night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

9/2(金)グランクラスで新函館へ

 夏も終わりかけたところで三連休を作れた。北の方へ行ってみたい。初めて乗る北海道新幹線で、一気に津軽海峡を越えてみることにした。


 9月2日の朝、9時前に東京駅に現れ、都区内から函館までの乗車券を買って、まず立ち寄ったのは、ビューゴールドラウンジ。八重洲中央口の改札外に、目立たない佇まいで入口を構えている。──最近オープンしたここ、JR東日本が、ビューゴールドカード会員と、当日の発車前のグランクラス特急券を持っている人に向けたサーヴィスとして開設したもの。ホテルのカフェラウンジのような雰囲気で、ドリンクと茶菓子が提供された。

 ここにやって来たということは、…そう、今回の旅行はグランクラスを奮発したのです。

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 9時36分発の『はやぶさ11号』、新函館北斗行き。東京を出ると、大宮、仙台、盛岡、新青森だけに停車する、最速便だ。ぼくは函館まで開業してから初めて東北新幹線に乗る。10両編成の先頭車がグランクラス車である。初めての北海道新幹線はぜひグランクラスで行こう、と思って、前日の昼過ぎ、“えきねっと”で1席だけ空いているのを見つけて、座席を確保したのだった。じつは普通車も満席になっていて、北海道新幹線、意外と混んでいるんだね。ただ、グランクラスの隣の席のビジネスマンは仙台で下りたので、短距離客が占めてしまうのは微妙だなあ、と思わなくもないけれど。


 電動リクライニングの広い座席に座って、発車するとすぐに、美人のアテンダントさんにおしぼりを配られ、お飲み物は…と問われる。ひとまずアイスコーヒーをいただく。そして、軽食は和(小さ目のお弁当)・洋(サンドイッチ)のどちら、と訊ねられる。お弁当をもらい、食べ終わるとさらに、お飲み物は…。早々とビールをもらって、本を読んだり男体山安達太良山を眺めたりしながら、すっかりレイドバックしてしまった。

 なるほど、と思ったのは、車内検札を廃止したのがこういうところで生きてくるな、ということ。ぼくは東京駅でふつうに改札を通ってホームに上がり、列車に乗り込んで席に座って、車内検札を受けることなく矢継ぎ早にサーヴィスを受けて、リラックスしている。ぼくは基本的には、座席指定の優等列車での車内検札はするべきだし、乗客もそれを拒んではならない、と思っているのだけど、上級クラスでこういうサーヴィスを実現されちゃっていると、ぐうの音も出ないというか、とにかく感心してしまった。

 グランクラス車には車内販売は入ってこない。そのかわり、頼むと持って来てくれる、というやり方になっているらしい。アナウンスで、車内販売で青森りんごのアイスクリームがあると言っていたので、アテンダントさんを呼ぶボタン(飛行機のようですね)を押して、来てもらい、一つ頼んだ。アテンダントさんのハンディターミナルで、Suicaで支払う。便利。さらに冷たいお茶ももらう。グランクラスのサーヴィスを満喫している(笑)。


 北海道新幹線スゴイカタイアイス。

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 東京駅から1時間半で仙台、2時間10分で盛岡、そして、正味3時間で新青森。乗務員はここで交代するようだ。「担当乗務員は、JR北海道、函館新幹線運輸所の、○○です。青函トンネルを通りまして、みなさまを北海道へご案内いたします。」というアナウンスが、誇らしげである。──しかし、折しも台風10号の豪雨で、岩手の沿岸部や北海道にひどい被害があったばかりである。JR北海道管内の在来線も寸断されていて、この日、札幌方面の鉄道は動いておらず、「新函館北斗に着いても、在来線で行けるのは函館までです」という状況だった。「社員一丸となって復旧につとめています…」というアナウンスが、もの悲しい。

 時速320kmで飛ばしていた盛岡までに比べると、新青森からは、スピードも落ち、グランクラスの乗客も少なくなっているので必然的に誰も無口で、新幹線は黙々とトンネルの闇を北へ向かう。そして、海峡越えが待ち受けている。

 ──思えば、東北新幹線がまだ盛岡止まりだった時代、ぼくは高校生の頃に、緑色の『やまびこ』から盛岡で特急『はつかり』に乗り換えた。あの時は青森から夜行の『はまなす』で北海道へ行ったのだったか。新幹線が八戸まで延びて、八戸で『はやて』から特急『スーパー白鳥』に乗り換えたのは、就職してからのことで、函館まで6時間半近くかかった。地震のあった年の夏には新青森まで乗った。あの時は復旧後の徐行ダイヤで、新青森まで『はやて』で4時間かかった。そして、いよいよ、ぼくの乗った新幹線が青函トンネルを越える。ここまでよく生きたなあ、などと思う。

 12時53分、奥津軽いまべつ駅を通過し、12時55分頃、青函トンネルに入った。車窓にはもはや竜飛定点も吉岡定点もわからなかったが、13時10分頃、列車ががんばり始めたのを感じた。北海道への登りに入ってるんだ、と思う。13時20分頃、ぼくがお手洗いを使っているうちに、列車はトンネルを出ていた。

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 13時38分、定刻で、新函館北斗駅に到着。東京駅から4時間02分だった。新函館まで乗る客なんてあまりいないのではないか、と想像していたが、狭いプラットフォームが大渋滞になった。たいしたものだ。──東京都区内から函館までの乗車券が11,880円、新函館までのグランクラス特急券が26,720円。合計で38,600円。だが、4時間の旅行もまったく疲れず、奮発しただけの価値のある道のりだった。