night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

『Songful days』@両国国技館 3/3

 イープラスの音楽メディア“SPICE”が仕掛けた、新しいライヴイヴェントです。着席鑑賞スタイルのアコースティックライヴで、歌をじっくり聴かせたい、といった趣旨のことが主催者側からアナウンスされており、参加アーティストは、当初、KalafinaとMay'nが発表されていました。Kalafinaに興味はあるが、どうしようかな、と思っていたところ、茅原実里さんの参加が発表され、これだけ歌える人たちを集めたスリーマンライヴで、しかも2組まで自分がファンだとしたら、もう行くしかない、と。──国技館ならではの升席や、アリーナ指定席に“おみやげつき”など、客席に価格格差をつける点、インバウンドも想定していそうな英語案内サイトの存在、など、プレイガイドのイープラスが仕掛けた興行ならではの機軸が打ち出されていたのは興味深いと思いましたが、この日は他の大規模ライヴと被っていたためか、集客の面では比較的苦労していたようですね。

SPICE (powered by e+) presents Songful days -次元ヲ紡グ歌ノ記憶- 公式サイト

 あまり情報を集めていなかったため、使わないだろうなと思いつつペンライトとみのりんフラッグを持参しましたが、“場内光物禁止”がアナウンスされていたようです。──国技館に入るのは2013年12月の茅原さんのライヴ以来です。ぼくの座席は2階、正面の3列目でした。ステージは向正面に作られていて、見下ろす升席では、靴を脱いで足を投げ出したりしながら聴いている人たちの姿が見える、という、珍しいコンサートでした。ただ、これは升席よりも2階スタンドのほうがどう考えても楽だろう、とは思いましたけど…。ぼくは茅原さんのファンクラブ枠でチケットを取りましたが(アリーナとスタンドを両方申し込んでアリーナは取れなかった)、升席は敬遠したもんなあ。。。

*

 開演予定の17時の、5分ほど前から、琴アーティストの吉永真奈さんという方が登場し、前説と琴の演奏を始めました。どういう趣向だろう、とは思いましたが、『君の知らない物語』、と曲名を言っただけで場内がひゅうっと盛り上がったあたり、客層に対するツカミはバッチリだったようですね。曲間で駒の位置をいちいち動かす様子を、琴というのは不思議な楽器だな、と興味深く見ていました。

 さて、それぞれの歌手の登場の順番は明らかになっていなかったのですが、なんとなくトリはKalafinaだろうな、と思っていました。みのりんが先か、May'nが先なのか…。実は開演前に、喫煙所でギタリストの山本陽介さんを見かけ、みのりんバンド“CMB”でおなじみの方なので、あれ?今日はみのりんはバンドなの?でもチェロの向井さんが来てるっていうツイートがあったよな…と混乱していました。ステージに山本陽介さんが出てきて、あれっ、でもストリングスの人たちが違う(笑)、と思っていたら、トップバッターは、白い衣装(ショートパンツにレースのスカートがついているような、不思議なボトムスでしたね)のMay'nさんでした。山本さんはMay'nのバンドだったのか。エレアコ(?)で力強いソロから、優しい響きまで、山本さんのギターの演奏は、見事でしたね。──May'nの歌を生で聴くのは初めてでしたが、…すばらしかったなあ。『ノーザンクロス』だったっけ、イントロをアカペラで歌い上げてから一気に速く転じたのは。引き込まれました。最初のMCあたりまでは彼女も観客も硬さが見えましたが、最後の曲で星型のタンバリンを持って歌ってたMay'n、楽しそうでしたね。観客もだいぶ温まったと思います。

*

 アーティストごとに、休憩をはさんで舞台転換していましたが、また琴が運び込まれたぞ…と見ていたら、休憩時間の終了やはり5分ほど前から、また吉永真奈さんの演奏が。そして、次のステージは、茅原実里さんでした。みのりんは、おなじみの室屋大先生や向井さんたちのストリングスカルテットを引き連れて登場。昨年末の弦楽四重奏コンサートのスタイルをそのまま持ってきた形で、衣装も、黒と白のツートンカラーのドレスで、年末と同じものでしたね。──May'nのステージが比較的シリアスに終わったので、一曲目の『会いたかった空』には頷きましたが、それに続いてストリングスが『SELF PRODUCER』を演奏し始めたので、えっこの流れでこれやるの、と冷や汗かいてしまいました(べつにぼくがびくびくする必要はないのですが(笑)、Kalafinaみのりんって本当に客層が被っているのだろうか、という疑問はありましたし、いかにもKalafinaファンの年齢高めの観客もかなり見えたので…)。『向かい風に打たれながら』のストリングスアレンジは、コルレーニョなんかも交えて暴れまくるチェロやヴィオラが凄まじいものですが、熱量が半端なく、聴いていて気持ちいいのはたしかです。

 茅原さんのMCは、しゃべり倒してしまうので向井さんにはマイクを渡しません、と言いつつ、向井さんは椅子が壊れます、など、相変わらずのイジリもあり、客席のみのり勢は含み笑いをしていたのですが(^^;…、みのりんが「国技館には思い出があって…」と言ったとたんにどっと笑いが起き、見事にみのり勢があぶりだされていました。2013年12月の茅原さんのクリスマスライヴで、みのりんがステージに開いたポップアップの穴に落ちるという大事件があったんですよね…あのとき東のスタンドにいたぼくは、穴が開いているのが上からよく見えていたので危ないなと思っていたらみのりんがそれに吸い寄せられるように落ちたので、文字通り血の気が引きました(同行していた友人に「真っ青になってましたね」と言われたのを覚えています)。運動神経がよくてうまく着地して怪我ひとつなかった、というみのりんでしたが、そんなわけでぼくにとっては国技館はちょっといやな思い出の会場になってしまっていたのでした。ですが、今日は穴がないから落ちません、と、みのりんはなぜかしたり顔でした。(^^

 それはとにかく、『境界の彼方』、『Paradise Lost』と、キラーチューンを改めて聴けてうれしかったです。最後は『purest note 〜あたたかい音〜』で客席の手拍子と「ラララ…」を誘いました。ここでもみのりんファンがあぶりだされる結果になりましたが、単独ライヴのときほどは、客席は温まらなかったかな(しかたないですが)。──この日のみのりんは、のびのびと余裕が感じられましたが、歌唱自体は調子が良いとはあまり言えないもので、少し心配になったのは確かでした。また、「アコースティックなので、原曲とは雰囲気を変えて…」と語っていた(わりとオーソドックスな“アコースティック”の解釈の)May'nに対して、「弦楽四重奏でも原曲のスピード感を大事に…」と言うみのりん。“アコースティック”に対する考え方の違いがはっきりと出ていましたね。

*

 3組目はKalafinaでした。バックは、ピアノの櫻田さんとストリングスの4人、という編成。3人の衣装も白いドレスでした。セットリストもKalafinaのコンサートとしては王道だし、歌唱は言うまでもなく高値安定。とにかく安心して聴けました。MCは、おとなしめにふるまうKeikoとWakanaに対してHikaruは振り切れていて、客席に向かって「1階! 2階!」とやるのはいつもなのですが今回は「西! 正面?! 東! …からのアリーナぁ!」とか(^^。また、途中のMCで、Hikaruが『まどか☆マギカ』の説明をするという謎の流れになっていました(「魔法少女がッ!戦うッ!(小さくガッツポーズ→横でKeikoとWakanaが真似してガッツポーズ)」とか/笑)。──という流れで『未来』で、手拍子をしたりしていましたが、その次が『アレルヤ』でした。何度聴いても息を呑む曲です。

 最後、『ring your bell』で、決まった…! と、大団円感がありましたが、Keikoが「コラボレーション、見たいですか?」と語りかけました。おお、やってくれますか!! May'nとみのりんをステージ上に呼び込み(KeikoはMay'nのことを「めいんぬ」と呼ぶんですね。Keikoしか呼ばないそうですが/笑)、May'nとKeikoとHikaruが三人できゃーきゃー言いながら抱き合ったりしてる横で、残されたWakanaとみのりんが、“あ、こっちもやっときますか…(^^;”的なアイコンタクトで、ハグしていたのが、可笑しくて。

 3組がそれぞれコメントした後で、さてコラボは何の曲をやるんでしょう…。Keikoが、「聴くところによると、アニソンの“国歌”と呼ばれている曲があるそうで…」と言った瞬間、場内が一気に盛り上がりました。Kalafinaの3人から、May'n、みのりんに、『鳥の詩』が歌い継がれながら、演出のレーザーが場内に舞い踊る、幻想的な空間になりました。5人ともそれぞれのカラーに取り込んで歌っていましたが、Keikoが力強いアルトで「消える飛行機雲…」って歌っていたのがちょっと印象に残っています。

 最後、5人がステージに並んで、挨拶する前に、相変わらずMay'nと一緒にきゃいきゃいしてたKeikoの声(たぶん)で「たのしい…このメンツだいすきw」とか、みのりんが「終わっちゃう…」ってつぶやいたりしたのが、オフマイクで聞こえて、ほっこりしましたね。

*


 終演は20時半頃でした。“歌姫”とかいう言い方って商業くささを感じてぼくは好きじゃないんだけど、3組ともまぎれもなく、いまのこの界隈で独自の力のある女性歌手ですし、終わったとき、3時間半じっくりと歌を聴いた!という大きな満足感がありました。──だからこそ、ということもあるのですが、「PAのマズさ」が不満だったかな。変なビビりノイズを拾っているチャンネルがずっと出っぱなしで、吉永真奈さんの琴のステージや、みのりんの『PRECIOUS ONE』の弦楽のピッツィカートのところなどで、顕著に聞こえて、残念でした(何度目かの吉永さんのステージで、途中でそのチャンネルを止めてましたからね)。また、『鳥の詩』で、演出用のレーザーを客席に向けるのは、やめてほしかったな…。

 ステージセットは、森の木々の背景や、植物的に見える緑の幕が貼られたりして、“森の中の…”というコンセプトに沿ったものだったようですが、影ナレによるシチュエーションポエム(?)も含めて、そのコンセプトはべつに不要かな、歌だけで勝負できたよね、という気がしました。──終演後、わりとすぐに、イープラスから長文の来場者アンケートのメールが届いたのも新鮮でした。帰りの特急ロマンスカーの中でけっこう真面目に回答しました(^^。刺さる層にはとても刺さる、よいイヴェントだったのですが、集客の面で苦労していたようなので、次回があるかどうかは…?

-opening-
君の知らない物語渡月橋(吉永真奈)

May'n
・もしも君が願うのなら
・Re:REMEMBER
・今日に恋色
ノーザンクロス
ダイアモンド クレバス
・You
・Shine A Light

-intermission-
サクラサクラ(吉永真奈)

茅原実里
会いたかった空
SELF PRODUCER
向かい風に打たれながら
・PRECIOUS ONE
境界の彼方
・Paradice Lost
・Purest note〜あたたかい音

-intermission-
・琴線幻夜 ・樹海幻夢(吉永真奈)

Kalafina
百火撩乱
I have a dream
・storia
光の旋律
・未来
アレルヤ
ring your bell

Collaboration(May'n/茅原実里Kalafina
鳥の詩