night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

7/14(土)「亀岩の洞窟」

 朝9時、品川駅前から出発。木更津駅行きのアクアライン高速バスに乗った。品川駅港南口のアクアラインバス乗り場に大行列ができていて目をむいたが、ほとんどは御殿場アウトレットや木更津アウトレット行きのバスを待つ人たちで、木更津駅行きは心配するほどの混雑ではなかった。──運転士さんが車内アナウンスで、「アクアラインの渋滞が湾岸線まで伸びているため羽田線を通る」とのこと。そう言えば三連休の初日である。アクアトンネルを通過するだけで20分あまりかかった。海底トンネルの中で渋滞、というのは、未来的だけど、ちょっとぞっとしないものだ。電子音のチャイムと、よく聞き取れないアナウンスがずっと流れていて、なんとなく怖かった。

 木更津金田バスターミナルで下車。10分ほど遅れて、9時55分頃だった。──灼熱の炎天下に放り出されて、ちょっと唖然とする。


 飲み物を買うにも、この反対側まで行かなければならない…。

 だが、見ていると、品川行き・東京駅行き・川崎行き・横浜行きなどの高速バスが頻繁に出入りする。この本数にはちょっと驚いた。高速バスが都市間の基幹交通機関になっているという、日本では珍しい土地柄の場所だ。──ここは、アクアラインを下りてすぐのところに作られたバスターミナルで、首都圏や横浜と千葉県各地を結ぶ高速バスを、相互に乗り換えられる、ハブターミナルになっている。ぼくは数年前、房総半島の高速バスは木更津金田をハブにしてくれたらいいのに、と書いたが、木更津市も同じことを考えていたらしく、その後の数年で、今のような体制になったようだ。

 ここで、別の高速バスに乗り換える。『アクシー号』という名前で、東京駅から安房鴨川に向かうバスである。これもアクアラインを通って来るので、20分ほど遅れてきた。バスがいつ来るのかわからない、というのは、長距離バスという交通機関の大きな欠点である。このバスは満席で、補助席を引き出して座った。あと数人で補助席も満席になって乗れないところだった。バスという交通機関の大きな欠点が、また一つ…。

 高速バスだが外房に向かうには高速道路がないので、『アクシー号』は千葉の山中の一般道を進む。途中、“かずさアカデミアパーク”という工業都市(?)のような地域を通り、こんなところがあるのか、と感心した。──久留里という古びた町を通って、“君津ふるさと物産館”で下車。11時半頃だった。道の駅の前で、近くに県営ダムがあるらしい。

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 こんなところまで来たのは、最近話題の“亀岩の洞窟”を見るため。道の駅で少し息をついてから、炎天下の県道を20分ほど歩いた。深い谷に緑色の水を湛えたダム湖に、釣りのボートが浮かんでいる。しかし、アオコがすごいな…。


 県道、写真は車が途切れたところで撮っているが、実際にはけっこう交通量が多く、歩いていて楽しい道ではない。歩道には、点々と、何かの動物の糞が落ちており、そして、そこはかとなく、獣臭が…。これはたぶん、猿だな。先ほど、バスの中からも、猿が道路を横切るのが見えた。

 ひどい暑さで、なけなしの手ぬぐいを頭からかぶる、無残な格好で歩いて、やっと着いた。

君津市地域ポータルサイト「きみなび」 > 亀岩の洞窟・濃溝(農溝)の滝・清水渓流広場

 “濃溝の滝”として最近インターネット上で有名になったが、問題の(?)穴が開いている場所は、“亀岩の洞窟”なのだそうだ。


 観光客が集まる駐車場から、公園の遊歩道が整備されている。崖の下には渓流が流れていた。


 あそこかな?
 
 洞窟があった。

 この地域では、蛇行する川の、蛇行部分の山を掘り抜いて川の流れをまっすぐに付け替え、干上がった部分の河床を新田開発する、ということをやっていた時代があるそうで、これもそのためのトンネル河川の一つなのだそうだ。


 蛍が出るそうだ。いいところですね

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 公園の駐車場の横では、売店で缶ビールなど売っており、温泉施設もあって、いずれも魅力的だったが、どうせ帰りも汗だくになるのだから…と思って、我慢。──さて、ここから帰るにはどうすればよいのか、という問題。一番近い鉄道の駅は、久留里線の終点の上総亀山駅だが、そこまで歩くと1時間半ほどかかる。この気候でその距離を歩くのは生命の危険があるし、先ほどバスに乗ってきたその道には歩道がなくていかにも危なかった。

 ひとまず道の駅“君津ふるさと物産館”まで歩いて戻り、ダムのレストハウスの食堂でラーメンを食べた。県道を眺めていると、変な時間に高速バス『アクシー号』が走って行く。アクアラインの渋滞のせいだろう、30分以上遅れているのだ。


 レストハウスの裏手は、深い谷のダム湖だった。

 13時46分のバス『カピーナ号』、安房鴨川行きを待つ。炎天下、タオルを被ってうなだれながら待っていたら、3分程度にすぎない遅れで、バスは来てくれた。これは県都の千葉と鴨川を結ぶバスで、アクアラインを通らない分、遅れは少なかったようだ。助かった。

 昔は上総亀山駅安房鴨川駅を結ぶ路線バスがあって、乗ったことがあるが、それが廃止されて、亀山付近ではこの『カピーナ号』が代替交通を担っているらしい。上総亀山駅の近くにも、“亀山・藤林大橋”という停留所が設けられているようだ。だが、たとえば君津ふるさと物産館と亀山・藤林大橋の間だけ乗ることができるかというと、それはできない、という制度になっている。この地域内だけの利用者、というものが全く不在なのだろう、想定されていないのだった。

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 安房鴨川駅前で下車。ちょうど、14時06分発の東京行き特急『わかしお』が出るところで、バスを下ろされた駅の西側から跨線橋を走って反対側に下りたが、さすがにそこから改札を通って特急に飛び乗るのは無理だった。──次の列車は、千葉方面が14時53分、館山方面が15時16分。さらに言えば15時34分の次の特急『わかしお』を待った方がいいというくらいで、たっぷり1時間半も時間が空いてしまった。この酷暑では、散歩する気にもなれない。イオンに行ったほかは、駅からほとんど一歩も出られなかった。


 結局、15時34分発の特急『わかしお16号』に乗って、東京に帰った。外房線はまだ一日に6本も東京行きの特急列車が走っているのだね…内房線は特急『さざなみ』が全滅したけど…。しかし、車内販売も自動販売機もないから注意せよ、とアナウンスが連呼する。侘しい時代になった。東京駅まで2時間。