night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

LFJ2014“祝祭の日”

 ゴールデンウィーク、今年もラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに行ってきました。今年はマルタ・アルゲリッチが参戦ということで、けっこう話題になっていましたねー。

公演No.117 5/3(土・祝)ホールA“プーシキン”22:15-23:10 『祝祭の夜』
ストラヴィンスキー春の祭典(2台ピアノ)
サン=サーンス:動物の謝肉祭
 マルタ・アルゲリッチ(pf)/酒井茜(pf)/ギドン・クレーメル(vn)/堀米ゆず子(vn)/川本嘉子(va)/ギードゥレ・ディルバナウスカイテ(vc)/吉田秀(cb)/ジュリエット・ユレル(fl)/ラファエル・セヴェール(cl)/安江佐和子(percussions)
 かなり遅い時間から始まるプログラムなので、ちょっと時間を持て余し気味になりながら上京しました。──荒れ地の魔女のような風貌のアルゲリッチが登場。酒井茜さんと組んで2台ピアノの『春の祭典』、あれは酒井さんが1stでアルゲリッチが2ndだったのかな。すぱんすぱんと切れ味よく曲が進行していく印象。ピアノで演奏されるこの曲を聴くと、音色が限られているからだと思いますがどことなくSF的な空間に包まれるような感覚があって、こんな曲だったんだっけ、と思えておもしろかったですね。アルゲリッチが、椅子が合わないらしくだいぶ座りにくそうにしていて、途中、休止の部分でズゴッ!と椅子を引くノイズが響いてしまったので、客席の緊張が一気に切れてしまったのが、ちょっと残念でした。弾き終わって、酒井茜さんがしきりに汗を拭いておられました。おつかれさまでした。

 『春の祭典』が終わった時点で、時刻はほぼ23時ちょうど。終電決定、と思った瞬間(^^; ──後半は、ギドン・クレーメル一座(?)が登場して、『動物の謝肉祭』。これは、演者たちがとても楽しそうだったのが印象的。「カッコウ」の前に若いクラリネット奏者が席を立ってピアノの後ろに隠れていくのを見て、酒井茜さんが演奏しながら大笑い。森の奥のカッコウ、なので隠れて吹いているのですが、それもいろんな音色で吹くのですね。たった2つしか音がないのに、見事に「しゃべる」のです。「水族館」のような夢の中のような音空間も、とてもきれいでした。

 何度もオベーションに答えて、『動物の謝肉祭』の終曲をアンコールしてくれて、終わったのは23時半過ぎでした。──ホールAで室内楽なんて…どうかしらね、と思いながら足を運びましたし、遠さは否めないとは思いましたが、満足度はかなり高いコンサートでした。アルゲリッチ、御年72歳。この夜、このコンサートの客席にいたことの意味は、もしかしたら、年月が経ってから大きくなってくるのかもしれません。町田に着いたのは25時でした。

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 翌日は、帝劇『レディ・ベス』からのはしごで、よみうりホールのアンヌ・ケフェレックのピアノのプログラムから。

公演No.274 5/4(日・祝)よみうりホール“ダ・ポンテ”17:15-18:00
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332
ショパンノクターン 嬰ハ短調 KK IV a-16(遺作)
ショパン:子守唄 変ニ長調 op.57]
ショパン即興曲第4番 嬰ハ短調 op.66『幻想即興曲
ショパン舟歌 嬰ヘ長調 op.60
 アンヌ・ケフェレック(pf)
 優しいピアノでした。ショパンのプログラム、ノクターン嬰ハ短調、子守歌変ニ長調、幻想即興曲嬰ハ短調、最後に舟歌嬰ヘ長調、と、見事にひとつの組曲のように、整って並べられていましたね。間を挟まず続けて演奏していました。

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 続いてホールAでモーツァルトのレクイエム。これは最も安いチケットを取っていて、ホールAの最上段まで登りました。──ですが、先ほどのアンヌ・ケフェレックのピアノを聴いていたときに、ちょっと昔の記憶がよみがえってきて、しんどくなったためか、この公演はほぼ寝ていたのが残念。

公演No.215 5/4(日・祝)ホールA“プーシキン”18:30-19:25
モーツァルト:レクイエム K.626
 レティツィア・シェレール(S)/キャサリン・ピロネル・バチェッタ(A)/クリストフ・アインホルン(T)/ピーター・ハーヴェイ(Br)/ローザンヌ声楽アンサンブル/シンフォニア・ヴァルソヴィア/ミシェル・コルボ(cond.)
 目が覚めたらちょうど“永遠の光”に包まれて、大団円でした。なんでこういうところで寝ちゃうのかなあ自分、と思いながら、でもちょっと爽快な気分になって、国際フォーラムの中庭へ。

 ミュージック・キオスクでは、ハンガリーのアンサンブル“ムジカーシュ”で、文字通り熱狂の渦が! 屋台飯とハイネケンで腹ごしらえして地下ホールに下りたら、三浦友理枝さんが小品をいくつか弾いていました。CD買っちゃった(^^

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 最後は、同じくホールAで、“ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール(ハート直撃コンサート)”ってやつ。

公演No.216 5/4(日・祝)ホールA“プーシキン”20:45-22:00 『ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール』
モーツァルト:セレナード第13番 ト長調 K.525『アイネ・クライネ・ナハトムジーク
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
ハイドン:ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII-11
ヨハン・シュトラウスII世:スペイン行進曲 op.433
ヨハン・シュトラウスII世:カチューシャ・ギャロップ op.97
・ファリャ:オペラ『はかない人生』より舞曲
 セルゲ・ツィンマーマン(vn)/マタン・ポラト(pf)/ルセロ・テナ(Castanet)/シンフォニア・ヴァルソヴィア/ジャン=ジャック・カントロフ(cond.)
 LFJのアーティスティック・ディレクターであるルネ・マルタン氏が出てきて、演者や曲目について説明する、というスタイル。セルゲ・ツィンマーマンはまだ若いヴァイオリニストでしたが、丁寧な演奏をしていたように思います。なんだか風貌が東洋人っぽいですよね。このプログラム、圧巻だったのは、スペインのカスタネットおばさん(^^、ルセロ・テナでした。カスタネットの演奏方法って、理屈ではわかっても、ちょっとあっけに取られるものがあります。客席もスタンディングオベーションでした。演奏後に、アンコールに応えて、ソロでカスタネットの妙技を披露してくれましたが、それが、独特の間を湛えた、東洋的な「行」のような印象すら受けるもので、驚きました。

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 東京のLFJも10年目だそうです。いろんな意見はあると思いますが、なんだかんだ言って楽しいイヴェントなのはたしかですし、10年やって東京に根付いたものは確実にあると思います。これからの10年にも期待しています。