昔から見慣れたこの駅舎、再開発で、近々なくなってしまうと聞く。──ここから陣馬街道方面のバスに乗って、「霊園前・八王子城跡入口」というバス停で降り、しばらく歩くと、八王子城跡のビジターセンターがある。
八王子城は、小田原北条氏の支城で、1590年に豊臣方の前田利家の軍勢に攻められて一日で陥落したと言われている。…なんとなく、ここが城跡だと大々的に言い始めたのはここ最近の話だという印象を持っているが(?)、近年になって発掘が進んで、“御主殿”と呼ばれる居館の跡からは、ヴェネツィア製のレースグラスの破片などが出土しているという(以前に府中の博物館で見たことがある)。
御主殿跡に向けてかけられている、“曳橋”。これは、こういう橋があったという「復元」ではなく、見学者用に架橋したもので、実際にはもっと簡素な橋で、非常の際は壊したりしたと考えられているということだ。下は城山川という川だが、ほとんど水の枯れた沢になっていた。
“御主殿”跡という原っぱ。庭園もあったようだが全容がわからないため、いったん埋め戻しているとのこと。──御主殿の下には滝があり、落城の際に侍女が身を投げて川が血に染まったという伝説があるそうだが、滝自体はそれほど落差のある滝ではない。まあ、ここでそういう戦争があったということなのだろう。
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“本丸”まで登山道を登ってみる。何の変哲もない山だが、たしかに、南側の斜面が、段状に整地された痕跡が見て取れる…と思えなくもない。また、大正期の石碑などもあり、なにかの講が目的地にしていたようでもある。
今日は空気が澄んでいて、眺望がすばらしい。おそらく現在の八王子の市街地から、方角的には横浜の方向を見ているのだと思うが…
たぶん、右に見える高いビルが、八王子駅の南口にある、再開発タワーマンションじゃないかと思うんだよね。三多摩でいちばん高いビルなんでしょ、たしか
30分程度で、山頂の“本丸”跡に着いた。だが、狭い頂上だ。こんなところに立てこもるわけにはいかないだろう。
ユキノシタが群落をつくっている。珍しい。──下山する途中には、おそらくコジュケイのペアに出くわして、藪の中に駆け込まれたので、驚いてしまった。梅雨に入る前の爽やかな気候で、低山歩きにはとてもよい日だった。