night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

年末年始、美術館めぐりなどの日々

 仕事納めも終えた12/29(金曜)、まずはサントリー美術館の、セーヴル磁器展へ。美しい絵柄のお皿やティーカップなど、今では工業製品として珍しくもないような気がしてしまうけれど、当時はこれが全部、王様や、それこそマリー・アントワネットのための、一点ものだったと考えると、見る目が変わってくる。

サントリー美術館フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年


 写真撮影可だったこれ。これが陶磁器なの? いったいどういうことなんだ、と目を見張った。

 そして、乃木坂から地下鉄で湯島に移動して…


 気持ち悪い色の電球がつけられた、上野公園の並木道。あと何か月かしたら桜が咲くんだから、普通に待ってたほうが…(笑)

 東京都美術館ゴッホ展へ。

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢


 ジャポニスムとの関係を押し出して、浮世絵と並べて展示したりしているもので、先入観を押し付けられるせいか、どのゴッホを見てもなんだか平板に見えてしまう、奇妙な展示だった。そういうの、要らないんだけどなあ。ゴッホ単体だと一般受けする目玉がない、という事情があるのかも。でも、初めて見るよいゴッホの絵がいくつもあった。ぼくが気に入ったのは、地面を見下ろして道端の草を描いているような変な構図で、鮮やかな光が描いてある『蝶の舞う庭の片隅』や、白っぽい木の幹が整然と並ぶ奥行の中にはっきりしない人影が現れる、離人感たっぷりの『ポプラ林の中の二人』など…。

 東京都美術館では、同時にやっていた『現代の写実』展のほうが、必見の展覧会だったのではないかな…。

東京都美術館上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」


 橋本大輔氏の、廃墟に射す光。これはかなり衝撃的な絵だった。その鉄とコンクリートのかたまりが、本当にそこにあって、暖かな陽の光を、いま浴びているように見えたのだ。──ジャポニスムなんて見てる場合じゃないよ、と思った(笑)


 元田久治氏の廃墟。…あれっ、こうして選び出すと、廃墟ばかり見てたみたいになってしまった。

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 年が明けて1/7(日曜)、この日は、有楽町の交通会館の都庁旅券課で切り替えた旅券を受け取ってから、東京駅へ。──美術館めぐり初めは、東京ステーションギャラリーのコレクション展。ここ、企画展の会場として足を運ぶことの多い場所だけれど、現代アートのコレクションを持っているとは知らなかった。ピカソの作品も何点かあった(『黄色い背景の女』など)が、撮影禁止。

東京ステーションギャラリー鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、ひらきます


 東京ステーションギャラリー(長くて言いにくい。略称はないのですかね。“TSG”なのかな)は、この煉瓦の壁がいい味出してるよなあ…空間の勝利と言うか…


 夏目麻麦氏の『Room 1108』。「関西のとあるホテルで着想を得たもの」というキャプション、これは、なんですかね…

 この日はKITTEのインターメディアテクもぶらぶらして、帰宅。

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 1/12(金曜)は、退社後に、上野の科学博物館の夜間開館へ。『古代アンデス文明展』を開催中。テレビ局の主催イヴェントなので、ウユニ塩湖がどうのとかマチュピチュがどうのとか、イメージ映像を押し出してくるけれど、展示の内容は、気持ちいいくらいまったく関係がない。とは言え、独特のデザインなり様式なので、見て回るだけで「なんだこれは」という感が強く、楽しい。

古代アンデス文明展


 自分の首を持つ男…


 黄金だ!


 結び目に意味があったという、キープ


 スペインの征服以前の歴史もあまりなじみがないけど、滅亡後のインカの歴史も、やはり、よく知らないですね。

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 国立科学博物館は常設もおもしろいよね。普段なかなか足を踏み入れないけれど、適当にぶらぶらしてきた。


 ホネに囲まれる


 零式艦上戦闘機。目立つので、写真など撮るけれど、それほど興味はない。


 小惑星探査機『はやぶさ』の模型。イトカワから持ち帰ってきた微粒子も常設展示されている。


 マルスの初期型! 背後の巨大なコンピュータ、あんなものを各駅に配置していたのか…!(そういうところには興味がある)


 地震震源を探るゲーム、面白い


 地球館3階、“大地を駆ける生命”。ここのコーナー、こういう表現が適切なのかわからないけれど、圧倒的な芸術だと思う


 マメジカみたいな動物、かわいい

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 1/20(土曜)は、午後から出かけて、横浜線菊名東横線に乗り換えた。学生時代は毎日使っていたこの乗換えだが、横浜線菊名駅はつい先月に改装されて、動線がまったく変わっている。その様子を見に来たのだけど、これは誰が設計したのか知らんが大失敗だな…。菊名は乗換駅なのに、地元の駅としてしか理解していない人の設計だな…。などと思いながら、東横特急で渋谷へ。──東横線の渋谷で下りるのは、2013年3月に地下化して以来、初めてだ。そのくらい渋谷は縁遠い街になったし、そもそも渋谷の近くに用事があっても、代々木八幡とか神泉とか明治神宮前で電車を下りるようにして、渋谷駅を避けているのも事実だ。


 松涛美術館まで歩いて、『ルネ・ラリックの香水瓶』展へ。諏訪にある北澤美術館の所蔵品による展示だという。──目玉作品は、ポスターになっている、青い地に星が散っている『真夜中』というもの。これは星の部分が色が抜かれていて、香水の色が透けていたのだそうだ。中には、琥珀のような色をした香水の液体が入ったままで展示されている瓶もあり、いったいこれはどんな来歴をたどってきた品物なのだろう…、と、『オペラ座の怪人』で競売のシャンデリアの覆いがさっと外される瞬間のような、一気に空想が広がるような感覚があった。

渋谷区立松涛美術館北澤美術館所蔵 ルネ・ラリックの香水瓶 ─アール・デコ、香りと装いの美─

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 1/22(月曜)の大雪。都心で20cm以上の積雪を記録した日だった。昼から降り始め、こりゃ帰りの電車はダメだなあ、と思いながら、ビルの間を下から吹き上げる雪を眺めていた。案の定、帰宅指示が出た勤め人たちの群れで、品川駅は大混乱になっていたらしい。そういうときに動いてはいけない、というのは、あの大地震のあとの2011年3月17日に得た教訓である。なので、夜になるまで勤務を続けていたのだけれど、退社するタイミングを逃したのはたしかで、勤務先で困惑していた。──19時過ぎに、同じ横浜方面の同僚といっしょに、意を決して(?)、新幹線で品川を脱出した(ぼく自身は、やっていることはいつもと変わらないのだけど)。町田に帰ってからも大変だったけれど…。自宅の前で膝までの雪を漕いだ。2014年2月14日以来の、首都圏の大雪だった。今年の冬は寒い。