鎌倉の寺院は、どこも山を背負って、森に囲まれているようだ。──また少し歩くと、浄智寺がある。
鐘楼が門のような構えになっているのは、珍しいように思う。──本堂の曇華殿には、釈迦如来、阿弥陀如来、弥勒如来の“三世仏坐像”がまつられている。現在・過去・未来をあらわしているそうだ。
鬱蒼とした庭を歩く。
水音が響く。岩から水がしたたり落ちて、天然の手水のようになっていた。
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長寿寺。足利尊氏の墓があるという。──尊氏の墓と言えば京都の等持院にあって、今年の春に見たが、鎌倉のここにあるのは、尊氏の息子の鎌倉公方が、尊氏の遺髪をおさめたものだという。だが長寿寺は非公開の寺院で、見ることができない。
少しだけのぞき込めた境内は、まことに見事な苔庭だった。
長寿寺の横からの坂道は、亀ヶ谷坂の切通しである。この峠道の、北側が山ノ内、南側が扇ガ谷という地名だ。
古道そのままの道なりではないようだが、それでも結構な急勾配を下っていく。バイクなども通っていたが、雨の日なんかはちょっと怖いのではないだろうか。
海蔵寺の桔梗。
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化粧坂を上っていった。ここは以前に歩いたことがある気がするけれど…
この山の上が、葛原ヶ岡(くずはらがおか)と呼ばれるところだったそうだ。太平記で日野俊基が処刑されたのがここで、江戸でいう小塚原のような、郊外の処刑場だったのかもしれない。その日野俊基の墓という、古い宝篋印塔がある。
明治に建てられたという、葛原岡神社(くずはらおかじんじゃ)。 日野俊基という革命家がここの祭神なのだが、縁結びや開運や学問の神だそうだ。なんでもありのようだ。
いわゆる“花手水”って、最近流行っているようだ。新型コロナウィルス感染症の対策で、手水を使わせないための仕掛けらしい。
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ここからは、大仏ハイキングコースを歩いていった。
しかし、雨期のどろどろの山道に踏み込んで、気を付けてはいたのだが、下りで派手に滑って転び、服が泥だらけになってしまった。身体が一回転して腹ばいに転がるという派手な転び方をしたのでかなり焦った。ほうほうの体で、高徳院の大仏の近くの県道に下り立ち、なんとか街を歩ける程度まで服を洗った。
そして国道134号。海岸の駐車場は、ほとんどが閉鎖されている。散歩やランニングの人はときおり通るが、適当に座ってのんびりするには悪くない。──稲村ケ崎を歩いて越えて、江ノ電と小田急で帰宅。