night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

コートールド美術館展 @東京都美術館 9/20

 東京都美術館は、この日は正面入口で手荷物検査を実施していた。最近、都立の美術館でときどき抜き打ち的にやっている印象があるが、どういう方向に持っていきたいのだろうか。

東京都美術館コートールド美術館展 魅惑の印象派

 コートールド美術館(The Courtauld Gallery)とは、ロンドンにあるギャラリーで、戦前に人絹で財を成した実業家が、ロンドン大学に寄付した美術カレッジのコレクションだそうだ。時代的にはまだ印象派後期印象派もつい一世代程度前でしかなく、評価が定まっていない頃でもあったようだが、今となってはたしかな審美眼と言わざるを得ず、…いろんな人がいるものだ。

 展示会場に入るとまず最初に、ホイッスラーの『少女と桜』、薄衣に赤い頭巾の顔の見えない女の子が鉢植えの桜をいじっている、不思議ときれいな絵が出迎える。しかし、これは何かの絵の部分なのではないかな…見切れているよくわからない円いものや、手前に雑に置かれた布など…、と思って調べてみたら、登場人物が三人になった絵がテートにあるようだ。

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 ポスターにもなっている目玉は、マネの『フォリー=ベルジェールのバー』で、バーカウンターの向こう(という設定らしい)に虚ろな目をした美しい女性が立っている絵である。後ろの大きな鏡に映って大規模な酒場の雰囲気が伝わってくるけれど、女の人の冷たい視線は、ちょっと、空恐ろしい。

 セザンヌの『アヌシー湖』、とても美しい。これはいいセザンヌじゃないの…。
Lac d'Annecy, par Paul Cézanne
(public domain via Wikimedia Commons)

 鏡のような湖面と山並み、セザンヌ自身もちょっと含羞があったらしく、「若い女性のアルバムのようだ」なんてことを言っていたというキャプションがあったが…、しかし、青と緑が響きあっているようで、でも静けさが感じられる、見事に調和したすばらしい絵だ。

 ルノワール、『桟敷席』は、つるりとした青白い顔色とさえない表情が、どうにも不健康で、うーん、と思っていたのだけど…

Renoir - Outskirts of Pont-Aven, 1888-90
(public domain via Wikimedia Commons)

 茫洋とした風景画が特によかった。『春、シャトゥー』や、『ポン=タヴェンの郊外』など、ぱっと見たときに揺らめいたように見えたのだ。まさに夢の中のようで、不思議な絵だ。

 そのほか、アンリ・ルソーの絵(『税関』)のバランスがおかしくて、こりゃずいぶん高い木だな…さすがルソーさん(^^;…と思ったら、その隣のシスレーの絵(『雪、ルーヴシエンヌにて』)もなかなかバランスが不釣り合いで、あれれ、と思ったり。ゴーギャンタヒチの裸婦の絵なんかもなんとなく凄味のある絵だし。モディリアーニの裸婦の絵も。モネの『草上の昼食』は、えっあれはオルセー美術館にあるのでは?と思ったらこちらは習作だそうで、塗りが荒っぽい。ロダンドガのブロンズ作品もいくつかあった。…えっ、ニジンスキー?!

 …などなど、大いに堪能した。比較的空いているであろう平日の夕方に来られてよかった。