night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

読書&査収音源リスト(2020年7月~9月)

▼彼女の知らない空(小学館文庫)/早瀬耕

▼ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

▼プロジェクトぴあの 上・下(ハヤカワ文庫JA)/山本弘

 登場するキャラクタの性格描写などはラノベっぽいんだけど、作中で操られる疑似理論はまさにSF。とてもついていけない(笑)。しかし、ラストシーンで戦慄することになった。飛び越えた知性を持つ者の恐ろしさ、というか…。

▼猫を棄てる 父親について語るとき/村上春樹

▼寒い夜(岩波文庫)/巴金、立間祥介(訳)

「みんなに申し訳ない。おれは罰せられなければならない」

▼熱源/川越宗一

 直木賞受賞作。北海道に移住した樺太アイヌと、和人の息子と、ギリヤークの人々と、サハリンに流刑されたポーランド人の活動家と…題材はものすごく興味深いのに、語り口が全然深まらないのだ。大河ドラマの総集編だけを見ているような、するする話が進んでいってしまう感じ。

▼乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ (1~3)(Kindle版)/大西巷一

 フス戦争のボヘミアが舞台、というだけでかなり興味をひかれるんだけど、残虐シーンが多いので、読み進めるかどうかは…。そういえば、フス戦争って英仏百年戦争と同時代なんだなあ。

▽アイの物語/山本弘

 『プロジェクトぴあの』を読んだことで山本弘という作家のすごさを知り、もう1冊読んでみた。せつないSF短編集。『詩音が来た日』が、出色の名作だった。人間が不完全な知性であることを喝破し、でも同時にそのことを決して見捨てない。

▽キミのお金はどこに消えるのか/井上純一

 『中国嫁日記』で有名な漫画家さんの経済ネタシリーズ。面白いよね。特に、隣国では若者にさかんにカードをつくらせている→内需を広げて「国の形を変えようとしている最中」、という表現をしているのには感心した。

▼「中国」の形成 現代への展望 シリーズ 中国の歴史⑤(岩波新書)/岡本隆司

▼一人称単数/村上春樹

 短編集。読んでいて「あっ、これはやばい話だ」とカチッと気付く瞬間の、気持ち悪さが、無類であった。

▽アジア新聞屋台村/高野秀行

▽イスラム飲酒紀行/高野秀行

▼ふしぎの国のバード (7)/佐々大河

▼喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)/森博嗣

 何年ぶりかの再読。この小説を読み返すことは、もしかしたら、ぼくにとってひとつの“祈り”なのかもしれない。

▼感染症の世界史(角川ソフィア文庫)/石弘之

▽まずはこれ食べて/原田ひ香

 イイ話なのかな?と思ったら、まったくそうではなかった。

▼カエサル 内戦の時代を駆けぬけた政治家(岩波新書)/小池和子

 ちょっとやはり難しいな。古代ローマ、人の名前も難しいし、そもそも社会の成り立ちが想像の範囲を超えているので…

▼三体II 黒暗森林(上/下)(Kindle版)/劉慈欣、大森望・立原透耶・上原かおり・泊功(訳)

 ものすごいドライヴで一気に読んだ。もはや前巻とは全然違うスケールの話になってんじゃん!!

生命(じんせい)に時間を与えるより、時間に生命(いのち)を与えよ。
给时光以生命,而不是给生命以时光。
 ──苦心のルビだが、わかるようなわからないような…。この一節、パスカルの引用だという話もあるが定かではない。

「いや、艦長はきみだ。」
 この瞬間、もう東方延緒大佐のヴィジュアルはミスマル・ユリカでしたね、ぼくの中では(笑) ──ちなみに「大佐」と訳されているがどうやら原文では「大校」らしいので、大佐(上校)よりも上の上級大佐、西側の軍隊にはあまり見られない階級のようだ。宇宙艦隊だけど人民解放軍だもんね。

「司令官、自分が無神論者であることをいまはじめて残念に思っています。そうでなければ、いつかどこかでまた会えるという希望を抱けたのに」
章北海说:“首长,我第一次为无神论者感到一些遗憾,否则我们就可以怀着希望在某个时间某个地方最后相聚。”
 ちょっとぐっときちゃう常偉思少将。いいシーンでした。

「じゃあ、これからどうしたらいいでしょう。どうしたら彼女を忘れられますか?」
「不可能です。あなたは彼女を忘れられません。」
現実を逃れるもっともいい方法は、現実に深く関わることだと知っていたからである。
*

そう。『三体II黒暗森林』上下、読んだんだ。まさに怒涛の展開だったけど…、なんか、ぼくが本当に胸を締め付けられたのは、あの、なんて言うの…、百パーセントの女の子が、現れるところ…。あそこは本当に、読んでて息ができなくなるかと思ったんだ
2020-09-01 19:56:50
あれは、たぶん、文芸評論的だったり、世間的だったりするところからは、叩かれる部分だとは思うんだよね。それはまあなんとなくわかるんだ。でも、さあ…。こういう発言すること自体がよくないのかな。
2020-09-01 20:06:18
脳内アニメ化的な意味でいい感じのキャラは、東方延緒かなあ。シリアスタッチのミスマル・ユリカみたいな感じのを想像してた。渋いキャラは常偉思将軍と章北海主任ですね
2020-09-01 20:18:47
『三体』はテンセントがドラマ化するのとビリビリがアニメ化するっていう二つのプロジェクトがあるらしいけど…、アニメはともかく、ドラマ化って…?どうやって…??(それにしてもあの国の資本が世界にコンテンツを発信する時代になるんだなあ、時代は変わった)
2020-09-01 20:41:53

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▼シングルコレクション+ アチコチ (初回限定版)/坂本真綾

▼アンチテーゼ(初回生産限定盤)/夏川椎菜

9/4(金)アーティゾン美術館

 平日の昼過ぎに、東京駅に現れた。八重洲口のアーティゾン美術館へ向かう。日時指定制チケットは、14時からのを購入。

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アーティゾン美術館

 昔のブリヂストン美術館が新装開店した、真新しい美術館である。平日の午後に、まるっきりサラリーマンの恰好で美術館の入口に歩み入ったら、警備員に、美術館に来たのか?と問われた。「そうですけど」と答えたが、オフィス棟と間違えてないか確認されたということらしい。

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 上層階では、『鴻池朋子 ちゅうがえり』、『第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示帰国展 Cosmo- Eggs| 宇宙の卵』をやっていて、とくに鴻池朋子の方はかなりわけがわからない空間になっていて面白かったけど、割愛。

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 旧ブリヂストン美術館石橋財団のコレクションは、一つ一つが重量級で、見ごたえがある。

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お久しぶりの、あの、亡霊のような男。カイユボットの絵

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印象派の女性画家の作品が特集されていた。

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ベルト・モリゾのこの絵、なんだか好き。なんなら、この日ここで見た絵の中で、一番好きかも。この二人、必ずしも母娘には見えず、適度に冷たい感情が見えるような気がするところがよい。

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モネの睡蓮の池と、そして、黄昏のヴェネツィア。色の移り変わりがエキセントリックなほど激しいのに、優しくて美しい。

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ピサロの絵なのだけど。望遠レンズのようだ、と思った

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コローの描く森、好き

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ルノワールの描く風景って、これまであまり記憶に残っていなかったかも。切り取り方は観光地のスナップ写真のようではあるけれど、この光を見てみたい、と思った。

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セザンヌのサント・ヴィクトワール山。正直、うまいのかどうかよくわからないのだけど、やたらこの山を描く人だという印象はあるよね

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円山応挙ブリヂストンって日本美術も持ってたんだ。

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有田の磁器。状態のいいのを持ってるなあ。

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 パウル・クレーの特集展示をやっていた。──うーん、正直、よくわからない。だけどいくつか、妙に気になる絵がある。

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『庭園の家』

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『水の中の家』。

 自分を取り巻く小さな世界が穏やかならんことを願う気持ち、のようなものを感じた。──騒がしい印象の絵もあるんだけどね。

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 2時間弱の間、堪能して、おなかいっぱいになった。もっと手軽に来たい美術館だ。

ロンドン・ナショナルギャラリー展 @国立西洋美術館 8/28

 今年の前半に中止になったり延期になったりしたイヴェントを、取り返しているような流れになっている、今日この頃である。実に約半年ぶりに、上野の美術館に足を運んだ。これも日時指定制チケットが必要ということになっている。

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国立西洋美術館ロンドン・ナショナルギャラリー展

 この展覧会のスマートフォンチケットは、イープラスのアプリのインストールが必須になっており、余計な手間がかかった。新型コロナ以後、日時指定制が盛んに導入されていることもあって、美術展示の分野でも電子チケット化が進んでいるが、特定のプレイガイドのアプリが必須というのは、悪手ではないかなあ。

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 ものすごく正統派な展示で、イタリア・ルネサンス、17世紀のオランダ絵画、…といった区分で進んでいく。

 フランス・ハルスの、『扇を持つ女性』。レースの微細な描き方に見入る。
Frans Hals - Portrait of a Woman Holding a Fan - WGA11135
(via Wikimedia Commons)

 ワウウェルマンの『鹿狩り』(1665年)。遠近がごちゃまぜなので違和感が…
Philips Wouwerman - A Stag Hunt (c.1665)
(via Wikimedia Commons)

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 スペイン絵画のコーナー。

 フランシスコ・デ・スルバラン『アンティオキアの聖マルガリータ』。べた塗りの感じはどことなくアニメっぽさがある。
Francisco de Zurbarán 047
(via Wikimedia Commons)

El Greco 016
(via Wikimedia Commons)
 躍動感! エル・グレコって1600年頃の画家なのだけど、同時代の画家とはタッチが明らかに異なるのがすごいよね。

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 やっぱりよかったのは最後のフランス近代絵画のコーナーかな。

Claude Monet, The Water-Liliy Pond (National Gallery, London)
(via Wikimedia Commons)
 モネの睡蓮。もう、なんと言うのだろう…絶品。うっとりしてしまうね。この人の描くこの池にしかない空気が、立ち上がっている。

 ゴッホの『ひまわり』が最大の目玉作品だ。

Vincent van Gogh - Sunflowers (1888, National Gallery London)
(via Wikimedia Commons)

 ゴッホのひまわりは、全部で7枚が知られていて、1枚は神戸の空襲で焼けてしまって現存しないそうだが、ぼくは2014年にロンドンのナショナル・ギャラリーに行ったときに、そこ所蔵の1枚と、アムステルダムの1枚がちょうどロンドンに来ていて、2枚並んで見られたという、運のよい機会があった。そして新宿の損保ジャパンが持っているもう1枚をあわせて、3枚見たことがあることになる。──しかし、アムステルダムと損保ジャパンの2枚は、ロンドンのこのひまわりのセルフコピーなのだそうだ。たしかに同じ花瓶の同じ様子の花を描いた絵に見えるが、わりと印象が同じではないのはなぜだろうか。損保ジャパンの方は、絵の具がもっと盛られていて、立体的な迫力が強かったような記憶があるが、どうだったっけ? あちらも新しい美術館がオープンしたから、近いうちに行ってみなくちゃいけないなあ。

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 国立西洋美術館、常設展も一巡した。

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中世の人は、そんなにしょっちゅう、石で人を殴り殺してたんですかね…

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アレキサンドリアの聖カタリナ』

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ダンテ・ガブリエル・ロセッティの、たくましい腕の女性

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モーリス・ドニ『ロスマパモン』。強い光と影の感じが好き。

東京国立近代美術館の新版画 8/22

 東京国立近代美術館、ピーター・ドイグ展のあと、コレクション展も一巡した。明治以後のいわゆる“新版画”がまとまって展示されていた。

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 鮮やかな色合いで、目を見張る。これはすごい。小原古邨(祥邨)という名前を初めて知った。花鳥画を中心に活躍した絵師だそうだ。

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 笠松紫浪、そして川瀬巴水。グラデーションがきれい。明治から戦前の、こういう美しいものが、ちゃんと残っているのだなあ。

「ピーター・ドイグ展」@東京国立近代美術館 8/22

 東西線竹橋駅から歩いて、東京国立近代美術館へ。

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 夏の盛り、お濠の一面に水草が覆っていた。

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東京国立近代美術館ピーター・ドイグ展

 ピーター・ドイグとはスコットランドの現代画家で、カリブ海トリニダード島で暮らしたこともあるそうだ。強い光に焼かれたような乖離感が印象に残った。

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 乾いた空気と、まぶしい光

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 人ならざるものが現れる…?

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 乖離感が極まって、人間がついに透明(?)に…。

「幻想の銀河 山本 基×土屋仁応」@ザ・ギンザ スペース 8/22

 銀座のアートスペースでの展示。銀座五丁目の地下室に下りる。

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 土屋仁応という人の名前は、以前に東京都美術館で見た、なめらかな架空の動物の木彫像が印象に残っていた。一方、山本基は、塩でドローイングやインスタレーションを作っているアーティストだそうだ。

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厳しい寒さの土地を連想させる。そこに、かよわい生き物たちが…

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これが塩で描かれているのだそうだ…

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地下室にこんな虚空が広がっていることに、どきどきしてしまう。

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それにしても、この人の木彫は本当にすごい。架空の生き物が、妖しく、美しい。

ヨコハマトリエンナーレ2020 @横浜美術館、プロット48 8/16

 3年に一度のこのアートイヴェント、今年も開催された。だが、横浜美術館への入場は日時指定制チケットということになって、だけどそういうのって苦手なんだよね…。なんとなく見ていると、土日の日中の時間指定チケットは、前日までには、ほぼ捌けているようだ。休日の予定なんて特に立てずに、思い立った時に出かける、というやり方でぼくはずっと暮らしていたのだけれど、そういうのが通用しない時代になってきた。──だが、日曜日の朝8時半頃に、ふと思い立って見てみたところ、当日の昼12時半の時間指定チケットに空きがあったので、行くことにした。

ヨコハマトリエンナーレ2020

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横浜美術館が何かに包まれている。SFアニメに出てくる光学迷彩を連想した。──工事中かとも思った(笑)

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 正面の巨大空間いっぱいに、ニック・ケイヴ『回転する森』。モビールがくるくると回っていてとてもきれい、だけど、中にはピストルの形をしたものも混じっている。──きらきらした、かわいげな世界に、暴力が隠されている。

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 ちょっとぐっと来てしまったのが、この、エリアス・シメという人の作品。

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これ、ぱっと見で何かわかる人は少ないかも。PCのキーボードですね

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うわ…

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この一面の壁は…

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撚りあわされた電線。

 この人はエチオピアの人で、世界を覆っていくテクノロジーの残滓で、こういう作品を作っているらしい。

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 横浜美術館の展示で一番「ヤバいな」と思ったのはこれだったかも…

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 触っていいようですが、触るなら消毒液で手を…ということになっていた。

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 地獄だ、と思ったのはこの部屋。母親や大人が子供を叱る台詞が、延々と流れているのだ。

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 キム・ユンチョルの『クロマ』は、毎時30分から15分間、点灯するそうだ。光っていないとただの金属のうねうねした塊なのだけれど、光り出すととても美しい。無数のポリマーが虹のような色に光る。一つ一つの部品は機械的に微細な動きをして、表面の色も変化していく。

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 横浜美術館の裏口から出て、炎天下を高島町の方向に歩き、“プロット48”という会場(アンパンマンミュージアムの跡地だそうだ)にも行ったけれど、…こっちはちょっと、やりたい放題感が強かったかな。ボコ・ハラムの襲撃から立ち直って学校生活を送るナイジェリアの女の子たちの映像が、印象に残った。──見て回りながら午後いっぱいを過ごし、新装開店のようになった根岸線桜木町駅の中華レストランで軽く食事をしてから、帰宅。新しい出口ができたり、ホテルメッツが建ったりして、桜木町駅、いつの間にかちょっと変わったのだね。

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 今回のヨコハマトリエンナーレ、思ったのは、映像作品が多すぎるということ。かなり長時間のものが多く、全部見ることはそもそも想定されていないみたいだし、別に全部見てやろうなどとはこちらも思っていないのだけれど、これはもはや映像インスタレーションというよりもしっかりしたストーリーのある映像作品ではないのか、ここで“展示”することが最適なのかどうか…と思うものが多かった。この日ぼくが、おそらくかなり大部分を見てものすごく強い印象を持ったのは、パク・チャンキョン『遅れてきた菩薩』、あと…名前を忘れてしまったがもう1作品だった。映像作品は、何らかの方法でインターネット上で展示するような方法をとらないのかな。チケットを購入して来場した人は一定の期間見られる、というような方式は可能だと思うんだけど。

8/10(月)大倉山、小机散歩

 新型コロナウイルスの感染者数は増え続けていて、三連休でも、遠出をする気分にはならない。だが酷暑の中、自室に引きこもっているのは耐えがたい。こういう場合はせめて、近くで行ったことのないところを歩いてみよう、と思い立って、東横線の大倉山で下りて、駅のホームを見下ろす急な坂道を登って行った。

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 汗をかきながら高台まで上がると、公園の木立の向こうに、あやしげな館が見えてくる。

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 大倉山記念館。数々の映画やドラマのロケ地として使われている、クラシックな建築だ。存在はかなり前から知っていたし、この近辺はそれこそ高校時代から行動範囲だったはずなのに、これまで一度も実際に見たことがなかった。

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 大倉山記念館とは、大倉邦彦という戦前の実業家がつくった「大倉精神文化研究所」という組織の建物で、昭和7年(1932年)の竣工。そもそも、もとは太尾という地名だったところに、東横線五島慶太東京横浜電鉄)の駅名が「大倉山」になったのも、先にこれがあったからなのだそうだ。──パンフレットを見ると、「各分野の一流の研究者を集めて、学術研究を進めるとともに、精神文化に関する国内外の図書を収集して附属図書館も開設しました。」ということで、何を考えて何を研究していた人なのか、まったく判然としない。穏健でお金持ちな北一輝、といったところなのだろうか?

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 内装も、直線が多用されている。パンフレットによると「プレ・ヘレニック様式」だというが、なんだその様式、という気がする。実際、これを設計した長野宇平治という建築家がそう呼んでいたというだけの様式の名前らしく、つまり世界に唯一の建築様式ということだ。広く言えば新古典主義建築だろうが、戦間期風の厳めしさがあり、とっつきにくい感じを受ける。

 この日はちょうど映画『1999年の夏休み』の上映会の看板が出ていて、まったく知らずに訪れたのでたいそう驚いた。まさにこの映画の舞台であるこの建物で上映するなんてうらやましい!と思ったが、さすがに飛び入りでは見られないようだった。──地下にも会議室がいくつかあって市民に貸し出されているようで、弦楽のカルテットの演奏が聞こえてきた。

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 裏手の斜面には、大倉山公園の梅林が広がっている。こんなところがあったんだ。

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 坂を下りると、龍松院という寺がある。

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 小机城主笠原某の開基になる寺院だそうで、江戸開府よりも古い歴史があることになる。

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 小机城というのは、横浜線の小机の駅の近くで線路がトンネルをくぐるところ、その上の山にあった、戦国時代の山城だ。小田原の北条氏の支城で、鶴見川沿いの低地に突き出して見晴るかすような位置にある。毎日その下を電車でくぐっていながら、登ってみたことはない。大倉山から小机駅まで戻って、歩いてみた。

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 雲松院。ここも、小机城主笠原越前守信為が開基した曹洞宗の寺院だそうだ。

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 城山に上ってみる。竹林が鬱蒼としているが、たしかに不自然に掘り下げられているのがありありとわかる、人為的に作られた空堀だ。

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 本丸跡。平らにはなっているけれど、大して広い土地ではない。戦国時代の「城」というものがいまいちよくわからないのだが、やはりこれは、そこに殿様が住んだり籠城したりするようなものではなく、駐屯地というか、警備派出所というか、戦になったとしても一時的に拠る砦のようなものなのだろう。

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 小机駅の南側の、横浜上麻生道路。この、県道沿いの古びたアーケードの風情、個人的には「いかにも横浜」を感じる光景なのだが、これはあまり一般には理解されない感覚かもしれない。

「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」@東京都現代美術館 7/26

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、3月以降、美術展はいったん全面休止のような状況になっていた。6月に入って徐々に再開していたけれど、なかなかそういう場所に出かけるような気分にならず…。だが、3月から予定されいていたオラファー・エリアソンの展示には期待を持っていたし、自分としても、そろそろ動きたい、と思った。──半蔵門線清澄白河で下りて、東京都現代美術館へ。雨が降ったり止んだりのはっきりしない日だった。検温されて、消毒液を手にすり込んで入場。

東京都現代美術館>オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

 とはいえ、インスタレーションはわりと過去作品が中心で、これ見たことあるな、というものも多かった。きらきらした光がきれいで、若い人たちが競って写真を撮っている。

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 ミスト。これ、ちょっと時代に合わないインスタレーションになってしまったかもしれない。2006年の原美術館の展示のときはくぐってみる人がけっこういた記憶があるけど、今回は、積極的にミストに触る人は少ないようだった。

 こういうインスタ映え的な受容のされ方をするもの以外にも、北欧の氷河がとけていく様子の写真とか、”サステナブル”、SDGs、といったことを念頭に置いた作品も。面白いのは、今回、ドイツから日本まで、ロシア経由の陸路で作品を送ったのだそうで、その間の振動でペン先が動くことで描かれた軌跡、なんていうものが作品になっていたりする。

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 新作、『ときに川は橋となる』だそうだ。水面に反射した光がたゆたう。

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 床に置かれた水盤がときどきギギッと動いて、水面が揺れるしかけ。だが、ほんのかすかな揺らぎが、光によって大きく映し出されるのが、ちょっと意外だ。これ、わりと日本的というか、つくばいとししおどしなんかに通じるものがある。暗い空間に立ってその様子を眺めていると、とても内省的になってくる。──“ときに川は橋となる”と訳されているタイトル、英題は"Sometimes the river is the bridge"だそうで、日本語訳が少し違うのではないか、と思ったりもする。花は花にして花にあらず、隔てるものと繋ぐものの間に、境界などそもそもあったのだろうか。

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 この日は、東京都現代美術館のコレクション展も一巡して…、

 東西線木場駅まで散歩して、帰宅した。

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 雨上がりの、びしょびしょでムシムシとした木場公園。今年は7月も末になってもまだ梅雨が明けないまま、湿気のきつい季節になっている。

8/1(土)「SUMMER CHAMPION 2020 ~Minori Chihara 12th Summer Live~」ストリーミング配信

 毎年開催されていた茅原実里さんの河口湖ライヴ、12年目の今年は、無観客開催&有料のインターネット配信になりました。コロナ禍…。ぼくも、8月第1週の土・日のどちらも河口湖に出かけていないのは、12年ぶりのことです。現地で体験できないものをライヴイヴェントと呼ぶのか?という点では複雑な思いですが、今これをやることが大変だったことはある程度理解できますし、有料配信しても興行的に厳しいことも容易に想像できます。その苦労を受け留めた消費者の一人として、エポックメイキングな配信ライヴだったと思います。──当日の18時、アイスワインを飲みながら自室で待機していました。

SUMMER CHAMPION 2020 ~Minori Chihara 12th Summer Live~

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 河口湖駅からステラシアターまでの、通い慣れた船津の道を走って行く車載映像でスタート。10周年記念植樹のハナミズキも映して、いつものステラシアターに入場です。──空っぽの客席に向かってパフォーマンスする、みのりんとCMB。客席のコールは別のライヴのときのものを編集してSEで入れているという芸の細かさで、ヘッドフォン爆音で聴いていると、不思議な臨場感がありました。──カメラがアップに寄るときのみのりんの笑顔! でも、それと同時に、この空っぽの河口湖ステラシアターを、そこに向かって歌うみのりんの姿を、それを自室のPCのディスプレイで見ていたことを、絶対に忘れたくないと思いました。

 茅原さん、グッズのTシャツにブルーのロングスカート。髪形は真ん中分けで左右に編み込みが入ったスタイル。インスト明けでは2階客席に上がって、いつものライヴを彷彿とさせるパフォーマンスでした。ただ、やはり歌い込みが足りないのか、ピッチが上がりきらない…。後半、声が出てきたかなと思ったけど、まさかの『Paradise Lost』で歌詞を間違えるなど…。

 ラスト前のMCで、FLASH事件に触れていました。ぼくは個人的には、茅原さんが“悪いこと”をしたとは特に思っていなくて、──いろいろなことを考えたけれど、この人がとにかく素直なことを語ってくれる人だっていうことは、ファンの一人としてなんとなくわかっている気で、だからこそのこの人の甘さみたいなものも感じたのだけれど、でもそれって本質的には、他人がどうこう言うことではないでしょう。──ただ、「これから先、自分がどこに進んでいけばいいのか、答えが見えない」って彼女が言ったとき、それが一番、胸がつまりました。思えば、ぼくは以前からずっと、ぼくと同世代のこの女の子がこれからどうなっていくのだろう…、と思いながら、茅原さんを応援してきた気がします。本当に、よく再始動してくれました。もう歌えない曲もあるでしょう。でもそういうことも呑み込んでいくしかない。彼女が本気でぼくらの前に立ってくれるなら、これからも応援していくしかありません。

Freedom Dreamer
・Sunshine flower
Lush march!!
・(MC)
-キャラソンコーナー-
 ・過度の期待にご用心(南千秋キャラソン
 ・雪、無音、窓辺にて。長門有希キャラソン
・(MC)
-アコースティックコーナー-
 ・Plumeria
 ・夏色華日
 ・ステラステージ
・(MC)
・エイミー
境界の彼方
・instrumental (Theme of CMB)
・Tomorrow's chance
・声もなく始まる世界
・TERMINATED
Paradise Lost
・(MC)
・Sing for you
純白サンクチュアリィ
・purest note ~あたたかい音
・美歌爛漫ノ宴ニテ
・(打ち上げ花火)