night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

演劇女子部『続・11人いる! 東の地平・西の永遠』(WEST)@サンシャイン劇場6/25(18:30-)

 『東の地平 西の永遠』が舞台化すると知って、見たいと思っていましたが、予定も立てられずにいたところ、なんとか当日にチケットを手に入れて、見に行くことができました。

ハロー!プロジェクト 演劇女子部「続・11人いる!東の地平・西の永遠」

 “EAST”/“WEST”という、オールシャッフルの2つのキャストパターンで、最大で1日に3回まわし、という、なにげにものすごいことをやっている、ハロー!プロジェクトのミュージカル興行です。ぼくが見たのは“WEST”のキャスト。原作は、言うまでもない、萩尾望都の古典少女漫画です。風当たりの強そうな圧倒的な原作モノに対して、どう料理してくるのかと、期待していました。ぼくはモーニング娘。'16の人々(そういえば、ちょうど11人いるんですね)は誰一人として知らず、出演者へのこだわりがないこともあって、2階客席からまったりと観劇。細かい表情はあまりわからないけれど、ステージ全体が見渡せる位置でした。

 開演5分前くらいに客席に座ると、前説で世界観の説明が始まり、…このあたりはちょっと「おいおい」と興醒めしましたが、まあ仕方ないのかな。ですが、原作忠実ぶりはかなりのものでしたね。冒頭、宇宙船シミュレータの場面から入るところで、おお、と。台詞も原作に添ったものばかりでしたし、感心したのは、フォースが死んだ場面の「今は何も語るな」というコーラス、…萩尾望都作品の独白系感情ト書き(?)のようなものが、歌詞に取り込まれているのですね。あの萩尾望都の漫画は戯曲だったのか!などと思ってしまいかねないくらいでした。アマン伯の登場シーンは端折られていたようでしたが、決めの台詞「あなたが王だ、最初から」は、しっかり採用されていたし。最後のバセスカとチュチュのシーンも、原作準拠でしたね。

 舞台演劇が本業の人たちではありませんから、正直言って、厳しいところは多かったのですが。──フロルは滑舌もよくなく、しょっぱなから「フロル」が発音できてなくて、不安になりましたが、…ほとんど小学生の子供が「オレが!」とか言ってるような状態の演技をするのですが、見ているうちにだんだん、ああフロルってこういう子だったっけ、とか思い始め、まんまと引き込まれていたのでした。タダもイケメンで、少年の演技、良い感じ。東の地(アリトスカ・レ)の王であるバセスカは、王としての威厳とか貴種のものごしとかを演じるのには、この年代の女の子では自ずと限界があるな、とは思いましたが、フォースとの対決シーンでは全力を振り絞っていて好感でした。よいシーンでしたね。

 フォースは石田亜佑美さん、そしてオナは譜久村聖さんだったんですね。最初の方で出てくる宇宙大学惑星の面々の中で、まず歌唱力が抜群だな、と思ったのがフォースでした。身のこなしにも安定感があります。そしてオナは、高貴な巫女の役にぴったりで、歌も振付けも、このカンパニーの中では抜きん出ていました(“EAST”では譜久村さんがバセスカだったようですが、そちらも見てみたかったな)。悪役ゾンブルとバパ大臣は、宝塚の男役出身の方が客演していて、こう言ってはなんですがほとんどそこだけしっかりミュージカルになっているのに舌を巻きました。酒瓶持ってウェーイwwwってやってるトマノは、なんか憎めなくて、よかった(笑)

 ただ、フロルとタダの「指を切れ!」からの二人の世界に入っちゃいましたシーンは、なんだかなあ、と思いました。あのシーンを見守るバパ大臣の心中やいかに…(?)。──私が思うに、あの原作は、タダとフロルの冒険活劇でもあると同時に、バセスカの葛藤と、そして成長の物語であり(最後のバパ大臣への「おまえはわたしの教師だった…」の場面に象徴される)、タダとフロルのバカップルっぷりは、時おり挟まれるギャグプロットではあるけれど、どちらかというと主題ではないような気がするのです。でもこのお芝居は、どの要素も同じトーンで採用して脚本化しているから(群像劇として、それは間違っていないのだけど)、あのもっともシヴィアなシーンで、無理が出ちゃうのではないかなあ、などと。

 セットは、舞台の上段に大きなスクリーンが設えられていて、そこに立つ役者の周囲を包むように映像が投影されたりするもの。また、舞台にいる全員が手のひらに光を灯すシーンもありました。ああいうのはLEDライトを仕込んでいるのかな。どちらも、最近の演劇で見かけるようになった演出だと思いますが、お金はかかっているのだろうと想像します。また、おもしろかったのは、宇宙大学国の「超能力コース」のシーンで、テーブルを浮かせるイリュージョン(?)。あれ、なくてもストーリーは成立したと思うけど、よくやりましたね。

 途中休憩なし、全一幕105分強の一本勝負。「ひがーしーへーはるか♪」というテーマ曲が耳に残る、よいお芝居でした。──ハロー!プロジェクトの人たちについて知識が全くないので、なまじっかネット検索などしてみても、メンバーの愛称がわからないので誰のことを話しているのか読み取れません。客席の雰囲気も含めて、ハロー!プロジェクトという、ぼくが普段触れることのない世界をかいま見た、土曜日でした。


 ここは〜西の地〜アリトスカ・ラ♪(けっこう気に入った^^)

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

 自室のどこかにあることは確かだが…と探していました。あった! 読み返そう