night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

4/6(金)足立美術館、雨の中の庭

 4月6日(金曜)、年度も明けたが休暇を取って、早朝から飛び出した。自宅を出ようとしていた時刻に目が覚めるというていたらくであったが、なんとか、新横浜発6時49分の『のぞみ5号』の指定席におさまった。今回の旅行は往復の交通機関も宿泊先も、前日までにすべて予約してある。天気は悪く、いつ雨が降ってもおかしくない。新幹線の車内ではサンドイッチを食べたあとはほとんど眠りこけていた。9時50分の岡山で下車。

 岡山からは、10時04分発の特急『やくも7号』出雲市行きに乗り換える。新幹線に接続して山陰地方に向かう特急列車である。この列車も新幹線乗継で指定席を取っていた。6両編成で、指定席車には団体客が入っていて添乗員が世話を焼いている。


 車内販売はないとのこと。米子まででも2時間、出雲市まで行くと3時間近くになるのにね…。

 岡山名物(?)、道ばたに柵のない用水路が続く風景を見ながら、倉敷を過ぎると伯備線に入る。30分ほどで備中高梁で、ここは民家や農地が古風な石垣に縁取られた町であった。──伯備線高梁川という川に沿って山間に遡っていく路線で、列車の進行方向の左側に川が見え、ぼくは右側に座っていたので、車窓がほとんど線路わきの擁壁や藪であったが、備中高梁を過ぎると渓谷が深くなり、線路は右に左に川を渡っていく。

 新見では姫新線芸備線気動車が見え、山あいの小さな町を見送っていると、忽然と中国自動車道の高架が現れる。車窓に見える民家は、山陽地方らしい黒々とした瓦屋根だったのが、新見を過ぎると山陰の赤い瓦の屋根が混じるようになった。──足立という駅でしばらく停車して、上りの特急列車との行き違いを待つ。深い谷を刻んだ川に沿った駅で、対岸には斜面にへばりつくように県道が見え、こちら側へ橋が渡されているが、行き交う人も車もいない。強い雨が列車の窓を濡らしていた。

 米子に着いたときには10分ほど遅れていた。12時25分の予定だった安来(やすぎ)で下車する。

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 山陰本線安来駅。駅に接して、日立金属の工場がある。工場と言っても化学コンビナート的なそれではなく、昔ながらの、ギザギザ屋根の工場だ。ここがたたら製鉄の伝統を持つ土地であることを思い出す。

 安来で下りたのは、足立美術館を訪れるため。足立美術館とは、当地の実業家の人が蒐集した横山大観などの日本画を展示しているらしいが、何をおいても庭園の美しさによって、高い名声を誇っているところだ。なんでも、ミシュランガイドに載っているのだとか。──安来駅からシャトルバスが出ているが、特急『やくも』が10分遅れたために12時30分のバスには乗れず、他の交通手段もないため、30分後の次のバスを待った。冷たい雨が降っており、風も吹いているので寒い。

 マイクロバスは補助席まで使って満員になり、荷物を抱えて窮屈な姿勢で20分ほど、広い駐車場を擁した美術館に着いた。

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足立美術館


 お庭を見るためにはるばる山陰まで来たのに、雨とはね…、と嘆きながら館内に入ったけれど、雨の中の庭が、すばらしいのだった。


 お庭の見える喫茶室で、コーヒー、1,000円。コーヒー代ではないのです、お庭代なのです

 展示されている絵画は…、横山大観の富士の絵など、たしかに見事だけれど、好みかと言うと、あまり…。川端龍子の『愛染』など、センスのいい絵だな、と思うのだが、つけられている解説を読むと、うーん…と思ってしまうなど、ぴんと来る絵がなかった。

 3時間ばかり館内で過ごして、16時45分のシャトルバスで安来駅へ戻った。駅前でラーメンを食べてから、17時49分の普通列車で、米子へ戻る。

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 この日は皆生温泉のホテルを予約していた。米子の駅前から路線バスに乗って、混雑した金曜の夕方の市街地を30分ばかり、皆生温泉の観光センターでバスを降り、雨に肩をすくめながら歩いて行くと、海沿いの遊歩道に突き当たるところに、目指すホテルがあった。本館と別館に分かれており、本館のフロントでチェックインすると、別館の海沿いの部屋に案内された。清潔で気持ちの良いホテルで、温泉大浴場はもちろん海の見える露天風呂である。


夜の海は恐ろしい。風が強いので波も荒い。それにしても、あの北の光はいったいなんだろうか。

 夕食はなしで予約していたため、さびしい温泉街を散歩してコンビニに寄ったりしてから、部屋でお酒を飲んで寝てしまったが、翌朝の朝食が、またよかった。部屋番号ごとにテーブルに案内され、固形燃料で湯豆腐が炊かれ、卵かけごはんをおかわりし、久しぶりに和朝食を堪能した。一泊朝食付きで7,500円で予約したので、特に期待は高くなかったのだけれど、とてもよいホテルだった。


翌朝、海岸とホテル街。海岸には離岸堤が作られていて、消波ブロックが山のように積まれてる。放っておくと浸蝕が進んで、弓ヶ浜半島がもっと伸びてしまうのかもね。