night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

6/18(土)静岡市立芹沢銈介美術館


 登呂遺跡公園の一角に、石が積まれた特徴的な建築がたたずんでいる。

静岡市立芹沢銈介美術館


 芹沢銈介とは、明治に生まれ、昭和59年に亡くなった染色作家の方だそうだ。名前は知っていたがどんな作品を残した人なのかは知らなかった。──李朝の工芸品を並べた静物画など、不思議な遠近感(の無さ)で、奇妙な空気が漂っている。濃い藍の「俑文のれん」が特に印象に残った。顔のない女性がこちらを向いてたたずむ、異界の入口のようだ。

 民藝活動とも接点のあった人のようで、面白いのは、藁の蓑や、東北で荷物を背負う時のクッションのように使われていたという、「ばんどり」というわらを編んだ民芸品を並べて下げた様子を描いたという「ばんどり図屏風」といったもの。そんな道具が日本にあったのか、と初めて知るし、そういうものがデザインのように描かれている。──色合いはくっきりしているのにくすんだ空気が漂っていて、古代の遺物のようでもある。かと思えば、墨一色の「釈迦十大弟子尊像図」の連作もある。棟方志功を思い出すがあちらは版画、こちらは型絵染である。

 民藝の人の例にもれずこの人も膨大な収集品を残したようで、日本各地の民芸品や、エチオピアの祈祷書、インドネシアの樹皮の折本、南米の文明の摩訶不思議な顔の描かれた布とか…雑多! しかし、どこの博物館の系統展示でも再現できないだろうと思うような勢いがあった。


 中庭を望む部屋。この美術館は「石水館」という別名があるそうだ。花崗岩が積まれて、どことなく、堅固に守られた穴蔵に沈潜するような感覚の建物である。