night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

箱根、岡田美術館と天山湯治郷 3/22

 3月22日(火曜日)は、平日だが休暇を取っていた。箱根に行こう、と思い立って、町田から12時10分発の特急ロマンスカーはこね19号』に乗った。小田急電鉄の沿線に住んでいると、箱根の観光ポスターなどを日常的に目にするので、いつでも行きたさを抱いているのだが、意外に、行かない。ぼくが箱根に足を踏み入れるのは2007年5月以来のことになる。


 小田急と言えばこれ。ぼくが子供の頃から変わらずにこれです

 13時09分に箱根湯本に着くと、登山電車が2両編成で待っているが、すでに超満員だった。平日でもこうなんだなあ、と驚きながら、ドアに押し付けられて、スイッチバックで箱根の山を登って行く。

 小涌谷で下車し、ぶらぶら歩いて、岡田美術館へ。


 途中、“千条(ちすじ)の滝”を見に立ち寄る。こぢんまりした滝で、このスケール感が、日本って感じだな

岡田美術館

 ここは数年前に開館した私立の美術館。訪れる機会を狙っていたのだが、平日に来てみたのが大正解で、館内はほとんど来場者がいなかった。前にある“足湯”も無人で、深閑としているので、思わずスタッフに「今日は開館してますか?」と訊いてしまったくらい。

 ここは琳派で有名らしいのだが、1階の陶磁の展示室で、すでに半ば興奮状態になってしまった。青磁白磁もいいものばかり。金代の黒釉(磁州窯)なんて初めて見た。青磁と言ってもよく見る緑がかったものではなく、ふわっと青い空のような不思議な色合いの青磁や、明・清の透明感のある桃色の茶碗、明るい黄色の茶碗など、…とにかく、ここにある陶磁を見ているだけでだいぶ時間が過ぎてしまっていた。

 一方、手びねりのごつごつした茶碗や、古九谷や鍋島など、日本の陶器って、あまりその魅力がぼくにはよくわからないな、ということにも気づいた。すらっとしたのが好きなんだろうな、ぼくは。景徳鎮的な明・清の派手な絵付にも、あまりぴんと来ない。歳を経ると好みが変わるのかもしれないが。

 そのほかの日本美術もとにかく大ボリュームだが、金屏風などはごてごてとしたものが多くて、岡田さんとはあまり趣味が合いませんね…、と思う程度。だが、速水御舟の墨絵の木蓮の絵、禍々しい美しさに吸い込まれるようになる。紫木蓮の花なんて(ちょうど自宅の近くにも咲いている)、そんなに禍々しいものでもないはずなのだが、妖気の漂う絵であった。あと、鈴木其一の、掛軸の中に掛軸が描いてある絵も好きだったな。

 喜多川歌麿の『深川の雪』を収蔵したというので話題になった、この岡田美術館だが、いまは展示時期ではなかった。だが、空いているスペースが目立つなど、だいぶ余裕を持って造ってあることが見て取れた。すでにたいしたものを持っているのに、さらに発展しそうな美術館だ。町田からだと2時間余りで来られるところだし、またこんど来よう…。


 斜面に、大きな建物をよく建てたなあ

*

 庭園を散歩したりしたが、まだまだ寒い季節だ。小涌園のバス停あたりは、遊びに来た中高生や若い人でごった返している。ここから湯本までバスで戻ろうと思うが、箱根町からやって来る箱根登山バスが、またもや超満員。見送ったが、それに続行してきた箱根園からの伊豆箱根バスはガラガラだった。おそらく、西武系の伊豆箱根バス小田急の箱根フリーパスが使えないため、このような差が出ているのだろう。ある意味で棲み分けているのかも知れない。道路は混雑していて時間がかかったが、座れていたのでよかった。

 箱根湯本からは、旅館組合の送迎のマイクロバス(100円)に立ち乗りして、“天山湯治郷”へ。この日は温泉に入って帰るつもりで、小田急町田駅で、“野天風呂クーポン”という、箱根湯本までの往復乗車券とここの入湯券がセットになったものを買ってきていた。湯本から旧街道の方向に10分ほど行ったところの渓流沿いでバスを降りた。

天山湯治郷

 よく知らずに行ったのだが、ここは、「天山」と「一休」という二つの日帰り入浴施設があり、ぼくが入ったのは「天山」のほう。露天風呂はやはりそれなりに混んでいて騒がしかったが、芋洗いのような状態ではなかったのでそれなりにのんびりできた。でも休日に来たら大変だろうな。──ところが、最初に入った浴槽が、ひどく熱いお湯で、とてもつかっていられない。別の浴槽に入ってみると、こちらも同じくらい熱い。困ったな、と思ってベンチで休んだりしていたが、三つめに入ってみたお風呂が適温だった。早く見つければよかった。


 45分くらいつかってから上がった。カフェでシャーベットを食べて、頭をしゃきっとさせてから、そろそろ帰ろう。──来た時に使った送迎バスはもうない時間なので、路線バスを待つ。暗い山道で待っていると、ほぼ定刻で箱根登山バスがやって来た。


 箱根湯本駅に戻ったのが20時過ぎだった。新松田行きの小田急の各駅停車で山を下りて、小田原から20時31分発の特急ロマンスカーさがみ88号』で帰る。


 もちろん缶ビール、つまみは東海道名物、鯵の押し寿司。よい休日だった。