night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

9/25(木)リニアモーターカーに初乗車、帰国

 帰国の日。今日は上海浦東国際空港から11時50分の飛行機に乗らなければならない。乗り遅れたりしたら大変だ。──帰りは送迎をつけていないので、自力で空港に行く必要がある。荷物を引きずって混雑した地下鉄に乗るのは嫌だなあ、タクシーを奮発してしまおうか…。でも、上海に来たのにリニアモーターカーに乗らないというのは無いよな、ぼくとしては(^^;。

 浦東国際空港には、市内の「龍陽路(龙阳路 Longyanglu)」駅からリニアモーターカーが通じている。営業運転している磁気浮上鉄道は、いま世界で名古屋のリニモと上海のこれの2つだけだと思うが、名古屋のリニモは100km/hしか出さないので、本格的な高速鉄道としては上海が唯一と言っていいだろう。

 だが、龍陽路駅というのは上海市内でも外れのほうにあって、地下鉄2号線が通じているものの、面倒くさい(それに、2号線に乗るくらいならそのまま浦東空港まで行っちゃえば、という気もする)。このため、手っ取り早く龍陽路までタクシーで行くことにした。──朝7時15分頃にホテルをチェックアウトし、タクシーを呼ばせた。タクシーの窓には、「起歩費 13.00」と書いてある。初乗り料金の意味だが、これ、杭州では11元、南京では9元だった。明るい朝の空の下(帰国する日がいちばん天気が良いというのも悲しいものだけれど)、タクシーは高架道路を飛ばした。右手にメルセデス・ベンツ・アリーナを見はるかしながら、南浦大橋を渡り、25分ほどで龍陽路駅に着いた。料金は48元だった。


 まだ7時40分頃で、地下鉄の駅から通勤者が続々と出てきて、朝食の店に並んでいる。「磁浮 Maglev」の案内にしたがってホームに上がった。


 駅のホームに置いてあったフリーペーパー。

「家長が献血したら子供の成績に下駄をはかせる、という奨励のやりかたは、いかがなものか」という記事らしい。もう、お国柄というか、議論の内容自体が、ちょっと信じられない話である。

結婚相手探しのコーナー。「為金白領提供婚恋服務」だって。ふむ

 10分ほど待つとリニア列車がやって来た。3両編成だ。


 リニアは15分間隔で出ているらしい。運賃は片道50元だが、公共交通ICカードで払えば40元になる。帰国の日にこれに乗るために、適度にICカードにチャージするようにしていて、このとき残額は43元だった。地下鉄の駅のチャージ機で使えるのは50元紙幣からなので調節が難しかったんだよね。


 車内は3列+3列座席。かなり空いていた

 8時00分ちょうどに出発。ぐんぐん速度が上がり、発車して1分で150km/hを超え、2分で300km/hに到達した。この加速には本当に驚いた。市街地を抜けて高速道路と並行して走る。カーヴにさしかかるとぐぐっと傾く。ちょっとひやひやする。


301km/h

 リニアは3分半ほど高速走行を続けて、減速し始めた。龍陽路から浦東空港までは約30kmだそうだが、なんと8分で着いた。速すぎる。空港駅では西洋人の夫婦がリニアを背中にして写真を撮ろうとしていて、シャッターを押してあげたりした。


 そんなわけで、8時20分頃にはすでに上海浦東国際空港の1号航站楼の出発ロビーにいた。こんなにスムーズに来られるとは思っていなかったので、ちょっと勇み足すぎたなあ。日本航空のカウンターで、「成田行きのチェックインは9時半からです」と言われてしまい、本を読みながらぼんやりと待つことになった。

*

 免税店では、お土産に紹興酒(店員「これ一番いいね、人気あるよ」→258元)を買ったり、職場に配るお菓子(店員「会社ですか? 何人くらい? 麻雀牌チョコレート、これ人気あるよ、一個ずつ袋入てるね」→78元)なんかをこまごまと買って、財布の中の人民元をきれいに使い切ってしまった。

 人民元はなくなったが時間はあるので、スタバでラテを買って(クレジットカードは使えるかと訊いたら、MasterかJCBと言われたので、手持ちのJCBブランドのカードで支払ったが、実際にはべつにVisaでもAMEXでも大丈夫だったのではないかと思う。銀聯のマークしかついてないから戸惑っちゃったのだけど)、のんびりと搭乗開始を待った。──水樹奈々さんにそっくりに見える人がテレビに映っていたので誰かと思ったら、陳冰茜という人で、ステージでマジックをやっている。背後から『義勇軍行進曲』が聞こえてきたのではっとして振り返ると(国歌には敬意を表さなければならないような気がして)、仁川亜運(アジア大会)のニュースだった。

陳冰茜(Ariel Chen)という台湾の女性マジシャン。顔ではなくシルエット的な意味で、水樹奈々さんに見間違えてもしかたないですよね、これは(^^;

 成田空港に上陸したのは16時過ぎだった。この時間の成田空港の混雑ぶりには驚いた。

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 中国は好きだけど、いまのぼくには、旅行は5日が限界かも知れないなあ。なにもかもが広く、大きく、人が多く、極端になるこの国で旅行するのは、疲れるよ(^^;

 ──中国に行く、と言うと、職場でいろいろ言う人がいた。難しい時代である。実際、行くと、公衆道徳があまりにも日本と違うので、辟易することも多い。だが、この国のとてつもない規模感と、人口の多さ感(?)のようなものを、ちゃんと感じておくことは、これから先、この国とどのような関係になるかにかかわらず、意味のあることではないかと思う。

 あとは、感じたことをつらつらと記しておく。

●電動自転車がとても危険。
 車道・歩道を問わず、走りまくる電動自転車の、無法地帯になっている。うわさには聞いていたがこれか…と思った。ホテルの近くは歩道には上がってこなかったので、いちおうそこは守られてるのか、と思っていたが、単に歩道が狭くて走りにくいから上がってこないだけだったんだ、ということが後になってわかった。ほとんど音も無く背後から近寄ってくるので、とても危険だ。日本はあんなものを絶対に輸入してはいけない。

●トイレが汚い。
 成田空港に着いてまず嬉しかったのが、トイレが「水が出る」ことだった。──観光地の公衆トイレなどで、TOTOの小便器、水が流れるボタンが付いてるのに、そもそも水道管がつながっている気配がないな…ということが何度かあった(と言うか、水道が出ないのに下水管がつながっているとも思えないので、ということは…)。とにかくトイレの質は低い。上海の人民公園の公衆トイレで、ステンレスの大型のシンク型の小便所(?)があって、ちょっと驚いた。でもそこは水が常にダダ流しになっていたのでむしろにおいも無くて良いと言えなくもなかったが。。。

●上海の路上の客引き。
 南京路歩行街などで「オニイサン、マッサージ!」の客引きに悩まされたのは本文中でも触れたが、そこだけではなく、──ぼくが泊まった錦江飯店の、道を挟んだ反対側には、日系のオークラホテルがあるが、その北側には日本語のネオンを出した怪しい飲食店(?)が軒を連ねている一角がある。日本人の接待需要があるのだろう。高級ホテル群のすぐ近くなのに、夜に歩いていると、妖しい女性に声をかけられる。いったい、日本人はこの街で何をしてきたのか、という話である。…しつこくついて来られたが、こちらが錦江飯店の敷地に入ると離れて行ったので、そのへんは線引きがあるのかな、と思ったのだけど…、でも、一度、錦江飯店のロビーでも女性に声をかけられたんだよな(あまりに堂々と声をかけられたので、一瞬、日本のホテルでもあるような合法的なマッサージかと思ってしまったが、いや、そうじゃないだろう、と)。あれは、ホテルと裏でつながってるとかなのかなあ。。。魔都上海である。

●鉄道駅の案内に乗客目線が皆無。
 鉄道の駅で切符を買うときに、售票処の窓口の上の電光掲示で、列車の発車予定時刻や空席の状況が表示されているのだけれど、それが、すでに発車時刻が過ぎている列車の案内であったり、数日前の列車の空席状況をだらだらと流していたりするので、呆れてしまった。──また、上海虹橋から杭州東に行くとき、ホームにでかでかと「徐州東 − 寧波」と表示されていたのだけど、自分が乗る列車がどこ始発・どこ終着かって、乗客は知らないのでは? なぜ列車番号を一番大きく出さないの? と不思議でならない(日本で「のぞみ×号」とかの列車名にあたるものが、この国では「G××次」などの列車番号なのだから、まずそれを表示しないとわからないじゃん)。とにかく、乗客目線のシステムになっていないのだよね。

高速鉄道について。
 いろいろとかまびすしい、中国の高速鉄道だが、あれだけの距離、あれだけの本数、よく走らせているよ、というところは素直に感心した。だが、日本の車両と欧州の車両と、いろいろ混在して導入しているので、たとえばシーメンス車には商務車があって日本車には無い、とか、営業システムという意味では洗練されてないな(トラブルで車両交換するときどうするんだろう)、という気はする。──中国の高速鉄道は、日本の新幹線とは違って在来線にもそのまま乗り入れるし、単に新しい鉄道車両を入れるときに300km以上出せる車両を導入しちゃいました、というスタンスのようなので、完全に独立した線路と信号設備と法制度のもとに運営する特殊な閉鎖システムとしての日本の新幹線とは、おのずと位置づけが違う、ということを理解しとく必要がありそうだ。

 ただ、本文中でも書いたが、中国で長距離列車の切符が(限られた区間しか体験していないとはいえ)比較的簡単に買えるようになっていること、また、それだけ列車の本数が多いということは、個人的には大きなカルチャーショックだった。まったく、この国の発展のスピードは凄まじい。──リニアだってそうだよね。あれは2002年の開業だと聞くが、そのときどきで最新の技術を海外から導入して、えいやと作ってしまう。それができちゃうのが、この国の体制であり、経済力なのだろう。■