白毫寺から歩いて戻り、近鉄奈良駅から電車に乗った。近鉄の学園前駅というところで下りた。関西の土地勘があまりないが、どうやらこのへんは関西屈指の高級住宅地らしい。「学園前」という駅名が、何学園があるんだろう、と思いながら駅前に出ると、駅の目の前にどんと「帝塚山大学」のビル群が建っていた。駅前の歩行者デッキが帝塚山大学の建物とつながっているというしくみである。道の反対側にも校舎が並んでいる。なるほど、学園、と思いながらも、、、「帝塚山大学」は帝塚山(大阪の南の、高級住宅街として有名な地名)にあるのかと思っていたが、そっちにあるのは「帝塚山学院大学」らしい。あれ?? 混乱してしまう。
ここから少し坂を下りて歩くと、「大和文華館」という美術館がある。住宅地の中に、忽然と、緑の濃い公園のような入口が現れた。
木々と草花の間の歩道を上って行くと、見事な枝垂桜と、なまこ壁で和風な外観の美術館が見えた。
館内に来場者はほとんどいなかった。開催中の展示は、「文字を愛でる 経典・文学・手紙から」というもの。書か…難しいな…と思ったけど、こういうのは好き。
『阿国歌舞伎草子』。今で言う「会いに行けるアイドル」みたいな感じなんだよね、きっと(笑)
こういうのはまだわかりやすいというか、豪華に仕上げよう!という考えに至るのが理解しやすいのだけど。高麗時代の華厳経と、平安時代の一字蓮台法華経(国宝)
『稲富流鉄砲伝書』。鉄砲の打ち方の極意の解説、みたいなことだと思うのだが、それを金泥・銀泥の料紙に麗々しく描く、というのが、いったいなぜそういう考えに至るのか、よくわからない。。。
*
大和文華館を出ると、「中野美術館」こちら、という案内が出ていた。どんなところだろう、と思って、行ってみた。
こぢんまりとした私設美術館だが、展示室に入ると佐藤忠良の女性の彫刻に出迎えられる。国吉康雄、といっても初めて聞く名前なのだが、すさまじい顔色に赤いショールを被った『スザンナ』という女性像は強く印象に残った。また、村上華岳の『踊れる少女』という、赤い色そのものが画面に浮遊しているような作品もおもしろい。そのほか、長谷川潔の作品が3枚、駒井哲郎も3枚あった。
池の対岸は、大和文華館のある丘。
この下駄のオブジェはなんだろう
*
学園前駅に戻り、軽食を取ってから、こんどは駅の北側のバスロータリーから、奈良交通の路線バス(学研北生駒駅行き)に乗った。また大きな池があり(溜池があちこちにあるのは、関東にはない風土だ)、それを橋で渡ると、松柏美術館がある。
個人宅のような表札だが、個人宅にしてはかなりのお屋敷である
ここでは上村松園・上村松篁・上村淳之という三代の日本画家の作品を集めた展示をしていた。上村松園の独特のなよっとした曲線の美人画、松篁の花鳥画、そしてそれを受け継いで上村淳之氏もたくさんの種類の鳥を飼育しているそうだ。あまり考えたことがなかったが、花鳥画というのは実際に生きた鳥を飼ってそれを描くのか。
この美術館は構造がおもしろく、ぐるっと廻るような構造で、地下にはビオトープの池がある。湿気の問題はありそうだが、そもそもが大きな池の隣の丘という立地ではある。
ここは近鉄グループが運営する美術館で、もともとは佐伯勇という近鉄の総帥の邸宅の敷地だそうだ。美術館の裏には広大な門構えの屋敷がある。和風の建築かに見えるが、煙突が見えるということは暖炉があるのだろう。普段は閉鎖されているようだが、お茶の会などに使われているようだ。
*
このあたりは登美ヶ丘というところで、ちょっと歩いただけでも、かなりの高級住宅地に見える。成城とか田園調布とかに近い位置づけの土地なのかもしれないが、幹線道路沿いには店舗も多く、団地もあって、駅からの路線バスもそれなりの本数が確保されている。さらに路線バスで北に行き、近鉄けいはんな線の学研奈良登美ヶ丘駅に出た。
学研奈良登美ヶ丘駅
ここはニュータウン開発のために鉄道を伸ばしたところで、広い道路と高架の鉄道、そして駅前にイオンショッピングセンターがある。ここから大阪に通勤しようと思ったら、大阪の地下鉄に直通して、例えば本町まで40分ほど、運賃は910円のようだ。なるほど安くはないな、しかしさほど暮らしにくい土地ではなさそうだ、と思った。