night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

読書&査収音源リスト(2020年4月~6月)

 自粛期間だというので本を買い込んだりしたけれど、結局、そういう非常時には、たいして本など読めないのだった。順不同だが、ほとんどは6月になってから読んでいたものである。

▼皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上・下(新潮文庫)/塩野七生

相模湾上陸作戦 第二次大戦終結への道 (有隣新書)/大西比呂志、栗田尚弥、小風秀雅

 終戦直前に米軍が立案していた首都圏直接上陸作戦の、重要なターゲットは、「チガサキ・ビーチ」だった。──米軍の資料に加え、日本側で“汀線陣地”の構築に関わった赤柴中将という人の日記も主軸にして描かれる、当時の湘南海岸の状況、爆撃と機銃掃射にさらされる人々の生活についての記述は、圧巻だ。まぎれもなく労作。神奈川の地場の書店である有隣堂が出版している書籍で、平成7年第一刷。地元の図書館で借り出して読んだあとに、神奈川県内の書店で見つけて購入したのが平成28年第五刷というものだった。

飛ぶ教室光文社古典新訳文庫)/ケストナー、丘沢静也 (訳)

 べつに悪くないのに、どうして先達の訳者をおとしめるようなことをあとがきで書くのかなあ、と思う(光文社古典新訳文庫は意欲的な試みだと思うけれど、ときどきそういう訳書や訳者に出くわす)。子供の頃に講談社版を読んでいるのだけれど、…この話、ベク先生も禁煙さんも、三十代なのだ。ちょっと嘆息してしまった。

▼12万円で世界を歩くリターンズ タイ・北極圏・長江・サハリン編(朝日文庫)/下川裕治、阿部稔哉

▼pen 2020年2月15日号「平壌、ソウル」

▽深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと/スズキナオ

 デイリーポータルZで名前を見かけるウェブライターの人だけどそれ以上のことは知らない。ネット記事のコレクションのような書籍で、昔風に言うと“雑誌連載などをまとめたエッセイ集”なのだろうが、文章の初出がインターネットメディアであるのが現代風だ。書いてあるプロフィールを信じるならぼくと同世代みたいなのだけれど、お金をかけていなくても行きたいところに行って見たいものを見て、ゆったり生きてる感じを醸し出している。

アホウドリの糞でできた国 ナウル共和国物語/古田靖

▼椿井文書 日本最大級の偽文書(中公新書)/馬部隆弘

イタリア遺聞新潮文庫)/塩野七生

▼草原の制覇 大モンゴルまで シリーズ中国の歴史③(岩波新書)/古松崇志

 これは抜群に面白かった。通り一遍に習う中国史とは、見方が全然変わってくる。新鮮な世界観が次々と提示されるので、読んでいてわくわくした。今のところ、岩波新書のこの新シリーズ中、最大のヒットである。──メモをいくらか。

  • 北魏の碑文に、鮮卑語で、君主を「可寒(カガン)」、その后を「可敦(カトン)」と書かれているそうだ。「カガン」は東西通じて遊牧民族の王が称した、可汗とかカーンとかハーンとかカガノスとかのそれであるのは明らかだけど、「カトン」 とは? …もしかして、それってトルコ語の「ハートゥン」(女性の敬称?)では?!(オスマン帝国のドラマをこのところずっと見てるので、連想が)──ユーラシアの遊牧民族の言語と歴史のつながりってすごいな。
  • 拓跋部から北魏北斉北周、隋、そして唐まで、鮮卑の系譜がつながっているというのも驚く。──ウイグルの援軍がなければ収められなかった安史の乱の後(9世紀)の、「唐・チベットウイグルの三国鼎立時代」という表現も面白い。唐の滅亡後に唐の復興を掲げたのも、「沙陀(さだ)」というテュルク系の部族軍団で(初めて聞いた名前だ)、朱全忠後梁以外の五代の王朝はみな沙陀の武力に由来する政権で、その系譜は趙匡胤北宋に続くという。
  • 宮殿が東を向いていた契丹京城(上京臨潢府)なんて、異文化すぎてわくわくする。東アジアには天子南面の中華風の都城しか存在しないのかと思っていた。
  • 「澶淵の盟」によって契丹北宋は対等に天下を分け合う平和共存関係となり、それぞれが「北朝」「南朝」と呼ばれたという。大陸の南北朝と言えば中原と江南だと思っていたが、そうではない時代があったのだ。また、11世紀半ばのユーラシア東方は、契丹北宋、高麗、西夏チベット、西ウイグルなどの「多国体制」だったという。中原の王朝が相対化される視点だ。
  • 青唐チベットの軍事征服に成功した徽宗は、欲を出し、新興国の金と結託して契丹を攻め、それが結果的に悲惨な亡国を招いた。風雅に溺れる文人皇帝としてしか知らない徽宗が、そんな軍事的な野心をもつ皇帝だったとは…。(ただ、開封陥落のときの凄惨な逸話には触れられなかった。あれはやはり歴史学的には眉唾なのだろうか。)
  • 元の大都は金の中都に隣接して造られた。大都の都城の南西に中都が接する図が載っている。両方が併存していた時代もあったという。──えっ、ということは、現代の北京西駅の南あたりは、金の都「中都大興府」だったのか。なにか遺跡は残っているのだろうか。北京に行ったときは清代の紫禁城のことしか考えていなかった。そういえば北京市内の南のほうに大興区という地名があって、こんど新空港ができたところだ。大興というのはそういう歴史的地名なのね。
  • どうでもいいけど、“世界史で印象深い人の名前”部門で、「耶律阿保機(やりつあぼき)」と「完顔阿骨打(わんやんあくだ)」は、両巨頭だよね。(?)

▼台湾の歴史と文化 六つの時代が織りなす「美麗島」(中公新書)/大東和重

▼陸海の交錯 明朝の興亡  シリーズ 中国の歴史④(岩波新書)/檀上寛

 「明」にフォーカスをあてた中国史の本って、珍しい。

▽折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー(ハヤカワ文庫SF)/ケン・リュウ (編)、中原尚哉・大谷真弓・鳴庭真人・古沢嘉通(訳)

 面白かったのは、やはり、『沈黙都市』(馬伯庸)なのだけど…、政治的な何かを読み取るのは、無しとしたい。