▽街と、その不確かな壁/村上春樹
もうだいぶ前に昭和55年の『文學界』を借り出してコピーしたものを、これもだいぶ前に、とある人がWordに打ち込んだファイルを持っていて、それをPDF化してKindleアプリで読むという、40年を飛び越えた読書だった。──村上春樹が満足せずに書籍化しなかった幻の作品であることは、ちょっと古い村上春樹読者なら周知のとおり。でも、おそらく二十年ぶりくらいに読み返して、ものすごく完成度の高い中編だと思うのだけど。弱く暗い心をひきずって、腐臭を放つ言葉とともに、生きていかなくちゃいけない、という提示なのだと思う。
▼世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上・下)(新潮文庫)/村上春樹
ぼくが持っているのは今とは表紙が違う旧版の文庫で、上巻の奥付は平成6年5月の16刷、定価は560円となっている。今の版よりも文字が小さい。この小説の文庫版はこれまでに3回くらい表紙が変わっていると思うけれど。ぼくが初めて読んだのは高校生の頃だった。
いいですか、僕という人間が虫めがねで見なきゃよくわからないような存在であることは自分でも承知しています。昔からそうでした。学校の卒業写真を見ても自分の顔をみつけるのにすごく時間がかかるくらいなんです。家族もいませんから、今僕が消滅したって誰も困りません。友だちもいないから、僕がいなくなっても誰も悲しまないでしょう。それはよくわかります。なんでだろうか、涙が出てきた。
でも、変な話かもしれないけど、僕はこの世界にそれなりに満足してもいたんです。どうしてかはわからない。あるいは僕と僕自身がふたつに分裂してかけあい万歳(ママ)みたいなことをやりながら楽しく生きてたのかもしれない。それはわかりません。
でもとにかく僕はこの世界にいた方が落ちつくんです。僕は世の中に存在する数多くのものを嫌い、そちらの方でも僕を嫌っているみたいだけど、中には気に入っているものもあるし、気に入っているものはとても気に入っているんです。向うが僕のことを気に入っているかどうかには関係なくです。
僕はそういう風にして生きているんです。どこにも行きたくない。不死もいりません。年をとっていくのはつらいこともあるけれど、僕だけが年とっていくわけじゃない。みんな同じように年をとっていくんです。
──『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(25)
▼ケーススタディでしっかり身につく!Google Apps Script超入門/境野高義
半分くらい読んで、メール自動送信やらブログ自動投稿やらのスクリプトを組んだ。Google Apps ScriptはJavaScriptがベースらしいけど、そもそもJavaScriptを書いたことがなかった。面白い。
▼国造(くにのみやつこ) 大和政権と地方豪族(中公新書)/篠川賢
ちょっと難しかったな。あまり一般向けの本ではなかった。
▼新装版 ムーミン谷の仲間たち(講談社文庫)/トーベ・ヤンソン、山室静(訳)
「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」
▼人口で語る世界史(文春文庫)/ポール・モーランド、 渡会圭子(訳)
▼ひとたびはポプラに臥す (1)(2)(3)(集英社文庫)/宮本輝
▽ウクライナ戦争は世界をどう変えたか 「独裁者の論理」と試される「日本の論理」/豊島晋作
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