night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 〜LAST BLUE〜 @日本武道館 11/5

 藍井エイルのラストライヴに行ってきました。2011年にデビューした彼女は、商業的にはいわゆる“アニソン”をフィールドとしている歌手だったわけですが、ぼくはファンとして追いかけてはいなかったものの、突き抜けた強烈な歌声で、ある意味で“事件”と言えるヴォーカリストだと思っていました。ぼくが生でステージを見たのは、2015年の夏のお台場の“めざましライブ”と、同じ年末のCOUNTDOWN JAPANでしたが、どちらも、「これだけ歌えるのか!」と驚いたし、とにかく、すぱーんと出て、伸びる、そしてブレない。聴いていて気持ちがいいヴォーカルでした。ものすごい才能を持って、それをのばしている人だ、と思っていました。その一方で、歌手デビュー前にどんな名前で何をしていたとかいう水面下の話題になっていたり、体調不良でアニサマをはじめとするイヴェントの出演を直前にキャンセルしたりということも複数回あったりして、どうやら波のある人なのだろう、とも思っていました。そんな彼女が、オフィシャルに「体調不良による無期限活動休止」をアナウンスして、しかし彼女自身の言葉では具体的なことはほぼ何も語られることがなく、最後のライヴを日本武道館で行うという報──正確には、武道館2daysは先に決まっていて、後からそれがラストライヴということになったわけですが──に接して、行こう、と思ったのは、やはり、これはもう彼女は帰ってこないのだろう、現場で聴くなら最後だろう、と感じたためでした。

 2daysの二日目、土曜日の夕方、飯田橋駅から日本武道館へ。正直なところ、前日まで、本当に開催されるのか? 何があっても驚かないぞ…、と思っていました。

 客席の設営はわりと切り詰めていたと思います。武道館ライヴのお決まり的に1階スタンドの南は全部関係者席だったようですし、北寄りはもちろん、東・西もけっこうざっくりと黒シートをかけていて、動員は明らかに少なめでした。公式には二日間で一万五千人ということでしたが、もしかしたら実数はもう少し小さかったのではないかな。当日券も出ていましたしね。ぼくは2階スタンドの東の、わりと上のほう。

*

シリウス
・AURORA
コバルト・スカイ
・アヴァロン・ブルー
GENESIS
アカツキ
・クロイウタ
・KASUMI
・Lament
MEMORIA
・HaNaZaKaRi
アクセンティア
・レイニーデイ
シューゲイザー
・シンシアの光
ラピスラズリ
IGNITE
・Bright Future
・サンビカ
・翼
・INNOCENCE

-encore-
・frozen eyez
・ツナガルオモイ
・虹の音

*

 2枚同時発売のベスト盤から21曲、彼女はほとんど立て続けに歌いました。シングル級の曲を次々と、MCはほぼ皆無で歌い続けるという、特異なライヴでした。彼女のヴォーカルは変わらず圧倒的なものでしたが、とにかく笑顔がまったくないのが、本当に気になって…。エイル、笑って、笑って…! と、客席からずっと念を送っていました。これまでの普段の彼女がどんなライヴパフォーマンスをしていたのか、必ずしもよく知らないのですが、そもそもものすごく顔のつくりの整った人なのに、あれだけ声を張り上げて歌いきって、目を見開いた真顔のまま、にこりともしないのは、こんな人がいるのか、と…。『HaNaZaKaRi』あたりだったかな?、この日初めてエイルが笑顔を見せた(ように見えた)と思って、ちょっと安心したのは。──『アクセンティア』ではぼくもまわりの人たちと一緒に「あーくせんてぃーあー!」って叫んだりしました(^^。『シューゲイザー』、『ラピスラズリ』あたりは、女声ヴォーカルの和製R&B、というか、どちらかと言うと歌謡曲だと思っていて、最近ありそうでなかった曲調で、ぼくはとても好きですよ。ただ、会場のPAはちょっと調子よくなかったですね。東という、会場の端のほうにいたから、余計に感じたのかもしれませんが、聞こえづらいところがよくありました。彼女のヴォーカルの力に頼りすぎているセッティングだったんじゃないかな。

 エイル勢のみなさんのオーディエンスパフォーマンス(?)も、初めてまともに目の当たりにしましたが、客層がちょっと違うのはなんとなく知っていて…、Aメロでのハンドクラップとか、サビでの咲きクラップとか、UO焚きまくるやらかし系とか…。特にクラップについては、この種のライヴに初めて来たようなライトなファンが、そういうものなんだと思ってしまうのが一番まずいよな、と思いながら見ていました。ぼくのいた2階の東でも、やらかし系2人組が前にいちゃった女の子がげんなりして座っちゃう、みたいな場面を目にして、あーあ、と。

 彼女の衣装は、青と黒のドレス、次いで、黒のミニドレス。「えいえいるー!」というアンコール待ちコールを経て、ざっくりした赤のチェックを羽織って現れたエイルは、…「人生の中で濃厚な5年間でした、」…と語りはじめましたが、どうにも、原稿を覚えてきてそらんじているようで。とてつもなく不器用な人に思えましたし、…ああ!と嘆息したのは、「私を見つけてくれてありがとう、私と出会ってくれてありがとう、私の曲を愛してくれてありがとう、」と彼女が語ったとき。この人は、自分が自分として愛されているんだと、そういう場所を切り拓いたのは自分の力なんだと、思うことが、最後まで、できなかったのではないだろうか、と感じられて、聞いていて苦しくなりました。

 最後の曲、『虹の音』では、オーディエンスのペンライトがエリアごとに赤・オレンジ・黄・緑・青…などに、きれいに色分けられましたね(ツイッターで呼び掛けている人がいたのをぼくも目にしていました)。白いワンピースドレスのエイルは、歌い終えて、静かにステージ奥に消えていきました。──ある意味で歴史の終わりに立ち会ったのですが、ここで三本締めは違うんじゃないの、とアリーナの様子を見下ろして、武道館を後にしました。

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