night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

11/14(日)堺 アルフォンス・ミュシャ館

 北加賀屋でダックを見終わると、茫漠とした大阪の下町に放り出された。まだ午後2時頃だ。そもそも今回は、とくに見たいものを決めているわけでもなくて、とりあえず気分転換をしたくて西の都会にやって来ただけだ。少し考えて、堺に行くことにした。

 地図を見るとこのあたりは、南海電車阪堺電車などの南北の路線は多いが、それを東西につなぐ路線がない。乗り換え検索をすると天王寺に出るような経路が出てくるが、とりあえず地下鉄の終点の住之江公園駅に出て、バスターミナルから路線バス(大阪シティバス4号系統)に乗った。20分ほど乗って長居西二丁目というところで下りると、阪和線長居駅がすぐ近くだった。

 堺もかなり大きな都市で、南海線堺駅と、南海高野線堺東駅と、JR阪和線堺市駅が、それぞれ全然別の場所にあり、でもそのすべては結局、大阪の天王寺か難波につながっている。これから行きたいのは阪和線堺市駅なので、バスで長居駅にやって来たけれど、天王寺廻りでも時間はあまり変わらなかったかもしれない。──長居は各駅停車しか停まらない駅で、関空快速が爆走して行ったあとに、普通・鳳行きが来た。阪和線の各駅停車というと青い103系や201系が走っているイメージがあったが、さすがに今ではそんなことはないようで、来たのは転換クロスシートの225系だった。だがガラガラである。旅行先で交通機関が空いていることは、基本的にはよいことなのだけれど、これだけ経済が衰退した今の時代になると、心配が先に立ってしまう。

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 堺市駅で下りた。駅前からペデストリアンデッキでつながっている、マンションと商業施設の入った建物の中に、「堺 アルフォンス・ミュシャ館」がある。

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堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)

 珍しいミュシャの常設館が、なぜか大阪の堺にある。ここに来たかったのだ。──ミュシャのコレクターだった実業家がいて、蒐集物を堺市に寄付したのがはじまりなのだそうだ。

 ここで一番感動したのは、『ナチュール』というブロンズの彫像。うわー、ここ、これを持っていたのか! これ、過去になにかの機会に東京で展示されたこともあったけれど…、すっと通った鼻すじに、静かに閉じた目。恐ろしいような美しさだ。ティアラには大きなアメジストをかかげている。1900年パリ万博のときはそこに電球が仕込まれていたのだそうだ。

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 『ウミロフ・ミラー』という大きな鏡。(自分が映りこまない角度で写真を撮るのが難しい)

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 ミュシャの描く、チェコ民族主義的な女の子、いいよね

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 これらはレプリカですが。

 朝・昼・夕・夜の連作や、“四芸術”の連作、”四つの宝石”の連作などの有名作品も、もちろんあった。──東京で企画展などが開催されようものなら押しあいへしあいの大混雑になるミュシャの作品が、ほとんど人がいなくて静かに見られる、穴場の施設だった。