴッホの、このあたりの絵って、印刷のポストカードなんかで見ても全然わからないのだけど、絵の具が盛り上がって荒々しい、いかにもゴッホ!な筆致のところと、そんなことなくてしっかり丁寧に塗り重ねられているところが、ちゃんと使い分けられている。見ていると、研ぎ澄まされている…! と感心してしまうし、それと同時に、とても心地がいい。
The garden at the asylum at Saint-Rémy
(via Wikimedia Commons)

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 この展示はオランダのクレラー=ミュラー美術館の所蔵品による展覧会であり、中盤にはゴッホ以外の作品のコーナーもあった。これがまた、よいものばかりで…。というか、どちらかというとわりと端整な絵が多い。朝もやがたなびくように朦朧とした、カミーユピサロの『2月、日の出、バザンクール』や、ジョルジュ・スーラの『ポール=アン=ベッサンの日曜日』など。しかしそのなかでやはり異彩を放っていたのが、ルドンの『キュクロプス』に描かれた一つ目の化け物だったけれど。──ヘレーネ・クレラー=ミュラーという人は、ゴッホの評価がまだ定まらないうちから、彼の作品に着目して蒐集していた人なのだそうだ。そういう人の慧眼があるからいまの我々が鑑賞できるのだろう。

 そんなふうに、素通りしたり反転したりまた順行したりしながら、場内を行ったり来たりした。やはり終盤のコーナーが、ゴッホの、特に研ぎ澄まされた力のある絵ばかりで、この部屋だけでも見ごたえがありまくるのだった。──『種まく人』の輝く太陽や、『黄色い家』の埃っぽく乾いた光に見入ったりしてから、最後にまた『夜のプロヴァンスの田舎道』を見ると、この絵の特別なテンションの高さが、改めて感じられる。ゴッホが何枚も描いた糸杉というモチーフが、彼のなかで何であったのか?はわからないけれど、わからないながらもとにかく力を感じる。不思議な絵だ。この力は、一体何なのか。そこにあるべき真・善・美みたいなもの、それ自体は必ずしも明るいものではない、そしてそれに向かうベクトル、…みたいなことを、なんとなく考えながら、美術館を出た。
Van Gogh - Country road in Provence by night
(via Wikimedia Commons)

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 白川公園、木立の中に不思議なアート作品が。

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 こういう人がぬぼーっと現れるからちょっとぎょっとする