night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

9/22(月)上海博物館で青銅器三昧

 9月22日(月曜日)、昨夜は遅かったのでゆっくり8時ごろに起きた。台風が近づいていて、どんよりとした空。雨は降っていないが、風が強まっている。台風の進路予報を知りたいが、CCTVのトップニュースは“政協65周年会議での国家主席の演説”。ここはこういう国だった。ホテルの朝食ビュッフェで、ふつうに欧州風の朝食を取ったが、粥とか麺とかもあった。

 さて今日は一日、上海市内をぶらぶらするつもり。まず地下鉄の陝西南路駅に行き、窓口で交通カードを買う。ディポジットが20元、加えてチャージ金額(おそらく10元単位)を払う。このとき10元しかチャージしなかったが、もっとチャージしてもよかった。──地下鉄の乗り場の入口には荷物のX線検査装置があり、バッグはそこに通さなければならない。毎日の通勤でこれをやると考えたら、かなり面倒だ。見ていると、ポシェットやハンドバッグ程度ならスルーできるようだ。

 地下鉄はたいへん混雑していた。驚いたのは、走行中の地下鉄のトンネルの壁にカラーLEDのディスプレイがあり、CM映像が流れること。電車の窓から映像が見られるように、電車の走行速度に合わせて映像を制御しているのだ。こんなのは初めて見た。お菓子のCMを見ながら、技術の無駄づかい、という言葉が脳裏をかすめる。

 人民広場駅で地下鉄を下り、上海博物館へ。

 ここは古代の青銅器のコレクションがすごいらしい。建物自体、青銅器の形を模した特徴的な建築だ。


 向かいには上海市人民政府/中共上海市委員会の建物が。直立不動の兵隊が警備している。こういうのを見ると、やはりここは中国だな、とは思うけれど、…12年前に行った北京は、公安や武警や人民解放軍のいかめしい制服の人間だらけで、ある意味で辟易したものだが、上海はそういうことがなくて、比較するとだいぶ自由な感じがするけどね。

 上海博物館は、中国古代青銅館/中国古代彫塑館/中国古代陶磁館/中国歴代璽印館/中国歴代書法館/中国歴代絵画館/中国明清家具館/中国少数民族工芸館/中国歴代銭幣館/中国古代玉器館、の10の展示室から成る(「館」とは言うが、いずれも一つの建物の中の“展示室”である。とは言えかなり大規模な博物館ではある)。

 入場は無料だったが、ここでも入口に荷物のX線検査装置があった。ぼくのトートバッグからはライターが発見され(ってことは官吏はちゃんとモニタを見ているのだ。どうせ見てないだろうと思っていたが、甘かった)、ダメだと言われて取り上げられてしまった。床に置いてあるプラスティックのザルに、ポイと投げ捨てられる、ぼくのライター。たかが百円ライターとは言え、個人の所有権が絶対である資本主義社会から来ると、こういう扱いには腹が立つ(?)。それに、ライターはあの1個しか持って来てないんだよね。…が、まあいい。帰るときになんとかしてやろう、と、様子を見ていて思う。

*


明代の青釉。


清代の景徳鎮。


乾隆帝の時代の景徳鎮の、どっしりした大物たち。


玉の彫刻。

清代の、彫漆の机と椅子。これはすごい!こんなものに座れるか!(笑)

書画コーナー。

これなんかぼくはすごい好きだけど。定型的な山水画とは違う、こういう奔放な絵もあるんだね。

やってきました青銅器室。古代の恐ろしげな動物がごてごてついたやつから。

春秋晩期の、鐘(zhong)

戦国後期の、敦(dui)

青銅器たちは、言ってみればどれも器(うつわ)には違いないのだが、種類によって異なる字がついていて面白い。これは春秋晩期の、鼎(ding)

戦国早期の、壺(hu)

西周晩期と春秋早期の、鎛(bo)。甲骨文字が刻まれている

西周晩期の、甗(yan)。英語でSteamerとあり、米を蒸して調理したものらしい。現代の漢字では「甑」だと思われる

西周中期の、卣(you)。英語でWine Vessel

西周中期の、尊(zun)。これもWine Vessel

西周孝王の時代の、鼎(ding)

トゲトゲのついたこれは、西周早期の、簋(gui)。英語でFood Vessel

商代中期の、斝(jia)

商代中期の、爵(jue)

商代晩期の、鬲(li)

西周早期の、鼎(ding)。「鼎」というのは必ずしも3本脚のものだけを指す字ではないのか…

商代晩期の、罍(lei)

西周早期の、觥(gong)

 まだまだあったが、とても写真など撮りきれない。玉器のコーナーだけでも、古代の玉佩から清代の精巧な玉の香炉などなど。古銭のコーナーでは戦国時代の刀銭から袁世凱の金貨まで。見ていて飽きない場所だった。

*

 博物館を出るとき、さっきのX線検査官の後ろから黙って近寄り、しれっとライターを取り返してきた。中国は好きだが、人民中国は疲れるな。──この後、外灘で煙草を吸っていたら、人民のオヤジから「火を貸せ」と言われたが、ライター問題では金輪際妥協しないことに決めた(?)ので、中国語がわからないふりをした。