night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

3/23(日)帰国、考えたこと


 ロンドンの桜

 ビールを飲んで、アラームもかけずに寝てしまい、目覚めたときにはちょっとあわててしまった。ホテルの朝食のメイドさんとも顔なじみになった頃だが、帰国の朝である。BBCの朝のニュース・ショウで、マンチェスター・ユナイテッドがものすごいロングシュートを決めているのをぼんやり見ていたが、…さて、という感じで荷物をまとめ、ホテルをチェックアウトした。このホテルはBooking.comで予約していたのだが、支払いは現地でするのかと思ってクレジットカードを出そうとしたら、"Everything okay, good bye."と言われて、あれっ、と拍子抜けした。予約時に入力したクレジットカード情報で、あとから請求が来るのだった。便利だねえ。




 サークル線のベイズウォーター駅。通信設備の故障のためサークル線とディストリクト線にシヴィアな遅延、と書いてあり、あらっ、と思ったが、ガラガラの電車にすぐに乗ることができた。


 パディントン駅。


 駅構内に立っていた銅像。「グレイト・ウェスタン鉄道社員3312名が、第一次大戦と第二次大戦において、国王と国家のために生命を捧げた」という銘があった。


 “くまのパディントン”の銅像。子供のころに読みました(^^


 ファースト・グレイト・ウェスタンの列車と、ヒースロー・エクスプレス。9時15分発のヒースロー・エクスプレスで、空港へ向かう。

 ヒースロー・エクスプレスは、Terminal 1,2&3駅とTerminal 5駅が別々になっている。Terminal 4に行くときは1,2&3駅でシャトル列車に乗換えになる。ぼくの帰国便は、12時40分発のブリティッシュ・エアウェイズ、BA5便。──ヒースロー空港には現在、ターミナル1・3・4・5があるのだけれど、ぼくはこのとき、帰国便がヒースロー空港のどのターミナルから出るのか、自分が知らないことに気付いた。往路はJAL便のコードシェアでターミナル3に着いたが、ターミナル5がBA専用ターミナルらしいから、とりあえずターミナル5に行ってみよう、というノリで、行ってみた。間違えていたら移動はかなり手間だけど、そこまでせっぱつまった時間ではないので、まあなんとかなるだろう。。。──結果的には正解だったのだけど、HIS社で航空券を買ったとき、出発が成田の第一と第二のどっちかは念を押されたものの、帰国便のことを聞くのを忘れてしまっていたのは、よくなかったなあ。

 かなり余裕をもってヒースロー空港にやって来たのは、英国に着いたときの入国審査の長蛇の列を思い出して、恐れをなしたから、というのもあった。だが、チェックインして保安検査を通ると、イミグレーションは無かった。あれっ? これまた拍子抜けである。──出国審査が無い国っていうのもあるんだなあ。旅券には、到着時の英国の入国スタンプは押されているが、出国スタンプが無いまま、日本に帰国することになった。


 時間を持て余し、スターバックスのソファでだらだらとWi-Fiを使いながらキャロットケーキとラテを食べたら、いよいよ搭乗である。この日も風が強かったが、きれいに晴れていた。──翌日、3月24日(月曜日)の8時40分頃に成田空港に着陸した。

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 ヨーロッパに旅行するのは初めてだったので、とても印象は強かった。──世界で最も繁栄した歴史を持つ国の首都で、思ったこと。

●伝統の都市景観。
 19世紀の街並みがそのまま残り、現代のロンドンの風景になっている。よく、日本は伝統を保持した国だ、なんて言われることがあるが、そんなのはまったく嘘っぱちだ、と思った。日本のどこにこんな都市があるだろうか。



●多人種社会。
 到着してまず最初に出会うヒースロー空港の入国審査官が、黒人女性であったり、ターバンを巻いたインド系の人であったり。街なかでもそうで、多人種ぶりに驚いた。世界中を征服した歴史を持つ国だからではあろうが、いろいろな人種の人の力によって動いているのがこの国の社会なのだな、と思った。日本が仮にそうなろうとしてそうなることができるだろうか。

●物価が高い。
 ビジネスホテル級のホテルが1泊99ポンドもした、というのは先に触れたとおりだが、…物価の感覚的には、10ポンド紙幣が千円札のような感覚で財布から出て行った。ちょっと食事すると20ポンド紙幣を使うことになる。だが、1ポンド=約170円である。また、オイスターカードも、滞在中に10ポンドを3回チャージした。日本は物価が高い国だと思っていたが、ロンドンはそれ以上で、市民の平均所得がどれくらいなのかは知らないが、大変なのではないか、と思ってしまった。(BBC版シャーロックで、アフガニスタンの戦地から復員したワトソンが、年金ではロンドンで暮らせない、という意味のことを言うシーンがあるが、なるほどね、と思った。)

●“国力”とは何から生まれるのか。
 ストーンヘンジへの往復で思ったのだけど、車窓はほとんど緑の牧草地だった。稲作社会の日本で育ったぼくは、農業イコール穀物生産のことだと無意識に思っているらしく、牧草地というのは土地が痩せていて耕作に適さず農業生産力が低い、という意味に捉えてしまうのだけれど、そんな国が、世界で最も繁栄した歴史を持つ。不思議に感じざるを得なかった。

●国土の開発とは何か。
 農地の合間を流れる小川など、日本ならすみずみまでコンクリートで護岸されているところだけれど、茂みの中を自然のままに流れていて、それこそ“オフィーリア”の絵のようだった。“国土の開発”は先進国の証などではないのだ、と思った。



●“規律正しい日本人”とは何なのか。
 夕方、ラッシュアワーの地下鉄に乗ったときに思ったことなのだが、…乗客はホームでばらばらに待っている。東京のように乗車口ごとに行列を作るようなことはない。電車が来ると、ドアごとにばらばらっと人が集まり、順番も何もなく、適当に乗り込む。東京なら、行列ができ、それに割り込む人がいて、こいつ割り込みやがって…という険悪な空気になるところだ。──整然と行列を作ることは、日本人の美徳のように言われることがある。でもそれは、逆に言えば、「俺はコイツの次だ」「アイツは俺よりも後だ」「なのにコイツは…(ムカムカ)」という、奇妙な権利意識に支配された、非常に暮らしにくい社会なのではないだろうか。

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 これまで海外と言えば東アジアにしか行ったことがなかったぼくは、どうやら無意識のうちに、日本が一番進んでいる国だ、と思っていたフシがある。…なんてことを、旅行中にふと思った。そんな気づきを得たのも、よい経験になったのかも知れない。■